帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「わたしは地球人」

「わたしは地球人」
ウルトラセブン1999 最終章6部作』第6話
1999年12月31日発売
脚本 武上純希
監督 神澤信一
特撮監督 満留浩昌

 

Dedicated in loving memory to Captain Kiriyama

 

地球原人ノンマルト
身長 160cm
体重 43kg
中国奥地から発見された文明遺跡に関係して姿を現した。
一時的に人間の意識を奪う。念動力を使う。瞬間移動が可能。
自分達こそ地球の先住民だと宣言。今の地球人を残虐な侵略者と断じ、自分達には地球に戻る権利があると語る。
セブンに地球人の侵略の証拠であるオメガファイルの開示を求めるが、途中で可能性が薄いと判断し、ザバンギを使って自ら地球人に要求した。
最後はダンの説得を無視して地球人を滅ぼそうとするが、ザバンギがセブンに倒されたのを見て、セブンに呪いの言葉を残して姿を消した。

 

守護神獣ザバンギ
身長 59m
体重 8万6千t
謎の女が地球人にオメガファイルを開示させる為に送り込んだ怪獣。
全身を燃え上がらせて口から火炎を発する。
ウインダムとミクラスを倒してセブンも追い詰めるが最後はアイスラッガーで喉を切られて絶命した。
1万年に及ぶ怨念を持ち、戦闘時には額と胸にノンマルトの紋章が浮かぶ。フルハシ参謀が見たノンマルトの文明にはザバンギを象った絵が至る所に記されていた。

 

カプセル怪獣ウインダム
身長 ミクロ~40m
体重 0~2万3千t
ザバンギの侵攻を止める為にミクラスと共に出現する。
額からレーザーショットを撃つが、ザバンギの尻尾攻撃を受けて口から泡を出して倒れる。最後の力を振り絞って立ち上がるとザバンギの炎から電波研究所を守った。戦いの後、無事にカプセルに戻された。

 

カプセル怪獣ミクラス
身長 ミクロ~40m
体重 0~2万t
ザバンギの侵攻を止める為にウインダムと共に出現する。
怪力を駆使して戦うが角を折られて倒れる。戦いの後、無事にカプセルに戻された。

 

物語
カザモリの前に謎の女性が現れ、オメガファイルに封印されたオーパーツを開放するよう求める。しかし、それを阻止せんとする地球防衛軍は遂にセブンの処刑をも視野に入れる。

 

感想
20世紀最後の『平成セブン』。そしてダンの『平成セブン』最後の話。
90年代末期らしい終末感のある内容で、メイキングで語られた「出口が閉ざされた物語」は本作の内容を的確に言い表している。

 

中国奥地の遺跡から謎の紋章と怪獣の絵を持つ石版と石棺が発見され、地層から1万5千年前の殷より古い文明のもので、本来あるはずのないもの=オーパーツとして処理される。『封神演義』を知っていると殷より古い文明なら夏だろ?とつい言ってしまいたくなる。

 

オーパーツやオメガファイルや地球防衛軍の秘密施設の事を知っているシマ隊員。意外と情報通だ。

 

カザモリにオーパーツやオメガファイルの事を教える謎の女。
セブンに地球人が隠していた真実を知ってほしいと言っていたが、その行動には疑問符が付く。
まず地球防衛軍電波研究所の隊員を倒してカザモリをオメガファイルの所へ導くが、何故か途中で女はいなくなり、やって来た地球防衛軍保安部にカザモリは確保されてしまう。その後も女はカザモリの前に現れるが、それが関係してカザモリは機密漏洩の罪に疑われてしまうと、地球防衛軍がセブンを倒すように仕向けていたように見える。

 

保安部に捕らえられたカザモリは逆にオーパーツの秘密を明かすよう迫るが、それを聞いたカジ参謀は「私がもし異星人だったらどうする? お前は今、防衛軍のトップシークレットを漏らしたんだ!」と告げる。
カジ参謀は劇中では悪役になっているが言っている事に間違いはあまり無い。と言うより特別チームの隊員はあまりにも無用心でお人好しな人物が多すぎる。

 

カザモリが辞職に追い込まれた事を知ったウルトラ警備隊はカジ参謀の罠ではないかと疑う。宇宙人より先に上層部を疑うのが『平成セブン』らしい。

 

地球防衛軍を去ろうとするカザモリをサトミ隊員が車で送っていく。
カザモリは「監視か?」と尋ねるが、サトミ隊員は「役に立ちたかった」と答える。
今回はカザモリとサトミ隊員の話が多く、後の『EVOLUTION5部作』に繋がるところがある。

 

ダンは北海道にあるフルハシの墓を訪ねる。
「フルハシさん……。地球人が信じているように、この世に霊魂が存在するなら、あなたともう一度話がしたい。私があなたと出会った時代、地球人は今のような強い力は持っていなかった。もっと美しい心を持っていた。地球人が変わってしまったのか、それとも……」。
ダンの台詞を聞くと光の国でも霊魂は確認されていないようだ。ちょっと意外。

 

そこにやって来た女は地球人は変わっていないとダンに告げる。
そして女は自分が元々この星に住んでいた種族で今の地球人は残虐な侵略者だと断じ、その証拠は地球防衛軍が隠しているオメガファイルの中にあり、自分達には先住民として地球に戻ってくる権利があると語る。
この時の無限の蝋燭が並ぶ部屋が雰囲気が出ていて実に良かった。

 

尋問の際の脳波検査でカザモリが異星人だった事を知ったウルトラ警備隊はカザモリを包囲する。
『セブン』の最終回や今回の話を見るとセブンの正体はかなり簡単な検査で判明しそう。ちょっとした異常でも医者に掛かれないのは大変かも。
サトミ隊員はカザモリが異星人だった事に怒りを見せるが、「空飛ぶ大鉄塊」での辺見のおじちゃんとの話を考えると異星人だったからと言ってここまで怒りを露わにするのはちょっと違和感がある。
葛藤の末、サトミ隊員はたとえ侵略者でもカザモリの姿をしたあなたを撃てないと銃を降ろす。う~ん……。侵略者ではない異星人と言う可能性をどうして考えないのだろうか? それこそ辺見のおじちゃんは侵略者ではない異星人だったのに……。

 

再び尋問を受ける事になったカザモリだが「秘密にする事で地球を救った時代は終わった。真実を明らかにする事が地球を救う」と逆にカジ参謀にオメガファイルの開示を求める。
さらにカザモリが続けた「真実を告げる勇気を持っているはずだ。そんな地球人の為に僕は戦い続けてきたんだ」と言う言葉でカジ参謀はカザモリの正体に気付く。
ところでカザモリは「秘密はやめて真実を明らかにしろ」と言っているが、そういうセブン自身が地球人に対して自分の正体を秘密にし真実を明らかにしていなかったりする。ここは異星人が地球の平和を担う事になるウルトラシリーズの難しいところ。

 

「カザモリは自分達を騙し続けていた」と言ったサトミ隊員をルミ隊員は叩いて「カザモリ君はカザモリ君です!」と涙ながらに訴える。
今のカザモリが異星人がすり替わった存在なら本物のカザモリがどこかにいる事になるのだがそれは忘却の彼方っぽい。この後も皆に忘れられている本物のカザモリが可哀相。
その後、今度は「カザモリは侵略者だった」と言うシマ隊員をサトミ隊員が「自分達はカザモリの事をもっと知っているはず。たとえ異星人でも侵略者じゃないかもしれない」と説得する。
サトミ隊員、数分前と言っている事が全然違う……。ルミ隊員に叩かれて考えが変わったのかもしれないが唐突すぎる。大事な場面なので、もう少し心情の変化を丁寧に描いてほしかった。
カザモリが異星人と判明してからのサトミ隊員のキャラクターがどうにもブレている。あまりの事態に混乱していたとも考えられるが、『誕生30周年企画』でカザモリの異変を気にしたり、「空飛ぶ大鉄塊」で知り合いが実は異星人だったりと今まであったエピソードを上手く活用できていないようで残念だった。

 

フレンドシップ計画は表向きは地球防衛だが真の目的は宇宙侵略にある。
女から地球人の秘密を聞かされたカザモリは地球人がそこまで強硬な態度を取らなければいけない理由に気付く。
「侵略者は去るか、力を持って星に居座るか。侵略者を守る事は許されていないのです。宇宙の掟では……」。
う~ん……。実は地球人は侵略者で本来は地球に住む権利は無かったと言う話からどうして地球人が宇宙を侵略しようとしていると言う話になるのだろうか?
今まで現れた宇宙人全てが実はオメガファイルの開示を求めていて、それらを駆逐する為にと言うのなら分かるが今までの話を見る限りそうは思えない。むしろ、オメガファイルとは無関係な星まで攻撃していたら逆に危険な星である地球を攻撃する口実を得る為にオメガファイルを狙う宇宙人が出てきそうなのだが……。
『最終章6部作』は「防衛」と「侵略」の線引きと言う面白い出発点だったのだが前回の「模造された男」でのラハカムストーンの話や今回のオメガファイルの話と途中で別の話になってしまったところがあって自分としては残念なところがある。

 

カザモリからフレンドシップ計画の真意を聞いたシラガネ隊長はウルトラ警備隊が地球の先住民と名乗る存在と遭遇した唯一の記録であるノンマルト事件を調べる。
しかし、ノンマルト事件は既にオメガファイルに封印され、それに関する重要人物であるキリヤマ隊長も既にこの世に存在していなかった。
当初はキリヤマ隊長を登場させてノンマルト攻撃の指示を出した理由を問う「ノンマルト裁判」をする予定だったらしいが中山昭二さんが撮影直前の1998年12月1日に亡くなられた為、実現しなかった。

 

オメガファイルを探るシラガネ隊長の前に現れる保安部の伊集院貢。
オメガファイルを守ろうとする伊集院に対してシラガネ隊長は守るべきは地球人の誇りで人間としての生き方だと返す。しかし、伊集院の決意は変わらず、なんと自らの命と共にオメガファイルを闇に葬り去ろうとした。
ここでのシラガネ隊長と伊集院のバスケットボールを介しての静かな戦いが面白かった。

 

悩んだ末にウルトラ警備隊は捕らわれたカザモリの救出を決意し、ウルトラシリーズで初めて特別チームと上部組織の戦いが始まる。
ウルトラ警備隊が撃っているのは痺れ弾だが地球防衛軍が撃っているのは実弾。人間同士の殺し合いにまで事態が突き進んでしまうのは当時のウルトラシリーズではかなり衝撃であった。

 

地球防衛軍はカザモリを粒子レベル分解システムで処刑しようとした。
気のせいか、何かを壊す技術だけは地球は発展著しい。

 

もうセブンに頼らないと考えた女は自ら隠蔽している侵略の証拠を開示するよう地球防衛軍に要求し、受け入れられなければ実力でもって全宇宙に公開するとザバンギを送り込む。
ルミ隊員がオメガファイルのロックを開いていく中、シラガネ隊長はカザモリに呼びかける。
ウルトラセブン。我々はオメガファイルを開示し宇宙に真実を告げる努力をしている。必ず自らの意思と力で真実を突き止める。しかし、もう少し時間が欲しいんだ」。
その会話から他のウルトラ警備隊もカザモリの正体に気付く。
「カザモリはきっと戻ってくる」と言って去っていくカザモリ。
ここでセブンがウルトラ警備隊に自分の秘密と真実を明かしても良かったと思う。結局、セブン自身は自分の秘密を自ら明かす事はしなかった。

 

ザバンギを足止めする為にカザモリはウインダムとミクラスを出撃させる。カプセル怪獣のタッグ戦が実現するのだが、ここにアギラがいなかったのがとても残念。3体揃い踏みが出来るチャンスだったのに……。(因みに小説版ではアギラは仲間の足を引っ張ると判断して待機に回したとの事。ひ、酷い……)
一度は倒れながらも再び立ち上がってザバンギの炎から電波研究所を守ったウインダムがカッコイイ! 『セブン』でのイマイチな活躍を吹き飛ばすかのような大活躍であった。
因みに『EVOLUTION5部作』ではダンが登場していないので『平成セブン』でカプセル怪獣が見られるのはこの話が最後となる。

 

カザモリはセブンに変身して電波研究所にあるオーパーツを目指すが、そこにカジ参謀が立ちはだかる。
ウルトラセブン! お前なら分かるはずだ。何故私が力による地球防衛に拘ったのか。もし我々が本当に侵略者なのだとしたら、この星を去るか、力を持って居座るしかないんだ! 我々はこの地球を故郷にする事すら許されないと言うのか? 数万年前の祖先達の罪を我々が償わなければならないのか?」。
理屈としてはそうかもしれないが、実際は妥協案が提示される気がする。だが、カジ参謀の強硬な態度が妥協案を提示できる状況を潰してしまったところがある。そう言えば、地球人が謝罪してノンマルトとの共存を図っていこうと言う考えが誰からも出てこなかったのは不思議かな。

 

地球防衛軍がセブンに向けて一斉射撃をする。
操られたとかではなく人間が本気でウルトラマンを殺そうとする衝撃の展開。
先のウルトラ警備隊と地球防衛軍の争いもだが、ウルトラシリーズの基本であった「地球人VS怪獣&宇宙人」と言う図式を『平成セブン』は崩そうとしていて遂に禁断の「敵は地球人」へと至ってしまった。

 

オメガファイルのロックを解除するが全てのファイルが暗号化されていた。そこでルミ隊員は敵を撹乱させる偽情報と言う形でインプットさせれば暗号化されたままでも電波研究所から宇宙に向けて発信できると考える。
真実を偽情報だとインプットしたら軍法会議ものらしいが、それ以前にそんな発信方法では情報の信憑性が疑われてしまう気もする。時間が無かったので仕方が無かったのだが。

 

参謀会議に現れたシラガネ隊長は保安部がキリヤマ隊長らを処分していた事を明かす。保安部がオメガファイルに関わった人物を処分していた事を知らされたタケナカ長官はオメガファイルの開示とセブンへの攻撃中止を決定するがカジ参謀は一人抵抗を続ける。
「人類は地球に生まれた唯一の知的生命体。地球は人類のものだ」と絶叫し、セブンに銃を向けて、銃を破壊されても生身で立ち向かっていく。さすがに生身でウルトラマンに立ち向かった人間は少ない。カジ参謀の凄まじい執念が見える。
遂に勝てない事を悟ったカジ参謀はセブンに向けて心情を吐露する。
ウルトラセブン。真実を宇宙に知らしめて必ず人類が助かると言う保障でもあるのかぁー!! くそぉー!! ……。たとえどんな手を使ってでも……、人類を守りたかった……。わ、私は……、私には……、人間を守りたかった……。大好きだから……。大好きなんだから……。人間達が……」。
泣き崩れるカジ参謀とそれを聞きながらもゆっくりと背を向けるセブン。
『平成セブン』が描くべき最も大事な場面がここだった気がする。
カジ参謀の「人類を守りたかった」と言う気持ちに嘘偽りは無いだろうし理解も出来る。ただ、その気持ちから発した行動があまりにも短絡的だった為、結局は自らの手で人類の未来の可能性を狭めてしまった。
因みに後の『EVOLUTION5部作』ではカジ参謀が危惧したとおり人類は助からず地球は異星人に侵略されてしまった。タケナカ長官は「人類の文明が生み出したのは戦争の為の兵器だけではない。命懸けで我々の心を訴え続ければセブンのように分かってくれる異星人もいるだろう」と言っていたが残念ながらそういう異星人は『平成セブン』にはいなかったようだ。

 

遂にオーパーツである石棺まで辿り着いたセブン。そこには既に女が待っていた。そして宇宙人であるセブンに最も信頼される目撃者として選ばれた人物フルハシが石棺から姿を見せる。
栄光と伝説」でのヴァルキューレ星人との戦いで命を落としたフルハシはタキオン粒子で再形成されると数万年前の地球に送り込まれて自分達の祖先がノンマルトを侵略した事実を目撃したのだった。
まさかここで「約束の果て」のタキオン粒子が出てくるとは思わなかった。

 

『セブン』の「ノンマルトの使者」ではノンマルトが本当に昔の地球人だったのかどうかは明言されていないが、第三者であるセブンが「M78星雲では地球をノンマルトと呼んでいる」と語る事が一つの証拠になっている。
それに対して『平成セブン』ではフルハシが見た映像として実際に今の地球人の祖先がノンマルトを侵略している場面を出してきたのだが、実はこの証拠の出し方には致命的な問題がある。女がフルハシに幻覚を見せていた可能性を考えると映像が真実がどうか確証が無くなってしまうのだ。
『平成セブン』では他にもいくつか証拠が用意されているが、それらも女が予め用意していた虚偽のものかもしれないと考える事も出来る。こういう話では証拠は加害者である今の地球人と被害者であるノンマルト以外の第三者によって提示されなければ信憑性に欠けてしまう。今回の話で今の地球人が実は侵略者であったと言う証拠を全て被害者のノンマルトを名乗る女に用意させたのは失敗だったと思う。
実を言うと、そもそも女は本当にノンマルトなのかと言うところでも確証が何一つ無かったりする。
もし女の正体が地球侵略を企む異星人で侵略活動を円滑に進める為にノンマルトの名を騙って地球人は実は侵略者だったと宇宙に知らしめようとしていたと考えると、女の他にも地球防衛軍に入り込んでいた異星人がいて、彼らがフレンドシップ計画を発動させて地球が宇宙の中で孤立して侵略されやすい状況を作っていたと考える事も出来る。(事実、次の『EVOLUTION5部作』では地球防衛軍に異星人が入り込んでいた)

 

ダンは「もし地球人が侵略者だったら自分は先住民の方に立たなくてはならない」と語る。厳粛なる宇宙の摂理では何人も自分の星以外で生きる権利も侵略する権利も無いらしい。
侵略する権利が無いのは分かるが自分の星以外で生きる権利も無いと言うのはどうかなと思う。この言い方ではセブン本人はもちろん、ペガッサ星人や『Q』のルパーツ星人や『帰マン』のメイツ星人も自分の星以外で生きているので地球から出て行かなければならなくなる。
現実問題に照らし合わせると外国人から日本に住む権利を奪う事になるし難民も他国に入る事が出来なくなってしまう。又、その星に生まれた者以外はその星に住んではいけないと言うのはナチスドイツを始めとする純血主義に通じてしまう。
この辺りは「地球人」と言う存在を根底から揺さぶろうとしてちょっと極端な話になってしまったように思える。

 

「地球人がもし侵略者だったら地球人の味方は出来ない」と言うダンに向かってフルハシは「罪深い人が心を改め立ち直るように、種としての人類がかつて残酷な侵略者だったとしても進化の過程で生まれ変わる事だってあるだろう」と頼む。
地球人の味方をしたらセブンがM78星雲から追放されると知った上で、それを頼むフルハシの心境はいかようなものだったのだろうか……。

 

「知らなければ良かった……。知らなければ何の迷いも無く地球の守護者として戦えたのに……」。
迷うダンに向かって女は正義は我々にあると宣告。ダンが地球人は懺悔の時を迎えているとして地球人がオメガファイルを公開しようとしている事を知らせるが、女は滅ぼされた仲間達はもう蘇らないとして電波研究所を破壊して地球人がオメガファイルを開示した証拠を消そうとする。ダンは復讐の為の復讐は宇宙の掟も許していないと警告するが、逆に女はセブンが地球人の味方をしたら追放されるぞと脅しをかけてくる。
これではかつて地球人が侵略の証拠をオメガファイルに封印したのと全く同じである。滅ぼされたので気持ちは分からなくもないが、結局のところ、女は地球人が罪を認めるかどうかは実はどうでも良くて、地球人は残虐な種族だとして滅ぼす為の大義名分、いわゆる口実が欲しかっただけに思える。ダンにオメガファイルの事を知らせたのも地球人を説得してほしいと言う事ではなくて、セブンが地球人の味方をしないように、出来れば自分達の味方になるようにする為だったのかもしれない。

 

ザバンギの全身を燃え上がらせてから発する火炎がかなりカッコイイ。
意を決してダンはセブンに変身するがザバンギに攻撃できず黙ってザバンギの攻撃を受け続ける。そして悩んだ末、アイスラッガーを取ったセブンはザバンギの喉を切り裂くのであった。
ザバンギの血飛沫を浴びたセブンの姿が苦悩とその決断の重さを表していた。
ザバンギが倒された女は「セブンよ! 覚悟するがいい。お前の居場所はこの宇宙にはもう無い」と言い残して姿を消すのであった。

 

ヴァルキューレ星人戦での運命の場所にやって来たダンは「君の姿とお別れする時が来たようだ」とミラクルマン・カザモリが入ったカプセルを投げる。これがセブンとカザモリの別れになるので個人的には二人の会話が欲しかったところ。
ウルトラ警備隊に戻ってきたカザモリ。やはり「君」付けは嫌らしい。
次の『EVOLUTION5部作』にはダンが登場していないので、セブンはカザモリと別れたが『平成セブン』はダンと別れる事になる。

 

ムーンベースで会話を交わすダンとフルハシ。
フレンドシップ計画は廃止され、地球防衛軍は宇宙に向けて非戦の誓いを発信した。
地球は新しい世代による新しい時代が始まる事となったが、ダンは自分は宇宙の秩序を守る者としてやってはならない事をやってしまった、M78星雲の仲間達は自分を許さないだろうと語る。
オリジナルビデオシリーズの『平成セブン』は『セブン』以外のウルトラシリーズとは繋がらなくなっているのでダンが言う「M78星雲の仲間達」とはウルトラ兄弟ウルトラの父母達の事ではないと思われる。「史上最大の侵略 前編」「史上最大の侵略 後編」に登場したセブン上司の事だろうか。

 

フルハシはダンを友達だとして地球人にセブンを守らせてくれと言うが、ダンは自分の戦いに地球人を巻き込むわけにはいかないと断る。
地球人を守った事が原因なのだから地球人が無関係なわけないし、フルハシが罪になると分かっていながら地球人を守ってくれるよう頼んでセブンはそれを受けたのだから、今度は罪になると分かっていながら地球人がセブンを守るようになっても良かった気はするが、こういうところがセブンらしいと言えばらしいのかもしれない。

 

フルハシの前で最後の変身をするダン。そして星の世界。光がセブンに降り注ぐ。
「私は私の心に何ら恥じるところは無い。愛する者を守ろうとするのは宇宙に普遍的な摂理だ。私は愛する地球人の為に戦ったんだ。後悔はしていない」。
そしてセブンは自分を覆う眩いばかりの光の中に消えた。

 

今回の話は『セブン』の「ノンマルトの使者」の後日談となっているが、オリジナルとは別の人達で後日談を作るのは色々と大変で難しいなと感じた。

 

本作は後に未公開シーンを追加したディレクターズカット版が発売されている。
細かい部分の繋がりやウルトラ警備隊の心情を描いた部分が増えているのでディレクターズカット版の方がお勧め。