帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「虹が出た 後編」

「虹が出た 後編
ウルトラマンブレーザー』第8話
2023年9月2日放送(第8話)
脚本 山崎太基
監督 中川和博

 

天弓怪獣ニジカガチ
身長 60m
体重 4万5千t
横峯教授が日本各地に隠されていた七つの腕輪を身に付けて聖なる泉に浸して腕に蛇の印を刻んだ事で復活した。
横峯教授の思考を具現化していくが、横峰教授の腕輪が破壊された後も活動を続けた。
額のクリスタルから虹光線を放つ。
アースガロンMod.2のレールキャノンで額のクリスタルを破壊されて虹のエネルギーを放射すると、その虹のエネルギーを利用したブレーザーのレインボー光輪で倒された。しかし……。

 

物語
文明を洗い流す為にニジカガチによって巨大な台風が作られていく。
事態を解決する為、SKaRDはニジカガチと横峰教授との戦いを決意する。

 

感想
このまま人類が突き進めば地球上の生命の調和を蝕むとしてニジカガチによる文明のリセットを始めた横峯教授をアンリ隊員は「いくら何でも乱暴すぎます」と評する。
でも横峯教授からしたら間違いを正さず突き進んでいる人類の行動こそ「乱暴」と言いたいんだろうなぁ。

 

相手が「地球を救う為に人類を滅ぼす」なら主人公側も「人類を救う為に個人の命を奪う」と言う選択があり得ると言うのは子供向けのヒーロー作品では中々見られない展開であった。
ヒーロー作品の対象年齢を上げる際にどういう展開を入れるのかとなったら「難しい言葉を使う」とか「人類やヒーロー側の正義を揺るがす」とか「エロやグロを入れる」とかがあるが今回の話では「主人公達が命を奪う対象を怪獣や宇宙人から人間にまで拡大させた」となった。
「殺人」の可能性を判断できるのは主人公が隊長と言う決定権がある人物である『ブレーザー』ならではだと言える。これを従来のウルトラシリーズのように新入隊員の主人公が決断しようとしてもおそらくは隊長や副隊長に止められるか実行するにしても新入隊員ではなくベテラン隊員が担当していると思う。

 

「腕輪が媒介となって横峯教授とニジカガチを繋いでいる」と説明する時にゲント隊長は自分の左腕を気にしていた。おそらくゲント隊長は自分とブレーザーも左腕に現れるブレスを媒介に繋がっていると考えているのだろう。

 

横峯教授と話をするのはゲント隊長かテルアキ副隊長か。
ゲント「だが最悪の場合、教授の命を奪う事になる。君にそれが出来るか?」、
テルアキ「あなたになら出来るのですか?」、
ゲント「分かった。ただし、無理はするなよ」。
「出来るか?」と問われた時は「出来る」と答えるのが普通なのだが今回は「あなたになら出来るのですか?」と言う返しになっていて、結局、ゲント隊長もテルアキ副隊長も「教授の命を奪う事が出来る」とハッキリと言わないのが意外だった。果たしてゲント隊長とテルアキ副隊長は教授の命を奪う事が出来たのか出来なかったのか……。

 

アースガロンMod.2の登場シーンがカッコイイ!
やはり「逆光は勝利」であ~る。

 

アースガロンMod.2のレールキャノンの反動が強くて照準が定まらないので伏せた状態で撃って反動を抑えて当てると言う展開が上手かった。

 

横峰教授と過去に登場した自然を脅かす人類は滅ぼす的な人物達との違いは「横峰教授は人類の可能性を信じている」かなと思う。
横峰教授は「文明を一度リセットしたら人類は今度は正しい道を歩めるはず」と信じている。だからゲント隊長やテルアキ副隊長に「人類はやり直せる」「人類を滅ぼす事はいけない」と言われても「人類は滅ぼさない」「人類にやり直しの機会を与える」と返す事が出来る。それを理解したテルアキ副隊長は人類について話をしても横峰教授の考えは変えられないとして、ニジカガチによる被害は人類以外の生物にも及んでしまうと説得の内容を変えるのであった。

 

ニジカガチから放射された虹のエネルギーをブレーザーが掴むとニジカガチストーンが形成されて、それを使ってブレーザーは新しい技である虹色の光輪を発する。
この虹色の光輪の名前はゲント隊長によって「レインボー光輪」と名付けられる。おそらくゲント隊長は車のハンドルと剣がくっついた武器は「ハンドル剣」、ドアのような形をした銃には「ドア銃」と名付けるネーミングセンスの持ち主なんだろうな。

 

あれだけ強力な怪獣を一人の人間でどうこう出来るはずがないとして横峰教授は嫌疑不十分で釈放される。
まぁ、横峰教授とニジカガチの繋がりを科学的に証明する事は難しいと思われるのでこれはなるほどなと感じた。ただ、横峰教授は地球防衛隊の怪獣対策マニュアルに大きな影響を与えた人物なので、そんな重要人物である横峰教授を犯罪者にするわけにはいかないと言う地球防衛隊の思惑も感じるところはある。

 

ブレーザー』は主人公を「隊長」と言う人間的に完成された人物にする事で、これまでの作品にあった主人公の成長ドラマをカットして、その分の時間を怪獣に関する描写に充てる事が出来た感じがする。

 

今回の前後編は怪獣と自然を結びつけた話としてウルトラシリーズの中でも上位に入る完成度であった。ニュージェネレーションシリーズを10年続けてこういう話も出来るようになった事に感動する。