帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「アグルの決意」

「アグルの決意 ー甲殻怪地底獣ゾンネルⅡ マグマ怪地底獣ギールⅡ登場ー
ウルトラマンガイア』第24話
1999年2月20日放送(第24話)
脚本 長谷川圭一
監督・特技監督 北浦嗣巳

 

甲殻怪地底獣ゾンネルⅡ
身長 86m
体重 9万5千t
アグルの力で覚醒した。
アメリアリゾナ州に現れてG.U.A.R.D戦車部隊を壊滅させる。
ガイアとも戦うが闘争本能を鎮められて地底に帰った。
以前現れた個体に比べて体色が青く少し小さくなっている。

 

マグマ怪地底獣ギールⅡ
身長 85m
体重 9万2千t
アグルの力で覚醒した。
日本秩父山中から現れるが最後は心変わりしたアグルのフォトンクラッシャーで倒された。
以前現れた個体に比べて体色が赤く少し大きくなっている。

 

物語
稲森博士の死をきっかけにいよいよ行動を開始する藤宮。
そんな藤宮を追う我夢と玲子。
果たしてアグルはどうする? どうなる?

 

感想
稲森博士の死をきっかけにいよいよ行動を開始する藤宮。しかし、その行動はどこか冷静さが欠けている暴走じみたものであった。
人間の状態でアグルの能力を使って警備員を倒し、ジオ・ベース情報セクションに真正面から堂々と乗り込み、遅れてやって来た我夢と梶尾リーダーの前にアグルに変身して現れると静かに二人を見下ろす。それはガイア我夢に対する宣戦布告であった。
仮面ライダーと違ってウルトラマンは人間に敵対する人物が変身する事が少ないので今回のようにウルトラマンの力が人間に向けられるのは非常に珍しくて衝撃だった。

 

藤宮が奪ったデータは根源的破滅招来体によって覚醒し地底に潜伏している怪獣達の正確な位置が記されたものであった。怪獣のコントロールを諦めた藤宮は奪ったデータを使って世界各地で怪獣を次々に覚醒させて暴走させると言う更に最悪な事を始めてしまう。
結局は実現しなかったが、ウルトラマンが怪獣を率いて人類を攻撃すると言う構図はこれまでのウルトラシリーズの基本を大きく揺るがすもので、もしこれが実現していたらこの後のウルトラシリーズはどうなっていたのかなと思うところがある。仮面ライダーシリーズは平成ライダー第3弾である『仮面ライダー龍騎』で従来の仮面ライダーの基本を大きく揺るがして以降の仮面ライダーを大きく変える事になったが、平成ウルトラシリーズ第3弾である『ガイア』は従来のウルトラマンの基本を色々揺るがしはしたが最後の一線は越えなかった感じがある。これが良かったのか悪かったのかはまた別の話として、21世紀のウルトラマン仮面ライダーの違いは平成シリーズ第3弾の『ガイア』と『龍騎』でシリーズの基本をどこまで変えたかによって決まったのかなと思っている。

 

オーストラリアに出現したアグルに向けてG.U.A.R.D太平洋支部の戦闘機部隊が出撃。
ここにウルトラ史上初めて正気のウルトラマンと特別チームが戦う事になる。
しかし、今の藤宮はG.U.A.R.Dは眼中に無いらしく反撃は一切しなかった。

 

稲森博士が作ったリリーの墓の前で我夢は「藤宮は正しいと思いますか?」と尋ねるが幻影の稲森博士は静かに微笑み頷くだけであった。
そんな我夢と梶尾リーダーを追跡していた玲子。我夢は気付いていなかったが梶尾リーダーはしっかり気付いていた。珍しく冴えている。
仕事で来たのではなく個人として藤宮にもう一度会いたいと語る玲子。今更言うまでもないが藤宮は色々な女性に想いを寄せられている。女性からしたら放っておけないタイプなのかな。

 

藤宮は歪む星空を見て「もう時間が無い」と呟く。ここで言われている時間とは根源的破滅招来体の大攻勢が始まるまでの時間を指している。
ガイアや人類と協力して根源的破滅招来体を迎え撃った後にガイアと人類を滅ぼすのが一番確実で効率が良い感じがするが、こういう手段を選べないところが藤宮らしいなと思う。

 

日本の警戒ポイントでは北九州にチーム・ファルコンが、秩父山中にチーム・クロウが派遣される。「本当に青いウルトラマンと戦うのか?」と言う慧の疑問に稲城リーダーは「任務ならたとえ何者であろうと戦う」と答える。
秩父山中にアグルが現れると千葉参謀は「青い巨人は我々の味方ではない」と語気を強め、それを受けて石室コマンダーも一瞬考えるが攻撃指示を出す。しかし、アグルはクロウの攻撃を受けても反撃はしないで地球に力を送り続けた。
今回は操られた等ではない状態でのウルトラマンと特別チームの衝突となったがアグルからの反撃が無かったので全面対決にはならなかった。藤宮としては人類と全面対決するには駒として多くの怪獣を覚醒させなければいけなかったからであったが、結果としてアグル藤宮と人類が全面対決に至る前にゾーリムとの決戦が始まったので最終的にXIGとアグル藤宮が共闘できる可能性が残される事となった。もしここでアグルが反撃してクロウが撃墜されていたらこの後の戦いで梶尾リーダーがアグルを援護する事はまず無かっただろうし最終決戦でXIGがアグルと共闘するにも一悶着が起きたと思われる。

 

アグルの出現を受けて梶尾リーダーは藤宮がこの近くにいると発言。藤宮がアグルに変身しているとは思っていないようだ。
藤宮が抵抗したら躊躇わず撃つと我夢と玲子に忠告するが、梶尾リーダーの腕で大丈夫なのかな?とつい心配してしまう。

 

今回のチーム・ライトニングは梶尾リーダーが不在なので待機。
もう数日間は帰っていないので梶尾リーダーの単独行動とそれを指示した堤チーフの独断は隠しようがない。それでも誰も注意していないところを見ると石室コマンダーや千葉参謀も本当は我夢を放ってはおけなかったようだ。

 

我夢は「藤宮が玲子に近付いたのは何か理由があるはず」と指摘するが玲子は「偶然たまたまそこにいたから出会った」「しかし、人と人との出会いなんてそんなもの」と答える。
物語を見ているとつい全ての出来事に何らかの意思を絡めて考えてしまうが実際の人生ではそういう意思が絡んでくる事はあまり無い。
その後に玲子は「意思は無くとも意味はある」と言う事を語っている。
物事に「理由」を求めるのではなく「意味」を求める。『ガイア』は謎が多い作品でその謎の解明を求めた人も多くいたと思うが実は今回の話で『ガイア』は謎の解明と言う理由付けではなくて物語を通して皆がどう変わっていくのかと言う意味を求める作品である事が示されている。

 

力尽きて倒れた藤宮を病院に連れて行った我夢はそこで怪獣出現の報を聞く。
「きっとウルトラマンが来てくれる」と言うサトシ少年の言葉を聞いた我夢はガイアとの出会いを思い出す。「君は僕に力を与えてくれた。でもそれは本当に意味のある事だったのか? 教えてくれ!」。
考える我夢に玲子の言葉が聞こえる。「私、今は信じたいんです。出会いは偶然かもしれない。でも、出会った事にはきっと意味があるって」。
玲子の言葉を聞いた我夢は意を決してガイアに変身。玲子は病院から飛び立つ赤い光を見送るのであった。

 

ゾンネルの攻撃を受けた慧を助けるガイア。その時、藤宮が目を覚ます。「何故お前は地球の意思に逆らおうとする!?」。
起き上がる藤宮を玲子は「これ以上何をするの!?」と止めるが藤宮は「地球を滅びへと導くのは人間の愚かさだ! それを知りながら邪魔をする奴を俺は倒さなければならない!」と叫ぶ。それを聞いた玲子は「そんな愚かな人間をどうして助けたりしたのよ!」と問いかける。その言葉に藤宮は一瞬止まるが決意が変わる事は無かった。「俺が救うのはこの地球だけだ!!」。
そんな藤宮と呼応するかのようにギールが出現して病院に向かう。避難する人々を押しのけてフラフラになりながらも一心不乱に突き進む藤宮。その時、子供の声が聞こえてくる。「ウルトラマン、助けてよ! ウルトラマン、早く来て! ウルトラマン、助けて、ウルトラマン!!」。振り向いた藤宮の視線の先には握手をしているガイアとアグルの絵を手にウルトラマンに助けを求めるサトシ少年がいた。
一部始終を見ていた玲子は倒れていたサトシ少年を助け、藤宮に激しい言葉をぶつける。「地球だけを救いたいんでしょ! 愚かな人間は関係無いんでしょ!? 早く行きなさいよ!!」。
病院に迫るギールを前に藤宮はアグレイターに目をやって叫ぶ。「無駄だと分かっていて……、それでも守るのか? 人間を。それが……ウルトラマンだと言うのかぁー!?」。アグルに変身した藤宮はエネルギーが尽きかける中、ギールから病院を守るのであった。
このアグルの変身シーンは『ガイア』でも1、2を争う盛り上がり度で何度見てもメチャクチャ燃える!!

 

その頃、ガイアはゾンネルに止めを刺そうとしていたが今まで倒してきた怪獣達を思い出して躊躇う。そして「憎しみでしか解決できないなんて哀しすぎる」と言う玲子の言葉を思い出し、闘争本能を鎮める光線でゾンネルとの戦いを止めるのであった。
因みにここでガイアが倒してきた怪獣としてコッヴ、サイコメザードⅡ、パズズが回想されているが、ここはアネモス&クラブガンやカンデアのような地球怪獣の方が良かったかな。
一方、アグルは自分が覚醒させたギールをそのまま迷い無く倒した。アグルは戦いの目的が変わってもその容赦無さは変わらなかった。
ここでのガイアとアグルの戦いは両者のキャラクターの違いが分かりやすくて上手かった。

 

ガイアによってゾンネルは地底に帰され、アグルによってギールは倒された。
そしてG.U.A.R.Dヨーロッパは地底に潜伏する怪獣に向けて地中貫通爆弾を使用。
こうして根源的破滅招来体やアグルによって覚醒された地球怪獣はその動きを封じられた。
怪獣達の悲鳴と共に地球の鼓動が響き渡る。