帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「惑星脱出」

「惑星脱出」
『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル』第13話
2008年2月23日放送(第13話)
脚本 荒木憲一
監督 菊地雄一

 

ウルトラマン
身長 40m
体重 3万5千t
レイブラッド星人の動きを感じ取って惑星ボリスに来るがレイブラッド星人によって岩の中に封印されてしまった。その後、自分の命を削ってヴィンセント島に結界を張って怪獣が近付けないようにし、カレンにテレパシーを送り続けていた。レイにもテレパシーを送っていてレイブラッド星人への覚醒に歯止めをかけていた。
レイブラッド星人の力に覚醒したレイによって封印を解かれ、惑星ボリスから脱出しようとするスペースペンドラゴンの妨害をしたキングジョーブラックを止める為に出現。八つ裂き光輪でキングジョーブラックの左腕を切り落とし、そのまま炎に包まれる惑星ボリスへと落ちていった。
生死は不明だが、オキは「ウルトラマンは不死身です。絶対に無事ですよ」と力強く語った。

 

宇宙恐竜ゼットン
身長 60m
体重 3万t
ゴモラと戦い、さらに乱入してきたキングジョーブラックとも戦いを繰り広げた。
EXゴモラの大回転尻尾落としで大ダメージを受け、最後はEX超振動波で完全に倒された。
アタック:1300 ディフェンス:1000 スピード:900 必殺技:一兆度の火球

 

宇宙ロボットキングジョーブラック
身長 55m
体重 5万t
ゴモラゼットンの戦いに乱入した「ペダン星の暴走ロボット」。
EXゴモラの高速尻尾突きで倒された。
アタック:1400 ディフェンス:1600 スピード:400 必殺技:ペダニウムハリケーン

 

物語
遂にレイとケイト、ゴモラゼットンの最終決戦の幕が開いた。
キングジョーブラックが乱入する中、レイはレイブラッド星人の力に覚醒する!

 

感想
二機のペンドラゴンの修理が終わり、生存者はゴースタードラゴンのコンテナへと移された。あと30分で惑星ボリスが爆発するので、あと20分以内に脱出しないと間に合わない。レイを心配するボスは「自分が19分経っても戻らなかったら脱出しろ」とZAPクルーに告げてドラゴンスピーダーでレイを迎えに行く。しかし、ハルナが二機目のドラゴンスピーダーでついてきてしまう。「命令違反だ」と怒るボスだが、ハルナは「兄に聞きました。命令違反はボスの専売特許だと」と切り返す。
兄のヒロキが出てからのハルナはヒロキと絡ませる事で良い方向にキャラクターが育った。それだけに兄とのエピソードが無かったシリーズ前半はキャラクターの方向が定まっていなかったように見えた。他人を信じられなくて周りと衝突を繰り返すと言う初期の性格を兄と絡めて描けばハルナのドラマに一本の筋を通せたと思う。

 

ゴモラゼットンの最後の戦い。
ケイトの「本当の戦いはこれからだ!」の言葉と共にゴモラのダメージがそのままレイに反映されていく。怪獣の戦いを通して怪獣使い本人も苦痛を味わい、怪獣の死は怪獣使いの死を意味する。それこそが「真のレイオニクスバトル」であった。

 

そこにキングジョーブラックが乱入。
ケイトはキングジョーブラックの事を「ペダン星の暴走ロボット」と言っていた。
「暴走」と言うのがペダン星人自身の考えが暴走している事を指すのか、キングジョーブラックがペダン星の制御を離れて暴走状態になっているのかは不明。

 

ここに『初代マン』最強の怪獣ゼットンと『セブン』最強の怪獣と言われるキングジョーの夢の対決が実現。
戦いはキングジョーブラックがやや優勢。これはキングジョーブラックが元のキングジョーをカスタマイズしたもので戦闘力がアップしていた事と、ケイトのゼットンはあくまでレイの怪獣と戦う事が目的だったのでレイオニクスではないペダン星人のキングジョーブラックへの対抗策が無かったのに対し、ペダン星人はレイオニクスを滅ぼすのが目的だったので怪獣への対抗策が十分だった事が理由として考えられる。

 

レイの全身が光ってレイブラッド星人の姿レイモンに覚醒すると、レイとシンクロしているゴモラも立ち上がってEXゴモラにパワーアップする!
EXゴモラゼットンとキングジョーブラックの二体を相手にしながら圧勝すると言う驚異の強さ。展開的には平成ウルトラシリーズの定番である「最終回に登場する最強形態」に連なる流れだった。
レイモンもEXゴモラも初見ではヒーローに見えないデザイン。これもウルトラマンではないから出来る事。特にEXゴモラは黒目が無いのが結構怖い。
因みに「EX」はExtraの略で「特別な」「臨時の」「○○を脱する」と言う意味で「EXゴモラ」は「ゴモラを脱したゴモラ」となるらしい。

 

ゼットンが倒された事でシンクロしていたケイトも大ダメージを負う。
しかし、戦いの中でレイを鍛えて覚醒させると言う自分の役目は終わったとして、レイブラッド星人の後継者たる最強のレイオニクスを決める戦いにレイは勝たなければいけないと告げる。そして「必ず勝つのよ、レイモン……。私の……弟よ……」と言い残し光となって消えるのだった。
こうして見ると実はケイトの言動は全て弟レイの為のものだった事が分かる。

 

戦いを終えたレイは岩の中に封印された初代マンを復活させようとするが途中で力尽きてレイモンからレイの姿に戻る。
レイブラッド星人の力で初代マンを封印したのなら同じ力を持つ自分なら封印を解けると考えたらしい。これはウルトラシリーズでは珍しい「主人公が悪と同じ力を持つ」レイだから出来る事。
因みに他のウルトラ作品では「悪が主人公と同じ力を持つ」となっている事が多い。(殆どの作品は最初にウルトラマンがいて、そのウルトラマンを基に悪のウルトラマンが誕生している)
そう言えばレイやレイオニクスバトルの設定はウルトラシリーズより平成ライダーシリーズに近い。レイは白倉プロデューサーが掲げる仮面ライダーの三つの原則(「同族争い」「親殺し」「自己否定」)に当てはまるキャラクターだし。

 

自分は人間じゃないから一緒に行けないと言うレイだったが、
ボス「レイ! お前は今まで一人で戦ってきたつもりか? 俺達と一緒に戦い、何度も困難を乗り越えて来た」、
ハルナ「あなたは……ペンドラゴンの一員よ!」、
ボス「レイ、お前は……俺達の大切な仲間だ! 必ず連れて帰る! さぁ、行くぞ!」。
ボスとハルナの言葉にレイは皆と一緒に帰る事を選択するのだった。
ウルトラシリーズの最終回は主人公と仲間達との別れが描かれる事が多いのだが『大怪獣バトル』シリーズではレイとZAPクルーの別れが描かれる事は無かった。『メビウス』を経て人間と宇宙人が仲間として共に歩む流れが確立していったと言える。それは『セブン』等に代表される過去のパターンを脱した新たなパターンが生まれてきた事を意味していて時代の変化を感じる。
ところでこの場面の不満点を一つ挙げるなら、スペースペンドラゴンで待っていたクマノとオキがレイと再会する場面を入れてほしかった。今回はレイ&ボス&ハルナとクマノ&オキになっていたので、その3人+2人の関係を再び5人の仲間に戻す場面は必要だったと思う。

 

惑星ボリスを脱出しようとするスペースペンドラゴンをキングジョーブラックが妨害する。これは脱出モノのお約束でベタではあるが、残り時間が少ない中での最強の敵の反撃は事態を緊迫させて盛り上げる。
そこに初代マンが現れて八つ裂き光輪でキングジョーブラックの左腕を切り離すと、そのまま惑星ボリスへと落ちていく。初代マンの登場時間は短かったが、これまで引っ張ってきたのと絶体絶命の状況での登場だったのでインパクトが大きい場面となった。
本作における初代マンはこれまでのウルトラシリーズでは1話の中で果たしていたデウス・エクス・マキナの機能を1クールかけて果たしたと言える。

 

ゴースタードラゴンとスペースペンドラゴンが脱出に成功し、人工太陽が落下した惑星ボリスは炎に包まれる。
キングジョーブラックと共に惑星ボリスに残った初代マンの安否が気にされるが、オキは「ウルトラマンは……不死身です! 絶対に無事ですよ!」と力強く答える。
そして、レイも交えて皆で笑顔で地球に向けて出発するのであった。

 

「宇宙 夢とロマン」。