帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「あの日はもう帰らない」

「あの日はもう帰らない」
ウルトラQ倶楽部』第24話
2004年3月28日放送(第24話)
脚本 千束北男
演出 飯島敏宏

 

物語
高沢誓子の創作紙人形展「思い出ほろろ」では古き良き懐かしき時代が再現されていた。
由利子はその中にいる「憎まれっ子」と題される人形を気に入る。その夜、由利子の部屋に「憎まれっ子」がやって来て……。

 

感想
平成ウルトラシリーズには失われた過去に想いを馳せる話がいくつかあって今回もその系統かと思いきや最後の最後で綺麗事ばかりの昔の風景から締め出されていた醜い一面が出てくると言う衝撃の展開が待ち構えていた。
今回の話はウルトラシリーズに限らず様々なところで見られる「昔は人が温かい良い時代だった」と言う風潮に強烈なアンチテーゼを投げかけた。『Q倶楽部』自体が「昔は良かった」的なところがあった作品だったので最終回でこういう話が出されるとは予想外であった。

 

今回は2004年1月14日前後の話となっている。
実は今回の話は制作順では第10話と言うかなり初期の頃に製作されているので当初は第2クールの序盤に放送が予定されていたのかもしれない。

 

皆の心の中にある故郷を一場面一場面掘り起こしてくれる街並み。製作者によって命を吹き込まれた「入魂」の人形達。青い月の光の世界で魅入られた向かいの女性にいつの間にか全てを支配され最後は共に命を絶つ事になった男。都会生まれの若者もどこか懐かしいと感じる世界。みんな「故郷ごっこ」が好き。その存在が隠されようとしていた「憎まれっ子」達。
劇中で紙人形について語られる部分はそのまま『Q倶楽部』ひいては全ウルトラシリーズについて語られているように聞こえる。

 

「憎まれっ子」がいなくなった街。
紙人形の子供達がいかにも楽しそうに遊び、人々はその風景に心癒される。
その奥に確かに存在するであろう醜い一面を無かった事にして……。

 

「時を刻む車。あの日はもう帰らない……」。