帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「戦いの子」

「戦いの子」
ウルトラマンジード』第15話
2017年10月14日放送(第15話)
脚本 根元歳三
監督 市野龍一

 

宇宙怪人ゼラン星人
身長 170cm
体重 60kg
数年前、体調を崩して苦しんでいるところをモアに助けられた。
ゼナが探していたが犯罪者だったかどうかは不明。
この一件がモアのAIB参加へと繋がった。

 

宇宙ゲリラシャドー星人クルト
身長 2m
体重 70kg
シャドー星の再興を掲げるがゼナの協力が得られないと知りゼガンを使っての強行策に出る。
ゼガンと一体化する事で命を縮め、最後はマグニフィセントのアレイジングジードバリアとゼロビヨンドのビヨンドディフェンサーでゼガントビームを返されて消滅。ゼガンの召喚装置だけが残った。

 

時空破壊神ゼガン
身長 58m
体重 4万7千t
シャドー星人の最終兵器だったがゼナがAIBに配属された時に異次元空間に封印された。
ゼガントビームで時空の歪みを作って物質を転送させるが、マグニフィセントのアレイジングジードバリアとゼロビヨンドのビヨンドディフェンサーでゼガントビームを返されて消滅。召喚装置だけが残った。

 

物語
行方が分からなくなったクルトとモアを探す事になり、ゼナとゼロはクルトを、リクとライハはモアの行方を追う。
一方、ゼガンが作った時空の歪みで吹き飛ばされたクルトとモアは同じ場所にいて……。

 

感想
ニュージェネレーションシリーズには過去の作品では侵略者だったが現在の作品では地球に友好的になった宇宙人が多く登場している。「良い宇宙人が増えた」と言われる事もあるが、ちょっと違うと自分は思う。
『ギンガS』の「君に会うために」に登場したジェイス、『オーブ』の「ニセモノのブルース」に登場したババリュー、『ジード』の「星人を追う仕事」に登場したトリィ=ティプには「侵略組織に所属していて、自身も侵略活動に関わっていたが、侵略活動の中であるものと出会い、それが原因で侵略組織から逃げ出した」と言う共通点がある。つまり、「良い宇宙人になった」と言うより「侵略活動以外の生き方を見付けた為に侵略活動を続けられなくなった」と言った方が正しい。
実際、ジェイスは人間を凶暴化させる宇宙ケミカルライトを開発したし、ババリューは破壊活動をする予定だったし、トリィ=ティプも生物兵器エレキングを育てていた。彼ら彼女は「良い宇宙人」と言うより侵略者として「脱落者」であり「逃亡者」であるのだ。

 

ジード』ではシャドー星人のゼナが地球人側のメンバーで出ているが、上に挙げたジェイス達とは違う点がある。それは所属組織であるシャドー星は既に壊滅状態になっている事である。
オメガ・アーマゲドン(超宇宙最終戦争)中にベリアル軍によってシャドー星は壊滅状態になり、その後、ゼナはクライシス・インパクト後の宇宙に秩序を取り戻す為に結成された組織AIBに所属する事になる。つまり、ゼナは「脱落者」でも「逃亡者」でもなく、自分の所属する組織が無くなったので新たな組織に所属する事になったのである。
そう考えるとゼナはジェイス達とは違って考え方が変わったので所属する組織が変わったと言うわけではないので、ゼロがゼナを信用しきれなかったのも分かる。

 

シャドー星壊滅後、ゼナはAIBでクライシス・インパクト後の宇宙に秩序を取り戻す事を新たな仕事とする。
ゼナによると昔のAIBは価値観の違う者達が一緒にいるので問題も多かったがモアが加入してから段々と変わってきたとの事。ゼナはモアが来てからAIBが変わった理由を「分からない」としているが、モアと言う存在がAIBには必要だと言う事は認めている。それはつまり、宇宙に秩序を取り戻すにはモアのような存在が必要であると言う事。ゼナはまだその辺りを頭の中で上手く整理できていないようだが、こう言う考えに至った時点でゼナ自身もモアと出会って変わってきている事が分かる。
メトロン星人やシャドー星人と言った過去の作品では侵略者だったが現在の作品では立ち位置が変わった宇宙人が多く登場するようになったが、ジェイスやゼナと言った彼らは「良い宇宙人になった」のではなく「新しい生き方・考え方を得た」と言った方が正しいと自分は思う。

 

ゼナがAIBで生きる事を決めたのは自身が生きる事がシャドー星の為であると考えるようになったから。それはつまり「シャドー星は既に滅んだ」と言う事を受け入れていると言う事になる。一方のクルトはそれを受け入れる事が出来なかった。『ジード』の劇中に登場したシャドー星人はわずか4人。この状態では星の再興は不可能であるのにクルトはシャドー星の再興を掲げる。
実はこのクルトと似た人物が伏井出ケイである。オメガ・アーマゲドン(超宇宙最終戦争)が終了してベリアル軍は異次元に眠っているベリアルと伏井出ケイの二人だけとなった。それでも伏井出ケイはベリアルの復活を掲げる。
伏井出ケイの場合はベリアルも復活を望んでいたので、最終的にベリアルの復活を成功させた伏井出ケイは「これ以上の喜びは無い」と言える事が出来た。しかし、結果としてベリアル軍はその戦いで完全に壊滅する事になる。一方、クルトの場合はゼナがシャドー星の再興を望んでいなかったので、自身の望みが叶わない事を知りながら命を落とす事となった。しかし、ゼナが生き続けた事でシャドー星人は滅びず続いていく事が出来た。どちらが良かったのかは当事者以外には判断できない事なのかもしれない。

 

クルトが考え方を変える事が出来なかったのはゼナの教育の結果とも言える。ゼナとクルトは血は繋がっていないが両者の関係は「親の教えによって子供の人生が縛られた」と見る事も出来る。
因みに本作にはベリアルとリクと言う血の繋がった親子が登場しているが、こちらはベリアルがこれまでリクの人生に直接干渉していなかったせいか、リクはベリアルの教えに縛られる事無く自分の人生を歩む事となった。
そしてゼロはセブンと言う血の繋がった親子関係の他、師匠のレオと言う血は繋がっていないが師弟と言う親子に近い関係も持っている。その為、ゼロはジードの事を気に掛け、今回の話ではこれまで緊張感のあった相手であるゼナの事も気に掛けるようになった。

 

ゼナからクルトの話を聞いたゼロは「師匠に教え子か……。きっと好きだったんだろうな、あんたの事を」と告げる。
明言はしていないが、ここで自分の師匠であるレオの事を考えたのは確かであろう。『列伝』等ではレオを紹介する時にゼロがレオの事をどう思っているのかも分かるところがあるのだが、本編で師匠のレオについてゼロがどう思っているのか分かる発言をするのは貴重。

 

昔のモアが助けた宇宙人はゼラン星人であった。
ここで『帰マン』の「怪獣使いと少年」によって「必ず助けた方が良い」と言うイメージがあるメイツ星人ではなくて、同じ『帰マン』の「悪魔と天使の間に…」によって「助けない方が良い」と言うイメージがあるゼラン星人を出したのが上手かった。

 

事件解決後、ペガが黙って上を見る場面がある。
世界が違うのでペガとは直接関係は無いのだが『平成セブン』の「ダーク・サイド」と言う話でペガッサ星人も今回のシャドー星人と同じように生き残った者達が考えの違いから対立している。

 

ゼロ「モアは?」、
ゼナ「……」、
ゼロ「あんたは? 大丈夫なのか?」、
ゼナ「彼女が来てからAIBは変わった。何故かは分からない。だが、我々には愛崎モアが必要だ」、
ゼロ「それを」、
レイト「そのまま本人に伝えてあげたら良いんじゃないですか」。
ウルトラマンやシャドー星人に比べて非力な地球人であるレイトが最後にゼナに助言をする。これこそ、モアも持っている地球人の素晴らしい「何か」であるのだろう。

 

「カム・タタール・シャドー(シャドーに永久の安らぎを)」。

 

 

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