帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「月下の記憶」

「月下の記憶」
ウルトラマンブレーザー』第14話
2023年10月14日放送(第14話)
脚本 小柳啓伍
監督 田口清隆

 

月光怪獣デルタンダル
身長 45m
体重 1万4千t
マッハ9の飛行速度で世界中の空に現れた。
積乱雲に身を隠していて、その雲が無くなると大気圏外に移動して別の積乱雲を探す。
当初は宇宙怪獣と推測されていたが脱皮した皮のDNAから地球怪獣であった事が判明する。
対策を用意出来るようになったSKaRDに追いつめられていき、最後はブレーザーのチルソナイトソードで倒された。

 

物語
アースガロンを遙かに上回る飛行速度を持つデルタンダルを撃破できなかった事でSKaRDはハルノ参謀長に叱責される。
一方、エミ隊員は防衛隊の上層部が隠している「V99」の調査を進める。

 

感想
ウルトラマンと怪獣の戦いと言えばミニチュアの街や山を舞台に肉弾戦を行うイメージが強いと思うが今回は空中戦がメインでデルタンダルは一度も地上に降りる事が無かった。
第1話の「ファースト・ウェイブ」もだったが『ブレーザー』はそれまでのウルトラシリーズとはちょっと違った事をやっている。この辺りは昭和ウルトラシリーズだと『レオ』、平成ウルトラシリーズだと『ネクサス』に近い感じを受ける。『レオ』も『ネクサス』も放送当時は賛否両論あったが長い目で見たらウルトラシリーズの可能性を広げた作品になっているので『ブレーザー』での挑戦も後のウルトラシリーズに大きな影響を与える事になりそう。

 

デルタンダルを倒せなかった事についてのハルノ参謀長の叱責はさすがに無茶を言うなぁ……であったが、ハルノ参謀長としてはSKaRDに巨大ロボットとある程度の自由を与えているのに意外と活躍が無い事に苛立ちを覚えているのかもしれない。
SKaRDの戦力と隊員のキャラの濃さは他の作品だとウルトラマンを押しのけて活躍出来そうなレベルなのだが『ブレーザー』は意外とムチャクチャな事が出来ない世界観になっていてSKaRDの活躍や戦績も科特隊やZATやGUYSのようなトンデモレベルは無理で抑えられているところがある。

 

指揮車のMOPに「モッピー」と言うあだ名を付けていたヤスノブ隊員。
ゲント隊長がSKaRDの結成時に「名前を呼ぶ時は下の名前かあだ名がルール」と言っていたが、実はその時にその場にいなかったヤスノブ隊員が一番多くのあだ名を作っていくのが面白い。

 

アンリ隊員のノーコンネタが実に楽しいw
今回の話で強調されていた「アンリ隊員は操縦に長けていてヤスノブ隊員は射撃に長けている」と言う設定はデルタンダルが再登場する「天空の激戦」に繋がる事となる。

 

バザンガとゲバルガに続く「サード・ウェイブ」の可能性があるデルタンダルが登場。
これらをカテゴライズしているのが「V99」で、V99を扱っていた宇宙装備研究所第66実験施設の管理者は元地球防衛隊日本支部長官のドバシ・ユウであった。
その実験施設には行方不明になったエミ隊員の父親もいて、さらにゲント隊長はドバシの警護でその実験施設にいて、そこで起きた爆発事故がブレーザーと出会うきっかけとなった。
これまでちょこちょこ語られていた色々なものが一気に繋がって『ブレーザー』の縦軸がここに完成した。以降の『ブレーザー』は「V99」を巡る話をメインストーリーとして展開していく事になる。

 

元地球防衛隊日本支部長官のドバシ・ユウが登場。
「あまりおいたはしないようにとSKaRDにはよく言い聞かせておいてくれと彼には言ってあるんだがねぇ」と言う台詞から彼がハルノ参謀長を通してSKaRDに圧力をかけようとしていた事が分かる。
だが、振り返ってみるとハルノ参謀長がSKaRDに口煩く言ってきたのは「怪獣を倒せ」であって「勝手な事をするな」は意外と少なかった。ひょっとしたら、ハルノ参謀長はドバシからの圧力を無視していたのかもしれない。
さすがに今回の話からは色々言ってくるようになったがそれもドバシからの圧力と言うよりは親友の娘であるエミ隊員の事が心配で無茶をさせないようにと言う感じがする。

 

ゲント隊長はドバシを警護した事があり、エミ隊員の父親が消息不明になった爆発事故の現場にいた。だが、ゲント隊長が何かを隠しているとかは無く、最初の爆発で行方不明になった研究員を助けられなかった事を後悔していた。
ここはゲント隊長が疑われる事無くさらっと終わらせたのは正解だったと思う。仮に「ゲント隊長がエミ隊員の父親が消息不明になった爆発事故の現場にいた。ひょっとしたら何か後ろめたい事があるのかも!?」と言う展開にしても『ブレーザー』をここまで見た人だとゲント隊長はそういう人ではない事は分かっているので、ここでゲント隊長を疑うエミ隊員とかでグダグダする必要は無いと思う。

 

ゲント隊長は父を助けようとしていた事を確信したエミ隊員は第66実験施設の事故についてもっと調べても良いかとゲント隊長からの許可を得る。
ここで自分一人で勝手に動かないでゲント隊長からの許可をちゃんと取った事でエミ隊員は本当の意味でSKaRDの一員になった気がする。

 

「V99はバザンガやゲバルガを地球に送り込んできた敵対勢力」と言うエミ隊員の推理を「いい線行っている」と評するドバシ。言われてみればエミ隊員の推理は「V99は敵対勢力」以外は当たっていた。
この時のドバシは他にも「君は優秀だからきっと真実に辿り着くだろう」「あれに関しては私もよく分かってなくてねぇ」と意外と嘘偽りの無い返答をしていた。

 

これまでの話も防衛隊の上層部に不穏なものを感じるところはあったが今回のドバシ登場で一気に怪しさが増した。
巨大組織の上層部が不穏な動きを見せると言うのはこの手の作品でよく見られるものだがウルトラシリーズでは科特隊やウルトラ警備隊のイメージが強いのかあまりそう言った話は無く、あったとしても『ダイナ』のゴンドウ参謀や『平成セブン』のカジ参謀のように本心は地球を守りたいだったりした。
怪獣出現に人間が関わっているのではないかとか組織の上層部が怪しい動きを見せるとか自分の世代としては『新世紀エヴァンゲリオン』を思い出す展開。

 

今回はメインは月光怪獣デルタンダルとの戦いでエミ隊員がV99の秘密を探る話は「一方その頃」と言った感じになっている。
エミ、かく戦えり」のようにエミ隊員の調査をメインにした構成で今回の話を見てみたかったところもあるがそうなると怪獣との戦いが完全に脇になってしまうのでウルトラシリーズとしては難しいところだったと思われる。(過去に『SEVEN X』でウルトラマンと怪獣の戦いを完全に外した回があったがあれは深夜放送だったし)

 

今回からエンディング曲がTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND feat. MindaRynの『Brave Blazar』に変わっている。