帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「我夢追放!」

「我夢追放! ー剛腕怪地底獣ゴメノス登場ー
ウルトラマンガイア』第23話
1999年2月13日放送(第23話)
脚本 吉田伸
監督・特技監督 北浦嗣巳

 

剛腕怪地底獣ゴメノス
身長 70m
体重 8万t
秩父山中から現れた。パーセルによって活動を停止させられるが稲森博士によって活動を再開させられる。
ギールやゾンネルとほぼ同じ構造をしている。口から火を吐き、両手から高熱を発する。
ガイアを苦しめるがチーム・クロウの援護を受けたガイアのフォトンエッジで倒された。

 

物語
かつて藤宮が使用した機械語デコーダを改良したパーセルでG.U.A.R.Dは怪獣をコントロールしようと考える。
パーセル開発担当である稲森博士はある秘めた想いを胸に行動を開始する。

 

感想
『ガイア』は元から連続ドラマの要素が強いがここからの4話は藤宮を中心にした物語となっている。ウルトラシリーズで四部作は『ザ☆ウル』以来となる。
続き物の時は一人の脚本家が全ての話を担当する事が多いが今回は4人の脚本家が各話を担当すると言うユニークな形が採られている。

 

アグル対ガイア」で我夢が入手したデコーダは稲森博士によってパーセルにヴァージョンアップされていた。
藤宮がゾンネルを完全にコントロールできなかったのは怪獣のデータが足りなかった為らしく、今回はジオ・ベースが保管している怪獣のデータが使われた。
パーセルは怪獣を思い通りに動かすのではなく闘争本能を鎮めるもので怪獣被害の回避と怪獣の捕獲分析が目的との事。とは言え、人類が怪獣をコントロールする段階に突入したと言う事に変わりはない。

 

個人的な想いで藤宮と稲森博士の関係を調べて接触してきた玲子。そんな玲子に対して稲森博士は「彼にもあなたのような友達がいたのね」と語る。
この回の稲森博士は既に自分の運命を悟っていたのか玲子に藤宮の事を託すような雰囲気が感じられる。
個人的な意見だが、年齢差があるからか自分は稲森博士は藤宮の恋人と言うより母親に見えて、今回の稲森博士の行動も母親の子供に対するそれに見えるところがある。

 

稲森博士がパーセルでゴメノスをコントロールした事で先のエリアル・ベース事件とジオ・ベースデータ盗難事件に関わっていると疑われている藤宮の存在がG.U.A.R.Dの中でクローズアップされる。
千葉参謀はリザードにこれらの事件の調査を依頼し、得た情報から藤宮とアグルの関係を睨んでいた。
又、リザードは藤宮と我夢が密かに接触していた事も突き止めていた。瀬沼チーフが我夢と藤宮とウルトラマンの関係をどこまで掴んでいるのかは不明だが、「野獣包囲網」で瀬沼チーフは我夢と藤宮が「ウルトラマン」と言う単語を出して話しているところを目撃しているので、実はかなり決定的なところまで知っている可能性はある。

 

藤宮との接触を報告しなかった理由を我夢は藤宮を説得するつもりだったと答えるが、石室コマンダーは「お前からXIGのライセンスを一時剥奪する。お前はXIGメンバーとして我々の信頼を失った。この艦から今すぐ降りろ!」と指示。堤チーフが反論しようとするが千葉参謀は「これは決定事項だ!」と止めを刺す。
この時の千葉参謀は終始厳しい雰囲気。どちらかと言うと憎まれ役を買って出ている感じがある。前回の「石の翼」でG.U.A.R.Dや人類が置かれている状況が良くない事が描かれているので、G.U.A.R.Dや人類に多大な被害が生まれる恐れがある我夢の裏切り行為に千葉参謀が厳しく接するのは理解できる。

 

堤「我夢を監視しろ!」、
梶尾「それで藤宮の居場所を……ですか?」、
堤「そんな事はリザードが勝手にやる。お前の役目は」、
梶尾「あいつが何かしでかしてからではなく、しでかす前に止める事……ですね?」、
堤「そうだ。さっさと行け!」、
梶尾「はい!」。
本当に堤チーフは我夢に甘すぎる。まるで子供を心配する父親みたいだ。
そんな堤チーフの真意を分かっていながらあえてズラした意見を述べてニヤリとする梶尾リーダーが面白い。

 

梶尾リーダーの尾行に気付いた我夢は襲われた振りをして梶尾リーダーを誘き出す。
サバイバル訓練を受けていながら殆ど素人の我夢に引っ掛けられる梶尾リーダーって……。

 

かつて稲森博士は地球環境改善プランを提案していたが今は地球環境より根源的破滅招来体との戦いを優先させるとして全て却下されていた。その代わりに稲森博士が担当させられたのは怪獣をコントロールするパーセルの開発。
人類はまだ物事の原因が自分達にあるとは考えないのだった。

 

怪獣をコントロールするパーセルの開発を続けていた稲森博士は地球の生物が人類の自分勝手さに怒って出てくるのが怪獣なのではないかと考えるようになり、それなら人類一人一人の意識が変わらない限り地球生物の怒りは鎮まらないと結論付け、パーセルでコントロールした怪獣で街を破壊する事で地球生物の怒りを目の当たりにした人類の意識が変化する事を求めた。
かなり荒っぽい方法であるが、稲森博士は人類には緩やかに意識を変えるだけの時間は残されていないと焦っていた。ここで言われている時間とは藤宮が人類滅亡に本格的に動き出すまでの時間だと思われる。おそらく人類の意識を変える事で藤宮に人類滅亡と言う手を血に染める事をさせないようにしようとしたのであろう。
しかし、残念ながら稲森博士の計画は失敗に終わり藤宮の腕の中で命を落とす事になる……。

 

パーセルを使ってゴメノスの闘争本能を高ぶらせた稲森博士だったが、なんとゴメノスは自らパーセルを外して稲森博士を攻撃してしまう
やはり人間に怪獣をコントロールする事は不可能であったのだろうか。

 

稲森博士の死を目の当たりにしたガイアはゴメノスにその怒りをぶつけるが、ゴメノスは稲森博士に闘争本能を高ぶらされていただけなのでこれは八つ当たりに近い。ゴメノスは本当に気の毒。

 

怒りでは勝てないのがウルトラシリーズの基本。
当然、苦戦を強いられたガイアはチーム・クロウの援護で何とか勝利を得る。

 

ゴメノスの攻撃を受けて倒れる稲森博士。そこに藤宮が現れる。
藤宮「何故……こんな事を?」、
稲森「もっと……見たかった。あなたの笑顔を……」。
稲森博士の手から落ちるパーセルのデータ。藤宮の絶叫が響き渡る。
稲森博士は藤宮にもっと笑顔でいてほしかった、つまり、もっと幸せになってほしいと思っていたのだが、そんな稲森博士の行動がどう考えても幸せにも笑顔にも結び付かなさそうなのが辛い……。

 

戦いが終わり、我夢と梶尾リーダーが稲森博士の所に戻ってくるとパーセルのデータが残されていた。
我夢は怪獣をコントロールする事では地球は救えないと藤宮は気付いたと語るが、梶尾リーダーは稲森博士は藤宮の為に死んだのにまだ藤宮を説得するつもりなのかと問い詰める。
藤宮は今までも人類滅亡と言う考えを持っていたが中々それを実行に移せなかった。しかし、今回の稲森博士の死をきっかけにいよいよ行動を開始するようになる。皮肉にも稲森博士の行動は藤宮が手を血に染める時間を早める事になってしまったのだった。