帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「朝日のあたる家」

「朝日のあたる家」
ウルトラマンR/B』第25話
2018年12月22日放送(第25話)
脚本 中野貴雄
監督 武居正能

 

コスモイータールーゴサイト
身長 72m
体重 5万9千t
グルジオレギーナを倒し、ロッソとブル相手にも優勢に戦うが、最後はルーブのマコトクリスタルで発動されるシン・ボルテックバスターで倒された。

 

物語
美剣サキが命を落とし、湊ミオは自分を犠牲にしてルーゴサイトを異次元に追放しようとする。
それに対してカツミとイサミはウルトラマンとして未来を変える為に戦う!
果たして、湊家の明日は……?

 

感想
『R/B』最終回。

 

ロッソとブルがルーゴサイトに倒される未来を見ていた湊ミオはリモートでカツミとイサミのルーブジャイロにロックを掛ける。
親が子供の変身道具に「チャイルドロック」を掛けると言うのは親子の話である『R/B』ならではの展開。

 

ミオは美剣サキが集めていたレイエネルギーを使って対怪獣拘束システムを強化し、大型ハドロン衝突型加速器でアイゼンタワーの上空にディメンションホールを作り、ルーゴサイトを虚数次元に転送しようとする。
最終的にこの作戦は実行されなかったが、愛染マコト(チェレーザ)が遺した物に地球を救う可能性があるとして、彼のやって来た事を全否定しなかったのは嬉しかった。

 

『R/B』後半の展開を読み解く上で頭に入れておかないといけないのは「美剣サキは過去にウルトラマンであった兄達を失っているのでウルトラマンの力ではルーゴサイトは始末できないと考えている」「ミオもウルトラマンになった息子達が命を落とす未来を見ているのでウルトラマンの力ではルーゴサイトは始末できないと考えている」と言う点。「過去」と「未来」と言う違いはあるが、キーパーソンである美剣サキもミオも「ウルトラマンでは今回の事態を解決できない」と考えている。
ウルトラシリーズは基本的に「最後にウルトラマンが解決する」と言う展開になっていて、登場人物達も「ウルトラマンなら何とかしてくれる」と考えている。たまに「ウルトラマンに頼らないで自分達が頑張る」と言う展開があるが、その時も「ウルトラマンなら事態を解決できる」と言う認識の上で話が進んでいる。『R/B』はその「ウルトラマンなら何とかしてくれる」と言う前提を否定した状態で話が進むと言う珍しいパターンとなった。

 

ミオがカツミとイサミをウルトラマンに変身させないようにしていたのはロッソとブルがルーゴサイトに倒される未来を見ていたから。それに対してカツミとイサミは反論する。
イサミ「母さんが見た未来は一つの可能性だ。未来は一つじゃない!」、
カツミ「そんな未来、俺達が変えてやる。変えてみせるさ! だって俺達は」、
カツミ&イサミ「ウルトラマンだから!!」。
家族を守る為に後ろ向きな行動を取ってしまった親に対し息子達はウルトラマンとして前向きな行動を取る。前回の「私はハッピー」もだったが、『R/B』は「家族」と「ウルトラマン」と言う二つの面があって、「どちらかが良い」でも「どちらも良い」でもなく「どちらも場合によって良い時と悪い時がある」とした。だからカツミとイサミは場面によって「家族」と「ウルトラマン」のどちらかを選択したりどちらも選択したりする事になる。

 

カツミとイサミは親がルーブジャイロにかけたチャイルドロックを外し、立ち止まっていた親達を駆け抜け、窓を突き破ってウルトラマンに変身する!
子供は母親の庇護から離れ、父親を越えていくのであった。

 

ウルトラシリーズ恒例の最終回での特別な変身。
今回はカツミとイサミが人間からウルトラマンになっていく過程が分かるようになっていた。

 

毎回の事ではあるが最終回での主題歌をバックにした決戦はやっぱり燃える!

 

ルーブとルーゴサイトの戦いは互角であった。
ウルトラマンR/B超全集』によると、O-50の戦士の頂の予定では先代ロッソと先代ブルもルーブになるはずだったので、戦士の頂は先代ロッソと先代ブルがルーブになってルーゴサイトを倒す計画だったと思われる。ただし、人間の精神が強く影響しているルーブへの変身は戦士の頂の計算通りにはいかなかった……。

 

「ツルちゃんが言ってました。兄妹三人が力を合わせれば乗り越えられる。だから私も一緒に戦います!」。
アサヒの決意に美剣サキが遺したルーブジャイロが反応し、自分の正体を知ったアサヒはマコトクリスタルに戻ってカツミとイサミの所へ。
そして、カツミ、イサミ、マコトクリスタルの力によって発動されるシン・ボルテックバスターでルーゴサイトを倒すのであった。
今まで「自分は何者なのか?」を探し求めていたアサヒ。その答えに辿り着いた時、彼女は湊アサヒと言う湊家での姿を失い、マコトクリスタルと言う本当の姿に戻るのであった。
「カツ兄、イサ兄、お父さん、お母さん。私、ウチの子で良かった……。ハッピー……」。

 

本来の歴史ではロッソとブルがルーゴサイトに倒されてカツミとイサミが命を落とすのだが、今回の戦いではロッソとブルがルーブに変身してルーゴサイトに勝利している。
ロッソとブルがルーブに変身してシン・ボルテックバスターでルーゴサイトを倒す事が出来たのはアサヒと言う存在がいたから。そのアサヒと言う存在はミオの想いを受けてルーブジャイロとルーブクリスタルが異次元空間からカツミとイサミのもとに現れた時に誕生している。
ミオは自分が15年前にルーブジャイロとルーブクリスタルを持ち出さなければカツミとイサミが未来で命を落とす事は無かったと悔やんでいたが、実はミオが15年前に起こした行動の結果、アサヒと言う存在が誕生し、カツミとイサミが命を落とす未来を変える事となったのだった。

 

アサヒの正体はマコトクリスタルの化身であった。
『R/B』で「マコト」と言えば愛染マコトを思い出すが全くの無関係である。他の作品の登場人物ならともかく、同じ作品の前半のレギュラー人物と最終回の重要アイテムの名前が全く同じだけれど無関係と言うのはどうかなと思う。
当初の企画では愛染マコトの名前は「愛染アキラ」になっていたので、ここはマコトクリスタルと被らないように愛染アキラのままでいってほしかった。

 

最後の敵ルーゴサイトを遂に倒したルーブ!
しかし、『R/B』TVシリーズで主人公ウルトラマンであるルーブの最後の姿は「怪獣を倒して世界を救った!」と言う晴れ晴れとしたものではなく「怪獣を倒して世界は救えたが妹(家族)は失ってしまった」と言う無力感溢れる後ろ姿であった。
この場面は怪獣は倒したが知人を救う事は出来なかった『T』の最終回「さらばタロウよ! ウルトラの母よ!」を思い出す。

 

ウルトラシリーズは怪獣や宇宙人が話のメインになっている事が多いが、『R/B』はメインが家族の話になっているので、今回は怪獣であるルーゴサイトはかなりキャラクターが弱められていた。

 

アサヒは「ハッピーな心の集合体」「明るい未来」「希望」「親達が忘れていたもの」が実体化したものであった。その始まりは1300年前にルーゴサイトに敗れた先代ロッソと先代ブルが地球に遺した欠片、クリスタルであった。
ウシオ「クリスタルって人を思いやる気持ちの結晶なのかもしれないな」。
そして湊家の想いを受けて湊アサヒと言う存在は復活し、家族5人揃って家に帰る事となる。
ウシオ「今日から我が家は5人でクワトロMだ!」。

 

昔の作品は最終回で非現実的な存在がいなくなったりして「フィクションから現実に帰る」と言う展開が多かった。ウルトラシリーズも多くの作品でウルトラマンが地球から去ったりしている。『R/B』が昔の作品だったら最後にアサヒが復活する展開は無くて、ウルトラマンへの変身能力も無くなって、湊家は第1話以前の現実的な日常へと帰っていったであろう。しかし、『R/B』はウルトラマンへの変身能力も残り、アサヒと言う非現実的な存在も加わった新しい日常が始まる最終回となった。
昔に比べて今は現実とフィクションの境と言うものが薄くなってきている。昔だと非現実的なものも今では現実の中にもあるようになってきた。もう昔のように「フィクションと現実を分けて考え、最後はフィクションから現実に帰ろう」と言う時代ではなく、「フィクションも現実の一部で、これからはフィクションも含めた新しい現実を生きていこう」と言う時代なのかもしれない。

 

湊家の名前だが、カツミ(活)、イサミ(勇)、ウシオ()と海絡みとなっている。ミオの漢字表記は不明だが「澪」と考えるとこれも「船が通った後。航跡」と言う意味で海絡みとなる。「湊」も「港」が由来であると思われる。
アサヒだけは「朝陽」と海絡みではない名前だが、「海から朝日が昇る」と考えると「アサヒは湊家から生まれた存在」と見る事が出来る。

 

「俺達兄妹の物語はこれで終わりだ。そして、これからは家族の物語が始まるんだ」。

 

大円団

 

 

 


【監督コメント付】『ウルトラマンR/B(ルーブ)』次回予告 第25話「朝日のあたる家」

 

 

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