帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「その名はアースガロン」

「その名はアースガロン」
ウルトラマンブレーザー』第3話
2023年7月22日放送(第3話)
脚本 小柳啓伍
監督 田口清隆

 

甲虫怪獣タガヌラー
身長 60m
体重 5万t
世界中で液化ティーテリウムの貯蔵庫を襲撃して摂取し巨大化していった。
摂取したティーテリウムでエネルギー融合を起こして体温を100万度まで急上昇させる。
両腕の大鎌をアースガロンのアースファイヤーで破壊される。
100万度を超えるティーテリウムエネルギーを頭部から宇宙に向けて放出した後、ブレーザーのスパイラルバレードで倒された。

 

物語
SKaRDに新戦力のアースガロンが加えられる。
そんな中、世界各地で新エネルギーのティーテリウムの貯蔵庫が空になると言う事件が起きる。

 

感想
SKaRDの「楽しくてしんどい訓練」が楽しい回。
前回の話もだがこういう「チームを一から作り上げていく」と言う展開はウルトラシリーズでは意外と無かった。『初代マン』から半世紀以上の歴史があるがまだまだ描いていないものがあるんだなと気付かされる。

 

ブレーザー』は「ウィルコ」や「ブラボー」と言った単語が出てくるがこれらは実際の軍事用語らしい。こういうところに拘るのが実にオタクっぽいなと思う。自分もオタクなのでよく分かる。

 

SKaRDは皆が専門用語を使ったりオタク度が高かったりと一般人とはちょっと違う感じの人物が揃っているので、そう言ったものが薄いアンリ隊員が一般人に近いリアクションをしてくれるのが助かる。
ふと思ったのだが、ゲントが隊長、テルアキが副隊長、エミが特殊な事情を持っている、ヤスノブがメカニックとなっているので、パイロットで一般人に近い感覚を持っているアンリは従来のウルトラシリーズでは主人公になる位置なんだなぁ。

 

アンリ隊員の「特殊部隊っぽい……」と言う呟きが好き。
リアリティを出す為か『ブレーザー』は他の作品に比べてこういうぼそっと呟く場面が多かった気がする。

 

関智一さんが演じる研究員は今回の話の設定を説明する役で彼自身のドラマは殆ど無いのだが、それでもかなり印象に残るキャラであった。

 

自分はゴジラの平成VSシリーズの世代なのでメカゴジラやモゲラを思わせるアースガロンの出撃シーンは見ていてワクワクする。
特撮ヒーロー作品で巨大ロボットと言えば既にスーパー戦隊シリーズがイメージを確立させているので、そことの差別化且つ怪獣作品に巨大ロボットを出す正当性として『Z』や『ブレーザー』で平成ゴジラメカゴジラの系譜を持ってきたのはなるほどであった。

 

今回は巨大ロボットのアースガロンが登場したので『Z』以降のニュージェネレーションシリーズっぽい話となった。とは言え、巨大メカが毎作登場するようになったと言っても作品ごとに設定は違っていて、『Z』はセブンガー、ウインダム、キングジョーストレイジカスタムと巨大ロボットを次々と投入していって、『トリガー』はGUTSファルコンやナースデッセイ号と言った戦闘機が変形して、『デッカー』のテラフェイザーは最初は味方で登場して途中は敵になって最後は再び味方になった。そして本作のアースガロンは一つの機体に追加装備をしていくと言う形になった。

 

ゲント「全部隊へ。こちらアースガロン。作戦空域に侵入する」、
「だから止めろ! 同士討ちになる!」、
ゲント「じゃあ、撃たなきゃいいでしょ」。
この時のゲント隊長がかっこ良すぎる!
ここは「隊長」と言うキャラクターを上手く活かした場面であった。

 

倒されたアースガロンの目がグルグルになっているのが可愛い。

 

体内の温度が1万度を超えたタガヌラーを触って「アチッ!?」っぽい言葉を発するブレーザー。この時点のブレーザーはまだ人間の言葉を使う感じはしないので、これはゲント隊長の人格が出たのかな?

 

今回は初出撃なので最後はブレーザーに良いところを取られたがこの後に強化されていっていつかはブレーザーに匹敵する活躍をするのかなと思いきや意外とアースガロンが単独で怪獣を撃破する事は無かった。
従来のウルトラシリーズは「新人で先輩にフォローされる立場の隊員がウルトラマンに変身したら先輩を助ける事になる」「ウルトラマンは最強だが人格はまだ経験不足の若者なので経験豊富なベテランの隊員がウルトラマンを助ける事がある」となっているのだが、『ブレーザー』は「変身前は隊長であるゲントが、変身後はウルトラマンであるゲントが、事態打開に向けて大きな働きをする」「ウルトラマンは最強でゲント隊長も経験豊富である」となっている。つまり、従来のウルトラシリーズでは「新入隊員がウルトラマンに変身する」事で様々なパワーバランスが変化するのだが『ブレーザー』は「隊長がウルトラマンに変身する」ので変身していない状態でも変身した状態でもゲント隊長が他の隊員より少し上にいる感じになっている。その為か一部の例外はあるが基本的に『ブレーザー』の物語は「ゲント隊長=ブレーザーが最終的に殆ど全ての物事を解決する」と言う形になっている。

 

平成以降のウルトラシリーズだと物語の序盤では活躍できなかった特別チームも戦力を増強して物語の終盤ではウルトラマンに匹敵する活躍をする事があるが『ブレーザー』では最初から最後までアースガロンよりブレーザーが活躍する形になっていた。
個人的な意見だが自分は『ブレーザー』と言う作品は「成長」ではなく「慣れ」を描いているのかなと感じた。「成長」してアースガロンがブレーザーを上回るのではなく、アースガロンが苦戦しているところにブレーザーが現れて最終的にブレーザーが物事を解決すると言うのに「慣れる」と言った感じ。
ブレーザー』では「ファースト・ウェイブ」でゲント隊長の突然の行動に驚いた新入りに対してベテランが「あの人はそういう人だから」と「慣れた」感じで説明していたし、段々とSKaRDはゲント隊長が作戦中に不在になる事に「慣れて」指示が無くても動けるようになるし、息子のジュンも最終的には「仕事の時の父親はこちらには来ない」と言う事を理解できるほどに「慣れていた」。
ドラマでは「成長」を描く事が多いしその方が色々と分かりやすいのだが、現実で我々が「成長」しているかと言ったらそれは違っていて、実際は色々な事に「慣れる」事で物事を乗り越えていっているところはある。なので、「成長」ではなく「慣れ」を描いた『ブレーザー』は作り物のドラマと言うより現実寄りと言えるのかもしれない。
因みに「慣れ」が全てを良い方向に持って行ってくれるとは限らず、防衛隊が昔から考え無しに大規模火力で怪獣を攻撃して事態を悪化させたりしているのは「慣れ」故に停滞して事態の変化に対処できなくなってしまっているのだと思われる。