『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃』
1969年12月20日公開
脚本 関沢新一
監督 本多猪四郎
ゴジラシリーズの第10作で「東宝チャンピオンまつり」の第1回作品。
前作の『怪獣総進撃』で物語が一区切りしたからか、本作はこれまでの作品とは世界観が変わっていて、「ゴジラ等の怪獣は存在しない世界」が舞台となっている。その為、番外編的な内容となっている。
本作はゴジラシリーズでは珍しく子供が主役の話となっている。
主題歌の『怪獣マーチ』を聴いて分かるように本作はかなり子供向けに作られていて、『ゴジラ』や『フランケンシュタイン対地底怪獣』が好きな人が本作を高く評価出来ない気持ちは分かる。
実際に見ると、強盗の話は情報の出し方が上手くて物語の流れがスムーズだったし、子供向けでありながら「公害」「鍵っ子」「いじめ」と言った当時の社会問題が取り入れられていて中々重かったし、それでいて主人公の成長がちゃんと描かれていて気持ちの良い結末になっていたので自分はかなり楽しめた。
本作は低予算の為、ゴジラの戦いの殆どが過去の作品からの流用となっている。
本作は一郎が見た夢の世界の話となっているので、ゴジラとエビラ達の戦いは「一郎がこれまで見てきた怪獣映画を一郎の夢の中で再現している」とも考えられる。
1978年生まれの自分はまだ生まれていない1969年の東京の風景が見られるが、全体的に煙や埃が凄まじくて当時の公害の深刻さがよく分かった。
本作では公害についてはあまり深掘りされなかったが次作の『ゴジラ対ヘドラ』では本格的に取り上げられる事になる。
本作の主人公である一郎はいわゆる「鍵っ子」で、両親が仕事で帰らない夜もある。
あの年齢の子供が夜に一人でいるのはかなりハラハラするが、隣室の南さんを始め団地の人達が常に一郎の事を気にかけていて、全体的に温かい雰囲気があってホッとした。
本作は強盗犯もどこか間抜けで笑えるところがあったり、いじめっ子のガバラも最後は一郎を評価して仲良くなったりと作中に度を超した外道や悪人がいなかったので重いテーマがありながらストレスをあまり感じずに見る事が出来た。
本作は一郎が主役の人間パートとミニラが主役の怪獣パートがあって、人間の一郎も怪獣のミニラも宿題をしなければいけないしいじめっ子にいじめられたりと大変な状態にあった。
そんな一郎とミニラが出会って種族を越えた友達になって、最後は一郎の助言でミニラがガバラを倒し、ミニラの頑張りを見て一郎が強盗犯やガバラに立ち向かうとお互いを助け成長させたのが良かった。
本作は「一郎が現実逃避して怪獣島のミニラと友達になる話」であるが、ひょっとしたら、ミニラの方も現実逃避して日本の一郎と友達になっていたのかもしれない。
人間サイズになって人間の言葉を喋るミニラに驚いたが違和感は無かった。
あの怪獣王ゴジラの息子でありながら人間と友達になっても不自然さが無いと言うミニラのキャラクターとしての可能性を知る事が出来る作品であった。
こう言ってはいけないのだろうが、ミニラっていじめられっ子の姿がよく似合うよなぁ。
家に帰った一郎がテレビを点けたら「一郎さん」と言う名前の人物が主役のメロドラマが始まるのが笑える。
南がすき焼きをご馳走するが一郎が遠慮して肉を食べなかったら、南が一郎に玩具のモニターを頼んで、一郎は玩具のモニター代としてすき焼きを遠慮無く食べられるようになった話が好き。
子供が主役だからか、本作は全体的に大人がちゃんと大人として振る舞っている場面が多いのが良かった。
ガバラはガマカエルの怪獣らしいが、自分はぱっと見だと鬼の怪獣に見えた。
ミニラとガバラの体格差が凄かったが、一郎と人間のガバラの体格差もかなりあった。
いじめられっ子から見たらいじめっ子はあれだけ大きくて鬼のように怖いと言う事なのかな。
特撮場面の大部分が過去作からの流用となっているがカマキラスの場面は新規撮影となっている。
怪獣の中でもカマキラスは大きさ的に人間と絡ませやすい方なので、巨大すぎるゴジラやキングギドラより「怪獣に襲われる!」と言う恐怖の場面を作りやすいのかな。
「昭和シリーズの途中からゴジラは人間の味方になった」と言われる事があるが実はそんな事は無く、本作でもゴジラは怪獣島を奪いに来た人間達のジェット機と戦い、ミニラの友達である一郎も自分の敵だと捉えていた。
一方の一郎はゴジラが人間が乗っているジェット機を撃墜したのを見て喜ぶ等、ゴジラを敵として見ていない。おそらくだが一郎はゴジラを「核の恐怖」とは見ておらず、ライオンやゴリラのような「強い野生生物」くらいの認識だったと思われる。もしかしたら一郎は『ゴジラの逆襲』以降の「色々な敵と戦う強いゴジラ」のイメージを強く持っているのかもしれない。
これはちょっとこじつけになるのだが、一郎にとってガバラが率いるいじめっ子グループが「いつもそばにいる脅威」で、強盗団が「他所からやってきた脅威」となっていて、ミニラの方もガバラやカマキラスと言った怪獣島の怪獣達が「いつもそばにいる脅威」で、人間達のジェット機が「他所からやってきた脅威」となっているのかな。
ガバラを勝った後、ゴジラに駆け寄る前に倒れているガバラの頭をさりげなく足で攻撃するミニラさんに笑うw
怪獣のガバラは単なる弱い者いじめをする奴と思いきやなんと最後にゴジラに戦いを挑んだ!
話のテーマを考えたらミニラがガバラを倒して終わりの方が良かったのだが、本作はゴジラシリーズなので最後にゴジラがガバラを倒す場面が入れられる事となり、その結果、ガバラがゴジラ相手には勝てない事を分かっていながら不意打ち等も繰り出して何とか勝とうとする意外とガッツのあるキャラクターとなった。
喧嘩をした事が無い子供だった一郎が夢の中で見たミニラの戦い方を現実で強盗団相手にして窮地を脱する展開はなるほどとなった。「子供は漫画やアニメやゲームから離れて現実の中で経験を積んで成長するべき」と言われる事があるが、漫画やアニメやゲームを参考にして成長する事もあるのだ。
事件解決後、マスコミの質問に一郎は「ミニラと一緒だった」と答える。それを聞いた南は「ミニラですよ、怪獣ですよ。僕には分かるなぁ。つまり、一種の信仰みたいなもんですよ。そう、大人の世界に神様があるように子供の世界にミニラ大明神があってもおかしくないでしょ」と説明して、マスコミ達はなるほどねと頷いて納得する。
本作のように「現実と夢」をテーマにした作品では「夢から目覚めて現実に生きよう」と言う結論になる事が多いが、本作は「現実を強く生きていく上で夢は大事なもの」と夢を見る事を否定しなかったのが嬉しかった。色々事情はあるのかもしれないが、漫画やアニメやゲームを作っている人達が自分達の作っているものを否定するような話は見ているこちらの心がちょっと辛くなるので。
予算の削減や大阪万博の関係等もあって本作では特撮部分が大幅に縮小され、本編監督の本多猪四郎さんや監督助手の中野昭慶さんが特撮を担当している。
※予告の「9大怪獣ここに集結!」はさすがにちょっと詐欺に近いような……。
