帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「ウルトラ6番目の弟」

「ウルトラ6番目の弟 ー地底超獣ギタギタンガ 地底超人アングラモン登場ー
ウルトラマンA』制作第29話
1972年10月20日放送(第29話)
脚本 長坂秀佳
監督 山際永三
特殊技術 佐川和夫

 

地底人アングラモン
身長 2m~52m
体重 180kg~4万4千t
地上人の地下水汲み上げに怒り、ギタギタンガを使って酔っ払い事故を起こす。それでも要求が受け入れられないと見るや宣戦布告して直接攻撃を開始した。
目から赤い破壊光線、口から青い金縛り光線を撃ち、胸からの光線で地割れを起こす。ただし、弱点も胸だったので、エースのハンドビームで胸を攻撃されて倒された。
名前は「アンダー・グラウンド・モンスター」を略してかな。
大蟻超獣対ウルトラ兄弟」のギロン人の着ぐるみを改造している。

 

地底超獣ギタギタンガ
身長 62m
体重 7万3千t
アルコールを多量に含む酸欠ガスが武器で、2年前から酔っ払い事故を起こしていた。
エースに投げ飛ばされて倒された。
名前の由来は「大鶴儀丹」から。因みに大鶴儀丹さんの父親である唐十郎さんは円谷プロ作品の『恐怖劇場アンバランス』の山際監督回に出演している。

 

物語
突然現れて姿を消した超獣を追う星司は梅津ダンと言う少年と出会う。
ウルトラの星が見えると言うダン。彼の父親は1年前に酔っ払い運転で死亡していたのだが……。

 

感想
ヤプールが滅亡し、夕子が月に去って、初期設定が崩壊した『A』はここから「ウルトラ6番目の弟」と言う設定を加えて新しい展開を模索する事となる。

 

夕子がいないのにオープニングで夕子の名前が歌われるのは……。
でも、2番の歌詞には「ヤプール人」、3番の歌詞には「ふたりのリング」とあるので如何ともしがたい。

 

走ってくる自動車の前を横切ってみせると言うダン。悪いがそれは勇気と言わず無謀と言う。星司が言うように自分も子供の時に似たような事をしたが、やはりこれは危ない。もし轢かれたらダンだけでなく自動車の運転手も不幸になる。

 

「決断」「断固」と言う意味の「ダン」。
「ダン」と言えば、やはりモロボシ・ダンを思い出す。梅津ダンのキャラクターは『帰マン』の次郎君がモデルと思われる。かつて薩摩次郎をモデルにモロボシ・ダンが生まれたように今度は坂田次郎をモデルに梅津ダンが生まれたのかもしれない。(「ダン」と言う名前は今回の脚本を担当した長坂さんの長男が由来のようなので実際はモロボシ・ダンとは無関係らしいが)

 

ダンの父親が自分の親父に似ていると言う星司。
そう言えばダンは初期の星司に似ている。もっとも、初期の星司はもう少し周りを見ていたが……。

 

ダンの姉である香代子はダンがギタギタンガの出現を予言してしまった為に工場をクビになってしまう。可哀相だが、さすがに居辛くなってしまうか……。
登場がやや唐突なのが残念。星司といつ会ったのだろうか? この時点で星司はダンの父親の事故とギタギタンガの関連を考えていたので調査で会ったのだろうが、その場面を入れてほしかった。

 

嘘ばかり吐いているとして虐められるダン。ただし、中には可哀相と思っている子供もいた。その子達は可哀相と思ってもただ見ているだけで助ける気は無かったようだが、ここで星司における夕子みたいな助けてくれる人がいたら、ダンも自動車の前に飛び出すなんて無謀な事はしなかったかもしれない。

 

星司はダンの父親が酔っ払い運転をしていなかった事を証明するが、ダンの「どうしてエースは助けに来てくれなかったんだ?」に対して「頑張りの心を捨ててしまったから」と答えてしまう。いくら事実とは言え、他に言い様は無かったのか?
この後、ダンは崖から落ちそうになるが諦めずに頑張ったので、諦めて死んでしまった父親を越えたと言える。

 

地上人の地下水汲み上げに抗議するアングラモン。ギタギタンガによる酔っ払い事故で地上人が地底人の訴えに気付くとは思えないが……。
ひょっとしたら、地下水汲み上げを止めなければ酔っ払い事故を起こすと政府やTAC上層部に警告したが、2年経っても要求が受け入れられなかったので直接攻撃に出たのかもしれない。因みに現場のTAC隊員は竜隊長も含めてこのような状況は一切知らされていなかったと思われる。
ところでアングラモンは地上人の事を「地球人」と言っている。そういうお前達は地球人ではないのかとツッコみたくなるが、ひょっとしたら、遠い昔に地球に飛来して、そのまま地底で暮らしていた種族だったのかもしれない。

 

2年も前から酔っ払い事故を起こしていたギタギタンガ。考えられるのは「ヤプールは数年前から地球を偵察していて、その時に利用出来そうなアングラモンにギタギタンガを与えていた」、「「青春の星 ふたりの星」で星司がTACに入隊してから既に3年経っているとの台詞があるので、ヤプール滅亡から今回まで既に2年が経過していて、アングラモンはヤプールが滅亡して野良超獣となったギタギタンガを拾っていた」と言ったところだろうか。

 

いくら弱点とは言え、パチンコ玉でメチャクチャ苦しむアングラモン。よ、弱い。
と思ったらエースとの戦いでは地割れまで起こしたりとなかなか強かった。
逆にギタギタンガが投げ技(一応は「エースリフター」と言う立派な技だが)だけで倒されてしまったのには驚いた。

 

戦闘中、エースにダンの声が響く。
夕子が分離したからか、『帰マン』のウルトラマン二世と郷秀樹のようにエースと星司の一体化が始まったように見える。

 

今まで劇中では前面に出る事が少なかったウルトラの星だが、今回の話から人間が目指すべき目標と言う意味を持つようになった。この辺りは『巨人の星』の影響もありそう。

 

ウルトラの星が見えるようになったダンだが、これは彼だけの特殊能力ではないと考えられる。実際、「決戦! エース対郷秀樹」では次郎君がウルトラの星を見ている。
何か辛い事があっても「負けるもんか!」と思う事が出来ればウルトラの星は誰にも、そう君にも見える。ダンはそういう人達の代表なのだろう。

 

「ウルトラ6番目の弟」となったダン。今は「ウルトラ5番目の弟」であるエースが地球の平和を守っているが、やがてはダンを始めとする子供達、すなわち「ウルトラ6番目の弟達」が地球の平和を守っていく事になる。ここにも世代交代、意思の引き継ぎと言う『A』のテーマがあった。

 

事件が解決して、ダンは星司の事を「兄ちゃん」と呼ぶ。同じウルトラの星が見える者として分かり合えたのだろう。しかし、ダンはその星司がエースである事までは知らなかった。

 

因みに、このブログのタイトルである「ウルトラ38番目の弟」は今回登場した「ウルトラ6番目の弟」を元に作りました。