帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「いつか見た未来」

「いつか見た未来 ー時空怪獣エアロヴァイパー登場ー
ウルトラマンガイア』第32話
1999年4月17日放送(第32話)
脚本 武上純希
監督・特技監督 北浦嗣巳

 

時空怪獣エアロヴァイパー
身長 63m
体重 4万9千t
時間を歪曲させる積乱雲状のエネルギー体に潜んで時空を飛ぶ怪獣。
口から炎を発する。時間移動を使って相手の攻撃をかわす。
チーム・ファルコンに倒される未来を変えようとするが、ファルコンに角を破壊されて時間移動を封じられ、最後はガイア・スプリームヴァージョンのシャイニングブレードで倒された。
エアロヴァイパーの死と共にエネルギー体も消滅し、その後、現実にエアロヴァイパーの幻影が現れるが本物のエアロヴァイパーが倒された時間に消滅した。
名前の由来は「エアロ(空中)」と「ヴァイパー(毒蛇)」かな。

 

物語
空に時間の狂った積乱雲状のエネルギー体が現れた事を知ったチーム・ファルコンは何かに突き動かされるように突撃する。
果たしてファルコンに何があったのか?

 

感想
チーム・ファルコンが危険な任務を率先して受ける理由が明かされる話。
こういう設定だと「過去に仲間を死なせた」と言う話になる事が多いのだが、今回は多世界解釈を使って「自分が死んだ未来を見た」と捻られたものとなった。こういう展開が出来るのはSFならではである。

 

今回登場する怪獣は4つ目の座標軸とも言うべき「時間」を歪曲させるエネルギー体に潜んで時空を飛ぶエアロヴァイパー。過去や未来にも移動できるのでまともに戦っては生きて帰れない強敵。
時間移動をする怪獣と言えば『A』の「タイムマシンを乗り越えろ!」に登場したダイダラホーシがいたが、ダイダラホーシが時代劇をする為の時間移動能力だったのに対し、今回のエアロヴァイパーは時間移動そのものを真正面から描く為に用意された怪獣だった。

 

どうしていつも死に場所を探すような戦い方をするのか疑問をぶつける我夢に米田リーダーは「あなたは運命を信じますか? 私には分かるんです。死ぬべき時が近付いているんだと……」と答えるが、そこに「いつも言っている事がカッコ良すぎる」と慧がやって来て「命は安売りしないと約束したのは嘘だったのか」と詰め寄る。
「嘘ではないが運命は自分ではどうする事も出来ない」と答える米田リーダーに慧は「人間は死ぬ事を前提に行動してはいけない」と語るが米田リーダーの死へ向かう気持ちは変わらなかった。
確かに慧が言っているように米田リーダーはカッコ良く死のうとしているように見えるところがある。
慧が妙に死に拘っている理由は劇中では明かされていないが、石橋けいさんが演じている事で『ティガ』『ダイナ』のマユミを思い出して漠然と何かを感じ取る事が出来る。

 

ファルコンがなぜ危険な任務ばかり受けるのか調べていた慧はファルコンが防衛隊時代に今朝と同じような時間の狂いを体験していた事を突き止める。
「我夢……。米田リーダーに力を貸してあげて……。生きていてほしいの……」と語る慧。そこにエネルギー体の出現とファルコンが出撃した事が知らされる。我夢と慧はファルコンを止めようとするが、チーム・クロウに出撃命令は下りていないとして稲城リーダーに止められてしまう。助けを求める慧の表情に我夢は力強く頷くのであった。
おそらく慧が死に拘る理由を知っていると思われる稲城リーダーは慧と米田リーダーが必要以上に関わらないようにしている気がする。
ところで堤チーフはファルコンの事情を知らなかったのかな? 知っていてもおかしくない立場なのだが……。

 

エネルギー体の中に入ったファイターEXの時計が狂ってしまう。エネルギー体の中には様々な時間が存在しているらしく、我夢はここで三つの未来を見る。
①ファルコンは墜落し、エリアル・ベースも破壊され、エアロヴァイパーも死んでいる未来。「エリアル・ベース……、全滅したのか?」。
②出撃するファルコンに慧が話しかけているところに現れたエアロヴァイパーによってエリアル・ベースが破壊されてしまう未来。「死なないで。必ず戻ってきてください」、「運命に身を委ねるだけだ」。
③ファルコンがエアロヴァイパーを倒すが殉職してしまい、3人の遺体がエリアル・ベースに運ばれる未来。「過酷な運命に勇敢に立ち向かった戦友達に敬礼!」。
ファルコンの遺体に呆然とする我夢。そこに現実のファルコンがやって来る。

 

未来のファルコンの遺体を前に話し始める現実のファルコン。
米田「我々が死んで皆が助ける未来だ」、
林「自分の死を見た者はどうすればいい?」、
塚守「俺達が生き延びたら、どうなるんだ?」、
米田「もし俺達が自分の運命から逃げ出せば未来は変わってしまう。俺達が死ぬ事で皆が救われるんだ」。
しかし、我夢はそれを認めず、通りかかった黒猫を見て「シュレディンガーの猫」について語る。「聞いてください。コップは床に落とすと……割れます。でも、それに意思が働けば……」。そう言って落としたコップを手で受け止める。当然、コップは割れなかった。「つまり、未来は一つじゃない。だから皆さんも死ぬ事は無いんです」。
その時、新たな第4の未来が始まろうとする。
ファルコンに倒される未来を変えようとする現実のエアロヴァイパー。
我夢「あれが証拠です。あいつは時空を飛び回り、あなた方を探している。チーム・ファルコンに滅ぼされる未来を変え、生き延びる為に」、
米田「何が未来を変えるんだ?」、
我夢「意思です。死のうとするか、前向きに生きようとするか、どの未来を選ぶかは人間自身の意思なんです」。
意を決したファルコンが出撃する。
実を言うと「シュレディンガーの猫」はこういう話ではないのだが、ここは「決められた未来なんて無い」と言うヒーロー作品としての結論に至る為にあえて拡大解釈したと考える。

 

時間移動を使って敵の攻撃をかわすエアロヴァイパー。米田リーダーは墜落した未来の自分の戦闘機を見て未来の自分がどうやってエアロヴァイパーを倒したのかを知る。それは燃料ごと戦闘機でエアロヴァイパーに突っ込む特攻であった。慧の事を想いながらも「やはり、未来は変えられなかったか……」と呟く米田リーダー。しかし、まだ諦めていない我夢はガイアV2に変身する。
時間移動を駆使するエアロヴァイパーにガイアV2も苦戦するがファルコンがエアロヴァイパーの角を破壊した事でエアロヴァイパーの時間移動能力が封じられ、新技シャイニングブレードで逆転勝利を収める。
こうして「ガイアとファルコンによってエアロヴァイパーが倒される」と言う第4の未来が生まれたのだった。

 

現実に帰って来た我夢とファルコンはどの未来になるか状況を見守る。
エアロヴァイパーが出現した事で「やはり未来は変わらなかったのか」と嘆くファルコンだったが、次の瞬間、エアロヴァイパーは消滅してしまった。「俺達は未来を勝ち取ったのか?」と尋ねる米田リーダーに我夢は「決められた未来だなんてあるはずない」と答える。
そこに慧がやって来て「米田リーダー……。お帰りなさい、米田さん」と迎え、米田リーダーは「あぁ……、何とか約束は守れたよ」と答える。
不吉を呼ぶと思われた黒猫も実はジョジーが飼っていた黒猫だと分かって皆は心の底から笑うのだった。

 

エアロヴァイパーの目的は「死ぬ運命を変えて生きようとする」であった。今回の話はファルコンが生きる事を選択する物語になっているので見ている時はあまり気にならないが、どんなに頑張っても結局最後は死ぬ事になったエアロヴァイパーは結構可哀相な存在だった。

 

ファルコンは防衛隊時代に一度未来を見ていて、それから死に向かうようになったのだが、ひょっとしたら、エアロヴァイパーは死の未来を見せる事でファルコンが死に向かうよう仕向けて、自分と戦う前にファルコンが別の戦いで死ぬようにしていたのかもしれない。そう考えるとかなり頭が良い怪獣と言える。

 

エアロヴァイパーが倒されると同時に消滅し始めた事からあのエネルギー体はエアロヴァイパーが作り出したものだったと思われる。様々な時間が集中している特異点みたいなものだったのだろうか。

 

エリアル・ベースに野良猫が迷う事は120%無いので、ジョジーが抱いていた黒猫はジョジーの飼い猫と考えて良いだろう。まさかペット持ち込み可とはG.U.A.R.Dはかなり自由な組織だ。『ネクサス』のナイトレイダーではまず無理だろうなぁ。(絶対に凪副隊長に怒られる)