帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「地球はウルトラマンの星」

「地球はウルトラマンの星 ー根源破滅天使ゾグ 破滅魔虫カイザードビシ 地球怪獣達登場ー
ウルトラマンガイア』第51話
1999年8月28日放送(第51話)
脚本 小中千昭
監督 村石宏實
特技監督 佐川和夫

 

破滅魔虫ドビシ
身長 62cm
体重 6.8kg
地球を覆って太陽光を遮断するが復活したガイア・スプリームヴァージョンとアグルV2に一掃された。

 

破滅魔虫カイザードビシ
身長 62m
体重 6万8千t
腹部から大量のイナゴを吐き出して地球怪獣を次々と倒していくが復活したガイア・スプリームヴァージョンとアグルV2に一掃された。

 

根源破滅天使ゾグ
身長 127m~666m
体重 9万t~66万t
復活したガイア・スプリームヴァージョンとアグルV2を倒す為に再び降臨する。
波動を放つがガイア・スプリームヴァージョンとアグルV2の光線連発で深いダメージを負い怒りからさらに巨大な怪獣へと姿を変える。波動でミズノエノリュウを襲うが最後はガイア・スプリームヴァージョンのフォトン・ストリームとアグルV2のアグルストリームの合体光線を受けて大爆発した。

 

地球怪獣達
太陽の輝きを持っている。
人類と共にカイザードビシと戦うも苦戦を強いられるが最後はアルケミー・スターズが立案してXIGが実行した「ミッション・ガイア」に関わってウルトラマンを復活させた。
地殻怪地底獣ティグリスⅢ 身長 92m 体重 11万8千t
豪腕怪地底獣ゴメノスⅡ 身長 71m 体重 8万3千t
甲殻怪地底獣ゾンネルⅡ 身長 86m 体重 9万5千t
マグマ怪地底獣ギールⅢ 身長 86m 体重 9万4千t
伝説魔獣シャザック 身長 親・67m 子・38m 体重 親・7万t 子・3万3千t
地帝大怪獣ミズノエノリュウ 身長 111m 体重 11万t

 

物語
立ち上がる地球怪獣と人類。
まだ諦めないもの達の想いを受けてウルトラマンが蘇る!
そして地球は、ウルトラマンの星、宇宙に輝くウルトラの星となった……。

 

感想
初めてアグルの光と出会った場所であるプロノーン・カラモスにやって来た藤宮は水槽の中にウルトラマンとは別の光を見付ける。
「あの光は……?」、
チェレンコフ光よ……」。
藤宮が声のする方を見ると、そこには死んだはずの稲森博士がいた。
「どんなにそらがイナゴに覆われようと宇宙からニュートリノが降り注いでいるわ。地球は独りぼっちじゃない。広大な宇宙と繋がっているの……」。
そう言い残して消えていく稲森博士。
稲森博士の言葉からプロノーン・カラモスは宇宙からのニュートリノを観測する為のものだった事を思い出した藤宮は地中を貫くニュートリノの性質を利用した地球自身をネットワークにする通信システムを思い付く。
死んだ後の稲森博士は根源的破滅招来体によって悪女のイメージが付いてしまっていたので最後に本人が登場して悪いイメージを払拭出来たのが良かった。あのまま根源的破滅招来体に利用されたままではさすがに報われない。

 

稲森博士の導きを胸に再びクリシスを起動させる藤宮と我夢。そしてその残された希望は田端さん、リンブン、玲子によって世界に伝えられる事になる。
「今、アルケミー・スターズの2人が世界のネットワークを回復させようとしています。地球は光に満ちた星です。その光が私達を再び繋ぎとめてくれようとしています」。
たとえウルトラマンの力を失っても我夢と藤宮にはまだやれる事、やるべき事が残っていた。そして報道は人々を絶望させるだけではなく人々に希望を届ける事も出来る。

 

クリシスによって通信システムが回復し、ダニエル議長は地球怪獣達を見てキャスが思いついたとっても無茶な方法を皆に伝える。
因みに「地球よ永遠に」では「君達の仲間が世界中でスタンバイしている。後は任せてくれ」と言うダニエル議長の説明の後に藤宮が「ダニエル、俺は今もアルケミー・スターズかな?」と尋ねてダニエル議長が「ずっとそうだったじゃないか、博也」と答える場面がある。
天使降臨」で石室コマンダーに「共に戦う仲間」と言われた時の反応といい、藤宮はアルケミー・スターズやXIGを「仲良しグループ」と揶揄していたが、実はその「仲良しグループ」に憧れを抱いていた事が分かる。
ところでダニエル議長は藤宮の事を「博也」と呼んでいる。昔は「藤宮君」だったのに、いつの間にファーストネームで呼び合う仲になったんだ?

 

思えばダニエル議長は藤宮がアルケミー・スターズを脱退し、クラウスが根源的破滅招来体と繋がっていた等、辛い出来事が結構あった。
こうして見るとダニエル議長メインの話が1話くらいあっても良かったかもしれない。

 

キャスから伝えられたとっても無茶な方法を実行に移すべく堤チーフは推進システムとしてのリパルサー・リフトをリパルサー・フィールドに改造してくれるよう申し出るが、それを聞いた乱橋チーフはかなり不機嫌。まぁ、言う方は簡単だが実際に作業する方はたまったものではないだろう。しかし、カイザードビシに次々と倒されていく地球怪獣達を前に乱橋チーフは意を決し、無茶な要求を受け入れてくれた整備に向かって堤チーフは黙って頭を下げる。
最初は人当たりの良い乱橋チーフだったがなんかどんどん怖くなっていった気がする。ここは監督の違いが出たのかな。なんとなく、北浦監督の回は飄々としているが実は切れ者と言うイメージで村石監督の回は気難しい職人気質と言うイメージになっている。

 

アルケミー・スターズの仲間から動いている怪獣を補足するのはスーパーコンピュータでも計算が追いつけないとの訴えが出るが、キャスはそれならコンピューターを使わないで自分の頭で計算すれば良いと答える。
天才と呼ばれたアルケミー・スターズだから出来る事。今までファイターで戦い続けた技量と経験を持つXIGだから出来る事。この星に生まれたもの達にはそれぞれそのものだから出来る事がある。誰か一人が欠けても地球を救う事は出来ない。そしていよいよ始まるXIG最後のミッション。その名は「ガイア」!
『ガイア』と言うタイトルは今度のウルトラマンは地球生まれである事から名付けられたのだと思われるが、作品を通して見ると地球に生きるもの全てがウルトラマンと共に戦うこの最終回の為にあったタイトルなのかなと感じるようになる。

 

決戦の地にやって来たアッコ達。そこでジョジーは「我夢が勝てなかったら今度は自分がウルトラウーマンになるからね!」と独特な檄を送る。
この頃はあり得ないギャグと言う感じであったが、グリージョやディナスが登場したニュージェネレーションシリーズだったらジョジーの変身もあり得たかもしれない。

 

今回の話では藤宮が初めてアグルの力を手に入れたプロノーン・カラモスが再登場しているが最終決戦の場所も「勇者立つ」で我夢が初めて自分の意思でウルトラマンに変身した所になっていた。
始まりと終わりを繋げるのはベタではあるが人物や状況の成長や変化が分かりやすいので「ここまで見続けて良かったな」と思う事が出来る。

 

我夢と藤宮の所に石室コマンダーがやって来て「世界中のお前達の仲間と、そしてXIGの仲間が共に力を合わせている。必ず……生きて帰って来い!」と告げる。
これで最後になるからか我夢はどうして石室コマンダーは自分達がウルトラマンである事を知っていたのか、どうして自分を信頼してくれたのかを尋ねる。それに対する石室コマンダーの答えは「理由などいるか」であった。
正直言うと石室コマンダーは何か凄い秘密を持っていそうだったので我夢の質問に明確な答えを返してほしかったところではあるが、人を信じるのにあーだこーだと言う理由は確かに要らないのかもしれない。(因みに渡辺裕之さんは石室コマンダーはかつてウルトラマンだったと思って演じていたらしい)

 

我夢と藤宮の所に我夢の両親もやって来る。親に見守られながらウルトラマンに変身するのは珍しい。そう言えば藤宮の家族の話が無かったがどうなっているのかな。なんとなく天涯孤独のイメージがあるが……。
さて、ここに我夢の両親を連れて来たのは一体誰なのか。XIGにその余裕があったとは思えないので瀬沼チーフが妥当かなと思われる。他には我夢と仲が良くて我夢の両親の事も知っている樋口さんの可能性も考えられる。

 

主題歌が流れる中でのミッション・ガイアが盛り上がる!
ヒーロー作品の主題歌あるあるだが本作の『ウルトラマンガイア!』もまるでこの最終決戦の為に作られた歌のように思えてくる。

 

今回の話に登場した地球怪獣はティグリス、ゴメノス、ゾンネル、ギール、シャザック、ミズノエノリュウとなっていて、ミズノエノリュウは東京にいるのでミッション・ガイアには参加していない。ミッション・ガイアは10機のファイターを使って世界各地から東京に光を届ける作戦なので他に5体の地球怪獣がいた事になる。どんな地球怪獣なのか語られていないが、ひょっとしたら劇中未登場の新怪獣だったのかもしれない。

 

ウルトラマン復活を信じて祈る世界中の人々。ウルトラマンは人々の希望の光が具現化した存在だが逆に人々の心に希望の光を与える存在でもある。
そして遂に我夢と藤宮に地球怪獣の光が降り注ぐ。
我夢「着たぞ! 藤宮!!」、
藤宮「我夢! 行くぞ!!」。
光が降り注ぐ中、二人は力強く腕を伸ばして叫ぶ。
我夢「ガイアァァァー!!!」、
藤宮「アグルゥゥゥー!!!」。
エスプレンダーとアグレイターを失いながらも二人はアルケミー・スターズ、XIG、地球怪獣によって再びウルトラマンに変身するのであった!

 

復活したガイア・スプリームヴァージョンとアグルV2によって次々と倒されていくイナゴの群れ。世界全てが昼間と言うのは不自然だが闇に覆われていた世界のそらに再び光が溢れていくと言う展開なのでここは昼間の方が良いであろう。

 

世界各地を襲う鳥系の怪獣、ウルトラマンの敗北をTV中継で見て絶望する人々、それでも絶望しない人々が力を合わせてのウルトラマン復活劇、世界から光が集まってウルトラマンが復活する等、『ティガ』と『ガイア』の最終3話はほぼ同じ構造となっている。ただし、『ティガ』のゾイガーが直接的な破壊だったのに対し『ガイア』のイナゴや魚人はじわじわと侵食していく等色々と違うところもある。

 

この頃はまだウルトラマンの光線技は無闇矢鱈に撃てるものではなかったのでゾグに対してガイア・スプリームヴァージョンとアグルV2が光線技を連発したのには驚いた。必殺技連発はやはり盛り上がるなぁ。

 

ガイア・スプリームヴァージョンとアグルV2の攻撃で大ダメージを負ったゾグは美しい天使から醜い悪魔のような大怪獣へと姿を変える。
この怪獣形態のゾグはマジでデカすぎで『メロス』の怪獣戦艦を除けば着ぐるみで歩ける怪獣としてはウルトラシリーズ最大となっている。
翼を広げたゾグが街を破壊しながら大激走して迫る場面はさすがのド迫力!
攻撃を受ければ受けるほど姿形を変えて巨大になっていくゾグだったが、最後はガイア・スプリームヴァージョンのフォトン・ストリームとアグルV2のアグルストリームの合体光線によって大爆発した。
最後の爆発の場面でゾグが四足歩行だった事がはっきりと分かるが戦闘中にその事をもっと見せつけていたら強大さがより出ていたのかなと思う。

 

夕焼けに立つガイア・スプリームヴァージョンとアグルV2をバックに玲子がTVに向かって語りかける。
「これが地球の光です。この星にはウルトラマンがいます。こんな素晴らしい星が破滅なんか絶対にしません! 私達がさせない努力をしていく限り……」。
勝利に喜び集まる人々に向けて力強く握手する二人のウルトラマンを見て「最高の中継だったぜ!」と喜ぶ田端さんとリンブン。
そしてガイア・スプリームヴァージョンとアグルV2はガッツポーズをした。

 

根源的破滅招来体についての考察。
結局、『ガイア』の劇中で根源的破滅招来体について核心的な何かが語られる事は無かった。そこはそれぞれ自由に解釈してほしいと言う事だと思われる。
根源的破滅招来体の正体については「46億年の亡霊」等で語られた地球の意思、「宇宙怪獣大進撃」等に見られた宇宙人、「襲撃の森」等で語られた未来人、「反宇宙からの挑戦」等に見え隠れしたオーバーロード、「天使降臨」のような神や悪魔、「我夢VS我夢」等の雰囲気が持っていたクトゥルー神話等がある。
因みに自分の説は「元々、根源的破滅招来体は存在していなかった」である。正確には「根源的破滅招来体と言う組織は存在していなかった」であるが。
『ガイア』ではガンQやルクーやエアロヴァイパーと言ったごく一部の例外を除いて殆どの事件は根源的破滅招来体が関係していると思われている。しかし、根源的破滅招来体と言う組織が事件に関係していると明確に語られる事は殆ど無いので、人類が毎回起きる事件を根源的破滅招来体が関係しているに違いないと勝手に考えているに過ぎない可能性がある。(「悪魔のマユ」では出自不明のゴキグモンを石室コマンダーが「根源的破滅招来体と関係あるのか?」と語る場面がある)
ひょっとしたら「コッヴを送り込んだ存在」「金属生命体」「メザード」「未来人を導いた存在」「死神の主」「ゾグを送り込んだ存在」は全く繋がりが無いのだが、地球に襲来してくる存在は何か大きな一つの意思によって繋がっていると言う人類の勝手な思い込みによって「根源的破滅招来体」として一つにまとめられてしまったのではないだろうか。
さらにコッヴやパズズは同じM91の出身だが巨大怪獣を改造して売り渡すような組織が存在すると考えたら、「光をつかめ!」でコッヴを送り込んだ存在、「ロック・ファイト」でヴァーサイトを送り込んだ存在、「宇宙怪獣大進撃」で超コッヴを送り込んだ存在は実はそれぞれ別の組織で単に同じ巨大怪獣売買組織からコッヴ種と言う巨大怪獣を買い取っただけだったと言う可能性も出てくる。
このように考えていくと実は『ガイア』も他のウルトラシリーズと同じように毎回違う敵が襲来していたと解釈する事も可能となる。
「根源的破滅招来体」とは地球で事件を起こした様々な存在を人類がひとまとめにしてしまった存在。つまり「根源的破滅招来体」と言う組織は本当は存在していなかった。人類が勝手に付けたただの名称であったとなる。
まぁ、ツッコミどころのある解釈かもしれないが、こういう解釈も出来ると言う事で。
(カイザードビシやゾグも今まで地球と他の組織の戦いを静観していた何者かが収集してきた怪獣やウルトラマンのデータを基に作り出したと考えれば、カイザードビシとゾグを送り込んだ存在は実は最終3話だけ地球を攻撃したと考える事も出来る)

 

戦いが終わった後、美しい朝陽に照らされて晴れやかな笑顔で歩く藤宮は今までの黒い服ではなかった。
一方、我夢はウルトラマンの力を得たあの公園にいた。ノートパソコンの中のPALに注意されながらサトウ、マコト、ナカジと学園生活を送る我夢。全てが一年前のあの日に戻った。いや……、
風を感じ、道端の草に水を与える我夢はふとビル街にミズノエノリュウの影を見る。周りを見る我夢は何かを全身で感じる。
「そうなんだ……。これが、これが地球なんだ……。オーーーイ!!!」。
笑顔で遥かそらを見上げて叫ぶ我夢。
やがて我夢を見つめていた視点がどんどん高くなっていき、日本、そして地球へと移っていく。そして地球は宇宙に輝く一つの光、ウルトラの星となった。
地球に生きるもの達は根源的破滅招来体との戦いで色々な事に気付き新たな時代を切り拓いたのだった。

 

『ダイナ』の時と同じく『ガイア』でも最終3話に未公開シーンを付け加えた特別編「地球よ永遠に」が発売されている。
「地球よ永遠に」では最終回から数ヶ月後の話で卒業論文の手伝いを頼もうとする我夢や笑顔でからかう藤宮と言った平和を取り戻した世界を見る事が出来る。

 

「地球には怪獣がいて、ウルトラマンがいる。この美しい星を、私たちはもっと愛していきたい。」