帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「虫の音の夜」

「虫の音の夜」
ウルトラマンブレーザー』第20話
2023年12月2日放送(第20話)
脚本 根元歳三
監督 武居正能

 

地底甲獣ズグガン
身長 幼体・167cm 成体・50m
体重 幼体・1t 成体・3万t
窒素を栄養源にしていて地中深くに生息していたがより豊かな土壌を求めて地表付近に現れた。
口から吐く粘液で相手の動きを止め、核シェルター並みの強度を誇る巣を作る。
危険を感じると警戒音を発するが、それをテルアキ副隊長に利用されて、巣は爆弾で破壊されて、成体もファードランアーマーになったブレーザーによって倒された。

 

物語
実家に呼び戻されたテルアキ副隊長は周辺の土壌が異常な変化をしている事を知る。
山に調査を向かうと事件の原因である怪獣ズグガンと遭遇する。

 

感想
ブレーザー』はメインストーリーが進んだと思ったら違う話に入ってしまうので盛り上がりを維持できないと言う意見があったが、ウルトラシリーズは『初代マン』の頃は縦軸の話が殆ど無いオムニバス形式に近くて、『ダイナ』や『コスモス』の頃になるとスフィアやカオスヘッダーと言う縦軸の話とそれ以外の話に分かれていて、『ネクサス』『メビウス』以降は殆ど全ての話が縦軸に繋がっている作りになっている。ニュージェネレーションシリーズは殆ど全ての話が縦軸に繋がっているタイプだが『ブレーザー』はV99関係の話が縦軸でそれ以外の話は登場人物や世界観に掘り下げに使われると『ダイナ』や『コスモス』に近い作りになっている。個人的には今のドラマ作りでは縦軸の話は必要不可欠になっているがバラエティ豊かな話はウルトラシリーズの魅力の一つなので縦軸とそれ以外の話を両立させた『ダイナ』や『コスモス』や『ブレーザー』の作りはウルトラシリーズに適したものだったと思う。

 

SKaRDが「怪獣が出て来た時の対処法講座」を練習している時の雰囲気はウルトラシリーズと言うより仮面ライダーシリーズのギャグ編のような感じだった。
東映だったらヤスノブ隊員が演じていた謎のヒーローを主役にした短編とか実際に作ってくれそう。

 

対処法講座の練習場面は「任務にはちゃんと向き合うテルアキ副隊長」「自分にハマる役になったら必要以上に頑張ってしまうヤスノブ隊員」「特殊部隊がする任務じゃないと不満タラタラで演技も棒読みでやる気が無いアンリ隊員」「普段から潜入捜査をしているので普通に演技が上手いエミ隊員」とそれぞれのキャラが立っていた。

 

ハルノ参謀長が謹慎されてからSKaRDには色々な仕事が振られるようになったらしい。
おそらくこれはSKaRD全員の居場所を上層部が把握しやすい仕事を常に与える事でエミ隊員がV99案件を調べる時間を作らせないようにしていると考えられる。

 

倒れたと嘘を吐いてテルアキ副隊長を実家に呼び戻す父親。昔から色々な作品で使われる方法だけれどハッキリ言って悪手だよなぁ……。これでは見合いの話をしても結婚どうこうより嘘を吐かれた方が気になってしまう。
テルアキ副隊長がよほど実家に帰っていないとか跡継ぎが他にいないとかならまだ分かるが、3ヶ月ほど前にニジカガチ戦の後に帰っているようなので疎遠になっていたとは思えないし兄も家にいるので跡継ぎの問題も無さそうなので今回の父親の行動は疑問を抱いてしまうものであった。(父親がテルアキ副隊長に跡継ぎの話をしていたらしいので、ひょっとしたら兄は家を継がないと決まっているのかな?)

 

「俺は父さんから教わったんだよ。この生き方を」。
ブレーザー』は一部の上層部との対立以外はあまり登場人物が意見を衝突させる事が無い作品となっている。今回も他のウルトラシリーズだとテルアキ副隊長と父親の対立と和解をじっくり描きそうなのだがその辺りは上の台詞一つで済ませている。この辺りはドラマに関して「物足りない」と感じる人もいれば「ストレスを感じない」と言う人もいると思う。

 

「こういう時の必殺技がある! ……事後承諾だ」。
こういう判断が出来るのがゲント隊長の面白さ。

 

ニュージェネレーションシリーズは都市部が舞台になる事が多かったが『ブレーザー』は第2期ウルトラシリーズのように地方が舞台になる事が多い。
今回は地方の民家を避難所にしたり特別チームの作戦会議の場所にしたりするのがギャップがあって面白かった。

 

ズグガンは動きで虫の気持ち悪さがちゃんと表現されていたのが良かった。
こういう今まであまり無かった動きをさせる事が出来るのが新怪獣ならではである。再登場怪獣だとどうしても元の動きからあまり変えられないところがある。

 

「……来るな。いや、頑張る!」。
個人的にアンリ隊員を演じる内藤好美さんの演技はキャラクターっぽさが無い自然なものになっていて最も『ブレーザー』に合っている演技な感じがする。
今回のアンリ隊員は対処法講座の練習にはやる気が出なかったが怪獣との戦いでは苦手な虫相手でも頑張るとなっていて、あまり自己主張をしなかった序盤を思うとかなり自分と言うものが出てきている感じるになっていた。

 

地方が舞台の夕焼けって良いよね。

 

「……済まない」。
今回の話のズグガンには何の非も無い。いつもだったらズグガンが地表に出るようになった原因が人間側にあるのだがそれも無かった。人間も怪獣も非が無い。それでもテルアキ副隊長はズグガンを倒さなければいけなかった。
こういう「善悪」が無い怪獣事件は『初代マン』の頃を思わせるものになっている。分かりやすい「勧善懲悪」ではないので話を作るのが大変そうだけれど、こういう話を見るとウルトラシリーズを見ていると言う気持ちになれる。

 

息子として家に帰ってきてSKaRDの隊員として家を出て行く。
元に戻った土を手にして「あいつが……守ってくれた土だ」と涙ぐむ父親。
今回の話は前半では父親と息子が口論する場面が多かったが、後半になると直接会話する事が少なくなるのに逆にお互いの事が理解できていくと言う作りが上手かった。