「月面の決戦 ーミーニン カオスウルトラマンカラミティ カオスダークネス登場ー」
『ウルトラマンコスモス』第64話
2002年9月21日放送(第59話)
脚本 大西伸介
監督 根本実樹
特技監督 佐川和夫
カオスウルトラマンカラミティ
身長 47m
体重 4万2千t
コスモスの挑戦を受けて月面へ向かった。
カオスヘッダーの目的は秩序をもたらす事だったとして、自分達の邪魔をするコスモスに憎しみをぶつけて決戦を挑んだ。
エクリプスモード相手に優勢に戦うがソアッグ鉱石のある場所に誘導されて形勢逆転されると最後はエクリプスモードのコズミューム光線を受けて消滅した。
カオスダークネス
身長 70m
体重 7万6千t
P87ポイントの全てのカオスヘッダーが集結した実体カオスヘッダーの最終形態。
強力な念力を駆使してコスモスを追い詰めるがEYESのカオスキメラとエクリプスモードのコズミューム光線で撃退される。
名前の意味は「混沌の闇」かな。
物語
コスモスとカオスヘッダーの戦いの舞台は月面へ……!
ヒウラキャップは人類の平和の為にムサシとコスモスを犠牲にする事を決断するのだが……。
感想
「カオス激襲」の続き。
「行くなー! ウルトラマンコスモス!」。
トレジャーベースがカオスヘッダーに占拠された事を知って戻ろうとするムサシをフブキ隊員はコスモスの名前を出して止める。かなり前から薄々気付いていたが、ムサシの気持ちを考えて、又、自分もムサシとコスモスの関係を認めるのが怖くて、今まで黙っていたとの事。
確かにコスモスとの関係を聞かれてもムサシはどう答えたら良いか困ったであろう。それはフブキ隊員も同じで、コスモスとの関係を明らかにした後、ムサシとどう接すれば良いのか答えを持ち合わせていなかったのだと思われる。
人間が見上げるほどの巨体で数多くの奇跡を起こす存在。人間にとってウルトラマンはいかに大きい存在か、そしてその巨大な存在が実は今までずっと行動を共にしていた仲間と同一だったと言う事がどれほどの衝撃か……。ウルトラマンの正体を知る知られると言う事はそれほど大きい事なのだ。
カオスヘッダーの目的はコスモスだとしてムサシは自分が標的になろうとするが、フブキ隊員は弱っているコスモスをみすみす行かせるわけにはいかないと力尽くでも止めようとする。
怪我を負いながらも負けないと攻撃してくるフブキ隊員とそれを必死に避けるムサシ。途中、怪我に苦しむフブキ隊員を見てムサシは思わず助けに行くが、その隙を突かれて倒されてしまう。
「どうしてそこで油断する? いつまでも優しさに振り回されやがって! ……でも、そこがお前の良いところだけどな」。
気を失うムサシを見下ろすフブキ隊員の言葉は厳しいながらもどこか優しかった。
カオスヘッダーによって完全に密閉されて酸素が少なくなっていくトレジャーベース。ムサシ愛用のテックサンダー4号でフブキ隊員が駆け付けるがカオスヘッダーの攻撃で絶体絶命の危機に陥る。そこにコスモスが現れ、カオスウルトラマンカラミティと共に月面に移動する。
時間が無かったのは分かるがもう少しフブキ隊員に活躍の場を与えてほしかったなぁ。
コスモスとカラミティが月に向かった事を知ったフブキ隊員は援護に行かせてほしいと訴えるがヒウラキャップはP87ポイントの攻撃以外にテックブースターを使用する事は出来ないと答える。アヤノ隊員も頼み込むが、そこに防衛軍からシールドを破壊された鏑矢諸島から怪獣達が逃走した事が知らされ、それらがカオス化する前にP87ポイントのカオスヘッダーを殲滅させなければいけなくなってしまう。
フブキ「待って下さいキャップ! コスモスは! ウルトラマンコスモスは!」、
ヒウラ「それ以上言うなフブキ! ……今は、これしか道が無いんだ」。
必死に追いすがるフブキ隊員を振り切ってヒウラキャップはテックブースターで宇宙に向かう。
ヒウラ「許してくれ……、ムサシ」。
地球に残っていたアヤノ隊員達もムサシとコスモスの事を想う。
アヤノ「ムサシ……」、
フブキ「アヤノ、お前も知っていたのか……」。
二人の会話からシノブリーダーがある事に気付く。
シノブ「もしかして……」、
フブキ「ムサシが……ウルトラマンコスモスなんです」、
ドイガキ「な、何バカな事言ってんだよ、こんな時に……」。
フブキ「信じられない気持ちは誰だって同じだ。しかし、あいつがコスモスとして、この地球で怪獣達を救い、カオスヘッダーと戦ってきたんだ。だが、今のコスモスにはもう殆ど力が残っていない。ひょっとすると、カオスヘッダーに……」。
今回の話はウルトラシリーズで恒例の正体バレ編。ドイガキ隊員の発言は聞いているこちらが「こんな終盤に何バカな事言ってんだよ!」と思わずツッコみたくなるものであった。まぁ、気付くきっかけが全く無いと同じ特別チームの仲間でもこういう感じになってしまうものなのかな。個人的には勘が鋭い上にムサシとの絡みも結構あったシノブリーダーが気付かなかったのはちょっと残念だった。
人類の為にコスモスとムサシを見殺しにする事を必死に止めようとしたフブキ隊員。こういう役回りはヒロインが担当する事が多いが『コスモス』と言う作品を考えるとアヤノ隊員よりフブキ隊員の方が物語の上で重要な役を担っていたので納得できる。
ヒーロー作品は戦いがメインの一つになっているので戦闘に参加する事が少ない女性キャラより一緒に戦う男性キャラの方が主人公との話が作りやすいところがあって、男性ヒーローと女性ヒロインの組み合わせの他に男性によるダブルヒーローの組み合わせもかなり多い。フブキ隊員は変身こそしないが物語における役割は主人公のムサシに匹敵していてダブルヒーローに近い扱いであった。
月面に降り立った秩序(コスモス)と混沌(カオス)のウルトラマン。
コスモス「カオスヘッダー、お前は何故星々を破壊し、宇宙を混乱に陥れる?」、
カオスヘッダー「我々こそが秩序をもたらす」。
コスモスの問いに意外な答えを返すカオスヘッダー。一方、結晶体の解析を終了させた吉井ちゃんはカオスヘッダーが混乱していた星に秩序をもたらす為に乱れた世界を一つにまとめる為に人工的に作られた生命体だった事を突きとめる。
カオスヘッダー「我々は無数であり一つ。幾つに分かれても我々は一つの意思で動く」、
吉井「一つの星で生きていながら、そこに生きる様々な生物の考えは皆異なる。考えが違えば憎み、争い、殺し合う……」、
ドイガキ「一つの意思で動くカオスヘッダーと全ての生物が同化すればその考えは一つとなり秩序が生まれる……」。
そしてカオスヘッダーに乗っ取られた生物が凶暴化するのも秩序が生まれる前の苦しみとして一時的に肉体が変形し精神が乱れていただけで、いずれは秩序に組み込まれるところだった事が明らかになる。しかし、コスモスはかつて救えず滅亡した星の光景を胸にカオスヘッダーを厳しく糾弾する。
コスモス「私は見た。お前が生態系を変えた星を! それも秩序に向かう途中だったと言うのか?」、
カオスヘッダー「そうだ。生き残ったその星の生物はやがて一つの意思の下で秩序を築く。その為に犠牲が必要な事もある」、
コスモス「必要な犠牲など……あってはならない!」。
ドイガキ隊員はカオスヘッダーを「自分の星に秩序をもたらそうとした者達があくまで善意で作り上げた生命体だった」と結論付けるが、フブキ隊員はそれを「押し付け」と一蹴する。
シノブ「そう、秩序は与えられるものじゃない。考えの異なる者が互いの考えを尊重しながら作り上げていくものよ」。
遂に明かされたカオスヘッダーの正体と目的。「平和な世界を作る」と言う目的は同じだが、犠牲を出さないようにするコスモスと犠牲は必要だと切り捨てるカオスヘッダーとでは平和に至る過程が大きく違っていた。
一応は悪役なのでカオスヘッダーの方法は否定されているが、話を聞くとカオスヘッダーのやり方全てが悪いとは言えないところがある。
実際、多くの勢力が入り混じって紛争が続く状況でコスモスやムサシみたいに犠牲を出さないで皆が納得できる解決方法を考えて実現させるのはかなり難しい。それでも時間をかけて頑張っていかなければならないと言うのは理想だが、それでは平和が実現するまでの間に犠牲となる命が出てしまう。それならカオスヘッダーみたいに強引な手段を使ってでも多くの勢力を一つにまとめあげて手っ取り早く平和を実現させてしまった方が実は犠牲となる命が少なくなる可能性がある。この場合、一つの意思の下に動かされる事になるので自由を失ったと言えるが、今この瞬間にも命の危機にさらされている人々は自由よりもまず命の保証を求めるかもしれない。
「混沌」と言う名前を与えられたカオスヘッダーの目的が「秩序」の実現で、「秩序」と言う名前を与えられたウルトラマンコスモスの行動が時と場合によっては「混乱」を長引かしてしまう恐れがあると言うのが興味深い。
前回の「カオス激襲」でコスモスの行動全てが善とは言い切れないとして、今回の話でカオスヘッダーの目的は悪とは言い切れないとした事で『コスモス』は善悪二元論を崩した。
「邪魔をするなコスモス! 我々は人間の心を知った。憎しみを……怒りの感情を我々は知った! コスモス、お前が憎い! お前を倒す!」。
遂に始まるコスモスとカオスヘッダーの決戦。異なる考えも尊重しなければいけないと言う台詞に則ってか、カオスヘッダーの考えに対する批判はあまり行われず、この後は考えの相違による戦いではなく、主義や主張は関係無く「憎いから」と言う感情によって戦いが続いていく事になる。その結果、最終回の「真の勇者」ではどちらの考えが正しかったのかと言う事は論じられず、憎しみを克服しようと言う展開になっている。
コスモスが爆発の中でコロナモードに、そのまま飛び上がりながらエクリプスモードにモードチェンジして、地球をバックにコスモスとカラミティが構える場面がかなり格好良い!
P87ポイントに向かっていたヒウラキャップはコスモスとムサシのいる月に視線を向けると、しばらく考えた末にテックブースターを月へと向ける。
地球全体の事を考えたらこの決断は非難されるものかもしれないが、ここでこういう決断をするのがウルトラシリーズの特別チームの隊長なんだなと自分は思う。
コスモスとヒウラキャップによってカラミティは倒されたがP87ポイントのカオスヘッダーが全て襲来してカオスダークネスが誕生する。
カオスダークネスはカオスウルトラマンではなくイブリースやメビュートの流れを汲むデザインとなっている。
最初は「光」として現れたカオスヘッダーが最後は「闇」を意味する名前になってしまったと言うのは色々考えさせられるものがある。
今回の決戦ではコスモスのカラータイマーがウルトラシリーズでも例を見ないほどに高速で点滅していて見ているこちらも落ち着きを失ってしまう。こうして見ると戦いを盛り上げる設定としてカラータイマーはやっぱり優れたアイデアだったんだなぁ。
カオスダークネスに追い詰められるコスモスを見てEYESの皆は「立ち上がれ!」と必死に応援するがアヤノ隊員だけは「もう止めて、もう逃げて!」と戦いの終わりを望んでいた。「地球の悲鳴」で取り上げられた「戦う事を強制する・させられる」を考えるとかなり大事な場面かもしれない。
死闘の末にカオスダークネスを撃退したコスモスはカラータイマーからムサシを分離させてテックブースターに送る。
意識を取り戻したムサシはコスモプラックが元の輝石に戻ったのを見て慌ててコスモスの姿を探すが、ムサシの目の前でコスモスのカラータイマーから光が消え、コスモス自身も姿を消してしまうのであった。
今回のムサシは冒頭でフブキ隊員に気絶させられて、最後にコスモスと分離した時もあまり状況を理解していない雰囲気だった。カオスヘッダーとの対話でもムサシの意思が現れなくてコスモスが話し続けていたので、ひょっとしたら今回は変身から戦闘まで全てコスモスの意思によって行われていたのかもしれない。
「コスモス……。コスモス! ウルトラマンコスモス!!」。
宇宙に響くムサシの叫び。果たしてコスモスとカオスヘッダーの行方は?
と言う事で次回「真の勇者」に続きます。