「ウルトラの星へ!! 完結編 ー平和への勝利ー」
『ザ☆ウルトラマン』制作第50話
1980年3月26日放送(第50話)
脚本 吉川惣司
絵コンテ 斧谷稔
演出 関田修
処刑怪獣マクダター
身長 153m
体重 13万9千t
捕らえた科学警備隊を処刑する為に送り込まれた怪獣。
ジョーニアス、エレク、ロトの3人によって倒される。
物語
ジョーニアスに頼って自分達の戦いを放棄していた事に気付いた科学警備隊は最後の決戦に決意を新たにする。
そして戦いが終わった後、戦士達が得たものとは……。
感想
「ウルトラの星へ!! 第3部 ーU艦隊大激戦ー」の続き。
『ザ☆ウル』最終回。
全く異なる環境で生きてきた地球人とウルトラマンが一心同体となって一つの事に立ち向かう。色々なドラマが展開できそうな設定でありながら多くのウルトラシリーズはその部分にあまり足を踏み入れていなかった。
その未知なる領域に踏み込み、新たな世界を切り拓いていった『ザ☆ウル』。1年に及ぶ物語の果てにヒカリとジョーニアスが出した答えとは?
大賢者が原子単位で分解されても姿を現さないジョーニアスにさすがのヘラーも疑問。そこに宇宙空間でヘラー軍団の艦隊相手に戦うジョーニアスの姿が映し出され、ヘラーを含めた全員が驚く。
このヒカリとジョーニアスが別々に行動するのは過去に何度か描かれているので不自然さは無い。
他の作品に比べてウルトラの星関連の話が多くて伏線等をきっちりと張る事が出来たのが『ザ☆ウル』終盤の成功の理由と言える。
皆が驚く中、ゴンドウキャップはいち早く自分を取り戻して皆に脱出を指示する。
一時的に逃げられた科学警備隊はヒカリがジョーニアスだと思っていたと胸の内を明かし、それを聞いたゴンドウキャップが叫ぶ。
「そんな事は問題じゃあない! 俺達は心の隅でウルトラマンに頼っていた。どんな時でも救ってくれるだろうとな。その甘い考えが大賢者を死なせる事になった!」。
その言葉に皆は大切な何かに気付く。
ムツミ「そうだわ、もっと私達に出来る事があったのかもしれない」、
ゴンドウ「今こそ自分自身の戦いだ!」。
そして再び戦いに身を投じる決意をした科学警備隊は別れてそれぞれ戦う事に。
トベ「隊長! お世話になりました!」、
ゴンドウ「これが最後かもしれんな」、
ムツミ「さよなら、皆!」、
マルメ「元気でな」、
ヒカリ「さようなら、ムツミ隊員。さようなら、皆」。
まさかウルトラシリーズで最後に白兵戦が行われるとは思わなかった。
アミアは大賢者を殺害したヘラーを「あなたは悪魔よ」と糾弾する。
ヘラー「大賢者はウルトラの長老と言うだけでもなく、宇宙の歴史そのものだ。彼の価値は量り難い」、
アミア「それなら何故殺したの? 何故あんな恐ろしい事を!」、
ヘラー「殺す? 私がそんな馬鹿な真似をすると思うかね? フフフ。確かに彼は分解した。だが、彼の原子配列方法はきちんと記録されている。ウルトラ人の切り札である彼を何度でも利用させてもらう」。
ある意味、殺害よりも恐ろしい……。
ヘラーはウルトラマインドで永遠の命を手に入れ、さらに他者の生殺与奪の権利も手に入れると、まさしく神に等しい力を手にしている。
ところでヘラーの話によると大賢者の存在は宇宙の歴史そのものらしいが、ウルトリアの事をよく知らなかったりと、そこまで大層な存在にはさすがに見えなかったのだが……。
マルメ隊員は武器庫、トベ隊員は通信網、ムツミ隊員は移動装置を破壊していくが奮戦空しく最後は捕まってしまう。
そんな中、ヒカリとゴンドウキャップは防衛タワーを襲撃。一方、宇宙でヘラー軍団の艦隊相手に戦っていたジョーニアスはエレクに後を託してU40へ戻る。そしてヒカリは防衛タワーの破壊に成功するが、爆発の衝撃で外に投げ出されてしまう。
一方、ヘラーは捕らえた科学警備隊を処刑しようと、十字架に捕らえた科学警備隊の前に処刑怪獣マクダターを送る。
ジョーニアスを警戒するヘラーは宇宙空間にいた艦隊もヘラーシティに呼び寄せ、全ての注意を宇宙に向けるが、実はジョーニアスはヒカリが防衛タワーから投げ出された時に再合体していたのだった。意識を取り戻したヒカリは最後のウルトラチェンジでジョーニアスに変身する。
マルメ「ヒカリ! やっぱりお前は……」、
ムツミ「ウルトラマン!」、
ヘラー「こんなバカな!」。
予想外の展開にヘラーは驚き、科学警備隊はヒカリの生存に喜ぶ。
常に油断せず、慎重に策を展開していったヘラーだったが、最後はヒカリとジョーニアスの関係に敗れ去った。
ジョーニアスとマクダターが戦う中、捕らわれていた科学警備隊もピグとウルックによって助け出される。
そしてエレクとロトが救援に駆け付け、ジョーニアス、エレク、ロトの3人はマクダターを撃破するのであった。
ヘラー軍団も遂に壊滅。
アミア「諦めなさい、ヘラー! ジョーニアスがいる限り、あなたは勝てないのよ!」、
ヘラー「……かもしれん。だがウルトラマインドと大賢者を持つ限り負ける事は無い。脱出だ!」。
そしてヘラーはヘラーシティそのものを浮上させるが、ウルトラ戦士達によって次々と破壊されていく。
昭和のウルトラシリーズは最終回は主人公周りの人間ドラマに焦点を当てる事が多いが、今回はヒカリのドラマの他にU40とヘラー軍団によるウルトラ戦争と言うスケールの大きい話が並行していて、後の平成ウルトラシリーズを思わせる話になっている。
ヘラーシティを破壊されたヘラーは遂に逆上してパンサーにアミアを殺害させようとするが、そこに巨大化したジョーニアスが現れ、ヘラーとパンサーを倒してアミアを救出する。
アミア「ジョーニアス、私は大丈夫。ウルトラマインドを取り返して!」。
おいおい、アミア、久し振りに兄さんと会話したかと思ったら呼び捨てかい?
アミアはヘラーから取り戻した大賢者の原子配列方法が記録されているカードを復元システムに入れて大賢者を復活させ、テレポーテーションで一緒に脱出する。
崩壊するヘラーシティの中、爆発に巻き込まれたヘラーは恐怖の絶叫を上げながら炎の中に消えた。
ロイガーの時もそうだったが、ヘラーも最後はジョーニアスやヒカリと直接対決してほしかった。
ヘラーはウルトラマインドの力をウルトラ化ではなく永遠の命に転化したが、最後は永遠の命を捨ててウルトラ化してジョーニアスとウルトラマン対ウルトラマンの戦いをしてほしかった。
崩壊したヘラーシティの中、ヒカリが目を覚ますと仲間達が見守っていた。
アミア「勝ったのよ、ヒカリ」、
大賢者「君が奪い返してくれたのはU40の未来。ウルトラマインドの力で宇宙に散らばった一族の命も蘇るだろう」。
光り輝くウルトラマインド。大賢者は勝利と永遠の平和を宣言する。
大賢者「我々は忘れまい。地球から来てくれた勇者達の名を! ジョーニアスと共に戦ったヒカリの名を!」。
今までジョーニアスとの関係を明かせず苦悩してきたヒカリが遂に報われた瞬間。
ヒカリから分離した光、ジョーニアスの人間態が遂に姿を見せる。
「お兄様!」とアミアがいきなり呼び捨てから「お兄様」に戻っているのがちょっと笑える。
そしてヒカリとジョーニアスの対面の時が来る。
ヒカリ「ジョ、ジョーニアス……。あなたが……」、
ジョーニアス「こうして君と会うのはこれが初めてだな……」。
固い握手を交わす二人。
ヒカリ「そして……、こ、これがお別れだなんて……」、
ジョーニアス「いや、私はもう一度地球へ行こう」、
ヒカリ「え?」、
ジョーニアス「君と共に過ごした地球がその後無事かどうかこの目で確かめたいのだ」、
アミア「ヒカリ、私も行くわ」、
ヒカリ「ありがとう。ジョーニアス、アミア」。
そしてジョーニアスとアミアはヒカリ達と一緒に地球へ。ヘラー軍団が滅びて地球には既に平和が戻っていた。
ジョーニアス「美しい……。こんなに美しい地球を見たのは初めてだ……。皆さん、これで私は安心してお別れできます」。
この手の作品では「またいつの日か」で終わって、その後については曖昧にして視聴者の想像に任せるのが多い中、平和が戻った地球をジョーニアスが見に来る場面が入れられたのに驚く。他の作品とは違う独立した世界を舞台にしたからこそ出来た結末と言える。
ただ、地球が舞台となった最後の話である「ウルトラの星へ!! 第1部 ー女戦士の情報ー」での地球人の身勝手振りを見ていると地球の未来に不安が残る。アキヤマ前キャップの登場は難しくても、もっと桜田長官が頑張って皆の考えを変えさせるとか、地球人の自己中心的な考えが変わる場面を入れておいてほしかった。
別れの時。ジョーニアスはヒカリに今まで正体を隠していた理由を問う。
ジョーニアス「ヒカリ、私達の事を何故最後まで隠さねばならなかったか、分かってくれただろうね」、
ヒカリ「はい! 誰もが自分の力を信じて戦うべきだから、誰にも頼ってはならないからです」、
ジョーニアス「そう。それこそが平和を守る力だ」。
思うに、ジョーニアスは最初から自分が去った後の事まで考えていたのだろう。
永遠に続く関係ではなくて別れが来る事を前提とした関係だったと考えてジョーニアスのこれまでの言動を振り返ると初見時とは違ったものが見えてきそうだ。
アミア「ヒカリ……」、
ヒカリ「アミア……」、
アミア「さようなら皆さん、ムツミさん」、
ムツミ「アミアさん、好きだったのね。……ヒカリ隊員」。
しかし、アミアはそれには答えず、最後まで気丈な笑みを見せる。
ヒカリ「ジョーニアス、これで最後ですか? 僕らはもう永久に会えないんですか?」、
ジョーニアス「いや、宇宙に危機が訪れた時、私は再び戻って来るだろう。そして誰か優れた若者の体を借りる事になるだろう」。
そしてジョーニアスとアミアは人間態からウルトラ戦士に変身。
皆に見守られる中、地球を去ってウルトラの星U40へと帰るのであった。
ヒカリのジョーニアスへの最後の言葉からエンディング曲がかかる演出が見事。物語を締め括った。
「危機が訪れた時、ウルトラマンジョーニアスは再び戻ると約束した。その時、彼と一体となって平和の為に戦うのは誰だろうか? そう、あるいは、それは君かもしれない」。
今回の話は吉川さんのウルトラシリーズ脚本最終作となっている。