帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「怪獣を連れた少年」

「怪獣を連れた少年 ーペット怪獣オロラーン登場ー
『ザ☆ウルトラマン』制作第40話
1980年1月16日放送(第40話)
脚本 平野靖司
絵コンテ 吉田透
演出 辻勝之 

 

平和宇宙人オペルニクス星人フェデリコ
身長 126cm
体重 28kg
名前はフェデリコで、小さい時からのオロラーンの友達。
綺麗で静かな星・オペルニクス星に住んでいたが、地球人が宇宙侵略を開始したとロイガーに騙され、自分達の生活を守る為に地球を襲う。怪我の手当てをしてくれたムツミ隊員には心を開いたが、その他の地球人を信じる事は出来なかった。
オロラーンがヘラー軍団に改造された姿を見て騙されていた事を知るが時既に遅く、最後は自分の罪を悔いり、ヒカリにオロラーンを倒してほしいと弱点を教えて息を引き取った。死後、亡骸は科学警備隊によって宇宙葬にされた。

 

ペット怪獣オロラーン
身長 103m
体重 10万3千t
小さい時からのフェデリコの友達。
口から冷凍光線を吐く。卵型に変形して移動する。
フェデリコと一緒に地球を襲うがヘラー軍団に改造されてしまった。

 

ペット怪獣オロラーン(改造)
身長 107m
体重 11万2千t
オロラーンがヘラー軍団に改造された姿。頭部に制御措置を埋め込まれてヘラー軍団の指示通りに動く。
改造前とは姿がかなり違っているが何故か皆すぐにオロラーンだと気付き、逆に改造された事にはなかなか気付かれなかった。
弱点である足の裏を攻撃されて倒される。最後は星となって消えた。

 

物語
謎の怪獣に破壊される街。出撃した科学警備隊は怪獣が街を破壊する様子を喜ぶ一人の少年を発見する。
少年フェデリコは異様に地球人を敵視していた。その理由は……。

 

感想
フェデリコはオロラーンに破壊された街を見て手を叩いて喜び、(直接描写は無いが)人を殺し、科学警備隊に向かって銃を構えている。他にもマルメ隊員に銃を向けられる場面もある等、今回はウルトラシリーズでは禁じているであろう部分に踏み込んだ描写が見られる。
自分は特に子供を神聖視しているつもりはないと思うが、それでも子供でこういう話はちょっと嫌だなぁと感じる。

 

フェデリコとオロラーンに街が破壊されるが、実は襲われる前から今回の街は結構壊れていた。今までの被害の積み重ねだろうか?
ウルトラシリーズと言えばどんなに街が破壊されても次の話になれば何もかも元通り!に近い雰囲気だったので驚いた。

 

フェデリコがオロラーンを操っていると考えたマルメ隊員は銃を構えるが結局は撃つ事が出来ず、逆にフェデリコが転ぶと「大丈夫か!?」と思わず駆け寄っている。
過激な部分と情に脆い部分が同居しているマルメ隊員らしい。
今回はムツミ隊員の主役回だったが、子供との話だったらマルメ隊員を主役にして対立から和解に繋がっていく展開にしても良かったかも。

 

不時着した宇宙船から出てきたフェデリコが怪我をしていた事に気付いたムツミ隊員は身を挺して雪崩からフェデリコを助け、信頼を得たムツミ隊員はフェデリコの怪我の治療をする事になる。ムツミ隊員が医療班出身と言う設定がようやく使われた気がする。
ムツミ隊員はフェデリコを助けた理由を尋ねられて「怪我人を助けるのは当然でしょう?」と答える。それは分かるが「それに君はそんなに悪い子には見えない」は疑問。街を破壊して大勢の人を傷付けて殺しまでしているのだが……。
その後、改造されたオロラーンがコンビナートを襲撃した時もフェデリコが裏切ったと考えるマルメ隊員に向かって「あの子は良い子よ!」と訴えるが、どうしてそこまで信じられるのか疑問。
「子供=善」と言う前提で話を展開しているのだろうが、騙されたとは言え人を傷付けても子供だから本質は善だと言うのにはさすがに首を捻る。まだ子供なので善悪の区別が付かなかったとするのなら分かるだが……。

 

ロイガーに騙されていたフェデリコ。
綺麗で静かなオペルニクス星での生活を守る為に地球を襲ったとの事だがオペルニクス星の具体的な描写が無いのでやや説得力が弱い。
又、フェデリコの家族を始め他の住民の話も無いのでフェデリコと言う一人の少年が自分達の星の平和を守る為に立ち上がると言う展開にも強引さを感じる。
ここは台詞のみで説明するのではなく絵で示してほしかった。

 

ロイガーは騙してまでフェデリコとオロラーンのコンビを利用した事から彼らを強力な戦力と捉えていた事が分かる。又、ロイガーが騙したのがフェデリコ一人だけだったので、オペルニクス星人全員が怪獣を友達としているわけではないと考えられる。
では何故フェデリコとオロラーンは友達になったのか? その出会いも含めて劇中での説明は無い。フェデリコが自分とオロラーンの事しか考えられなかった事も含めて今回の物語に必要不可欠な部分だったと思うので説明が無かったのは残念。
実は見返すとフェデリコとオロラーンの絡みが意外と少ない。
まだ平和だった時の彼らの描写があればフェデリコが地球を襲った理由に説得力を持たせられたし後の悲劇もより引き立ったと思う。

 

ヘラー軍団に改造されたオロラーンは暴れ、フェデリコは重傷を負ってしまう。
騙された自分が悪かったと罪を悔いるが、改造されたオロラーンが苦しそうだから倒してほしいと訴える等、その言葉はあくまで自分とオロラーンに向けられていた。結局、彼は最後まで自分とオロラーンの事しか考えられず、被害者の事を考える事は出来なかった。
因みに改造されて暴れるオロラーンを見てフェデリコはオロラーンはあんな悪い事をする奴じゃないと訴えるが、冒頭で自分がオロラーンに行わせたのと全く同じだった事には気付かなかったようだ。

 

フェデリコの訴えを聞いたヒカリはジョーニアスに変身。夕焼けの戦闘場面が物悲しい展開に似合う。ただこれまでヒカリとフェデリコの話が無かったので最後に唐突に差し込まれた感じがする。
ムツミ隊員ではフェデリコを救えなかった事を考えると、ムツミ隊員とフェデリコの話をヒカリとフェデリコの話に変え、ヒカリとジョーニアスの関係をフェデリコとオロラーンの関係と対比させる等した方が話がまとまった気がする。

 

騙されていたとは言えオロラーンに街を破壊させ、その光景を手を叩いて喜んでいたフェデリコ。オロラーンに対しては種族を超えた絆を見せながら地球人には不信と憎悪を露わにしていた。
自分達の事しか考えられなかった結果が今回のフェデリコ自身の悲劇を招いたと言える。

 

今回は「子供が死んで悲しい話」をしたかったのは分かるが、その話を成り立たせるのに必要な細かい配慮が欠けていた気がする。

 

最後、フェデリコの亡骸は科学警備隊によって宇宙葬とされた。
「ただいまより、オペルニクス星フェデリコ少年の宇宙葬を取り行う。彼は侵略者ヘラー軍団の手により、唯一の友・オロラーンを失い、悲しみの中で、その短い生涯を絶った。我々はこの少年の怒りを受け継ぎ、宇宙平和の為、ヘラー軍団の野望を砕く事をここに誓う!」。

 

 

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