帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「親と子」

「親と子」
ウルトラマンブレーザー』第10話
2023年9月16日放送(第10話)
脚本 植竹須美男
監督 越知靖

 

熔鉄怪獣ベビーデマーガ
身長 192cm
体重 600kg
山梨県の鬼涌谷で発見された卵から孵った。
生まれたばかりなので戦闘力は殆ど無く、防衛隊の電磁拘束ネットで捕らえられた。

 

熔鉄怪獣デマーガ
身長 50m
体重 5万5千t
ベビーデマーガの呼び声に応じて地底から現れた。
口から熔鉄光線を、背中から熔鉄弾を発する。
生まれたばかりの子供を防衛隊の攻撃から守ろうとする。
ブレーザーによってベビーデマーガと共に地底に返された。

 

物語
休日にゲントは家族で旅行に行く事になる。
息子のジュンが行きたいと言った所は山奥で発見された怪獣の卵であった。

 

感想
ゲントの家族である息子のジュンと妻のサトコが登場。『ブレーザー』の作品発表の時に「今度の主人公は「家庭持ちの隊長」」と紹介されたが、家族写真は出ても家族そのものが中々登場しなかったので、一時期は「家族と死別したのではないか」と考える視聴者も出たが無事に家族が登場した。
ブレーザー』の流れを振り返ると第1話でブレーザーが登場し、第2話でSKaRDが結成され、第3話でアースガロンが実戦に投入された後、第4話からは隊員達の紹介編となって、第4話でエミ、第5話でアンリ、第6話でヤスノブ、第7話と第8話でゲントとテルアキの主役回が作られた。なのでゲントの家族の登場がこの時期になったのは仕方が無いところがあるのだが、全4クールなら第1クールを基本設定紹介に充てても違和感が無かったが、全2クールだと第10話は既に3分の1が過ぎて中盤のクライマックスに入るところなので、最初の発表で家族の存在が紹介されたのにいつまで経っても本編に登場しないと言う感じになってしまった。
これは『ブレーザー』に限らずニュージェネレーションシリーズ全体に対して感じる事だが、平成三部作の頃と比べて話数が半分になっているのに設定が増えているのでTVシリーズだけでは上手く捌けていないところがあると思う。『タイガ』『Z』『トリガー』辺りはTVシリーズと並行してボイスドラマやスピンオフのドラマを配信していたので色々補完できていたが『ブレーザー』はそう言ったものが無かったので面白い設定があったものの思ったより深掘りされなかったものがいくつかあった。

 

怪獣の卵かもしれない物を見る為に大勢の人が山奥に集まる。
怪獣による被害が続発しているのに危機感が無いなぁと思うが自分達が実際に被害を受けていないと怪獣事件もちょっとした非日常的なイベント・アトラクションみたいな感じになってしまうのかもしれない。
あとはベビーデマーガの大きさの問題かな。さすがに50m級の卵だったら見物に行こうと思う人もいなかったと思われるがベビーデマーガはパンダくらいの大きさだったので。

 

ゲント隊長は家族には自分の所属をSKaRDではなく施設課と説明していた。
テルアキ副隊長がその事をうっかり忘れていてヤスノブ隊員達は説明されるまで何の事だか分からなかったところを見ると他のSKaRD隊員は家族に自分の所属を隠してはいないようだ。
ゲント隊長が家族に自分の所属を隠している理由だが、まず考えられるのは危険な仕事なので家族に心配をさせない為。次に考えられるのは任務に失敗した時に多大な被害が生まれる恐れがある仕事なので家族に誹謗中傷等が来ないようにする為であろうか。

 

今回はゲント隊長が現場に不在なのでハルノ参謀長がSKaRDに指示を出している。
ハルノ参謀長の作戦は親のデマーガの目的が卵から孵ったベビーデマーガだと思われるのでベビーデマーガを拘束する事でデマーガの進行方向を固定して、親子が揃ったところで最大火力で一気に倒すと言うもの。
赤ん坊の怪獣を拘束しているので悪役な印象を受けるが、ベビーデマーガを拘束する事でデマーガの行動を確定させているので避難誘導がしやすくなって人間の被害を最小限に抑えられると思われる。ベビーデマーガのいる場所が山奥なので見物の人を避難させれば民間人が巻き添えになる危険はほぼ無くなるし。

 

デマーガを攻撃するのにヤスノブ隊員は躊躇が無いのにテルアキ副隊長は何か思うところがあるのは「虹が出た 後編」で横峯教授に向かって語った「「生きたい!」と思う気持ちこそ全ての生物が持つ絶対に奪ってはいけない一番大切なものなんじゃないんですか?」が頭にあったのかな。

 

これまでの話ではアースガロンの目をグルグルにしたりニッコリさせたりと色々変える事でかわいらしさを出していたけれど今回は黒目を無くす事で冷徹なイメージを出していた。目の表現一つでここまで印象を変えられるのかと驚く。

 

レインボー光輪を回転させて相手の攻撃を防いだり冷気を発したりするブレーザー
スパイラルバレードもだが新しい技を次々と出していくのではなく限られた技を色々応用して使っていくのは『マックス』を思い出す。

 

デマーガにトドメを刺そうとするブレーザーであったが右半身がトドメを刺そうとしたのに対して左半身は親に駆け寄るベビーデマーガを見て攻撃を阻止した。
ブレーザーがゲント隊長の体を乗っ取る時に左目が青く光るのでおそらく左半身がブレーザー、右半身がゲント隊長の意思だと思われる。
一つの体に二つの意思がある事が多いウルトラマンであるが戦闘中にここまで明確に二人の意思が対立する事は珍しくかなり衝撃の場面であった。

 

そう言えば右手を動かす左脳は論理的で左手を動かす右脳は感情的と言う話を聞いた事がある。怪獣の都合は分かるが人間の為に排除しないといけないと理屈で動くゲント隊長が右手で、人間の親子を見た後に怪獣の親子を見たら感情で倒せなくなったブレーザーが左手と言う事なのかな。

 

ゲント隊長を通して人間の赤ん坊を見たブレーザーはベビーデマーガを倒せなくなってしまう。人間は同じ「親と子」でも「自分達人間」と「それ以外」で分けて考える事が出来るがブレーザーにとっては「人間も怪獣も自分とは違う存在」なので「人間の親子」と「怪獣の親子」を分けて考える事が出来ない。
これは結構難しい問題で、ウルトラマンのような人間ではない存在が「人間は守るが怪獣は倒す」とするのに納得出来る論理的な理由は中々無かったりする。なので、殆どのウルトラマンは「人間が好きだから」と言う感情的な理由で人間だったら悪人でも助けるが怪獣だったら悪でなくても倒している。

 

大怪獣首都激突』を見た後に改めて今回の話を見ると「赤ん坊を守ろうとしている怪獣をゲントが殺そうとする」と言うかなりエグい話だった事が分かる。
又、「怪獣を殺そうとした右半身の意思がゲントで怪獣を逃がした左半身の意思がブレーザー」とするとジュンがゲントに告げた「怪獣を逃がした今回のブレーザーが今までで一番良かった」もかなりエグい言葉になる事が分かる。

 

ハルノ参謀長はブレーザーを敵ではなく競争相手と見ていたのでブレーザーを攻撃するような事はしないで今回もブレーザーが登場した後は静観していたのだが、ブレーザーの行動に異変が起きるとただちに攻撃を再開し、ブレーザーが防衛隊の攻撃を妨害したのを見てブレーザーへの考えを改める事になる。

 

今回の話は2023年に亡くなられた植竹さんのウルトラシリーズ脚本最終作となっている。

 

「赤ちゃん怪獣と親の怪獣が殺されなくて良かったね!」と言う感じで話を締めた後にこういう記事を出してくるのがエグいよなぁ……。(デマーガがいつ再び現れるか分からないから周辺にある温泉に行くのは控えた方が良いと言う新聞記事。もしこの地域が観光業で成り立っている場所だったとしたら……)