「復活の聖剣」
『ウルトラマンオーブ』第17話
2016年10月29日放送(第17話)
脚本 小林雄次
監督 市野龍一
合体魔王獣ゼッパンドン
身長 60m
体重 4万5千t
時空の穴から現れ、今度は日本でオーブと戦う。
サンダーブレスター相手に優勢に戦うが、オーブが真の姿を取り戻した事で形勢逆転され、最後はオーブオリジンのオーブスプリームカリバーで倒された。
尻尾のマガオロチの部分にオーブカリバーが収められていた。
物語
ガイを追い詰める為にジャグラーはナオミを狙うが間一髪のところでガイが救出に入る。
そして遂にガイはナオミとナターシャの間にある運命の糸を知るのであった。
感想
第1話から張り巡らされていた様々な伏線が一つに繋がってのオーブオリジン覚醒が見事!
日本のヒーロー作品の中でも謎の解明とヒーローの復活と覚醒を上手くまとめあげた話であった。
ナオミを危険にさらしてしまったガイは「俺といると皆不幸になる」と嘆く。これは100年前のナターシャの事も含めての話なのだが、「傷付く」や「死んでしまう」ではなくて「不幸になる」と言っているので、ひょっとしたらジャグラーの事も含めての話だったのかもしれない。
ビートル隊はオーブを攻撃対象に指定し、渋川さんはジェッタとシンに向かって「何かを守るって事は何かを傷付ける覚悟を持つと言う事なんだよ」と告げる。今までオーブに複雑な気持ちを抱いていたジェッタはビートル隊の覚悟を聞いて「オーブも何かを守る為に何かを傷付けてながら戦ってきた」「正義にも光と闇の面がある」と言う事に気付く。
これまでのウルトラシリーズは主人公達が特別チームの隊員である事が殆どだったので「戦う」と言う事について主人公達が自分達で考えていたが、『オーブ』のSSPは武器を持って戦うチームではないので、そう言った事を自分達で考える機会が少なく、オーブやビートル隊と言った自分達の代わりに戦う人達を見て彼らの気持ちを考えていく事になる。
「握った手の中、愛が生まれる」。
割れたマトリョーシカの中からガイとナターシャの写真が現れて、ガイはナターシャがマガゼットンとの戦いの後も生きていて、ナオミはその子孫だった事を知る。
ウルトラシリーズのヒロインは主人公との運命的な繋がりとか一族の秘密とか言うものはあまり設定されないので、ナオミの存在そのものがオーブオリジン覚醒に繋がると言う『オーブ』の展開は後のウルトラシリーズのヒロインに新たな可能性をもたらす事となった。
マトリョーシカが割れたのはこの前にジャグラーが切りつけたから。
本人は決して認めないだろうが、ジャグラーの行動もガイの復活と覚醒に繋がっている。
空に闇が現れ、ジャグラーが来るのを知ったガイはナオミにオーブニカを託す。
「俺は必ず帰って来る。必ず……!」。
「俺はもう闇を恐れない。ナオミのくれた勇気で、闇を抱き締めてみせる!」。
三度サンダーブレスターにフュージョンアップするガイ。今度はゾフィーのカードを先にリードしている。
「光と闇の力、お借りします!」。
「闇を抱いて……光となる!」。
渋川さんが「ウルトラマンオーブ出現」と言ってゼットビートルが緊急発進するが、オーブや怪獣の出現は現地の渋川さんの報告を待たなくても基地で把握出来るはずなので、この渋川さんの「オーブ出現」と言う言葉は「ビートル隊出撃」と言う指示を含んでいたのかもしれない。
『オーブ』では渋川さん以外の特別チームの隊員は特に設定されていないのだが、それでもゼットビートルの発車シーンやオーブの攻撃について隊員の中でも葛藤がある事が描写されていたのが良かった。
「オーブ! 私信じてる! どんな姿になっても、どんなに力に溺れそうになっても、私の命を救ってくれたあなたの事をずっと信じてるから!」。
ウルトラマンのフォームチェンジについては昔から肯定派と否定派がいるけれど、今回のナオミの「どんな姿になってもオーブの事を信じている」と言う言葉はフォームチェンジで姿が変わるからこそ、それもサンダーブレスターと言うそれまでのオーブの姿とはまるで違う姿だからこそ意味があるものとなっている。
ナオミの言葉を聞いたサンダーブレスターは戦いに巻き込まれたSSPを助け、その姿をジェッタが配信した事で世間の状況が変わり、最終的にはビートル隊の攻撃目標からオーブが外される事になる。
第1話から散々だったジェッタの動画配信が遂に、しかもこんな最高な形で成功するのが実に素晴らしい。
ナオミが歌う歌はナターシャがガイから教わったもの。その歌を聴いてジャグラーは苦しむ。前回の「忘れられない場所」で自分で口笛を吹いている時は大丈夫そうだったので、曲そのものではなく、それを歌っている人の思い等が頭痛を引き起こしているのかもしれない。
「己を信じる勇気。それが力になる!」。
ナターシャ(ナオミ)の幻から受け取った真っ白なカードがオーブオリジンのカードに変わる。
「これが本当の俺だ!」。
「覚醒せよ! オーブオリジン!」。
オーブオリジンのカードをオーブリングでリードすると、ゼッパンドンのマガオロチの尻尾部分からオーブカリバーが現れ、サンダーブレスターのカラータイマーを通ってインナースペースのガイの所へ。そしてオーブカリバーを手にしたガイはウルトラマンオーブ・オーブオリジンへと変身する!
「俺の名はオーブ! ウルトラマンオーブ!」。
その姿こそ、オーブの真の姿、そしてナオミが夢で見ていた光の巨人、ウルトラマンであった!
オーブカリバーがマガオロチの尻尾部分にあったのは八岐大蛇の尻尾から「天叢雲剣(草薙剣)」が現れたのが元ネタと思われる。
マガゼットンとの戦いで消えたオーブカリバーがマガオロチの尻尾にあった理由は不明だが、ひょっとしたら当初はゼッパンドンはゼットンとパンドンではなくてマガゼットンとマガパンドンが合体する予定だったのかもしれない。それなら100年前の爆発の時にオーブカリバーとマガゼットンが混じり合って怪獣カードになり、結果、ゼッパンドンの中にオーブカリバーが紛れ込んだと考える事が出来る。
オーブカリバーが三種の神器の一つである天叢雲剣なら、オーブリングは「八尺瓊勾玉」で、ウルトラフュージョンカードは「八咫鏡」だったりするのかな。
オーブカリバーには火、水、土、風のエレメントが宿っていて、今回は土の力を持つオーブグランドカリバーが使用されている。
ウルトラシリーズでウルトラマンの能力を四大元素に分類する事はあまり無かったが、今回のオーブカリバーで遂に導入され、後に同じO-50出身のウルトラマンが登場する『R/B』でも踏襲される事になった。
ガイに敗れ、ダークリングも消滅して叫ぶジャグラー。
今回の隠されたサブタイトルは『初代マン』の最終回「さらばウルトラマン」だったが、ウルトラマンであるガイの物語は今回で一区切りを迎え、ここからはジャグラーの物語がメインとなっていく。
「君の繋いだ命は100年後の未来を生きている。ナターシャ、安心してくれ。これから先の未来も俺はずっと守り続ける。この星に命が続く限り……」。
ガイに限らずウルトラマン達は地球人と比べて長命であるが、今回はその長命を使って「大切な人の子孫とその子孫が生きる未来を守る事が出来る」とした。