「海の虹に超獣が踊る ー虹超獣カイテイガガン登場ー」
『ウルトラマンA』制作第34話
1972年11月24日放送(第34話)
脚本 長坂秀佳
監督 志村広
特殊技術 高野宏一
虹超獣カイテイガガン
身長 45m
体重 3万7千t
海を汚すタンカーを次々に襲った。
口から強力な水流、針状の光線、ミサイルを撃つ。
TACの誘き寄せ作戦に引っかかり、最後はエースのメタリウム光線で倒された。
鱗は剥がれると綺麗な貝に見える。
名前の由来は「海底」かな。
物語
星司はタンカー沈没現場の近くでユウジと言う少年を発見する。
ユウジは貝殻を千枚集めると父親が帰って来ると姉に教えられていた。しかし、真実は……。
感想
サブタイトルの「海の虹」についてだが、『ウルトラシリーズサブキャラ大辞典』(東京堂出版)では油に汚染された海の事ではないかと言う解釈が紹介されている。
カイテイガガンは海が綺麗だと現れず、海が工場廃液等で汚されると現れたので、人間による海の汚染に怒った貝の怨念がヤプールの破片で超獣化したものだったのかもしれない。設定を見る限り、カイテイガガンがいた方が海にとっては良いようなのが皮肉。
父の死を信じられなかった波子は弟に「貝殻を千枚集めると父親が帰って来る」と嘘を吐いてしまう。一方、前回の「あの気球船を撃て!」の反省からか、星司は子供を騙すのは反対だとしてユウジに真実を話す。
波子は弟が友達と遊ぶ事も止めさせて最後まで嘘を貫き通そうとしたが、そんな事は不可能で、いつか真実を言わなければいけない時が来てしまう。『A』にはテーマの一つに「信じる事の難しさ」や「裏切り」等があるが、それと関係して「辛い真実を受け入れなければならない」と言うテーマもあるような気がする。
貝殻を通して死んだ父親と話をするユウジ。
カイテイガガンに殺された人間の魂がカイテイガガンの鱗(貝殻)に宿ったのだろうか? それとも「黒い蟹の呪い」のように霊界との通信機の役割があったのだろうか?
ユウジの集めた貝殻がカイテイガガンの攻略に活かされなかったのは残念。
鱗を見た瞬間に超獣と関係がある事が分かった星司。エースの能力を使ったのかな?
しかし、鱗と超獣の関係をTACに報告しなかったのは何故だろう?
「一人の子供から生きる勇気を奪ってしまう何かがあるとすれば、それは超獣よりも恐ろしいTACの敵だ」と語る竜隊長。『A』の戦いの舞台は人間の心へと移行していく。
どうやら星司にもユウジの父親と同じくヒゲがあるみたい。
生き返ったユウジにはウルトラの星が見えたと思う。
子供達にリンゴを配る星司。そこら辺に袋を捨てて良いのか? 子供、食べたリンゴを放り投げるな! ……この辺は時代の違いか。
『A』では弱い部分を持った子供にはきつく当たる子供が多く登場するが、今回は一緒に遊んだり最後に薪で火を焚いたりしていた。
人間ドラマが良かった今回の話だが、まとまりきれなかったのか、カットされて不自然になったと思われる部分がいくつかある。たとえば「カイテイガガンはいつ命名されたのか?」とか「星司はいつ父親の死をユウジに言ったのか?」等。特にユウジが父親の死を聞く瞬間はドラマ上かなり重要な部分だと思うのでちゃんと見せてほしかった。又、エースが溺れるユウジを助けなかったのも不自然だった。
本編の監督を担当した志村広さんはウルトラシリーズは今回のみの登板となっている。