帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「永遠なる勇者ー伝説2大怪獣登場ー」

「永遠なる勇者ー伝説2大怪獣登場ー ー伝説宇宙怪獣シラリー 伝説深海怪獣コダラー登場ー
『新ウルトラマンG 必殺! 怪獣大決戦』第6話
1991年6月27日発売(第3巻)
脚本 テリー・ラーセン(原案 会川昇
監督 アンドリュー・プラウ
特殊技術 ポール・ニコラ

 

伝説宇宙怪獣シラリー
全長 120m
体重 8万2千t
宇宙に追放されていたが目覚めた地球に呼び寄せられた。
核ミサイルの爆発エネルギーを全て吸収して地球に上陸する。
口から炎を吐き、目や手から光線を撃つ。
グレートに倒されて亡骸は宇宙へ運ばれた。

 

伝説深海怪獣コダラー
身長 62m
体重 9万4千t
海に封印されていたが目覚めた地球に呼び出された。
シラリーと共にグレートを追い詰めるが、光線を金属プレートではね返されて消滅した。

 

物語
コダラーとシラリーに対抗する為に人類はあらゆる手段を尽くすが、一方でこれは神の啓示だとして滅亡を受け入れようとする人々もいた。
そんな中、グレートは最後の戦いに向かう!

 

感想
その名は“滅亡”ー伝説2大怪獣登場ー」の続きで「人類滅亡編」の後編。
原題は「nemesis」。
「天罰」、「因果応報」、「避けられない罰」、「天罰を与えるもの」、「とても敵わない強敵」と言う意味になる。内容には合っているがは最終回とは思えない凄いタイトルだ。

 

劇中でジーンの 「希望は無いの?」と言う言葉にジャックが「僕達が希望を捨てなければいいのさ」と答えている場面がある。『G』には人類に絶望して滅亡を願う者達が多く登場してきたが、そんな中でも希望を失わない者達による人類の存在を賭けた戦いが始まるのであった。

 

空間の裂け目に漂うジャック。
グレートは前回の戦いでエネルギーを使い果たしてしまい、あと一度しか戦えなかった。
仮に戦っても勝てる保証は無いと言うグレートに対し、ジャックは僕にもう一度力を貸してくれと頼む。当初はグレートの力を嫌々ながら仕方無しに借りていたジャックだったが様々な戦いを経て信頼関係が生まれたようだ。
ところでこの空間の裂け目の場面、『ティガ』の「GUTSよ宙へ・後編」でダイゴとユザレが語り合う真っ白な世界に雰囲気が似ている気がする。

 

どこかの海岸に流れ着いたジャックはアイクと倉庫街の住人に助けられる。どうやら一週間以上行方不明だったらしい。
この後もコダラーとシラリーとの決着が付くまで数日かかっているが、ウルトラシリーズで怪獣出現から倒すまで一週間以上かかるのは大変珍しい。

 

アイクは「悪夢との決着」でブリューワー将軍に逆らった時と同じく、自分の意思で行動するようになる。ボロを着ていてもその顔に後悔は見られなかった。
ところでアイクが出会った少年だが、この戦いが終わった後にアイクが養子として引き取りそうな感じだが結局どうなったのだろう?

 

再びTVで演説する館長。
「人間は自然を破壊し、好き勝手に暮らしてきた! その報いを受けるのだ! 傷付けられた地球の悲鳴が銀河に届き、海と空から助けを呼び寄せた事を知るがいい! あの怪獣こそ天使と呼ばれるもの達なのだ! 神の国の扉は近くまで来ている!」。
こういう神話的な展開は『ガイア』の根源的破滅招来体に繋がっていくところがある。

 

UMAの実験衛星にいるチャールズはシラリーが地球の誰かと交信している事を突き止める。その誰かとは館長の事だったのだが、自分の意思を館長に告げる事が出来るとはシラリーはかなり高度な意思を持っているのではないだろうか?
因みにクトゥルー神話では旧支配者を崇め奉る人々には旧支配者の意識が流れ込んでいると言う設定がある。

 

博物館で金属プレートの解読を済ませたアーサー隊長。
どうやらサンスクリット語を基にした一種の暗号だったらしい。
「そして最後の夜が訪れる。追放され、封印されたもの、そして第三のものが目覚める」。
シラリーは宇宙に追放され、コダラーは海に封印されていたようだ。
因みにクトゥルー神話の旧支配者も旧神によって地底や海底や宇宙に幽閉されたと言う設定になっている。

 

館長はアーサー隊長を襲って奪った金属プレートを倉庫街の住人に向けて高々と掲げる。
「我々は神が遣わされたものと戦ってはならん! あの怪獣達と戦う事は即ち冒涜である! 武器を取ってはならない! 戦いでは何も解決できない事を知るべきだったのだ! UMAやARMYは! 運命を受け入れ、神の国の扉を目指そうではないか! この神の声が刻まれたプレートこそ、我々が神に選ばれた者である事の証なのだ!」。
なんか「第47格納庫」に登場したノルバーグ一味を思い出す。『G』はこういう宗教団体まがいの存在がよく出る。これも『ガイア』の根源破滅教団に繋がっていくのかな。

 

解読によって、金属プレートが旧石器時代以前に栄えた古代文明人の遺した物である事が判明。古代文明人はシラリーとコダラーに襲われながらも何とか生き延びて現在の人類の祖先となったのだった。
と言う事は人類は200万年前に過ちを犯してシラリーとコダラーに襲われ、今度もまた同じ過ちを犯した事になる。
『G』はヒーロー作品として最後は「人類はこれから良くなる可能性がある」と言う結論を出しているが、その一方で「人類は未来でまた同じ過ちを犯す可能性がある」と言う事もさり気なく示している。この人間に対してちょっとドライな視点が『G』らしいなと思う。

 

TVでまたまた演説する館長。
「我々はこの母なる地球と一つになるのです! 死を恐れず。私達は元々一つの命だったのです! そして神の裁きによって再び一つの命に戻って幸せに暮らす事が出来るのです! さあ、皆さん! 一緒に参りましょう!」。
この思想は『ダイナ』のグランスフィアを思わせる。もっとも、あちらは進化した先のゴールが一つの生命体で、こちらは一つの命だったスタート地点に戻ろうと言う違いがあるが。(どちらかと言うと『新世紀エヴァンゲリオン』の「人類補完計画」が近いかな)
これまでのウルトラシリーズではウルトラマンに依存するかしないかと言う話はあったが、人類の生き方や形の在り方そのものを変えようと言う話はあまり無かった。それが平成に入って「神」や「進化」と言った話が出るようになると、それらに絡んで人類そのものをどうするかと言う話も出るようになった。

 

昔はブリューワー将軍に無批判に従っていたアイクは今度は館長の言葉に無批判に従っていた。しかし、コダラーが倉庫街に上陸して住人が阿鼻叫喚となる中で「望むものを与える」と言う館長に対し、アイクは「あいつは血を求めています!」と反論。「それが望みなのだ」と答える館長に対し、アイクはとうとう「私は従えません!」と宣言する。

 

コダラーの破壊活動に狂喜乱舞する館長を見てロイド副隊長は「イカレちまっている」、キムは「つまり普通の人間だったって事さ」と呟く。
今回の館長のようなおかしい人を「普通の人間だった」と評するのが意外で興味深かった。普通の人間故に怪獣による異常事態におかしくなってしまうと言うのなら、怪獣が現れてもいつも通りに希望を捨てずに戦える者の方が実は普通ではなかったりするのかもしれない。

 

地球に迫るシラリーに対し、ブリューワー将軍は全世界のミサイル基地から核ミサイルを発射するが、シラリーはその爆発エネルギーを全て吸収して遂に地球に上陸する。
この爆発の炎の中から現れたり、満月を横切ったり、夕焼けの街をバックに飛んだりするシラリーがカッコ良すぎ!

 

今回の話はチャールズが宇宙に行く時のスペースシャトル、核ミサイル発射、燃える街の消火活動等の場面に実際のニュース映像が使われている。

 

再び衛星レーザーが使用されようとするが、地球が光り輝き、強力な電磁波が放射されて使用不可能になる。それを見てアーサー隊長は遂に全ての謎を解く。
「そう、第三のモンスターが目覚めたのだ……。「地球」と言う名のな……。怪獣を呼び寄せたのは地球自身です。彼は再び元始の世界を生み出す為に、そして緑溢れる星に戻る為に、人間の文明がその限界を超えた時、目覚めるようになっていた」。
アーサー隊長は自分達の敵は人間の文明そのものだったとして、もう戦えないと語る。
地球が意思を持った生命体と言う「ガイア理論」は後に『ガイア』でも取り上げられる事になるが、地球そのものが人類の敵となると正面きって描いたのは『G』のみである。

 

そこにアイクが銃殺刑覚悟で現れる。手にはあの金属プレートがあった。「皆を救う為に!」。アイクは最後に再び自分の意思で行動したのであった。

 

金属プレートを見たアーサー隊長はブリューワー将軍に向かって「武器の時代は終わったのですよ。ミサイルやレーザーとは全く違う新しい道。それがこの答えです」と告げる。
そしてアイクを含めたUMAはシラリー&コダラーとの決戦に赴く。

 

「これで最後か……」とグレートに変身するジャック。
グレートを見たアーサー隊長は「やはり彼は不死身だったか……」と喜ぶ。

 

初めて経験する1対2の戦いでグレートは危機に陥る。
そこをUMAが援護し、コダラーが撃った光線を金属プレートがはね返し、コダラーが再びはね返した光線をさらにはね返して遂にコダラーを倒すのであった。

 

シラリーが吐く炎に苦しめられるグレート。
ウルトラマングレートの肉体は長く激しい戦いの中で傷付いてしまっていた。だが彼は今、最後の力を振り絞って戦うのだ!」。
グレートは起き上がるとグレートスライサー二刀流で反撃し、遂にシラリーを倒すのだった。
当時のウルトラマンの技は光線や光弾が殆どだったので「光の刃」と言う新しい形のグレートスライサーは実に格好良くて印象に残る技であった。

 

戦いを終えたグレートはシラリーの亡骸を担いで宇宙へ。そしてジャックと分離する。
チャールズ「もう帰って来ないのかな?」、
アーサー「彼は自分の命を懸けて我々の為に戦ってくれたのだ。彼にとってかけがえのない地球と言う敵と……」、
ジャック「彼はもう一度やり直すチャンスをくれたんだよ。だから皆で地球を守り抜くんだ。彼は僕らを信じてくれたのだから……」。
そう、グレートはシラリーとコダラーと言う怪獣を倒したが、まだ環境問題や自然破壊は解決していない。それを解決するのは我々人類なのだ。
地球をここまで傷付けたのはその人類だが、グレートは地球で戦っていく中でゴーデスにも打ち克つ人間の心に希望を見出し人類を信じる事にしたのだった。

 

 

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