「最後の力」
『ウルトラマンオメガ』第24話
2026年1月10日放送(第24話)
脚本 根元歳三
監督 武居正能
殲滅細胞怪獣ゾメラ
身長 66m
体重 5万9千t
ゾヴァラスとエルドギメラから人間が生み出してしまった怪獣なので「ゾメラ」。
小笠原諸島蘇来島にあるNDFの研究施設でエルドギメラの細胞がゾヴァラスの細胞を飲み込んだ事で誕生した。
ゾヴァラスの怪獣を操る能力とエルドギメラの怪獣を捕食して能力を獲得する能力を持ち合わせていてデマーガ、ゴモラを捕食していった。
ゾヴァラスとエルドギメラの弱点も引き継いでいたが弱点を克服し進化していく。
熔鉄怪獣デマーガ
身長 50m
体重 5万5千t
ゾメラが持つゾヴァラスの能力で操られ、エルドギメラの能力で捕食される。
古代怪獣ゴモラ
身長 40m
体重 2万t
怪特隊の監察下にあったが街中でゾメラと戦って捕食される。
物語
記憶を取り戻したソラトはコウセイの前から姿を消す。
一方、NDFはゾヴァラスやエルドギメラの能力を利用出来ないかと研究を続けていた結果、両者の能力を併せ持つ殲滅細胞怪獣ゾメラを誕生させてしまう。
感想
NDFで怪獣を操る能力を利用出来ないかとしてゾヴァラスの細胞の研究が行われていたが思うような成果が得られなかったので他の怪獣の能力を獲得出来るエルドギメラの細胞を近付けたらギメラ細胞がゾヴァラス細胞を飲み込んで爆発的に増殖し制御不能となって殲滅細胞怪獣ゾメラが誕生したとの事。
怪獣に対抗する為に他の怪獣を研究して兵器に転用しようとする話はウルトラシリーズで何度かあったがその中でもトップクラスにヤバい事態。『オメガ』はサユキを始めとする怪特隊もタイラ隊長を始めとするNDFも良識的な組織に見えていたが、そんな組織がウルトラシリーズでもトップクラスのやらかしを犯してしまうと言うのが中々に興味深い。
ヒーロー作品は人を「善」と「悪」に分けて「善」は良い結果に「悪」は悪い結果に至る事が多いが、実際の世の中は「善」が全て良い結果を「悪」が全て悪い結果を引き起こすとは限らず、「善」の人達の行動が悪い結果を生み出す事も多々ある。
ソラトも言っていたが『オメガ』のラスボスであるゾメラは地球人が生み出した怪獣である。
平成以降のウルトラシリーズは作品の始まりに関わった存在が最終決戦にも関わる事が殆どであったのだが、アーデルを始めとするゲネス人はオメガが地球に落ちてコウセイと出会うと言う『オメガ』の始まりに関わってはいるが最終決戦に直接関わる事は無かった。
自分は最終決戦はオメガへの復讐を誓うゲネス人がラスボスになると予想していたので今回の展開は意外で驚きであった。でも、ニュージェネレーションシリーズは10年以上に亘って毎年新作を作り続けているので似た展開を続けるとマンネリ化してしまう恐れがあるので本作のようなパターン破りは何回か入れていった方が良いのかもしれない。
小笠原でのオメガとゾメラの戦いは闇夜の映像やBGMがクールで格好良くて、宇宙観測隊員に戻ったオメガの動きも無駄の無いスマートなものであった。
『オメガ』のこれまでの戦いはドタバタしていてコミカルな感じだったので、それとのギャップもあって今回の戦いは印象に残るものとなった。
コウセイの「もう力を貸してくれないのか?」に対してソラトは「宇宙観測隊員である自分は地球人が生み出したゾメラに干渉する事は出来ない」と答える。
ウルトラシリーズはバトル要素がある作品で、バトル要素のある作品では強さのインフレが起こる事が多い。例えば『帰マン』では最初に地球怪獣が出現した後、地球怪獣を上回る宇宙怪獣が現れるようになり、さらにその宇宙怪獣を配下に持つ宇宙人が出るようになった。そして次作の『A』では宇宙人と怪獣を上回る存在として異次元人と超獣が現れ、さらに次作の『T』では超獣を上回る新たな怪獣が出現している。しかし、強さの描写には限界があって、強さのインフレで有名な『ドラゴンボール』もフリーザと超サイヤ人で強さの描写を極めると続く人造人間編や魔人ブウ編ではエネルギーの吸収や魔術と言った単純な強さとは違ったもので敵の厄介さを描くようになった。ヒーロー作品も同じで毎年新作を作って強敵を出していくとやがて強さの表現が尽きてしまう恐れがある。今回の『オメガ』はラスボスのゾメラは中盤の強敵であったゾヴァラスとエルドギメラの合体と言う分かりやすい強さを持つ敵であるが、その一方で「ウルトラマンが人類の為に戦ってくれないかもしれない」と言う強さとは別のところで危機的状況を描いている。
上で書いたように強さの表現には限界があるので、今回のような単純な強さとは違うものを使ってクライマックスを展開するのはシリーズを続けていく上で必要な事だと思う。
今回の「宇宙観測隊員としてのソラト」はこれまでのソラトとは全く違う雰囲気になっていた。これまでも「もう一人のソラト」は出ていたのだが、ソラト本人がここまで変わってしまうとは分かっていてもやはり驚かされた。前回の話でも書いたが、近藤さんの演技力が凄すぎる。
宇宙観測隊員に戻ったソラトの態度は「冷たい」ようにも見えるし、実際、アーデルは宇宙観測隊の対応に色々思うものがあった。それを考えると、この状況で「宇宙観測隊は冷たい」ではなくて「ソラトのやるべき事じゃないって事は分かっている。勝手かもしれない」「無理言って悪かったな」「今までありがとな!」と宇宙観測隊員に戻ったソラトの事を決して悪く言わなかったコウセイの優しさを感じる。
人間は危機的状況に陥るとどうしても自分の都合を最優先にしてしまいがちだが、この状況においてもコウセイはソラトの都合を無視する事はしなかった。
以前の話にあったアーデルの回想シーンを見ると宇宙観測隊と思われる存在は上空からその星を観測しているようだ。宇宙怪獣や侵略者が地上に降り立ったらその討伐の為に宇宙観測隊員も地上に降り立つ事があるようだが基本的にはその星に干渉しないように距離を取って観測していると思われる。
だが、今回のソラトは常に地上で事態を観測していたのでコウセイと再会する事になったしゾメラに襲われる人々や最後の力「NEVER GIVE UP」でゾメラの調査を続ける怪特隊を間近で見る事となった。
ゾメラを倒す糸口を見付ける為に調査を行う怪特隊のメンバーを見るとサユキとの縁があったとは言えあの若さで怪特隊に選ばれたアユ姉の凄さが分かる。
コウセイはソラトと過ごした時間によってこの危機的状況下でも最後まで諦めずにやるべき事をやれるようになり、第1話でソラトが避難所で助けた女の子は今回の話で避難所で老人を助けるようになっていた。
これらはソラトが関わった為に起きた地球人の「変化」と言え、宇宙観測隊としては星に干渉する「否」の行為として扱われている。だが、宇宙観測隊の目的が「未来永劫続く完全なる平和を築く」であるのなら、記憶を失ったソラトがコウセイ達と関わった事で起きたこれらの「変化」は地球が平和を築く事へと繋がる「是」の行いであったと言えるかもしれない。