帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「南の涯てまで」

「南の涯てまで ーデシモニア登場ー
ウルトラマンティガ』第34話
1997年4月26日放送(第34話)
脚本 小中千昭
監督・特技監督 村石宏實

 

生体兵器デシモニア
身長 35m
体重 4万4千t
クリオモス諸島に集まったTPC首脳陣を人質に取り、サワイ総監の映像を使ってサワイ総監を国家元首とするクリオモス諸島独立国家の建設を宣言。TPCを世界行政機関に移行させて地球を裏から操ろうとした。
人間を襲う小型タイプと戦闘機を迎え撃つ巨大タイプとがある。
巨大タイプは有機的な部分をシールドで覆って光線を跳ね返す。頭頂部からミサイル状の光弾を発する。小型デシモニアを回収して宇宙へ逃亡しようとしたところをティガ・マルチタイプのゼペリオン光線とアートデッセイ号のデラック砲で爆破された。
何者が送り込んだかは不明。3年前にサワイ総監をさらおうとした宇宙船と関係があるらしい。

 

物語
クリオモス諸島に向かったサワイ総監は自分が地球の国家元首になると宣言。
裏に宇宙人の存在を感じとったGUTSはサワイ総監の救出に動く。
そこに助っ人として現れたのは意外にも……。

 

感想
ウルトラシリーズでは珍しい組織設立の経緯を紹介した話。劇中でここまでキチンと作品世界の紹介をしているのは『ティガ』くらいかも。
今回の話は小中さんが作成したTPC・GUTS成立年史を元に構成されたらしい。『空想特撮映像のすばらしき世界』(朝日ソノラマ)には『ティガ』と『ダイナ』のTPC年表が紹介されている。公式設定ではないが一見の価値あり。

 

9年前、当時の国連事務総長だったサワイは各国を歴訪して全ての国が武装を解いて世界全体の恒久的平和を実現するよう説得をしていった。
民族紛争等がまだ残っていた中、サワイの案は理想論に過ぎないと言う見方が一般的だったが、各国科学者のフォーラムが全面支持を表明し、人類が新しい時代を迎えようとする今、予測不可能な事態に対して世界は一つに結び合い立ち向かっていく必要性があると訴えた。
そして数年後、地球防衛軍(UNDF)は解体され、各国の戦争兵器も廃棄され、サワイは自ら地球平和連合(TPC)の初代総監として世界の恒久的平和の為に力を尽くすのであった。
これまでのウルトラシリーズの世界は現実の延長である事が多く、未来を舞台にした作品でも世界そのものは現実世界とあまり大きく変わらないものだったので、『ティガ』で放送当時の世界とは全く違う世界が提示されたのは驚きであった。

 

「GUTSの攻撃力は災害要因としての怪獣、地球外からの侵略に対してのみ、その使用を許可できる」としてGUTSの力を人間同士の武装解決に使う事が出来ない。
今までは暗黙の了解と言うかそういう事態は想定していないところがあったが今回の話では明確に示される事となった。こう言う細かい部分をキチンと押さえているのが『ティガ』らしいなと思う。

 

イルマ隊長の回想で3年前にあった地球外のパルスパターン解析任務が語られる。これが実はダイゴがサワイ総監に認められて輸送部からGUTSに移動となった理由だったのに驚き。そう言えば、サワイ総監はダイゴの事を色々と気にかけていたなぁ。
ダイゴは他のGUTS隊員に比べて際立った能力が無かったが人柄を認められたのか。
「サワイ総監は特別扱いしてくれなかった」と言っているので、推薦はされたが試験や訓練はちゃんと受けたと思われる。

 

GUTSでドルファー202の操舵訓練を受けているのはレナとシンジョウの二人だけ。このように隊員によって扱える装備が違うと言うのがリアルで良い。GUTS以外はあまり無い描写である。

 

囮作戦を理解した時、シンジョウが沖縄の言葉を口にしている。
これはシンジョウの名前の由来が「金城哲夫」で、出身地も金城さんと同じ沖縄だから。 

 

妙に墜落を気にするシンジョウに思わず笑う。

 

ドルファー202に乗って海底からクリオモス諸島に潜入する事になったダイゴ。操舵訓練を受けているレナとシンジョウがいないので海洋調査班のパイロットが呼ばれるが、その人物はなんとヨシオカ長官であった。これには驚いた。
元々は潜水艦乗りでドルファー202の開発にも我が儘を入れたと言うだけあって「船に乗るには無粋な格好」「アイアイ、キャプテン」と今回のヨシオカ長官は随分と楽しそうであった。これまでタカ派的な部分しか描かれていなかったので今回の描写はギャップがあって印象に残った。

 

20年ずっと喧嘩してきたと言いながら実はお互い認め合ってきたサワイとヨシオカの二人。施設内での連係プレーは見事であった。日本の特撮やアニメで活躍するのは10代20代が多いがこういう年代の活躍も増やしてほしいところ。

 

対比される事が多いサワイ総監とヨシオカ長官であるが考え方は意外と同じところがある。実はこの二人は劇中で明確に意見を争わせた事は殆ど無かったりする。どちらかと言うと、ヨシオカ長官と対になっている考え方の持ち主はナハラ参謀だと思われる。

 

サワイ総監がクリオモス諸島で極秘会議を開いたのは世界各TPCにGUTSのような機関を置く為で、ライドメカの技術提供と言うデリケートな事項があったから。
そう言えば、GUTSって日本にしかないのか。

 

ヨシオカ「いい部下を持ったなぁ」、
サワイ「部下じゃないよ、仲間だ」。
名言です。