帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「ギンガ対ビクトリー」

「ギンガ対ビクトリー」
ウルトラマンギンガS』第2話
2014年7月22日放送(『新列伝』第56話)
脚本 中野貴雄
監督 坂本浩一

 

宇宙怪獣エレキング(SD)
身長 14cm~53m
体重 150g~2万5千t
高圧電流を帯びていて、その電磁波で周囲の磁場に影響を与える。電気を口から発したり尻尾を巻き付けて相手に送ったりして攻撃する。
ワンゼロがモンスライブしていて、地下を掘り進みながらビクトリウムを探していたが、ビクトリーのビクトリウムシュートで倒された。
戦いの後、スパークドールズはショウに回収された。

 

物語
ビクトリウムを巡る戦いが雫が丘で始まった!
ヒカルとショウはお互いの正体や目的が分からず警戒し合う事になるが、ギンガとキサラ女王はそこから一歩前に向けて考えろと忠告する。
一方、エクセラーの新たなゲームが始まろうとしていた。

 

感想
平成に入ってヒーロー作品は一つの作品に複数のヒーローが登場するようになった。
そして主人公とは別のヒーローは大抵は登場初期は主人公達と対立する事になる。
ウルトラシリーズでも『ガイア』のアグルや『メビウス』のヒカリ等は主人公であるガイアやメビウスと対立を繰り返しながら徐々に分かり合っていった。本作のビクトリーもその系譜で『ギンガS』の序盤はギンガとビクトリーの対立と和解が一つの軸となっている。

 

いきなり襲いかかってきたビクトリーに対してヒカルは戸惑いの感情をぶつける。しかし、ギンガはビクトリーとショウの拳に邪悪な心は無いとして彼らが攻撃してきた理由を考えろとヒカルに促す。
一方、ショウもギンガとヒカルの存在を訝しむが、キサラ女王にウルトラマン達の力をどのように使うのかはショウ次第であると自制を求められる。
ギンガがヒカルにアドバイスを与える一方、喋らないビクトリーに代わってキサラ女王がショウにアドバイスを与える役を担っている。
ビクトリーにはまだ意思が残っている事が後の話で明らかになるが、どうして意思表示をしないのかは謎のままである。

 

陣野隊長は窮地に陥っても諦めずに立ち向かう心を持つヒカルを中々の逸材だと評してUPGに勧誘する。
UPGはまだ出来たばかりの組織で装備も十分とは言えない、ヒカルのような若い力と共に成長しているチームであると説明する陣野隊長であったが、実はビクトリウム・キャノンと言う十分すぎる兵器を有している事が後の話で判明する。
この時点で明らかになっているUPGの主な戦力はシュナウザーなどと言った特殊装備車両。本作では日産自動車の協力を得られたので日産ベースの車両が大活躍している。

 

UPG加入を躊躇うヒカルの前にアドバイザーとしてUPGに参加している友也が現れる。
再会を喜んで抱き締めてくるヒカルに友也もまんざらでない表情で抱き締め返そうとするが、その直前にヒカルが腕を離したのでちょっとムッとしてしまうのが笑える。
友也からビクトリウムに関する謎を聞いたヒカルは冒険の匂いがすると言ってUPG加入を決断する。

 

ヒカルが後輩になったとたんに先輩ヅラするゴウキが面白い。
ゴウキは雫が丘出身で地元で怪しい事があったらすぐに後輩から情報が入ると語る。
そのゴウキと後輩のエピソードで一話作ってほしかったところ。

 

ビクトリウムとスパークドールズは波動エネルギーが同じ。この辺りの詳しい説明は行われなかったが、後にシェパードンがスパークドールズ化した理由もここにありそう。
後にビクトリウムの強力なエネルギーをエクセラーが求めている事が判明し、こんな強力なエネルギーが破壊の道具に使われたらとUPGは危機感を抱く事になるのだが、結果的にそのUPGがビクトリウムの強力なエネルギーを破壊の道具に使う事となる。

 

ショウが地上に出る時にキサラ女王は地上の世界に関する知識を授けたが、無断で地上に出たサクヤとレピには地上の世界に関する知識が無いのでちょっとした揉め事が起きてしまう。
お金と言う概念が無いのは驚きだった。ビクトリアン達はどのようにして物を入手しているのだろうか? 勝手にリンゴを持っていこうとしたと言う事は物々交換をしているわけでもないんだよな。(物々交換ならリンゴの代わりに何かを置いて行こうとするはず)

 

ショウは地上人がビクトリウムを奪っていると考えていたようだ。
空を知らない地底人が宇宙からの侵略者を想定するのはちょっと難しかったのかもしれない。
それに地上人はビクトリウムは回収していないが石炭や石油は採掘しているので、地底のエネルギーを奪っていると言うのはあながち間違いではない。

 

『ギンガ』からスパークドールズのライブサインをリードすると言うギミックが加えられたが、前作『ギンガ』ではヒカルが最初に怪獣にライブしてもその後にギンガにライブして勝利しなければならないので、最初に怪獣にライブしても勝つ事は出来ないと言う『セブン』のカプセル怪獣と同じ失敗があった。
しかし、今作『ギンガS』から登場したウルトランスはウルトラマンに怪獣の能力を付け加えると言うものなのでウルトラマンと怪獣の能力を同時に使う事が出来、リードされた怪獣をヤラレ役にしなくて済むようになった。

 

ビクトリーランサーは槍状のランサーモードの時にスパークドールズをリードするとビクトリーに変身したりウルトランス出来たりする。そして拳銃型のガンモードの時にスパークドールズをリードすると、その怪獣の力を宿したモンスシューターと言う光弾を撃ち出す事が出来る。
ヒカルが使うギンガスパークが変身用のアイテムに留まっていたのに対し、ビクトリーランサーはビクトリーに変身しなくても生身のまま戦える強力な武器となった。
スパークドールズのライブサインをリードすると言うギミックを2年続けて展開したからか、ビクトリーランサーには前年のギンガスパークには足りなかった要素が色々と付け加えられた。

 

ビクトリーの出現にも「ゲームの駒は多い方が良い」とこの頃はまだ余裕があったエクセラー。戦況をチェスの駒のように表現するのは『セブン』の「アンドロイド0指令」に登場したチブル星人をイメージした演出。
今回でエクセラーの目的が月面に眠る「偉大なるグランドマスター」の復活である事が明かされる。意外と早目の種明かしで驚いた。

 

エレキングとの戦いはウルトラTVシリーズでは実に久し振りの市街地戦。
ビルを足場にして高くジャンプするのは色々とツッコみたくなるが躍動感のある絵になっている。

 

パシフィック・リム』や『GODZILLA ゴジラ』と『ギンガS』を比べると、アメリカと日本の特撮作品の方向性の違いと言うものが見えてくる。
パシフィック・リム』や『GODZILLA ゴジラ』はCGを使って細かい部分まで描きこまれた街や怪獣を出し、それが巨大感やリアルさに繋がる半面、画面に見辛さを感じる事もある。一方の『ギンガS』ではミニチュアと着ぐるみを使っているが、これらはあまり細かい部分までの描きこみは行われず、ある程度簡略化されたものになっていて、それが巨大感やリアルさを表現しきれない一因となっているのだが、反面、画面の見やすさに繋がっているところがある。
パシフィック・リム』や『GODZILLA ゴジラ』と言ったアメリカの特撮作品は大人もターゲットにしているのでリアルさが大事となり、『ギンガS』を始めとする日本の特撮作品は幼児をターゲットにしているので、小学校入学前の子供でも脳で処理できる情報量に抑える事が必要となってくる。
これらは予算やスケジュールと言った問題やこれまで積み重ねられてきた歴史と言うのもあるので結果論にすぎないところもあるが……。
演出で言えば、『パシフィック・リム』や『GODZILLA ゴジラ』は夜間の戦闘が多くて、それがCGの粗を誤魔化す事になる半面、見辛さにも繋がったが、『ギンガS』は昼間の戦闘が多くて見やすい反面、ミニチュア感が強くなったと言うのもある。

 

エレキングの破壊活動によって負傷したヒカルを見たショウはヒカルを守る為に変身する。シチュエーション的には前回の「切り拓く力」でUPGを守る為にヒカルが再びギンガと一体化したのを思い出す。
戦いが終わった後、ヒカルはギンガに変身してビクトリーを援護した理由を「何となく。背負っているものは違うけれど目指すものは同じかもってな」と答える。
ヒカルの答えにショウは「……だと良いがな」と愛想の無い答えを返すが、ヒカルが渡したブイチョコウェハースはしっかりと貰って食べ、レピにこれは美味いと紹介している。傍から見ているとヒカルがショウ達を餌付けしているようにしか見えない。
ヒカル「俺の名前は礼堂ヒカル。お前は?」、
ショウ「俺の名はショウ」。
最初は「黒いウルトラマン」や「銀色の巨人」と呼んでいた二人が、ここでようやくお互いの名前を知る事になるのだった。

 

今回の話は中野貴雄さんのウルトラシリーズ脚本デビュー作となっている。

 

 

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