帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「狙われた街」

「狙われた街」
ウルトラセブン』制作第10話
1967年11月19日放送(第8話)
脚本 金城哲夫
監督 実相寺昭雄
特殊技術 大木淳

 

幻覚宇宙人メトロン星人
身長 2m~50m
体重 120kg~1万8千t
宇宙ケシの実を混ぜたタバコを使って人間を殺人鬼に変える実験を行っていた。
ウルトラセブンを宇宙に追放し、残った人類を自滅させて地球を侵略しようとしたが、ウルトラセブンアイスラッガーで真っ二つにされた後にエメリウム光線で止めを刺され、宇宙船もウルトラ警備隊によって破壊された。
名前の由来はフランス語の「メトロ(地下鉄)」から。

 

物語
北川町に関わった人間が次々と凶悪事件を起こし、その異変は遂にウルトラ警備隊にも及んだ。
不審に思ったダンは調査を開始するが……。

 

感想
宇宙囚人303」では着ぐるみのキュラソ星人を使って通り魔事件や立てこもり事件を描いたが今回は役者を使って暴行事件や発砲事件を描いているので生々しさがさらに強くなっている。
着ぐるみのキャラクターではなくて役者を使って事件を描く流れは次作『怪奇大作戦』を思わせる。

 

宇宙ケシの実の赤い結晶体によって、人間は他人が全て敵に見えてしまい、理性や感情を失った、敵を倒す殺意だけを持った存在に変わってしまう。
普通の人間がいきなり暴れ出して命を奪いに来るのはかなり怖く、これに遭遇した人間はトラウマを負って人間不信になるだろう。
又、メトロン星人北川町で実験を行っていたので、犯罪者の多くが北川町出身であるとして、世間が北川町の人間を危険視する向きもあった。今回はメトロン星人の計画が明らかになったので良いが、もし明らかになっていなかったら北川町の人間が世間からどのような仕打ちを受けたか想像するのが怖い。

 

メトロン星人は人類が互いにルールを守り信頼し合って生きている事に目を付け、人間同士の信頼感を無くすれば、人間達は互いに敵視し傷付け合い、やがて自滅すると考える。
圧倒的な武力で人間を襲う宇宙人が多い中、人間同士を争わせれば自分達はリスクを負わずに侵略が出来るとしたのは斬新な発想であった。

 

メトロン星人はダンに向かって「同じ宇宙人同士で傷付け合うのは愚かな事だ」と忠告している。どうやらメトロン星人の中では地球人は宇宙人と言う括りの中に入るレベルではないようだ。ただし、そのメトロン星人の宇宙船は恐れるに足りないと侮っていたウルトラ警備隊によって撃墜されるのだが。

 

ダンとメトロン星人が畳の部屋でちゃぶ台を挟んであぐらをかきながら地球の命運について言い争うと言うギャップが面白い。

 

「ダンが中にいる」と聞いていながらメトロン星人の宇宙船を攻撃するウルトラ警備隊にツッコミが入れられる事があるが、おそらくこれは「宇宙船の中」ではなくて「アパートの中」と解釈したのではないかと思われる。

 

ウルトラセブンメトロン星人の戦いはゴミのある工場地帯を舞台にしていながら美しい夕焼けに演出されていた。前回の「遊星より愛をこめて」でウルトラシリーズ監督デビューを果たした大木淳さんはこのような夕焼けの話が多い。

 

劇中に登場するメトロン星人は一人だけだが、メトロン星人ウルトラセブンと戦っている時に宇宙船がウルトラ警備隊と戦っているので実は仲間がいたのかもしれない。それとも、無人のトラックを動かしたように宇宙船も巨大化したメトロン星人が遠隔操作していたのだろうか?

 

当時のタバコの自動販売機はこう言うものだったのかな?

 

個人的に隊員服を着ていない時は変身シーンのバンクは使わないでほしいな。

 

今回のメトロン星人アイスラッガーで真っ二つにされた後にエメリウム光線で爆破されているが、ここでエメリウム光線で爆破されずに九死に一生を得た場合のその後が『ウルトラマンマックス』の「狙われない街」なのだと思われる。

 

メトロン星人の地球侵略計画はこうして終わったのです。人間同士の信頼感を利用するとは恐るべき宇宙人です。でも、ご安心ください。このお話は遠い遠い未来のお話なのです。え? 何故ですって? 我々人類は今、宇宙人に狙われる程、お互いを信頼してはいませんから」。
皮肉たっぷりなエンディングナレーションが実に素晴らしい。
このナレーションは好きなのだが、はっきり言って今回の話には合っていない。え? 何故ですって? 今回、アンヌ隊員の名字を漢字にしたり、野球中継を流したり、ちゃぶ台を出したりと、いつもより放送当時を意識した演出なのに遠い遠い未来のお話と言うのはおかしいですから。

 

今回の話は2023年11月に『円谷映画祭2023』Part1で『庵野秀明セレクション 4K『ウルトラセブン』』として劇場公開されている。