「奪われたギンガスパーク」
『ウルトラマンギンガ』第8話
2013年11月27日放送(『新列伝』第22話)
脚本 長谷川圭一
監督 石井良和
暗殺宇宙人ナックル星人グレイ(SD)
身長 14cm~43m
体重 150g~2万t
桑原をそそのかしてヒカルからギンガスパークを盗ませる。
その後、友也に仲間にならないかと持ちかけるが拒否され、友也とそれを助けに来た健太達、さらにそれらに心動かされた剛のパンチを受けて退却する。
両手から様々な光線を放って相手を縛り上げる事が出来る。
桑原の心の闇を使ってダークダミースパークを作り出し、そのまま桑原をザラガスにダークライブさせた。
変身怪獣ザラガス(SD)
身長 14cm~40m
体重 150g~2万t
ダークダミースパークによって桑原がダークライブされている。ヒカルがウルトライブできない隙を突いて降星小学校を襲おうとした。
相手の攻撃を吸収して強くなる事が出来る。最初の第一形態は硬い甲羅を持ち角から電撃を発する。美鈴がウルトライブしたレッドキングに苦戦すると甲羅を剥がしてフラッシュ発射孔から目潰し攻撃を行う第二形態にパワーアップし、ギンガとレッドキングのコンビプレーに苦戦すると今度はフラッシュ発射孔から角を生やした第三形態にパワーアップしてレッドキングに角を刺して直接電流を流しギンガに角から電撃を発して攻撃した。最後はギンガクロスシュートを受けてパワーアップする前に倒された。
戦いの後、スパークドールズはヒカル達に回収された。
ウルトラマンダーク(SD)
身長 14cm~40m
体重 150g~3万5千t
ザラガスとの戦いを負えたギンガを急襲した。
どくろ怪獣レッドキング(SD)
身長 14cm~45m
体重 150g~2万t
ヒカルを救う為に美鈴がギンガライトスパークでウルトライブした。
戦いに不慣れだったがザラガス相手に何とか踏ん張る。しかし、パワーアップしたザラガスの攻撃を受けてライブが解除されてしまった。
物語
降星小学校に閉じ込められてしまったヒカル達。
小学校の解体話が出る中、グレイは桑原を使ってヒカルからギンガスパークを盗んでしまう。
感想
新キャラクターの石動誠一郎と黒木知美と桑原伸吾が登場。
短気で大人げない黒木と潔癖症で神経質な桑原は嫌われキャラではあるが、二人の掛け合いが面白くてコミカルな感じに仕上がっている。
小学校に閉じ込められたので家庭科室でカレーを作って皆で食べる事に。
『ギンガ』はこういう学校を舞台にしていると言う場面が意外と少なかった気がする。
特別教室が色々とあったので、それを生かした話をもっと作ってほしかった。
『ギンガ』でダークライブに関わった人間は闇の支配者である白井先生が選んでいる。
「星の降る町」の山田と木村、「夏の夜の夢」の矢神、「双頭の火炎獣」のユウカ、「閉ざされた世界」の剛は降星小学校の卒業生で卒業後に犯罪を犯して白井先生の怒りを買った。
「アイドルはラゴン」での千草、「夢を憎むもの」での健太、「闇と光」での美鈴も降星小学校の卒業生だが、こちらはギンガの仲間としてルギエルの邪魔をしたから。
今回の桑原と「漆黒のウルトラ兄弟」の美鈴の父と黒木は降星小学校の卒業生ではないが小学校を解体しようとしているので白井先生にとっては敵である。
友也は降星小学校との関わりは無いが白井先生が友也の父に資金援助の相談をしたと説明されている。その後、小学校の解体が決まっているので、おそらく友也の父は資金援助を断ったのだろう。それで恨みを買って友也が狙われたと考えられる。
こうして見てみると表向き優しそうな小学校の校長先生のどす黒い内面が垣間見えてかなり怖い。
ダークガルベロスにダークライブした剛はかつては日本チャンピオンになったプロボクサーであった。
剛とカッキーは小学校の時の親友で、カッキーもかつては敏腕刑事を目指していたのだが今は冴えない街の巡査となっている。
カッキーとは小学校の時の親友だったとした事で剛も降星小学校の卒業生であるとなり、同じく降星小学校の卒業生であったユウカと合わせて、「ダークライブした人間は降星小学校の卒業生であった」と言う設定の伏線が張られた。
降星小学校の関係者でカッキーだけはダークライブに関わっていないが、それは冴えない街の巡査とは言え刑事になると言う夢を叶えたからだと思われる。
『ギンガ』は「夢」がテーマの作品で、夢を追いかける子供達に対して夢を叶えた大人のカッキーがいる。出来ればこれを最初から提示してほしかった。正直言って今まではカッキーのキャラクターが描けていなかったと思う。
剛は日本チャンピオンになるも賭博事件に関わったとマスコミに叩かれて引退に追い込まれたとの事。
今回の話だと実際には賭博事件には関わっていなかったようにも思えるが、最終回の「きみの未来」で実際に関わっていた事が明らかになる。
前回のギンガとの戦いでも最初は普通にボクシングで勝負していたが不利になると幻覚を使って分身していた。賭博に手を染めたのもその辺りの性格が原因だろうか?
剛は「夢は見ているうちが華で叶ってからが大変だ」と夢に向かって進む千草達の姿勢を否定するが、ヒカルに「諦めない限り夢は終わらない。俺はそう信じてるんすけど」と反論される。
上のカッキーの話でも触れたが、『ギンガ』は「夢」がテーマの作品なので夢破れた大人は物語に必要な存在であった。
剛に反論したヒカルの事を美鈴は「ポジティブだ」と評する。
いつもポジティブで後ろ向きな事を考えないヒカルは実にヒーローらしいが、普通の人間は悩んだり迷ったりするものなので、それが無いヒカルは人間として違和感を覚えるところもある。劇中ではそこをヒカル自身に「偉そうだったかな?」とセルフツッコミさせている。この問題に関してはヒカルのこれまでの人生や両親が描かれたら解消されると思われるが、そこが描かれる事は無かった。
だが、このポジティブで後ろ向きな事を考えないヒカルのキャラクターは後の作品に登場する時に「頼りになる先輩ヒーロー」として魅力的なものとなっていく。
グレイは桑原にギンガスパークを盗ませる事に成功するが先のイカルス星人と同じく闇のエージェントはギンガスパークに触れる事が出来なかった。
ザラガスが出現するがジャンナインは『劇場スペシャル』のザギとの戦いで受けたダメージが大きくて自己修復が完了するまであと5時間必要だった。
盗まれたヒカルのギンガスパークをグレイが手にしようとしているのを見た友也はそれを取り戻しに向かう。友也がかつては闇の支配者に仕えていた事を知るグレイはギンガスパークを持って来たらまた仲間にしてあげると申し出るが、友也は「仲間なら、もういますから」と言って拒否。そこにかつて友也に傷付けられた事がある健太と千草が助けに来る。
このイザコザがあったがそれを乗り越えて仲間になると言うのはヒーロー作品の王道。ベタでも必要な要素だと思う。
そんな友也達の姿を見た剛はグレイを殴り飛ばして退却させる。
「無茶な奴らだ。おかげで昔の俺を思い出しちまったぜ……」。
ヒカルの危機を見た美鈴は今度は自分がヒカルを守ると決意し銀河神社に祈りを捧げる。すると、その祈りに応じて美鈴のもとにギンガライトスパークが現れる。
ギンガスパークが複数現れるのには驚いた。ダークスパークにはダークダミースパークがあるのでギンガスパークにも同じ物があるのは当然なのだが、ウルトラシリーズで変身アイテムが同時に複数登場するのはこれまで無かった。
これまではヒカルが最初に怪獣にウルトライブして次にギンガにウルトライブしていたが、ここからはヒカルはギンガに直接変身するようになり、代わりにヒカル以外の人物がウルトラマンや怪獣にウルトライブするようになった。
歴代ヒーローに変身できるのは『仮面ライダーディケイド』や『海賊戦隊ゴーカイジャー』と同じであるが、『ギンガ』は変身道具を使えば誰でも変身できるとしたのが新しかった。
『ディケイド』は門矢士は様々な仮面ライダーに変身できるが夏海がクウガやアギトに変身すると言う事は無かった。『ゴーカイジャー』のレンジャーキーは設定上は誰でもレジェンド戦隊に変身する事が可能だが第2話で一般人の少年がシンケンレッドに変身したくらいで多用はされなかった。なので、ギンガライトスパークが次々に現れて、美鈴だけでなく健太や千草も変身できるようになっていく展開は『ギンガ』独自のものと言える。
ギンガライトスパークを手にした美鈴がこれまでヒカルが集めたスパークドールズを見る場面でエレキングとダークガルベロスのスパークドールズが無い。
エレキングのスパークドールズが出る回は『ギンガ』本編とは別の『新列伝』スタッフによって撮影されたからと思われる。撮影時期を考えると、おそらく今回の話の後に『新列伝』でのエレキングのスパークドールズが出る回が撮られたのだろう。
ザラガスは『初代マン』の「射つな! アラシ」では見せなかった第三形態が登場している。歴代怪獣が再登場する際にこういうプラスアルファがあると嬉しい。
「どんなに強くなろうが、ギンガはその上を行くぜ!」と言うヒカルの言葉通り、ギンガはギンガクロスシュートでザラガスを撃破。ギンガの攻撃がザラガスの再生強化速度を上回ったのだろうが、もう少し説明を加えた方が分かりやすかったかなと思う。
今回の話は助監督だった石井良和さんのウルトラシリーズ監督デビュー作となっている。