「絆 -Unite-」
『ウルトラマンX』第20話
2015年12月8日放送(『新列伝』第127話)
脚本 小林弘利
監督 阿部雄一
ウルトラマンネクサス
アンファンス時 身長 49m 体重 4万t
ジュネッス時 身長 49m 体重 4万4千t
自分の近くにいるバグバズンブルードの被害者と外国でベムラーに襲われた娘達の間で板挟みになった橘副隊長の前にエボルトラスターが現れ、それを受け取った橘副隊長はデュナミストになってネクサスに変身した。
最初の戦いを終えると橘副隊長は自分がウルトラマンに変身した事に戸惑うが、エックスがバグバズンブルードに苦戦しているのを見て再び変身する。アンファンスからジュネッスにスタイルチェンジしてメタフィールドを展開するとエックスと一緒にバグバズンブルードを倒した。
戦いが終わった後、「諦めるな」と言う言葉を残してエボルトラスターは橘副隊長の手から消えた。
宇宙怪獣ベムラー
身長 50m
体重 2万5千t
カナダに現れた初めての怪獣。
口から光線を吐く。
新宿から飛んで来たネクサスによって倒された。
インセクトタイプビーストバグバズンブルード
身長 180cm~45m
体重 150kg~3万5千t
新宿の地下駐車場に突然現れたスペースビースト。
生命体の恐怖を餌にしている。
「攻撃」と「捕食」の感情しか持っていない共存不可な存在。
何体かはXioとネクサスによって倒されたが生き残りがダークサンダーエナジーを浴びて巨大化した。
最後はエクシードXのエクスラッガーショットとネクサスのオーバーレイ・シュトロームを同時に受けて倒された。
物語
新宿の地下駐車場に突然現れたスペースビースト・バグバズンブルード。
一方、橘副隊長の家族がいるカナダにも怪獣ベムラーが現れた。
絶体絶命の危機の中、橘副隊長の前に現れたのは……!
感想
ネクサスのゲスト出演回。
夢の中でストーンフリューゲルに触れて適能者(デュナミスト)になる、新宿が舞台、人間大の怪獣をウルトラマンが巨大な拳で叩き潰す、決戦の場所がメタフィールド、女性の副隊長が変身すると『ネクサス』の要素が全編にわたって仕込まれているファン狂喜の回。出演者にロケ地に特撮のセットにとここまでオリジナルを尊重してくれた客演回はそうそう無い。
バグバズンブルードは『ネクサス』の「詩織 -ロストメモリーズ-」に登場したのだが、この回は放送期間短縮の影響で放送されなかったのでバグバズンブルードは今回がTV初登場となる。
大地は前回の「共に生きる」では怪獣との共存を目指していたのだが今回登場したスペースビーストは攻撃と捕食のみの存在で駆除を選択するしかなかった。
怪獣との共存を目指した次に絶対に共存できない怪獣が出てくるのは『コスモス』から『ネクサス』への流れを思い出す。『コスモス』から『ネクサス』への場合は作品そのものが変わっているので問題が無かったが今回は同じ作品内で同じ人物達がゴモラの時は共存を目指してバグバズンブルードには駆除を選択するとなって、前回の大地やアスナの決意がちょっと弱くなった形になってしまった。(M1号が今回の大地の選択を見たら絶対に指摘してきそう)
一応、バグバズンブルードはスパークドールズが実体化した怪獣とは違うと言うのを示してはいるが、この辺りは「怪獣との共存」と言う難しいテーマを扱った作品ならではの問題と言える。(例えば『コスモス』も肩書きに「魔獣」と付いている怪獣は倒して良い存在として設定されているのだけれど、見た目的には他の怪獣は保護して魔獣はどうして問答無用で倒すのかと言う疑問は生じてしまう)
今回ベムラーが登場しているが、これは『ネクサス』の前日談である『ULTRAMAN』に登場するザ・ワンがベムラーを元にしているから。
そう言えば『ULTRAMAN』も任務と家族の二択を迫られる話であった。
橘副隊長の夫を演じるのは『ネクサス』で主人公の孤門一輝を演じた川久保拓司さん。橘副隊長の夫はライフガードをしていると言う設定でこれは山岳救助隊員だった孤門の設定に通じるものがある。(因みに『ウルトラマンX超全集』によると橘副隊長はレスキュー隊出身と言う設定)
夫がネクサスを見る場面はネクサスの正体が自分の妻だと分かった場面なのだが『ネクサス』から見ていた視聴者にはかつての孤門とデュナミスト達の場面を思い出す作りになっている。
ベムラーを倒した後、橘副隊長は自分がネクサスに変身した事を明かす。
特別チームの仲間達に正体がバレたり明かしたりする展開は『セブン』からあるウルトラシリーズの定番なのだが、ゲストのウルトラマンを使って主人公以外の隊員を変身者にして主人公より先に仲間達への正体バレをすると言うのは斬新だった。
橘副隊長が自分がネクサスに変身した事を明かした事で今回の大地は「ウルトラマンの変身者」でありながら「ウルトラマンの変身者に秘密を打ち明けられた人間」にもなると言うかなり珍しい立ち位置になっている。
橘副隊長は自分がウルトラマンに変身した事に戸惑い、自分は任務よりも家族を優先してしまうとしてXioの副隊長を続ける事が出来なくなってしまう。
ヒーローとしての使命を優先させるのか、それとも自分の家族の安全を優先させるのか、と言う二択はヒーロー作品では度々取り上げられるテーマで、ウルトラシリーズでは職場とは別にプライベートの場が設定された第2期ウルトラシリーズで何度か見られた展開。
ウルトラマンに変身しなくても特別チームの人間として職務と家族の二択を迫られる展開も度々見られ、『X』では神木隊長主役回の「戦士の背中」が当てはまる。
ウルトラマンにも人間にも限界と言うものがあるので、全てを守り切ると言うのは実に難しい。
これまで登場したヒカルやショウはウルトラマンとして戦う事についてある程度決着を付けているのだが、ウルトラマンに変身したばかりの橘副隊長はそれについて答えを出す事が出来ず苦悩する。それを見たエックスはウルトラマンである自分のせいで大地に辛い事を味合わせていると謝るが、大地はエックスのおかげで怪獣との共存に向き合えていると逆に感謝を表す。
実際、エックスの存在によってサイバー怪獣等の研究が進んでいる。これまでの作品でもウルトラマンの存在によって色々変わったと言う話はあるが、どちらかと言うと人々の考え方が変わったとか言う精神的な影響が多く、『X』のようにウルトラマンの存在によって地球の問題を解決する為の研究が進むと言う物質的な影響がある作品は珍しい。(『X』以外だとメテオール関係がある『メビウス』くらいかな)
ビルに登るバグバズンブルードに驚き。この辺りは技術の進歩なのかな。
『ネクサス』にはウルトラマンのゲスト出演が無かったので、メタフィールドの中で他のウルトラマンと一緒に戦うネクサスの姿は新鮮。
ネクサスは橘副隊長を通して大地に「諦めるな」と伝える。
そう言えばネクサスとエックスはテレパシーで会話する事が無かった。
二人に面識が無かったのでテレパシーが出来なかったのか、まだ正体を明かしていないエックスと大地にネクサスが気を使ったのだろうか。
大地「名前、何て言うのかな? あのウルトラマン……」、
橘「絆……ネクサス」、
大地「ウルトラマン……ネクサス」。
因みに本編で「ウルトラマンネクサス」と呼ばれるのはここだけ。
アベユーイチ監督は今回だけ『ネクサス』当時の名義であった「阿部雄一」でクレジットされている。『ネクサス』への監督の思い入れが感じられる。
今回は単なるネクサスのゲスト出演回に留まらず、放送期間短縮によって色々とカットされてしまった『ネクサス』最終回を補完したところもあって、『ネクサス』をリアルタイムで見ていた自分には10年越しの素晴らしすぎる贈り物であった。
【監督コメント付!】『ウルトラマンX』次回予告 第20話「絆-Unite-」 (新ウルトラマン列伝 第127話 次回予告)