「よみがえる鬼神 ー宿那鬼登場ー」
『ウルトラマンティガ』第16話
1996年12月21日放送(第16話)
脚本 川上英幸
監督 川崎郷太
特技監督 高野宏一・川崎郷太
二面鬼宿那鬼
身長 58m
体重 4万8千t
宿那山一帯で暴れまくっていた伝説の鬼神。かつて錦田小十郎景竜と言う侍が退治して、刀でバラバラに切り裂いて山のあちこちに分散して埋めた後、その中心地にお堂を建て刀を奉納して封印した。
盗っ人三人組が刀を盗み出した事で復活して、バラバラになった体を元に戻すと、景竜への怨みを晴らしてこの世を焼き尽くそうとする。
以前より遥かに凶暴になっていて、口から炎を吐き、後ろにあるもう一つの口からは突風を吹く。さらに山に隠していた刀を振るう。
ティガ・マルチタイプのティガスライサーで刀ごと首を切り落とされて肉体が燃え尽きるが、その後も首だけでティガに襲い掛かる。最後は景竜の刀を眉間に受けて完全に消滅した。
飛騨の国の話に登場する「両面宿儺」がモデルらしい。
物語
盗っ人三人組が宿那山のお堂に奉納されている武将像と刀を盗み出すと山から巨大な腕や足が現れる。
そして盗っ人三人組の一人の前に錦田小十郎景竜と名乗る亡霊が現れて……。
感想
自分好みな妖怪譚。薄暗い色調、日本的な音、漢字の名前を持った怪獣と徹底されていたのが良かった。セットも話の内容に合わせられていて、特に鳥居を前に富士山をバックにした場面が最高だった。その後の鳥居が斬られた場面は拍手喝采!
今回は全体的に重っ苦しくない軽妙な感じで『T』や『80』後半に近い話であった。
前回の「幻の疾走」で負傷したダイゴとシンジョウは今回も怪我をしたまま。
デスクワークは苦手と出撃(逃亡)したダイゴと出撃(逃亡)出来ずにイルマ隊長に捕まってしまったシンジョウが笑える。
基地に残ったシンジョウとヤズミも細かいところで笑わせてくれる。
どこか間抜けな盗っ人三人組のキャラクターが面白かった。
景竜に体を借りられた男は「そんなところから!?」と悶えていたが、景竜は一体どこから入ったのだろう……?
景竜に斬られて峰打ちなのに何故か血が出ていた男は大丈夫だったのだろうか?
残る一人は景竜の亡霊の存在に気付いたのだろうか? ……最後まで気付いていなさそうだが。
もののけを見極める力を生まれつき持っていて、生涯に亘って放浪の旅を続け先々でもののけを退治してきた剣豪・錦田小十郎景竜。その割には全然凄そうに見えず飄々としているのが印象的。
かつて宿那鬼の四肢を切り裂き、それぞれを分散して埋め、心の臓を埋めた地にお堂を建て刀を奉納して封印したとの事。人間である景竜がどうやって巨大な宿那鬼を切り裂いて四肢を埋める事が出来たのか? 昔の宿那鬼は今より小さかったのかな?
前回に続いて左手を負傷しているダイゴだがティガに変身するとやっぱり痛くなくなる。
景竜はダイゴを「人間ではない」としていきなり斬りかかったが「もののけにしては邪な気を感じられない」として斬りかかった事を謝る。後にダイゴを「光の人」と評する等、眼力は確か。
「何できちんと止めを刺さなかったんですか?」とツッコむダイゴと「いやぁ、面目無い」で済ませてしまう景竜のコンビが笑える。
「強者は、常に孤独だ……。強者は、常に勝ち続けなければならない……。その為に孤独になる……。耐えられるかな?」と言う言葉はかつて鬼(怪獣)退治に明け暮れた者としての重みがあった。因みに『R/B』の「兄弟の絆」でも「ヒーローに負けは許されない」と言う話がある。
「もののけがこの世に現るるは、事の道理なり。されど、そのもののけを打ち破らんとする心、それさえあれば、百戦して危うからず」とダイゴに言わせれば「いい加減な事」を言って成仏した?景竜。
レナがこの時のダイゴの様子を不思議がっていた。
景竜は「強者は常に孤独」と言っていたが、この時の景竜とダイゴのやり取りからレナがダイゴの秘密に気付き、それが「ウルトラマンだけでなく皆で戦おう!」と言う最終回に繋がったのだとしたら深い。
今回は『ティガ』で初めて本編がエンディングにかかっている。
今までも未使用カットを使ったりしていた回があったが、これ以降のエンディングはただの本編ダイジェストではなく様々な演出が加えられるようになっていく。
ところで最後のGUTS全員集合の場面はオープニング撮影時のものだろうか?
今回の話の後日談として、今回の脚本を担当した川上さんによって書かれた小説『白狐の森』が発売されている。