帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「悪夢からの使い」

「悪夢からの使い -毒ガス幻影怪獣バランガス登場-
ウルトラマンG』第5話
1990年11月22日発売(第2巻)
脚本 テリー・ラーセン(原案 遠藤明範)
監督 アンドリュー・プラウ
特殊技術 ポール・ニコラ

 

毒ガス幻影怪獣バランガス
身長 79m
体重 12万9千t
都市の地下から赤い煙と共に出現した。スタンレーの攻撃で一時退却するが続いてUMA基地近くに出現して砲台を破壊する。真の目的はグレートやUMAが破壊する前にゴーデス細胞を吸収して1ヶ所に集める事で、オーストラリアの都市地下にゴーデス細胞を運んでいた。
ゴーデス細胞自身がより強力な存在になりつつある為、今まで登場したゴーデス怪獣より強い。
肉体を赤い煙に変えて瞬間移動し、毒ガスを吐き、躊躇うグレートを追い詰めていった。最後はUMAの援護を受けたグレートのアロービームで消滅したが、都市地下のゴーデス細胞と共にゴーデスの本体がいる場所に逃げたらしい。

 

物語
バランガスが突如出現! それを撃退したのは火星で死んだはずのスタンレーだった。
スタンレーのUMA入隊が決まるが、ジャックはスタンレーが既にかつての親友ではなくなっている事を知る。

 

感想
原題は「blast from the past」。
直訳すると「過去からの風」となり「昔を思い出させるもの」と言う意味になる。

 

今回の話は『A』の「決戦! エース対郷秀樹」と展開が似ている。

 

バランガスが出現した時に市民を避難させようと言ったジャックは怪獣を倒した方が早いと言うロイド副隊長と対立してしまう。その後もジャックはゴーデス細胞はより強力になっていると語るが、チャールズに「また君の直感(つまり根拠が無い)か?」と言われ、キムとジーンにも「だからと言って尻尾を巻いて逃げるのかい?」「怪獣を放っておけば街が破壊され人が死ぬ事になる」と言われてUMA内で孤立してしまう。

 

火星で死んだはずのスタンレーが生還する。
どうやらスタンレーはARMYの情報部所属だったらしく、アーサー隊長は無能なARMY情報部より我々の方が君を生かせるとしてスタンレーを引き抜いてしまう。
ドラマ的にARMYが悪役となる事が多いが、これを見るとどっちもどっちである。

 

ジーンは「強運の持ち主が2人も!?」と言ってスタンレーのUMA入隊を喜ぶ。
それに対してスタンレーは「僕らには見守ってくれる存在がいるんですよ」と答え、ジャックはスタンレーに「君は命を2つ持っているんじゃないかい?」と尋ねる。

 

スタンレー「まさか彼が君も助けていたとはな」、
ジャック「これでも助けたと言えるのか?」、
スタンレー「何が不満なんだ?」、
ジャック「借り物の時間の中に生きている気がしないか?」、
スタンレー「時間なんて小さな問題だよ。永遠な存在にとっては……」。
ここでスタンレーが言う「彼」とはグレートの事なのだが、ジャックはグレートに助けられている現状に不満を抱いている。
ハヤタ隊員を始め歴代主人公の多くは一度死んでウルトラマンと一体化して生き返っている。つまり他人の命で生きている状態と言える。わずか80年そこらしか生きられない人間が何万年も生きられる存在と一体になる。ジャックが自分と言う存在に疑問を抱くようになるのも当然かもしれない。

 

自分とスタンレーの関係がギクシャクしている事に気付いたジーンに対してジャックは「スタンレーは僕の友達だった! 友達だった!」と告げる。この時既にジャックはスタンレーを助けたのがグレートではなくてゴーデスであった事に気付いていたのであろう。
この前にジャックはジーンにしばらくUMA基地を離れる事を提案している。
ゴーデスと関係しているスタンレーを警戒しての発言だが、UMA基地が危機に瀕している事を知っていながら、その危機を救う事よりも危機から離れる事を提案するのは他のウルトラシリーズの主人公達にはあまり見られないところである。

 

UMA基地にバランガスが出現!
アーサー隊長は「基地は我々の命だ! 我々の手で守り抜くんだ!」と言って全員出撃させると、さらに自ら前線に立って「この私を倒してから基地を破壊するがいい!」と宣言して銃を構える。カッコいいぞ!
それを受けてロイド副隊長が「次は俺だ!」と銃を構えるが、続くチャールズは「やれやれ仕方が無いなぁ……」と言った感じで銃を構えている。こういうところが実にチャールズらしい。

 

実はバランガスは囮で、その隙にスタンレーはゴーデスセンサーを破壊し、UMAが持っていたゴーデスに関するデータも消去してしまう。
それにしても、いつの間にか衛星カメラまで使って全国のゴーデス細胞を探知できるようにしていたとはUMAの対策の早さは驚くべきものがある。
スタンレーが破壊活動をしているところに出撃していなかったジャックが現れ、友達だった両者の戦いが始まる。
スタンレー「僕は使者の1人にすぎない。お互い変わったんだよ」、
ジャック「何も変わっちゃいない!」、
スタンレー「変化や進歩を恐れるのか?」、
ジャック「ゴーデス! スタンレーに感染したな!」、
スタンレー「全ての生命がゴーデスの一部になるんだ。どうして分からない? これは運命なんだ!」。
そこにアーサー隊長達がやって来て、UMA基地内にスパイがいる可能性があるとしてジャックとスタンレーを拘束し、デルタ・プラズマーも取り上げてしまう。

 

ジャックとスタンレーはそれぞれ独房に入れられるが、スタンレーは赤い煙に変化して脱出すると「お別れに素敵なプレゼントをあげよう」とジャックの独房にゴーデス細胞を送る。
「ゴーデスなんかじゃない! スタンレー・ハガードともう一度話をしたいんだ! 人間として!」と訴えるジャック。スタンレーは「そんな奴はもうどこにもいない。僕は進化しているのさ」と答えるが、それを聞いたジャックは「それはいつか宇宙全体を死に追いやる破滅への進化だ」と切って捨てる。
スタンレーの発言でゴーデスが全ての生命を一つにしようとしている事が判明する。このゴーデスの設定は『ダイナ』のグランスフィアや『コスモス』のカオスヘッダーに繋がっていく。
昭和のウルトラシリーズは「自立」がテーマになる事が多かったが、平成のウルトラシリーズでは「進化」や「変化」がテーマになる事が多く、ゴーデスの「全ての生命を一つにする」も「進化」の一つの形として提示されている。この進化の形が正しいかどうかは次の「悪夢との決着」で描かれる事になる。

 

デルタ・プラズマーを分析しているチャールズの所にやって来たスタンレーは手から出すガスでチャールズを眠らせてデルタ・プラズマーを奪ってしまう。
そしてガスバーナーの火を吹き消して一言、「火の用心、火の用心♪」。
こう言うちょっとした台詞に日本と外国の違いを感じる。

 

ジーンがバランガスを撃退したスタンレーの武器がニセモノであった事を突き止め、さらにスタンレーの逃亡が判明した事でジャックの無実が証明される。
ロイド副隊長はジャックの独房にあるゴーデス細胞を撃つとジャックに向かって「どうやら借りを作っちまったようだな」と告げる。これ以降、ロイド副隊長は今まで苦手だったジャックを信用するようになる。

 

逃亡したスタンレーを追跡する為にジーンがサルトップに乗るが、そこにスタンレーが現れて人質に取られてしまう。
スタンレー「君はジャック・シンドーにとって重要な存在だからな」、
ジーン「彼はあなたの友達でしょ?」、
スタンレー「友達……だと?」。
ゴーデス細胞に感染し、ゴーデスと共に生きる運命を受け入れたスタンレーだが、どこか迷いが残っているような感じを見せる時がある。それでもスタンレーはジーンを連れてゴーデス細胞が集められた穴に辿り着くが、そこにジャックが現れる。
スタンレー「命乞いか? それとも友情? どっちにしろ、今の僕には無縁だな」、
ジャック「スタンレー! 君を救いたいんだ!」、
スタンレー「火星で聞きたかったな!」。
スタンレーの最後の言葉で彼が自分の運命は火星でのあの時に決まってしまったと考えている事が分かる。スタンレーは既に割り切ってゴーデスの使いとして暗躍しているように見えるが、自分を救ってくれなかったグレートへの怨みや自分と違ってグレートに救われたジャックへの妬みもまだ残っているように見えるところがある。

 

なんとかスタンレーの後ろを取って銃を構えるジャックだったが、やはり引き金が引けない。
スタンレー「はたして撃てるかな? 友達だろ? 何度も宇宙に飛んだっけ……。引き金を引けよ! 僕を殺させてやる。もう僕は昔のスタンレー・ハガードじゃない。人間なんてちっぽけな生き物にすぎない」。
そう言ってスタンレーがデルタ・プラズマーを手放したのを見てジャックは「何を望んでいるんだ?」と問う。
スタンレー「ここから出たいんだ、ジャック! 人間の体が邪魔なんだ! 完全なゴーデスになりたいんだ! さぁ、撃て! そして肉体を殺して俺達を自由にしてくれ! 俺達は宇宙を支配する生命の一部となってこれから永遠に生き続ける事が出来る! そして君達もな……。ゴーデスこそ神なのだ!」。
既にスタンレーの声はスタンレーのものではなくなっていた。そしてスタンレーはバランガスと同化して完全なゴーデス怪獣となってしまう。

 

スタンレー(ゴーデス?)の宣言に対してジーンは「私はそんなもの望まない!」と言ってデルタ・プラズマーをジャックのところに投げようとするがゴーデス細胞の穴に落ちてしまい、「ゴーデスと戦って!」とジャックに向かって言いながら穴に落ちていってしまった。ジーンはジャックとグレートの関係に気付いたのだろうか?

 

ウルトラマンを援護しろ!」と言うアーサー隊長の命令で出撃するUMA
銀色の巨人」でチャールズはジーンにハマーの同乗を申し込むが断られ、「きっと後悔する事になるよ。僕の腕前が見られなくて」と強がっていた。今回の話の冒頭にあるバランガス戦でようやくジーンとチャールズがハマーに同乗するが、相性が悪いのか、コンビとしてはチグハグであった。
最後のバランガス戦では今度はキムが操縦するハマーにチャールズが乗る事になるが、「私の腕前が見られて嬉しいだろ?」と言うキムの問いに「二度とデートを申し込みたくないくらい」と後悔しきりであった。

 

グレートの時はグレートの人格が前面に出るが、ジャックの人格が全く反映されないわけではないらしく、スタンレーを取り込んだバランガスを倒すのを躊躇ったグレートはUMAの援護を受けて何とか倒す事が出来たが結局は逃げられてしまった。
しばらく辺りを見回すが、やがて諦めて去っていくグレート。その頃、オーストラリアの砂漠の地下では再び一つに融合したゴーデスが復讐の時を待っていた……。

 

今回の話ではジャックとスタンレーが対になって描かれていた。
スタンレーがゴーデス細胞に感染してゴーデスと共に生きていかなくてはいけなくなったのは、ジャックがグレートと一体化してグレートと共に生きていかなくてはいけなくなったのと根本的な部分では同じだとされた。
又、ゴーデス細胞に感染したスタンレーの意識が徐々にゴーデスに奪われていき、それを進化とするのも、『帰マン』の郷秀樹や『A』の北斗星司が一体化したジャックやエースに取り込まれていったと言う解釈に繋がる部分があるとも言える。
これらの事からゴーデスは「裏ウルトラマン」とも言える存在かもしれない。
スタンレーや郷秀樹や北斗星司がゴーデスやウルトラマンの為に自分の意思を犠牲にしていったのに対し、ジャックが必ずしもグレートの意思に従わず自分の意思を貫いていったのは、それらに対するアンチテーゼだった可能性がある。

 

原案を担当した遠藤明範さんはウルトラシリーズは『G』のみの参加となっている。

 

 

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  • 発売日: 2017/01/27
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