帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「共に生きる」

「共に生きる」
ウルトラマンX』第19話
2015年12月1日放送(『新列伝』第126話)
脚本 三浦有為子
監督 アベユーイチ

 

人工生命M1号
身長 2m
体重 180kg
かつて科学の力によって作られ捨てられた人工生命。
人間は怪獣とは共存できないとし、人間には未来が無いと語るが、ゴモラを助けようとするアスナの姿に心を動かされる。
事件解決後も地球の周りを漂い続け、人間の未来を監視し続ける。

 

古代怪獣ゴモラ
身長 40m
体重 2万t
Xioのスパークドールズ実体化実験で実体化したがダークサンダーエナジーを浴びてEXゴモラに凶暴化した。

 

EXゴモラ
身長 44m
体重 2万2千t
ゴモラがダークサンダーエナジーを浴びて凶暴化した姿。
エクシードエクスラッシュでダークサンダーエナジーを祓われてゴモラに戻り、しばらくするとスパークドールズに戻った。

 

物語
遂にスパークドールズの実体化実験が行われる事となった。
そして、それを遥か上空から見つめる謎の存在がいた。

 

感想
遂にスパークドールズの実体化実験が行われる事になる。これまで登場していたサイバー怪獣は「怪獣のスパークドールズを解析して得たデータを実体化させたもの」で、今回の実験は「怪獣のスパークドールズそのものを実体化させる」となっている。つまり怪獣を本来の姿に戻すのである。
これまで登場した怪獣は自然現象や侵略者の技術やダークサンダーエナジー等によってスパークドールズが実体化したものであったが今回遂に人間もスパークドールズを実体化させる事になった。

 

スパークドールズを実体化させると言う事は巨大怪獣が出現して人間に危険が降りかかる恐れが生じると言う事でもある。その為、スパークドールズの実体化には「実体化した怪獣は完全にコントロールが出来て人間に危害を及ぼさない」と言う条件が必要になる。だからこそ今回の実験に大地のゴモラが選ばれたわけだが、逆に言えば、大地のゴモラでもコントロールが不可能だった場合、スパークドールズの実体化そのものが危険であるとして全ての計画が中止になる恐れがある。

 

スパークドールズの実体化実験を見ていた謎の存在=M1号は大地が暴走したゴモラの説得を諦めてスパークドールズに戻そうとするのを見てエックスと大地を自分の実験室に瞬間移動させる。
このM1号が『Q』の「地底超特急西へ」に登場した個体と同一人物かどうかは不明。回想で「地底超特急西へ」の場面が使われているが『Q』と『X』は別の世界を舞台にしている。もしかしたら「地底超特急西へ」の最後でM1号は宇宙に飛び出してしまったが、そのまま次元を越えて別の世界に流れ着いたのかもしれない。今回のM1号はかなり知的になっていたが、「地底超特急西へ」に登場した個体も短い時間で言葉を発するところまで進化していたので、そのまま進化を続けていたら今回登場した個体のようになっても不自然ではない。

 

自分は『Q』の「マンモスフラワー」のレビューで「人間が大地の上にビルを建て、そのビル街の上にマンモスフラワーが花を咲かせ、さらにその上空から人間が飛行機を使ってマンモスフラワーを退治すると今回の話は「相手よりさらに上に行く事が出来た存在が勝つ」と言う展開になっている」と書いているが、『Q』の最終回である「地底超特急西へ」に登場したM1号は最後に宇宙空間と言う遥か上空に辿り着いて、今回の話では遥か上空から地球上のあらゆる生物を見下ろす神のような存在となっている。

 

大地はM1号がダークサンダーエナジーを使って怪獣達を操っている黒幕だと考えるが、それを聞いたM1号は「人間らしい考え方だな。都合の悪い事が起こると誰かが悪意を持ってやっていると考える。自分達がいつもそうしているからだ。私はそのような事はしない」と答える。
ウルトラシリーズは『Q』の頃から侵略者がいたので事件の背後に黒幕がいる事が殆どだったので今回のM1号の発言には驚いた。特にニュージェネレーションシリーズは闇のエージェントやジャグラスジャグラーと言った作品全体にわたって暗躍する存在が定番となっているので「悪意を持った黒幕はいない」とした『X』はニュージェネレーションシリーズの中でも異色の作品となった。

 

「共存などと言いながら都合が悪くなると平気で排除する」と言うM1号の発言は「ともだちは怪獣」で「人間は本当に怪獣と友達になれるのか? 自分達の役に立つかどうかで共存する生き物を選ぶんだろう?」と言ったエックスの発言と同じである。
エックスはM1号の言葉を否定できないからなのか「ゴモラはやっと自分の体を取り戻したのだ。なのに、何故自由を奪う?」と言うM1号の発言以降は言葉を発しておらず、次に言葉を発するのはM1号がアスナの気持ちに心を動かされた後の事である。
どうしてエックスはしばらく口を閉ざしていたのか。おそらくだがエックスが口を閉ざしていた間にM1号が発した言葉はエックスも以前から考えていた事でもあったのだろう。つまり、今回はM1号を通してエックスの本心が明かされていたのだ。(そう解釈するとM1号の「共存できぬものは滅びゆくだけだ」と言う発言がかなり怖くなるが)
『X』についての感想やレビューを調べると「エックスは大地が掲げる「人間と怪獣の共存」についてどう思っているのか?」と言う意見を目にするが、自分は今回のM1号の言動を通してエックスの考えが語られていたと解釈している。

 

M1号は理屈を並べて人間と怪獣の共存の可能性を否定するが、その人間と怪獣の共存は不可能と言う流れをアスナは「嫌だ!」と言う感情全開で拒否する。そして、その思いはM1号の心を動かし、おそらくだがエックスの心も動かしたと思われる。
最後にゴモラがスパークドールズに戻った理由も実体化の時間が過ぎたと言う理屈で考える事も出来るが、ここはゴモラ達の感情や心も関わっていたと思いたい。

 

フラスコの中に閉じ込められたエックスの姿は『セブン』の「侵略する死者たち」でコップの中に閉じ込められたセブンを思い出す。

  

振り出しに戻ったスパークドールズの実体化による人間と怪獣の共存の道。
しかし、大地は諦めてはいない。
「いつか、また会おう……」。

 

今回の話は三浦有為子さんのウルトラシリーズ脚本デビュー作となっている。

 

 


【監督コメント付!】『ウルトラマンX』次回予告 第19話「共に生きる」 (新ウルトラマン列伝 第126話 次回予告)

 

 

ウルトラマンX Blu-ray BOX II

ウルトラマンX Blu-ray BOX II

  • 発売日: 2016/03/25
  • メディア: Blu-ray
 

 

 

BANDAI(バンダイ) ウルトラ怪獣シリーズ 02 ゴモラ

BANDAI(バンダイ) ウルトラ怪獣シリーズ 02 ゴモラ

  • 発売日: 2013/06/29
  • メディア: おもちゃ&ホビー