「異星人狂奏曲 ー変身生命体リュグロー登場ー」
『新ウルトラマンG 必殺! 怪獣大決戦』第3話
1991年5月23日発売(第2巻)
脚本 テリー・ラーセン(原案 遠藤明範)
監督 アンドリュー・プラウズ
特殊技術 ポール・ニコラ
変身生命体リュグロー
身長 120m
体重 13万2千t
リュグローとベロニカは流星の状態で地球にやって来た宇宙の旅行者。
どんな姿にも変身する事が出来て、夫のリュグローはハンバーガーショップに、妻のベロニカは店員に変身した。人間に好意的なベロニカに対してリュグローは人間を嫌っていて、ベロニカとチャールズが親しくなるのが我慢できず様々な物に変身して妨害する。
ベロニカがARMYに包囲された事に怒ったリュグローは巨大化して角からの光弾や頭のカマで街を破壊する。故郷を追われたらしく、グレートに地球で生きる事を説かれ、最後はリュグローも人間に変身してベロニカと一緒に幸せそうに去って行った。
ベロニカの年齢は5000歳らしい。
物語
謎の流星が落下してUMAとARMYがそれぞれ調査を開始する。
一方、婚約者に振られたチャールズはベロニカと言う女性と知り合って……。
感想
「宇宙侵略編」の1本目だがリュグローとベロニカに地球を侵略する意思は無かった。
原題は「tourists from the stars」で「星からの旅行者」となる。
劇中でも「旅行者」と言われていたが、故郷を追われたのに旅行者って……。
リュグローとベロニカは夫婦らしい。それなのに夫を置いてチャールズとデートするベロニカって……。
知的生命体と出会うのが好きだと言っていたので愛情と言うわけではないのかもしれないが、リュグローも人間が信用できないと言うよりベロニカに近付く男は許さんと言う感じで、今回の話は宇宙人による壮大な痴話喧嘩と言う印象がある。
チャールズに事情があって調査が遅れている事を知らされたアーサー隊長は一言「腹痛か?」。
いつも食べてばかりと言うイメージなんだな、チャールズ。
そのチャールズ、実は婚約者に別れを告げられていた。
スーザンと言うらしいが、チャールズが「銀色の巨人」で言っていた婚約者だろうか?
チャールズがスーザンから突っ返されたペンダントをベロニカにプレゼントした為、宇宙人である事がバレたベロニカが老婦人に変身してもペンダントのせいでスーザンに正体を見破られてしまった。
今回の話は宇宙人による壮大な痴話喧嘩のように見えたと書いたが、ベロニカの正体がバレる展開にもチャールズの恋愛事情を絡ませるところはテーマが徹底されていて良かった。
チャールズはベロニカを動物園に連れて行くが、ベロニカは「どの動物もみんな檻の中?」と疑問を呈する。
チャールズ「動物は餌には不自由しない」、
ベロニカ「だけど本当の生き方じゃないわ」、
チャールズ「そうかもね。だけど敷物にされたり剥製になったりするよりは幸せじゃないの?」、
ベロニカ「一つの生命が他の生命を支配し貪り尽くすなんて不自然よ! 最後は全部破滅するわ。このままじゃいけない……」、
チャールズ「その言い方。まるで見てきたみたいだね」。
明言はされなかったが、地球における人間と他の生物の関係はリュグローとベロニカが故郷を追われた事情と繋がっているようだ。
ベロニカが宇宙人かもしれないとしてUMAは厳しい態度を取る。
ロイド副隊長は「彼女がゴーデスのようなエイリアンじゃないとなぜ言える!」と詰め寄り、アーサー隊長も「宇宙からの敵に対しては常に警戒しなければならない」と決める。
やはりゴーデスの脅威は強烈なトラウマとして皆の記憶に残っているようだ。
「まだ尾行するんですか? 親分」、
「チーフと呼べ! 俺達情報部は手柄が少ない。エイリアンでも捕まえん事には、どっかに左遷されちまうんだぞ!」。
アイク再登場。ジーンにちょっかい出して殴られたり、バレバレな格好でチャールズとベロニカを尾行したりと憎めない悪役となっている。
リュグローとベロニカを抹殺しようとARMYが取り囲む中、ジャックは「もう一度、ベロニカと話をしたいのなら行くんだ。周りの連中なんか気にするな」とチャールズの背中を押す。
序盤の頃は対立を繰り返していたジャックとチャールズだったが色々な事件を乗り越えて絆が生まれてきたのが嬉しい。
チャールズ「君は本当は誰なんだ?」、
ベロニカ「私達は旅先でどんな姿にもなれるの」、
チャールズ「今は何になりたい?」、
ベロニカ「友達に」、
チャールズ「……僕はUMA隊員としてここに来たんだ。UMAは君達に基地内での居住と安全を保障できる。それに大した事じゃないけれど、世界中のUMA支部を観て回る事だって……。君達には手出しさせない」、
ベロニカ「それも牢獄だわ」、
チャールズ「誤解を解く間だけさ」。
この会話で両者はお互いに最大限の譲歩を提示している。
ベロニカにはリュグローと言う夫がいるのでチャールズとの関係は「友達」が限界で、チャールズはUMA隊員として宇宙人であるベロニカとリュグローを「UMAの監視付きの自由」に置くのが限界。しかし、チャールズはベロニカとは「友達以上の関係」になりたかったし、ベロニカは「監視の無い自由」を得たかった。ここで両者は一緒にいる事が出来ない事が決まってしまった。
ARMYが攻撃を開始した事に怒ったリュグローは巨大な怪獣に変身するが、そこにグレートが現れる。
リュグロー「俺の気持ちが分からないのか?」、
グレート「お前はただ破壊しているだけだ」、
リュグロー「お前は人間の味方か?」、
グレート「戦いを止めるのだ」、
リュグロー「戦わなければベロニカが殺される!」、
グレート「彼女を危険にしているのはお前自身だ」、
リュグロー「俺達はただの旅人なのに……!」。
そこに通りかかる列車。グレートは列車を救うがその隙をリュグローに攻め込まれて危機に陥る。
リュグロー「人間の為に死ぬのか?」、
グレート「故郷を追われたのだな?」、
リュグロー「そうだ! もう帰れない」、
グレート「ならここで暮らすのだ」、
リュグロー「この星で?」、
グレート「その為の方法は分かっているはずだ」。
グレートも地球で生きていくには大気汚染の激しさから3分間しか活動出来ないと言う不自由を背負った。自分が生まれ育った星とは別の場所で生きると言う事はいくつかの不自由を覚悟しなければいけないと言う事なのかもしれない。グレートとの会話でその事を知ったリュグローは人間嫌いでありながら人間として生きていくと言う不自由を背負う事となった。
ウルトラシリーズをたくさん見ていると、宇宙からやって来て地球で戦うウルトラマンをたくさん見るので忘れてしまいそうになるが、活動に制限が付けられて本来の姿とは別の姿に変わったり他の生命体に宿ったりしなければならないと言う事は実はとても大変な事だった。
グレートとの戦いを経てリュグローはイタリア系のダンディーな男性に変身し、それを見たベロニカはリュグローの元へ帰る。そう言えばベロニカからリュグローの名前を聞いた時にチャールズは「イタリア系の名前だね」と言っていたなぁ。
幸せそうに去っていくリュグローとベロニカを見てチャールズは「まぁ、いいさ……。奴は趣味が良いぜ」と語る。実はこの時のリュグローはチャールズそっくりの姿に変身していたらしい。劇中ではそれが分かりにくいのが残念。これが分かっていたらチャールズの「奴は趣味が良い」発言がさらに面白く聞こえる。