帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズとゴジラシリーズについて色々と書いていくブログです。

『怪獣総進撃』

怪獣総進撃
1968年8月1日公開
脚本 馬淵薫本多猪四郎
特技監督 有川貞昌
監督 本多猪四郎

 

ゴジラシリーズの第9作。
東宝特撮怪獣映画20作記念として怪獣映画の総決算と言うべき内容になっていて、本編監督に本多猪四郎さんが、音楽に伊福部昭さんが復帰している。

 

内容は『怪獣大戦争』のスケールアップ版と言う感じになっている。

 

舞台は20世紀の終わり頃となっていて、国連が月に探検基地を、小笠原諸島に「怪獣ランド」を建設し、ムーンライトSY-3を所有して、戦車を遠隔で操縦する等、公開当時より技術が進んだ未来が描かれていた。

 

本作に登場する地球側の怪獣はゴジラ、ミニラ、ラドンアンギラスモスラ、ゴロザウルス、マンダ、バラゴン、クモンガ、バランの10体。
登場していない地球怪獣はメガヌロン、キングコング、大ダコ、マグマ、フランケンシュタインの怪獣、サンダ、ガイラ、エビラ、カマキラスくらいかな?
出来れば過去に登場した全ての怪獣を再登場させてほしかったが、キングコングは版権の関係で、フランケンシュタインの怪獣達は設定が特殊で再登場は難しかったのかな。
メガヌロンや大ダコがキングギドラ相手に戦えるとは思えないが、エビラ辺りは水中戦なら善戦しそうな感じがするので是非とも登場してほしかった。

 

怪獣ランドでは区域外に出ようとする怪獣達に対してそれぞれの本能と習性に応じた科学的な壁が設けてあって、ラドンのような空を飛ぶ怪獣に対しても磁気防壁が設備されていた。
島に怪獣が閉じ込められているわけだが、怪獣達を傷付けない壁を設けたり、自然を残して食料も十分に用意する等、怪獣達の事をかなり考えた作りになっている。
ゴジラが完全に人間の監視下に置かれているのにはちょっとモヤモヤしたものを感じてしまうが、細かい設定が色々ある怪獣ランドは色々と考察したくなる夢が詰まっている場所であった。
ただ、ゴジラアンギラスはまだしもモスラはインファント島や小美人と言った設定があったので、それらを全て捨てて怪獣ランドに置いたのはさすがにちょっと納得いかないところがある。

 

モスクワにラドンが、パリにゴロザウルスが、北京にモスラが、ロンドンにマンダが、ニューヨークにゴジラが現れる。
これまでの作品で怪獣が出現する場所は殆どが日本で、日本以外が舞台になる時は『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』や『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』のように南海の孤島である事が多かったので、世界各地の有名な都市にゴジララドンと言った有名怪獣が現れるのは見ていてテンションが上がった。
本作は他にもキラアク星人の怪獣操縦器が世界各地で発見される等、物語のスケールを大きくしていた。

 

パリの凱旋門を破壊する怪獣は当初はバラゴンの予定であったがゴロザウルスに変更されたらしい。その為、ゴロザウルスが「地底怪獣」「バラゴン」と報告されている場面がある。

 

これまでの作品で大きな街に複数の怪獣が同時に現れる事があまり無かったので東京にゴジララドン、マンダ、モスラと有名怪獣が次々と姿を現していくのはテンションが上がるものであった。

 

本作はたくさんの怪獣が現れて街を破壊していくのだが、これまでの作品と比べて怪獣達に怖さをあまり感じなかった。
それについては「怪獣操縦器でキラアク星人や地球人に動かされた事で怪獣達が人類を上回る強大な存在ではなく単なる駒となってしまった」「ラドンに襲撃された克男が空気の無い場所までは追って来られないとしてラドンの追跡を簡単に振り切る等、人類が生態を把握した事で怪獣達が対処可能な存在となってしまった」といくつか理由が考えられる。
この辺りは怪獣が登場する世界を長く描き続けてきた弊害と言えるかもしれない。

 

本作は事件が本格的に起きる前の日常パートが殆ど無く、物語が始まってすぐに世界各地に怪獣が現れて月に未確認飛行物体が目撃されると全編に亘って侵略者との戦いが繰り広げられた。
その為、人間ドラマがやや薄いところがあるのだが、最初から最後まで常に戦況が動いていてテンションが落ちない作りになっていた。

 

杏子の耳からキラアク星人の操縦装置を奪い取る場面は血がだらだら流れて実に痛そうだった。
本作は他にもこの頃のゴジラシリーズでは珍しく人が傷付いて血を流す痛々しい場面がいくつかある。

 

キラアク星人は穏やかで丁寧だが地球人の意見を聞く気は全く無いと言う強い意志が感じられる喋り方で強敵感があった。
これまで登場したミステリアン、ナタール人、X星人は「発達した科学によって人間らしさを失った人間」であったがキラアク星人は正体が鉱物生命体だったと言う「人間とは全く異なる生命体」であった。「地球人の未来の可能性」とも言えるミステリアン達と違ってキラアク星人は「根本から人間とは違う存在」となっていたので、その辺りをもっと深掘りしても面白かったかなと思う。

 

富士山の麓での最終決戦がマスコミによって全世界に中継される。
地球の命運を賭けた戦いなので全世界の人々が注目するのも分かるが、『ゴジラ』のテレビ塔の場面を思い返すと、ここで怪獣達の戦いをプロレスのように中継出来てしまうところも本作の怪獣達があまり怖くなかった原因の一つだったかもしれない。

 

「一番乗りはゴジララドンアンギラスか!?」と言われる中で堂々と一番乗りするミニラさんはさすが次世代の怪獣王である。

 

キングギドラの登場は伏線や前振りが無くてかなり唐突であったが、宇宙怪獣なので地球人達が怪獣操縦器で制御する事が出来なかったと言う設定はなるほどとなった。確かに地球人達が怪獣操縦器を入手して地球の怪獣達をコントロールし始めたら、それに対抗する為にキラアク星人は宇宙怪獣を用意するしかないよな。

 

キングギドラとの戦いはモスラとクモンガが糸を吐いて牽制し、ラドンが前方から突風を起こして攻撃する中、ゴジラが背後から押さえつけ、アンギラスキングギドラの首に噛みつくとそれぞれの能力を生かした攻撃になっているのが良かった。
アンギラスゴジラ最初の相手だったからか今回のキングギドラ戦ではかなりの活躍を見せていた。
ゴロザウルスはモスラゴジラとタッグを組んでいてかなり優遇されていた。凱旋門の裏話を考えると当初はバラゴンがこの役回りだったのだろうか?
最後にキングギドラにトドメを刺して、絶命したキングギドラの上に乗って勝ち名乗りを上げるのはミニラさん。さすがは次世代の怪獣王である。
キングギドラとの決戦ではマンダ、バラゴン、バランの活躍が無かった。着ぐるみの状態等、様々な事情があったのは分かるが、やっぱりどこかで活躍させてほしかったなぁ。

 

最後は地球怪獣達に倒されて珍しく絶命したキングギドラ
まぁ、『三大怪獣 地球最大の決戦』や『怪獣大戦争』では2体や3体の怪獣と戦っていたのに今回は10体が相手だったのでさすがに気の毒であった。(マンダ達を外しても1対7だからなぁ)
キラアク星人がキングギドラと一緒にファイヤドラゴンを出撃させていたら戦況は大分違っていたと思う。

 

発達した科学によって人間らしさを失ったX星人が生物である怪獣を科学で制御して切り札にしたのに対して、そもそも人間でなかったキラアク星人の切り札が生物である怪獣キングギドラではなくて機械のファイヤドラゴンだったのは一貫性があって良かったと思う。

 

怪獣操縦器が無くてもゴジラ達は動物の本能で自分達の敵がキラアク星人である事を分かっていた。ここは『三大怪獣 地球最大の決戦』にあった「皆で力を合わせて地球を宇宙怪獣の暴力から守ろう」と言うテーマを引き継いだのだと思われる。
戦いが終わった後、怪獣ランドに戻った怪獣達に向かって杏子が手を振るとゴジラもそれに応えて手を振りそうな動きをする。最初は争い続けた人類と怪獣が侵略者や宇宙怪獣と言った外からの脅威に対して力を合わせるようになり、最後は仲良く共存するようになる。一作目の『ゴジラ』とは随分と雰囲気が変わったが長年見続けてきた怪獣達が平穏な日々を送るようになったこのハッピーエンドは好き。

 

この頃のゴジラシリーズでは珍しく超兵器ムーンライトSY-3が全編に亘って活躍していた。活躍場面にかかる『怪獣総進撃マーチ』の盛り上がりもあってムーンライトSY-3の玩具が欲しくなる格好良さであった。

 

※「東宝チャンピオンまつり」では本作は『ゴジラ電撃大作戦』と言うタイトルになっている。
「地球怪獣総出動」の場面で外されたマンダが最後に紹介されて良かった。


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怪獣総進撃