帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズとゴジラシリーズについて色々と書いていくブログです。

『モスラ3 キングギドラ来襲』

『モスラ3 キングギドラ来襲』
1998年12月12日公開
脚本 末谷真澄
特技監督 鈴木健二
監督 米田興広

 

平成モスラ三部作の完結編。

 

川北紘一さんに代わって鈴木健二さんが特技監督を担当している。

 

スケジュールの関係でロラ役が山口紗弥加さんから建みさとさんに交代している。
仕方が無い事だが、エリアス三姉妹の対立と和解は平成モスラ三部作のメインストーリーだったので、出来れば同じキャストでドラマを締めてほしかったところはある。

 

本作から東宝特撮怪獣映画は再び有名怪獣の再登場へと舵を切る事になる。
個人的には前作のダガーラの流れを引き継いで新怪獣を出してほしかったが「世紀末に宇宙から恐怖の大魔王が降りてくる」を東宝怪獣でするのなら新怪獣よりキングギドラの方が適任だよなぁ……と思ってしまったところも正直言ってある。

 

キングギドラが登場するからか『三大怪獣 地球最大の決戦』を意識したと思われるところがいくつかある。最終的にエリアス三姉妹の力が合わさって宇宙怪獣と戦う事になる展開もおそらくはゴジラ・ラドン・モスラの三大地球怪獣が力を合わせた展開が元になっていると思われる。(最終決戦にモルが不在だったりと全く同じ展開ではなかったが)

 

エリアス三姉妹の服装が作品を経るごとに豪華になっていくが、TVゲームで装備を強化していくと見た目が豪華になっていくような感じになっていたので、彼女達が経験を積んでレベルアップしているのを視覚的に示せていたと思う。

 

インファント島の遺跡がエリアス達より大きい人物が使うように作られていたが、ひょっとしたら昔のインファント島にはエリアス族以外の種族も存在していたのかな?

 

エリアスのトライアングルは「勇気」「知恵」「愛」となっている。元ネタは「論語」の「智・仁・勇」かな。因みに後に東宝が製作する超星神シリーズの『幻星神ジャスティライザー』では「智・仁・勇」の戦士が主人公となっている。

 

ガルガルはベルベラが作っているのだがインファント島の遺跡とはシステムが大分違っているように見える。ベルベラが忌み嫌っている人間の技術に近いものを感じるが、ベルベラはガルガルを作った技術をどこで手に入れたのだろうか?

 

ベルベラは前作の時点で実は面倒見が良い一面を見せていたが、本作でもキングギドラのドームでロラを見付けたらすぐに危険を告げたり、ロラがキングギドラに心を奪われた事に気付くと「モスラはどうなるんだ?」と諭したり、戦いに勝てたのにロラにとどめを刺せなかったりと、やはりお姉さんなんだなぁと感じる場面がある。

 

本作のキングギドラは子供だけを消し去ったり人間を操ったり触手を駆使したりと怪獣と言うより妖怪と言った感じになっていた。1億3千万年前の姿も足が人間っぽくなっていて妖怪みたいだった。
自分は見ていないのでイメージで語ってしまうが当時公開されていた『学校の怪談』シリーズの影響があったりしたのかな?(因みに本作の主人公・園田翔太を演じている吉澤拓真さんは『学校の怪談3』の主人公・久保田良を演じている)

 

ふと思ったのだが、「富士山麓にドームを作って人間をさらう」は『地球防衛軍』のミステリアンが元ネタだったりするのかな?

 

キングギドラが街を破壊する場面は砂煙で直接の描写は隠されているがかなり多くの犠牲者が出ている感じで驚いた。

 

これまでは「寿命が尽きる寸前だった」「生まれたばかりで未熟だった」「海での戦いが苦手だった」等とモスラが負ける理由が示されていたのだが、今回のキングギドラ戦はモスラに不利な条件が一切無くキングギドラの圧倒的な強さにモスラは敗北を喫する事となる。
本作のキングギドラはまだ子供で、今より強くないはずである1億3千万年前の時点でもモスラと正面から戦って互角以上の戦いを繰り広げる等、歴代キングギドラの中でも特に強さを感じる個体となっている。

 

キングギドラは初登場となった『三大怪獣 地球最大の決戦』でかつて金星の文明を滅ぼした事が語られていたが、本作はそれをスケールアップさせて「宇宙で何千回も起きている生物の大量絶滅の半分はギドラ族による虐殺だった」とされた。
これはキングギドラの恐ろしさを宇宙全体や太古にまで広げた秀逸な設定であった。個人的には宇宙怪獣のキングギドラは東宝特撮怪獣作品の中でも屈指の強敵であってほしいので、このくらい設定を盛っても全然構わないと思っている。
そして別の世界とは言え、そんなキングギドラを支配下に置いたX星人やキラアク星人やM宇宙ハンター星雲人の科学はやはり凄かった事を改めて感じた。

 

モルが謎の言語でモスラと会話していたが、そう言えば1961年の『モスラ』では小美人は日本人には分からない言語を使っていた。

 

モルの力を借りてとは言え、いきなり時間の壁を越えて1億3千万年前の白亜紀に飛び立ったモスラに驚いた。お前、そんな凄い能力があったのか……。

 

東宝特撮怪獣作品でタイムスリップと言えば『ゴジラvsキングギドラ』があるが、本作も白亜紀でモスラがキングギドラを攻撃したら現代のキングギドラにダメージが入ったり、現代のロラが白亜紀のモスラを援護したりとタイムスリップの理屈を考えるとおかしい場面がチラホラあった……。

 

白亜紀の恐竜達は味があって嫌いではないし、キングギドラの強大さを示す為にあえて恐竜は小さくて弱い感じにされたとも考えられるが、『ジュラシック・パーク』や『GODZILLA』を見た後だと日本の特撮の限界を感じてしまうところは正直言ってあった。

 

モスラの羽がボロボロになるのはダメージ描写として分かりやすくて良かった。

 

白亜紀にいたエリアスの祖先と思われる存在が発光していたが、ひょっとしてこれは1961年の『モスラ』の原作小説である『発光妖精とモスラ』が元ネタなのかな?

 

最終的にはキングギドラもモスラも生きていて現代に再び現れる事になる。だが、モスラは白亜紀にいた原始モスラ達が作った繭のタイムカプセルで1億3千万年間眠る事で鎧モスラにパワーアップする。
実は1億3千万年前へのタイムスリップは「キングギドラを倒す為」ではなくて「モスラをキングギドラと同じ条件にする為」の展開であったのは上手いなと思った。

 

終盤までキングギドラの強さを徹底的に描いていたので、最終決戦で鎧モスラがキングギドラを圧倒するのは凄まじいインパクトがあった。それもただ勝つのではなく、体当たりでキングギドラを押し返して地面に叩き落としたり、キングギドラの羽を切り裂いたり、これまでゴジラ達に倒されても絶命する事が稀だったキングギドラを塵にして完全に倒してしまったりと、えげつない程凄まじい攻撃力と破壊力を見せ付けた。これは東宝怪獣最強候補に挙げられるのも納得の強さであった。

 

本作はエリアス三姉妹と園田三兄妹を中心にしているが、あえて長女であるベルベラと長男である翔太ではなく妹であるモルと兄である翔太を組ませてモルに姉・ベルベラの事を理解させる展開にしている。

 

ベルベラが人間に絶望した理由や翔太が不登校になった理由は明らかにされなかったが、翔太の「長男とか長女って結構辛いんだよな。一番最初に波被るから」やモルが翔太に向かって言った「あなたは他の人が見逃してしまう事まできちんと見ている人。だから、時々無神経な世界に耐えられなくなるんです」で察せられるようになっている。
ドラマだと分かりやすい具体的な何かがあって人間に絶望したり不登校になったりする事が多いが、実際は何か一つの事例がきっかけになるよりいくつかの事例が積み重なって最終的に心が折れる方が多いと思うので、ベルベラや翔太がドロップアウトした理由を明示しないで「色々な事があったんだろうなぁ……」と観客が察する作りにしたのはなるほどとなった。

 

大仁田厚さんのインパクトもあって園田三兄妹の両親は印象に残る人物であったが、平成モスラ三部作は子供が話の中心になっているので実は劇中では意外と活躍が無かったりする。
では、いなくても良かった人物なのかと言ったらそんな事は無くて、「ちゃんと子供達を見守っている大人達」と言う両親の存在があるのと無いのとでは本作の印象はかなり違ったものになっていたと思う。
この手の内容の作品では「実は両親は子供の事を理解していなかった」と言う展開が多いのだが、本作ではそれが無くて、母親は翔太の行動を推測出来ていたし、父親も翔太が実は結構ワイルドであった事を見抜いていたし、事件が解決した後の再会シーンでも「パンチを受け止める」でちゃんと翔太と息が合っているところを見せている。
平成モスラ三部作は子供が中心の作品なので大人の汚い部分や駄目な部分が描かれる事もあったが、子供が健やかに育っていくには親を始めとする大人達の存在が大事なので、最後に子供だけでなく大人も肯定的に描いてくれたのは嬉しかった。

 

本作の主人公である翔太は小学生と言う設定だが演じている吉澤拓真さんは当時中学生であった。因みに翌年に公開された『ガメラ3 邪神<イリス>覚醒』の主人公である比良坂綾奈と守部龍成は中学生の設定になっている。
日本の怪獣作品は主要人物が小学生か大人である事が多い。日本の特撮作品はメインターゲットを幼児から中学生や高校生辺りにまで広げた方が良いと言う意見があるが、その為にはまず主要人物に中学生や高校生を入れるべきだと自分は考えていて、本作や『ガメラ3 邪神<イリス>覚醒』で主要人物が小学校低学年から中学生辺りに変わってきたのは特撮の新時代を感じたのだが、漫画やアニメと違って子役を使わなくてはいけない実写ドラマで中学生や高校生を中心にした作品は難しいところがあるのか後に続かなかったのは残念だった。

 

最後の最後にエリアス三姉妹が揃うと言う展開も分かるのだが、個人的にはエリアス三姉妹が一緒に戦う場面が欲しかったなぁ。