帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「楽園行き」

「楽園行き」
ウルトラQ dark fantasy』第6話
2004年5月11日放送(第6話)
脚本 村井さだゆき
監督 服部光則

 

物語
失踪した父親を探してほしいと依頼された坂本は残された業務ノートから巽部長の足取りを追う。
その果てに待っていたのは東京の地下深くに広がる闇の社会であった。

 

感想
今回の舞台は東京の地下に広がる謎の都市。
ウルトラシリーズは「あけてくれ!」のように異次元の世界が出てくるが今回は我々の住んでいる街の地下に未知の世界が広がっていたとして他の話には無い身近さと言うか生々しい怖さがある。

 

巽部長曰く「安楽の園。だから楽園」。
しかし、ここで言う「安楽」とは安らかな生を送る事ではなく安らかな死を迎える事であった。
人間関係を全て捨て、得られたかもしれない経験を拒絶し、死の瞬間までをただ生きている。共同で生活しているので孤独死のような悲惨さは防がれているがこれも一種の「緩やかな自死」と言える。

 

仕事が生きがいだった巽部長は仕事から外された事をきっかけに人間関係のしがらみが無い地下都市に安らぎを求めるようになる。
地下都市の穏やかな、しかし、刺激の無い生活が幸せかどうかは分からないし、巽部長も地下都市に幸せは無いと断言しているが、それでもそんな生活も良いかもと思えてしまう何かがあった。
それは地下都市が幸せだからではなく、あまりにも地上が不幸せだからだ。地上があまりにも生き辛くなったから何も無い地下都市がまだ幸せな場所だと思えてしまうのだ。

 

今回の話は「あけてくれ!」とスタート地点は同じなのだが、異次元列車の行き先に「希望」があったのに対して今回の楽園には「希望」が無かったのでゴール地点は大きく違っている。

 

地下都市に住む人達を毒ガスで処理していく謎の集団「ネズミ捕り」。
何者で何を目的としているのか不明だったが小説版では巽部長の推測ではあるが一応の説明がされている。

 

最初は会社で眼鏡のOLが先輩に怒られていたが最後はその先輩も上司に怒られて意気消沈。そんな先輩に向かって意味ありげに微笑む眼鏡のOLこそ巽部長達を地下都市に誘った「配達人」であった。
地上と地下とで先輩と眼鏡のOLの力関係が逆転するのが面白い。
この眼鏡のOL(配達人)の正体と目的も不明だが小説版では明らかにされていて、剛一が配達人の正体に気付きながらもその後に問い詰めた様子が無い理由にも触れられている。

 

今回の話は長谷敏司さんによってノベライズされている。