「ニセモノのブルース」
『ウルトラマンオーブ』第9話
2016年9月3日放送(第9話)
脚本 中野貴雄
監督 冨田卓
地底怪獣テレスドン
身長 60m
体重 4万t
突然地底から現れた野良怪獣。
口から熱線を吐く。
ニセオーブに撃退されて地底に逃げ帰った。
宇宙凶険怪獣ケルビム
身長 44m
体重 4万4千t
ジャグラーがケルビムの怪獣カードをダークリングでリードして実体化させた怪獣。
ノストラの命令に背いたニセオーブを倒して正体を暴くが、続いて登場した本物のオーブに倒された。
ニセウルトラマンオーブ
身長 50m
体重 5万t
ババリューが変身した姿。
姿形はオーブにそっくりだが格闘能力は低く光線技も使えない。
エネルギーが残り少なくなったり大きなダメージを負うと変身が解けてしまう。
暗黒星人ババルウ星人ババリュー
身長 2m~56m
体重 140kg~2万8千t
「惑星侵略連合」の一員で変幻自在の能力でオーブに変身する。
ニセオーブから元に戻ったところをジェッタに見付かり、咄嗟に人間に変身して「馬場竜次」と名乗った。
ジェッタや子供達と関わる中で少しずつ考え方が変わっていき、最後は子供達を守る為に惑星侵略連合と戦った。
戦いの中で正体がバレ、最後はジェッタと子供達に見送られて姿を消した。
暗殺宇宙人ナックル星人ナグス
身長 2m~43m
体重 100kg~2万t
計画の途中で宇宙船に帰って来たババリューに声を掛けた。
幻覚宇宙人メトロン星人タルデ
身長 2m~50m
体重 120kg~1万8千t
宇宙船でノストラの新たな計画を聞いていた。
悪質宇宙人メフィラス星人ノストラ
身長 2m~60m
体重 40t~2万t
オーブの強さは「人間達との絆の強さ」で、人々の希望がオーブに力を与えていると分析し、オーブと人間の絆を壊す為にニセオーブを差し向ける。
普段は落ち着いているが計画が自分の思い通りに進まないと激昂する。
ババリューが自分の命令に背くとジャグラーに処刑を命じた。
物語
「惑星侵略連合」はオーブと人間の絆を壊す為にババルウ星人ババリューが変身するニセオーブを地上に差し向ける。
街を破壊しようとするニセオーブだったが突然現れた怪獣と戦った事で結果的に街の人々を救う事になってしまい……。
感想
ナオミをモデルにした人工知能を作るシン。相変わらず凄い事をサラッとやってのける人である。
今回の隠されたサブタイトルは『Q』の「宇宙指令M774」。
「宇宙指令M774」は『Q』では「キール星の侵略から地球を守る為にルパーツ星人ゼミを派遣する」と言う内容だったが今回は「ニセオーブを使って本物のオーブと人間の信頼関係を壊す」となっている。
自分としては隠されたサブタイトルはあくまで「遊び」に留めてほしいので、オリジナルにあった指令内容を変えるまではしてほしくなかった。
ニセオーブの前にテレスドンがいきなり現れた事で惑星侵略連合の計画は大きく狂ってしまう事に。このテレスドンの正体は不明。ノストラにも想定外で、ニセオーブは「野良怪獣」と言っていた。
ニセオーブが出撃する前の惑星侵略連合の宇宙船の場面でジャグラーがちょっと不満そうな表情を見せていたので、ひょっとしたら、ジャグラーが惑星侵略連合の計画を潰す為に怪獣カードを使ってテレスドンを出現させたのかもしれない。
「オーブの正体は秘密」と約束していながらあっと言う間にガイや子供達に喋ってしまうジェッタ。
ジェッタはガイがオーブの正体ではないかと疑っていたが、他にも馬場先輩や渋川さんもオーブの正体候補に入ったので、ガイがオーブであると知るのは随分後の事となったのだが、今回の話を見るとジェッタにすぐにバレなくて良かったと思う。
ジェッタの父親役は『平成セブン』でカザモリを演じた山崎勝之さん。
今回のジェッタは「ヒーローに憧れる一般人」であるが、子供達が馬場先輩に質問する場面では「ヒーローショーにいる喋れないヒーローの代わりに子供達の質問に答える司会のお兄さんお姉さん」のような感じであった。
今回はヒーローと子供達が一緒に遊んだり子供達が描いた絵が登場したりとウルトラマンフェスティバルのようなヒーローのイベントを思わせる場面が多かった。
「たとえ地味で目立たない事でも誰かの為に頑張るのがヒーロー」、
「ヒーローは風のように現れ、風のように去っていく」、
「ヒーローなんて案外、その辺にいるんじゃないのか?」。
脚本の中野さんは「パロディとかパチモンばかり作ってきた自分がウルトラマンと言う「本物」を作っている違和感をずっと拭えなかった」とし、そこから「本物のウルトラマンとは何だろう?」となり、「僕の考える気恥ずかしいヒーロー観を目一杯盛り込んだ」との事。
宇宙人や怪獣が再登場した時に以前とは違うキャラクターになっている事は昔からある。『T』に登場したメフィラス星人や『80』に登場したバルタン星人や『ギンガ』に登場したバルキー星人等がそうであるが、彼らと今回登場したババルウ星人はちょっと違う。
『T』のメフィラス星人も『80』のバルタン星人も『ギンガ』のバルキー星人も過去のイメージを壊す為にあえて違うキャラクターになったわけではない。しかし、今回のババルウ星人は『レオ』や『メビウス』にあった「悪の宇宙人」と言うイメージを使い、それをあえて壊す事で新たなキャラクターを作り出した。
この「これまであったイメージをあえて壊す」と言うのはこの後も「地図にないカフェ」のブラック店長、『ジード』のシャドー星人、『タイガ』の「地球の友人」のゴース星人等と続いていき、ニュージェネレーションシリーズの一つの定番となっていった。
「ドン・ノストラ。あなたのやり方は人間の心の善悪を問う昔ながらのやり方です。時代はもっと進んでいるんです」とジャグラーに告げられる惑星侵略連合。
物理的ではなく精神的な支配を考えた『初代マン』の「禁じられた言葉」のメフィラス星人、人間同士の信頼関係を壊して人間を自滅させようとした『セブン』の「狙われた街」のメトロン星人、ウルトラマンの身内を狙った『帰マン』の「ウルトラマン夕陽に死す」「ウルトラの星光る時」のナックル星人、ウルトラマン同士の信頼関係を壊して同士討ちさせようとした『レオ』の「決闘! レオ兄弟対ウルトラ兄弟」「レオ兄弟 ウルトラ兄弟 勝利の時」のババルウ星人とそれぞれ今まで無かった新しい展開を作り出した宇宙人達なのだが、それらが新キャラクターのジャグラーに「時代遅れ」と言われてしまうのは半世紀に及ぶウルトラシリーズの時の流れを感じてしまう。
さて、ジャグラーは惑星侵略連合のやり方を古いとしたが、それではニュージェネレーションシリーズは新しいものを作り出せたのかとなると、予算や人気の関係で新しいキャラをあまり多く出せないと言う問題が立ちはだかってしまう。新しい着ぐるみの数は増えていっているのだが、そのうちの何体かは新キャラではなく歴代キャラの復活に充てられるので、新しいものを作り出そうとしてもどうしても昔のイメージが付いてきてしまう。
そこでなのか、ニュージェネレーションシリーズは新キャラを出す一方で歴代キャラを従来のイメージとは変えて出すようになった。それらが上にも挙げたブラック店長やシャドー星人やゴース星人等であり、その究極のものとしてM78星雲光の国の出身でありながら従来のウルトラマンのイメージをことごとく壊した『タイガ』のウルトラマントレギアであった。