「迷宮のリリア ー超空間波動怪獣サイコメザードⅡ登場ー」
『ウルトラマンガイア』第19話
1999年1月16日放送(第19話)
脚本 長谷川圭一
監督・特技監督 原田昌樹
超空間波動怪獣サイコメザードⅡ
身長 66m
体重 3万6千t
空から街中に光の粒子を振り撒いた。光の粒子には電子系統を狂わせる他、大気の電磁波と反応して人間の記憶を司るシナプス神経を刺激してある種の幻覚作用を誘発する極めて指向性の高い特殊な電気エネルギーが放出されている。
アッコのリリアの幻を利用してチーム・ライトニングを撃退するが、XIGによって電波を遮断されて位置を特定されるとチーム・ファルコンの攻撃を受けて実体化した。
腹部にリリアを思わせる醜悪な顔を持つ。腕から光線を撃つ。
アッコがリリアが幻だった事に気付いた後、ガイアのクァンタムストリームで倒された。
物語
いつもと様子が違うアッコはミッション中にミスを犯してしまう。
アッコを心配する我夢は梶尾リーダーにアッコのお見舞いに行くよう勧めるが……。
感想
一応は『ガイア』のヒロインであるが藤宮との関係でメインストーリーにも関わり出した玲子に比べてイマイチ目立っていなかったアッコの主役回。
今回の話からアッコと律子と梶尾リーダーの複雑な人間関係が始まる。
アッコが梶尾リーダーを好きだった事が明かされる。でもこの設定はちょっと唐突な印象を受ける。今までもアッコが梶尾リーダーについて話す場面は何度かあったが恋愛感情と言う感じはあまり無かったと思う。
アッコは見かけによらず臆病で小さい時は体が弱く病気がちで学校の大きな行事の度に熱を出していて、親しい友達もいなくて独りぼっちだったらしい。
「好きな男性がいる」「実は暗い子供時代を送っていた」と言う今回のアッコの話は当初あった明るいイメージが消えて暗いイメージが付いてしまったところも含めて玲子と被る部分が多く、もう少し違う設定の方が良かったかなと思う。
思えば『ガイア』で最初から最後まで明るかった女性キャラってジョジーくらいかな?
今回のアッコは冒頭から妙に暗かった。
実は今回の話は前回の「アグル対ガイア」の直後の話となっていて高所恐怖症気味だったアッコは前回のコンピュータールームでの恐怖をまだ引きずっていたのだった。
そう言えばオペレーターであるアッコが危機に直接遭うのは前回が初めてであった。それが引き金となってアッコはこれから先もXIGとして戦いに身を投じられるか悩む事になる。
因みにXIGは2年勤務で本人の希望が無ければジオ・ベース通信本部異動になるとの事。ウルトラシリーズの特別チームは数年経ってもメンバーが替わらない事が多いのだが現実的にはこんな激務を数年間も限られたメンバーで続けていくのは大変だよなぁ。
ミスを犯して地上勤務となったアッコに代わって非常勤オペレーターとして鵜飼彩香が登場。
レギュラーの代わりとなる非常勤隊員と言う設定は珍しい。まぁ、レギュラーの隊員が何らかの理由でいなくなっても補充がされなくて減った人数のままいつもの任務を続けていた今までの特別チームの方がおかしかったわけだが。
堤チーフはアッコを「優秀なオペレーターでXIGには無くてはならない存在」と評する。後にアッコがミスをした時の庇い方といい堤チーフは部下に対してやや過保護なところがある。
一方の石室コマンダーは根源的破滅招来体の脅威がXIG結成時の予測を遥かに上回っている今だからこそ個人の意思は尊重すべきとアッコがXIGを離れる事も認めている。
それまで怪獣が出ていなかった世界でいきなり一週間に一度くらいの割合で怪獣が出現するようになったら、それはもう「異常事態」と言っても良い。ウルトラシリーズに限らずヒーロー作品は立て続けに事件が起きるものなので視聴者の感覚が麻痺しているところがあるが「怪獣や怪人が休みなく現れるようになる」と言うのは皆が人生を考え直すほどの大きな変化である。
今のアッコには一番信頼できる人が必要だとして梶尾リーダーに頼む我夢。アッコが梶尾リーダーの事を好きだと言うジョジーですら気付いていなかった事を見抜いていたとは意外と鋭い。
梶尾リーダーをアッコのお見舞いに行かせるのは我夢のファインプレーであるが、これが梶尾リーダーと律子の出会いになったと考えたらちょっと複雑なところもある。
我夢は梶尾リーダーを尊敬しているが人との距離を取り過ぎるところは嫌いだと告げる。確かに梶尾リーダーが任務以外で誰かと会話する事は殆ど無い。今回の話を見るに梶尾リーダーは仕事以外ではどのように他人と接したら良いのか分からない人な感じがする。
そう言えば梶尾リーダーが任務以外の事をしたのは今回のアッコの家の訪問が初めてかな?
「人との距離を取り過ぎている」と言った我夢に対して梶尾リーダーは「お前には言われたくない」とこぼすが、それを面と向かって言えないのが実にらしい。仕事中のミスは面と向かってハッキリと指摘できるのに。
梶尾リーダーがアッコの家を訪ねたところに律子が帰って来るが、緊張しまくりの梶尾リーダーはメチャクチャ挙動不審でXIGの制服を着ていてアッコの先輩だと分からなかったら不審者と疑われそうなレベルであった。
アッコが梶尾リーダーの事を「クールで素敵な先輩」と評していた事を律子から伝えられて嬉しい梶尾リーダーが見ていて笑える。
ラスト、リリアが幻だと気付いて倒れたアッコを助ける梶尾リーダーと律子はつい目が合ってしまう。まさかこの二人の物語がここから始まるとはこの時点では予想できなかった。
因みに律子の亡くなった主人については後に「悪魔のマユ」で語られる事になる。
「マリオネットの夜」でサイコメザードが人間の頭の中を覗いていた事が語られたが、今回はそれを使って女性の脆くて不安定な精神を描いた。「マリオネットの夜」はゾンビもので今回は「イマジナリーフレンド」と同じ怪獣を使って違うホラー作品が出来るのが面白い。
今回の戦いはウルトラシリーズお得意の幻想ホラーで遊園地を舞台に闇の中での光の使い方が幻想的で上手かった。
アッコは戦いに向かう梶尾リーダーを見て自分とは生きる世界が違うと感じるが、リリアの幻に没頭するアッコに向かって梶尾リーダーは俺とお前は同じ(現実と言う)世界に生きていると説得して救い出す。
事件解決後、お礼を言うアッコに対して梶尾リーダーはいきなり話を始める。
「空っていいよな。俺は飛行気乗りだから、いつも速く飛ぶ事ばかりを考えてきたんだ。でもな、速く飛んでばかりだと近くにある大切なものが見えない事もある。これからもよろしくな」。
よく聞いたら何を言いたいのか微妙に分からない台詞だ。アッコに対してと言うより自分に対して言っている感じがする。
因みに最初の「空っていいよな」と言う台詞は「天空の我夢」で我夢がアッコに向かって言った言葉である。まさか我夢から教えられた台詞をそのままなぞったわけじゃないですよね? 梶尾リーダー。
アッコと仲良く話す梶尾リーダーを見て「あぁ……、梶尾さん」と何故かショックを受ける大河原。「米田さんも結構イイ人だぞ」と言う北田のフォローも何故?
ここで米田リーダーの映像が入るのが笑える。
最後に「頑張ろうな」と大河原を励ます北田だが何を頑張ると言うのだ?
原田監督が遊びで入れた場面らしいが、このおかげで大河原のキャラクターが一気に立ってしまったw
今回の話はアッコの友達が一つの鍵だったのでアッコの恋愛よりジョジーとの友情を取り上げた方が良かったかなと思った。
思えば平成ウルトラシリーズは恋愛話に比べて友情話がかなり少ない。