帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「忘れ去られた過去」

「忘れ去られた過去」
ウルトラマンギンガS』第6話
2014年8月19日放送(『新列伝』第60話)
脚本 黒沢久子
監督 田口清隆

 

古代怪獣ゴモラ(SD)
身長 14cm~40m
体重 150g~2万t
超振動波を武器に戦う。
ヒヨリがモンスライブするがヒヨリの友達だったシェパードンの出現に戦意を喪失する。次にワンゼロがモンスライブしたファイヤーゴルザと戦うが、尻尾を切られ最後は強化超音波光線で倒されてしまった。

 

超古代怪獣ファイヤーゴルザ(SD)
身長 14cm~62m
体重 150g~7万t
ワンゼロがモンスライブした。
強化超音波光線でギンガやゴモラを圧倒するが、ビクトリーのウルトランス・EXレッドキングナックルで倒された。
その後、スパークドールズはワンゼロに回収された。

 

物語
ショウの前に現れたヒヨリと言う女性は自分はビクトリアンだと名乗る。
キサラ女王ですら知らないヒヨリの一族。そこには太古の昔に起きたビクトリアン同士の争いの歴史があった。

 

感想
かつて地球を追われたビクトリアンの最後の生き残りであるヒヨリが登場。
このビクトリアンの過去については第1話「切り拓く力」の冒頭にあるイメージ映像と今回の回想で語られているが情報が少なくて分かり難い。
どうやらビクトリウムやビクトリーランサーの力を巡って争いが起き、ヒヨリの一族はキサラの祖先達によって異次元に追放されたらしい。
ウルトラマンギンガS超全集』では地上でビクトリウムを巡る争いが起き、地上に残ろうとする者と地底に身を隠そうとする者とが対立。そこにビクトリーが現れ、選ばれし者にビクトリーランサーを授けて争いを終結させた。(この時にビクトリーとシェパードンは一度戦った) そして地上に残ろうとした者は異次元に追放され、地底に身を潜める事にした者はビクトリーランサーを託され地底でビクトリウムを守る事となったと書かれている。
……これ、ビクトリーが宇宙警備隊所属ではないので問題は無いかもしれないが、『セブン』や『平成セブン』のノンマルト事件以上に地球内の問題にウルトラマンが介入していないか?
あと『超全集』には書かれていないが、ビクトリアンの過去の争いの場面で「ビクトリーランサーの力で地上の平和を守ろう」と言う台詞があるので、実はビクトリーの出現もビクトリアンの争いを加速させる一因だった可能性がある。

 

代々地底を司ってきたキサラ女王ですらヒヨリの一族について全く知らされていなかった。しかし、ヒヨリが選ばれし者にしか扱えないビクトリーランサーを使えた事からヒヨリがビクトリアンである事が決定的となり、ヒヨリと友達だったシェパードンの記憶からヒヨリの一族が太古に起きたビクトリアン同士の争いの末に地球を追放された種族だった事が判明する。
争いを嫌ったキサラ女王の祖先は同じ争いが起きないようにヒヨリの一族やビクトリアン同士の争いに関する記憶を消去したらしいが、真実を知ったキサラ女王は「自分達の平和の影で苦しんでいる者がいる事を決して忘れてはいけませんでした」と自分達の祖先の過ちを認める。
この辺りのやり取りは『セブン』や『平成セブン』でのノンマルト事件にも見られたが現実世界でも多く見られる問題である。無かった事にして見えないようにしても、それは問題が解決したとは言えないのだ。

 

シェパードンがヒヨリの一族に関する記憶を持っていたのはその当時を生きていたから。シェパードンは今まで『ティガ』の「影を継ぐ者」に登場したガーディーみたいな子犬のイメージがあったが、今回の話から実は色々知っている老犬みたいなイメージになった。
ところで今回の話にカムシンは出ていないが、ひょっとしたらカムシンはヒヨリの一族やキサラの祖先がした事を知っていたのかもしれない。

 

キサラの祖先の時代にヒヨリは幼い子供として登場している。今のヒヨリは何歳なんだ?と思うが、異次元で過ごしていたので時間の経過が地球とは違っていたのかもしれない。
ビクトリアンの歴史に詳しくないエクセラーがどうしてヒヨリを仲間に引き入れられたかだが、ヒヨリの一族は異次元に追放されていたので、前回の「仲間と悪魔」でヤプールが復活した時に異次元を調べて見付け出したのかもしれない。

 

持っていたビクトリウムの水晶が光らなくなった事にヒヨリは卑怯なキサラの一族が力を奪ったと激昂するが、自分達の祖先の過ちを知ったキサラ女王とショウがヒヨリとちゃんと話し合おうと決めた事を聞くと水晶は再び光り出した。
キサラの一族がヒヨリの水晶の力を奪ったのではなく、ヒヨリ自身の憎しみが水晶の力を封じ込めていた。これはギンガスパークやビクトリーランサーの能力や性能に使用者の精神状態が関わっているのと関係があるのかもしれない。

 

ヒヨリがモンスライブした怪獣はゴモラ。地底人でゴモラと言えば『80』の「惑星が並ぶ日 なにかが起こる」に登場したゴモラⅡを思い出す。
続いてワンゼロがモンスライブしたファイヤーゴルザはゴモラの「古代怪獣」を上回る「超古代怪獣」と言う肩書きを持っていて今回は新旧古代怪獣の対決となった。

 

ヒヨリがモンスライブしたゴモラを倒さなくてはいけないと決断したヒカルはギンガストリウムに強化変身してストリウム光線を発射。そこにシェパードンが出てきて自分を盾にしてゴモラにモンスライブしたヒヨリを守る。
ギンガストリウムの放ったストリウム光線を受けて死ななかったシェパードンが凄い。しかし、こういう無茶を繰り返していった結果、シェパードンの生命は確実に弱まっていくのであった。

 

アリサとのパトロール中であったヒカルはショウを見付けると次の場面ではたった一人でショウの後を尾けていた。アリサにどういう説明をしてパトロールから抜け出したんだろう……。
今回のヒカルはアリサの注意にやや不真面目に答えたり、ショウに彼女が出来たのかもと思ったと言ったり、脈絡無くチョコを出してショウを餌付けしたり、口の周りにチョコが付いているぞと嘘を言ってショウをからかったりと妙にチャラい。
因みにこのヒカルのブイチョコウェハースはヒヨリも食べる事になり、着々とビクトリアンの中に浸透していっている。

 

『ギンガS』は短い話数でありながら販促するアイテム数が多い為、ドラマに割ける時間が少なく、アクションは充実しているけれどドラマはちょっと……と言う話がある。
これまでのような正義の主人公チームと悪の侵略者チームと言う分かりやすい戦いの構図ならアクションを見せながらキャラを描いていく事も出来たのだが、今回のヒヨリの一族とキサラの祖先の話のような単純な善悪の構図ではない話になるとアクションの中で全てを説明するのは難しく説明不足のまま戦いだけがどんどん進んで行く事となってしまった。
ヒヨリの心境の変化についてはシェパードンが守ってくれた展開で何とかなったのだが、戦いやアクションに一切関わらないキサラ女王については描写不足で、自分自身ではなく祖先がやった事とは言え、ヒヨリの一族を異次元に追放してその事を記憶から抹消していながら常に上から目線でヒヨリに接しているような感じになってしまった。

 

今回の特撮を担当した田口監督はミニチュアの市街地をゲームの中のバトルフィールドのように扱う事がある。たとえば今回のウルトランス・EXレッドキングナックルで衝撃波が周囲の建物を破壊していく場面はウルトラマンが街を壊して良いのかとツッコみたくなる場面であるが、この時のビクトリーとファイヤーゴルザが戦っていたミニチュアの市街地は格闘ゲームの闘技場みたいなものだと考えると納得できる。
街中で戦う巨人と怪獣をリアルに捉えるのではなくフィクションのエンターテイメントとして割り切った演出はこの後も『タイガ』の「円盤が来ない」等で見られる。

 

今回の話は黒沢久子さんのウルトラシリーズ脚本デビュー作となっている。

 

 

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