帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「地球星人の大地」

「地球星人の大地」
1994年10月10日放送
脚本 右田昌万
監督・特撮監督 神澤信一

 

幻覚宇宙人メトロン星人(3代目)
身長 2m~50m
体重 120kg~1万8千t
3人で地球侵略を企てた。
1人はある星でセブンのワイドショットで倒されたが、残る2人は地球への侵入に成功し巨大なマシンガンを扱う黒服の男と軽い身のこなしを誇る黒服の女に変身する。
トネザキ教授に近付き、北川市のゴミ捨て場地下にエコポリスを建造する。真の目的はミサイルで成層圏オゾン層を破壊して紫外線で人間を殺菌し自分達が新しい地球星人になる事だった。
1人はセブンのハンドショットで倒され、最後の1人も巨大化して恐竜と一緒にセブンに戦いを挑むがセブンの新技・リュウ弾ショットで倒された。
高い格闘能力を誇り、テレポーテーション能力も有する。両手からマシンガンのように光弾を発する。異常に人間を憎む。

 

恐竜
身長 41m
体重 9千8百t
ジュラ紀後期に存在した生物で獣脚亜目科に属する。北川市周辺で骨格が発見されていて、メトロン星人の科学によって蘇った。
麻酔弾も通用しなかったが、ウルトラ警備隊のコールドシールド作戦で氷漬けにされる。しかし、その夜、メトロン星人によって移動させられる。
追い詰められたメトロン星人に呼び出されて一緒にセブンと戦うが最後はエコポリスの爆発に巻き込まれてしまった。

 

物語
北川市で恐竜が発見され、その分析を託されたトネザキ教授の前に謎の男女が現れる。
一方、ウルトラ警備隊の前に姿を現す謎の風来坊の正体は……。

 

感想
TVスペシャルの2本目で今度は「体育の日」に放送された。
実現しなかったが3本目のTVスペシャルも予定されていたらしい。
この辺りから『平成セブン』の特徴である登場人物の葛藤や人類は存在すべきなのかと言う展開が組み込まれるようになった。

 

今回のナレーションは浦野光さんが担当している。懐かしい。

 

太陽エネルギー作戦」では登場しなかったモロボシ・ダンが満を持して登場!
因みに『セブン』で初めて登場した時と同じ黄色いジャンパー姿となっている。懐かしい。

 

環境破壊を訴えるレポーターのシオリとカメラマンのノグチはウルトラ警備隊が秘密にしている恐竜の謎を暴こうとあの手この手を繰り出していく。
「ウルトラ警備隊は何故恐竜を独り占めできる?」、「皆知りたいから知らせたい」と訴えるが、「恐竜によって怪我をしている人も大勢いる、もし君達が怪我でもしたら」と言うカジ隊員の忠告を「余計なお世話」で切って捨てるのは問題。それで本当に自分達が怪我をしたら警備を怠ったウルトラ警備隊に責任があるとでも言いそうな感じだし。

 

環境破壊が続いた場合の人類の行く末を考えたノグチは「泣く泣く地球を捨てて、どこか住むとこ無いかなって宇宙を彷徨ったりしてさ」と呟き、それを聞いたシオリは「未来はもっときれいになってなきゃ私達は最低の地球人だよ」と答える。
実は後の『平成セブン』の展開と重なる部分があったりする。

 

ウルトラ警備隊は竜ヶ崎湖に現れた恐竜の分析を環境生態学のトネザキ教授に依頼する。
トネザキ教授はバイオテクノロジーによるDNA操作で恐竜が現代に蘇る可能性はあるが生きていく為には環境が必要なので、見かけは恐竜でも本当は爬虫類の突然変異かもしれないと分析する。
この分析は現時点での人間の科学の限界を示していて、後にメトロン星人の科学によって恐竜そのものが蘇っていた事が判明する。
肩書きを持たない普通の恐竜がそのまま登場するのはかなり珍しく、ウルトラシリーズでは今回ぐらいである。

 

今回の話でかつて地球を支配していたが滅んでしまった恐竜と現在地球を支配している人類の行く末が重ね合わせられている。
もはや自分が生きるのに適さなくなってしまった地球に蘇って、宇宙人のメトロン星人に利用されっぱなしだった恐竜が哀れだ。人類もいつか自分達には適さなくなってしまった地球で宇宙人に利用されてしまう日が来てしまうのだろうか……。

 

トネザキ教授は地球上のあらゆる生物は環境と上手に付き合って生きていて、それが自然界全体で微妙なバランスを保っているが、その中で我々人間だけが自分達を取り巻く環境まで破壊していると語る。
文明だけが異様に巨大化して自分達の手に余るものとなっていると言うトネザキ教授の話を聞いてトーゴー隊員は確か恐竜も巨大化した自分達の体を維持できずに滅んだらしいと答える。
自然の一部でありながらその枠を超えようとしている人間への危惧は後に『ガイア』や『マックス』等でも取り上げられるウルトラシリーズの基本テーマの一つである。

 

フルハシ隊長が恐竜発見に沸く人々の中にモロボシ・ダンの姿を見かけ、続いてカジ隊員も不穏な場所で何度か怪しい風来坊を目撃して捕まえてしまう。
ダン「安心しろ。怪しい者じゃない」、
カジ「何を証拠に? 自分を証明するものは?」、
リサ「身分証明書を見せなさい!」、
ダン「俺は……ただの風来坊だ。ハッハッハ」。
怪しさ大爆発である。
本部に連行すると言うカジ隊員に対し、ダンはフルハシに今会うのはまずいと言って姿を消してしまう。ダンは『セブン』時代にフルハシを呼び捨てにした事は無いので、このやり取りは不自然だった。残念。

 

今回の舞台は北川市。
市町村の統廃合によって『セブン』の「狙われた街」に登場した北川町が市に昇格したらしい。

 

メトロン星人にエコポリスを紹介されたトネザキ教授はウルトラ警備隊に竜ヶ崎湖は生き物が住める環境ではないとの分析結果を報告する。
「もし恐竜が蘇ったとしても、この環境じゃ生きていけない。与えられた環境の中でしか生きられない。そんな純粋な生き物だってたくさんいるんだ。自分達が生き延びる為に何でもかんでも戦えばいいってものじゃない! まぁ、君達には理解できないだろうがな……」。
報告の前半ではちゃんと分析結果を述べているのだが、感情が爆発した後半はメトロン星人に吹き込まれた事を述べていて、機械や超能力を使ってはいないがトネザキ教授はメトロン星人に洗脳されたように感じる。

 

トネザキ教授に追い出されたカジ隊員とリサ隊員は大学生に変装してトネザキ教授の周辺を調査する事に。
眼鏡をかけたリサ隊員がかわいい。
太陽エネルギー作戦」の地球環境保全委員会に出席するフルハシ隊長の移動方法や今回のカジ隊員とリサ隊員の潜入調査は『セブン』のウルトラ警備隊の雰囲気が再現されていたと思う。
因みにポインターはまたもや変更になっている。

 

メトロン星人が人間を殺菌する計画を進めている事を知ったトネザキ教授がバーで悩んでいるとダンが話しかけてくる。
「教授。教授には友達がいらっしゃらないんですか? 友達がたくさんいるのは悪くない。でも、本当に理解し合える友が一人いれば、それはそれで素晴らしい。お互いに話したくない時もあるさ。そんな時は無理をして話さなくてもいい……。何も言わなくたって……」。
トネザキ教授は話しても誰も信じてはくれないだろうと語るが、ダンは教授を信頼している人は大勢いるとして話を続ける。
「僕にも大勢の地球人の友がいる。愛した人もいる……。教授にだっているはずだよ。その人達の為に悩むもいい。夢を見るのもいい。どうせ見るなら、皆のハートが温まるような夢を見たいもんだね。お互いに……」。
ダンの今までの物語を上手くまとめた名台詞。
ダンの話を聞いたトネザキ教授は再びエコポリスに向かう。

 

ダンの話を聞いたトネザキ教授はエコポリスに戻るとオゾン層を破壊したら地球の生命が滅んでしまうと語り、心の入っていないエコポリスはゴミ、我々はゴミを作ろうとしていると訴えるが、メトロン星人は人間もトネザキ教授もゴミだと答える。
メトロン星人は「ゴミ」と言う言葉は宇宙広しと言えども地球人しか使わないと言っていたが、それは嘘だったのか、それとも地球に来て「ゴミ」と言う言葉を知って、それを人間に当てはめたのだろうか?
今回のメトロン星人には地球侵略以上に人間への憎悪を感じる。

 

「人間のどこがいい? 人間は汚い。人間は醜い。人間は……」と吐き捨てるメトロン星人に向かってトネザキ教授は「人間が好きだ!」と絶叫する。
「人間の笑顔が好きだ! 人間の泣き顔も……。裏切ったり裏切られたり、無性に腹が立ったり……!! でもやっぱり……全部好きなんだ。つまんなかったり馬鹿馬鹿しいところ、そんな人間の全てが好きなんだよ!」。
いい台詞なのだが唐突すぎた。おそらくバーでのダンの話を受けての結論なのだろうが、この前にトネザキ教授と他の人間の話が殆ど無かったのが残念。トネザキ教授が裏切ったり裏切られたり無性に腹が立ったりした実体験を物語に入れておいた方が説得力があったと思う。
この後に「人間だって自然の一部なんだ。人間の心も地球にとって大切なエネルギーなんだ!」と言っているが、これもいきなり人間の心を持ち出されて正直言って戸惑ってしまう。やはりこの前に人間の心について触れておくべきだったと思う。

 

ウルトラ警備隊はシオリとノグチから地下にあるメトロン星人の秘密工場を突きとめ、さらにダンも現れてトネザキ教授とウルトラ警備隊を救い出す。
トネザキ教授がメトロン星人に抵抗した際にミサイルの起爆装置が解除されてしまい、崩壊するエコポリスの中、ダンはウルトラアイでセブンに変身すると、ハンドショットでメトロン星人の1人を倒し、更に巨大化してメトロン星人の最後の1人と恐竜との決戦に挑む。
当時はヒーローが客演しても変身シーンまで見せてくれる事は少なかったので久し振りのダンの変身は嬉しかった。

 

メトロン星人は恐竜を呼び出して1対2で戦う。
恐竜が意外と頑張るが最後はエコポリスの爆発に巻き込まれてしまう。利用されっぱなしだった恐竜が哀れだ……。

 

この直後のセブンとメトロン星人との戦闘で『セブン』の「狙われた街」の場面が再現されている。出来れば夕陽をバックにしてほしかったかな。
ミサイル基地の爆発が黒雲を呼んで太陽を隠してしまった事でセブンは苦戦を強いられるが、フルハシ隊長が操縦するウルトラホーク1号の攻撃で黒雲がかき消されて太陽エネルギーを吸収できたセブンは新技・リュウ弾ショットでメトロン星人を倒す。

 

リュウ弾ショットでメトロン星人が爆発し、地下のミサイル基地も完全に爆発してエコポリスは自滅した。しかし、その爆発の規模は大きく、セブンも巻き込まれてしまった。
セブンが消息不明になった事を聞いたトネザキ教授は自分の過ちであなたの大切な友人を失くしてしまったと謝るがフルハシ隊長はそれを否定する。
「あいつが……あいつが死ぬわけなんかありませんよ! あいつは、どこかで、きっと生きている。きっとどこかで……。そんな事より、あいつが地球の友を大勢救ったんですよ。教授、あなたが地球の友を大勢救ったんですよ!」。
思えばセブンは『セブン』に『レオ』にTVスペシャルにと最後に生死不明になる事が多い。

 

トネザキ教授は「自分達が地球を必要としているほど地球は自分達の事を必要としていないのでは」と語るが、フルハシ隊長は「自分達は地球の子供だ」と答える。
フルハシ「地球と我々はへその緒が繋がっているんですよ」、
トネザキ「地球の子ですか、私達は……」、
フルハシ「そう。反抗したり、すねをかじったり、迷惑をかけたりしても、最後はきっと「ありがとう」って感謝するでしょう? 子供達は親に」、
トネザキ「出来の悪い子ほど……、親はかわいいって言いますもんね」、
フルハシ「私達は地球に親孝行しましょう。自分達のやり方で……。時間がかかったっていいじゃないですか」。
フルハシ隊長の年季か「人間は地球の子」と言うありふれた結論もどこかしっかりと地に足付いた感じに聞こえる。やはり親子関係について実体験を感じられるからかな。
今回の話は地球を親、人間を不肖の子供と考えると、メトロン星人は自分の方が親孝行できる良い子供だとして不肖の子供を追い出して親を手に入れようとする新しい子供と言ったところかな。メトロン星人が人間を異常に憎んでいたのも親である地球のありがたさを分かっていない人間に対する苛立ちから来ていたのかもしれない。

 

本作は後にTV放送版に追加編集された完全版が発売されている。