「光と炎」
『ウルトラマンブレーザー』第19話
2023年11月25日放送(第19話)
脚本 継田淳
監督 越知靖
汚染獣イルーゴ
身長 測定不能
体重 測定不能
ゲバルガの幼体で以前にゲバルガがネットワーク汚染の拠点にした通信施設を中心点に放射状に多数現れた。
地下の通信ケーブルに寄生して広範囲に拡散・増殖していく。
最後はファードランの力を得てパワーアップしたブレーザーとアースガロンによって殲滅させられた。
宇宙汚染超獣ブルードゲバルガ
身長 150m
体重 5万5千t
イルーゴの出現箇所の中心点から現れた。
以前にゲバルガが通信施設をジャックした際に種子を地下深くに産み付けていた。
繁殖の役割を持っていて多数のイルーゴを生み出していた。
最後はファードランの力を得てパワーアップしたブレーザーに倒された。
物語
倒したはずのイルーゴが次々に現れた!
イルーゴはゲバルガの幼体でセカンド・ウェイブがまだ終わっていなかった事が判明する。
一方、V99について調査を続けるエミ隊員の前に現れたのは……。
感想
アメリカから運び込まれたワームホールを発生させるシステムを復元させる為にあらゆる分野の科学者が岐阜山中にある宇宙装備研究所第66実験施設に集められ、今から3年前に装置の復元が完了して起動される事になったのだが制御不能になったワームホールにエミ隊員の父親を始めとする数名の科学者達が飲み込まれてしまった。
大きな組織が過去に過ちを犯してしまった事が全ての原因だったと言う作品は多いのだが、ウルトラシリーズでは宇宙からの侵略者が元凶になる事が多くて、『ブレーザー』のように地球人の失敗をメインストーリーの始まりに置いた作品は意外と無い。
西崎がエミ隊員の父から預かっていたのは娘の写真が入ったペンダントであった。そのペンダントには「1999.10.12」と刻まれていたが、実はエミ隊員の誕生日は10月11日で、エミ隊員の父親は尊敬する昭和の天才物理学者・石堂泰之助の誕生日である10月12日を間違って刻んでしまったのだった。
ペンダントに刻まれた数字には実は別の意味があったのだがエミ隊員の話を聞くに昔から娘の誕生日を間違えていたらしい。これはゲント隊長も言っていたようにあり得ないよなぁ……。まぁ、ゲント隊長も親としては他の人の事をとやかく言えない感じはするが……。
何となくだが『ブレーザー』の父親はゲント隊長にエミ隊員の父親にテルアキ副隊長の父親に『大怪獣首都激突』のマブセ社長にと劇中ではあまり強く非難されていないけれど父親としては失格な人が多い。
「結局最後はいつもブレーザー頼みだ。お前達がアタフタしている間に何を考えているのか分からない宇宙人が現れ怪獣を倒し去っていく。その繰り返しだ。こんな事ではSKaRDの存在意義が疑われても仕方が無い。違うか?」。
ハルノ参謀長の言葉にSKaRDは「ブレーザーは仲間で信じている」と返すが実はこの答えは地球防衛隊の上層部にとってあまり効果が無かったりする。
この時点でハルノ参謀長が上層部の思惑をどこまで把握していたかは不明だが何か後ろめたい事を隠している事は分かっていたはず。『ブレーザー』の地球防衛隊の上層部は『平成セブン』の地球防衛軍に近いところがある。地球防衛軍の上層部はノンマルト事件の真相が明らかになったら地球が宇宙中から糾弾される事を知っていたので地球人だけで地球を守れるようにと「フレンドシップ計画」と言う強硬手段に出た。『ブレーザー』の地球防衛隊の上層部もV99案件が明らかになったら地球が宇宙中から糾弾される事を怖れていたと思われ、SKaRDを結成したりと色々新しい事をしていたのは宇宙からの攻撃に地球人だけで対抗できるようにする為だった可能性がある。
しかし、実際はSKaRDだけでは地球を守る事は出来ず、何を考えているのか分からない=V99案件の真相を知ったら地球人の敵になる可能性が捨てきれない宇宙人のブレーザー頼みになってしまっている。SKaRDは宇宙人でも仲間であるブレーザーと力を合わせて地球を守っていけば良いと答えるが、地球防衛隊の上層部はV99と言う真相が明らかになったら宇宙人のブレーザーが地球人の敵に回るかもしれない案件を抱えていたのだった。
この後の戦いでアースガロンが危機に陥るとゲント隊長は「頼むぞ」と言ってすぐにブレーザーに変身するのだが、ゲント隊長を始めとするSKaRDがブレーザーを仲間として信じて頼れば頼るほど地球防衛隊は宇宙人のブレーザーが敵になる可能性を考えてブレーザー頼りなSKaRDの現状に危機感を抱く事となる。
今回のブレーザーは宇宙警備隊のような組織に属していないので自分が気に入っているゲント隊長の味方であり続けられたのだが、もし宇宙警備隊所属のウルトラマンがV99案件の真相を知った時、それでも地球人の味方と言う立場をとり続ける事が出来るかとなったら、ノンマルト事件を考えたらちょっと難しいところがあると思う。
「大気汚染にネットワーク障害。これってもう地球人類に対する侵略ですよ」。
劇中の描写を見る限り多くの視聴者もアンリ隊員と似た感想を抱いたと思うが、最終回まで見るとここでアンリ隊員がバザンガやゲバルガを地球人類の敵と即断した事こそが大きな落とし穴だった事が分かる。
ワームホール発生システムから現れたファードランはエミ隊員と彼女の父親が施設を開放した事でブレーザーの所へと辿り着き、新たに誕生したファードランストーンでブレーザーはファードランアーマーにパワーアップする。
シンプルな光の槍であったスパイラルバレード、剣にギミックが搭載されているチルソナイトソード、そして派手さやギミックが増した今回の鎧ファードランアーマーとブレーザー自身を変えるのではなく装備を進化させる事でブレーザーの進化が描かれている。
ファードランはアニメに出てきそうなデザインでウルトラシリーズの中でも異色な怪獣となっている。
これまでブレーザーがストーンに熱を持たせて意思表示をしていたので、ブレーザーの仲間と思われるファードランが炎の怪獣だったのは納得。
ファードランで残念なのは劇中で取り上げられる事が殆ど無かった事であろう。
これは『ブレーザー』全体に言える事なのだが、『ガイア』で根源的破滅招来体の正体が謎で色々考察できるようになっているように『ブレーザー』もブレーザーやファードランの正体が謎で色々考察できるようにしたのは分かるが、『ガイア』では根源的破滅招来体について明確な正体が明かされる事は無かったが劇中の人物がウルトラマンや根源的破滅招来体について疑問を抱いて自分なりの考えを述べていたのに対して『ブレーザー』ではブレーザーやファードランについて劇中の人物が疑問を抱いて自分なりの考えを述べる事がかなり少なかった。(おそらくファードランに関しては今回の話でゲント隊長が30秒くらいアレコレ喋ったくらい)
全25話の一話だけでもファードラン中心の回があって劇中の人物達がファードランにアレコレ言及してくれたら明確な正体は明かされなくても物足りなさはかなり解消されたと思う。
今回の話はファードランの他にもエミ隊員の父親の現在の状況や最後の貸金庫の場面とか説明不足なところが多くあったのが気になった。
全部分かりやすく説明する必要は無いと思うけれど、スタッフが答えを分かっている状態なのに対して視聴者は答えを分かっていない状態なので、答えを分かっているスタッフが「この説明は省いても大丈夫だろう」と考えても答えを分かっていない視聴者は「その説明を省かれると自分なりに答えを考えるのも大変になる」となってしまう事がある。個人的には『ブレーザー』はもう少し視聴者が知る事が出来る情報に気を付けてほしかったところがある。