帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「伝説との戦い」

「伝説との戦い ー伝説魔獣シャザック登場ー
ウルトラマンガイア』第33話
1999年4月24日放送(第33話)
脚本 長谷川圭一
監督・特技監督 村石宏實

 

伝説魔獣シャザック
身長 親・67m 子・38m
体重 親・7万t 子・3万3千t
森に入る人間を襲って喰い殺すとしてネイティブカナディアンに恐れられている魔物。
普段は透明で朝と夕の短い時間にしか姿を見せない。我夢によると不可視な電磁ベクトルの領域に存在しているとの事。怒っている間は姿を消さない。
口から突風を吹く。全身に鋭い体毛を持ち丸まって相手に突撃する。
ガイア・スプリームヴァージョンやキャサリンと戦うが子供のシャザックが現れた事で戦いは止められた。
自然循環補助システム・エントに欠陥があった為に現れたらしい。
ロック・ファイト」のコッヴⅡの着ぐるみを改造している。
古怒田さんによると四聖獣の一つ「朱雀」に位置する存在らしい。

 

物語
カナダで実験が行われていた自然循環補助システム・エントの様子を見に行った我夢とジョジーは伝説の怪獣シャザックが現れたと聞かされる。
そして我夢の前にエントの開発者キャサリンが現れる。

 

感想
今回の舞台はカナダだが本当にカナダでロケをしたわけではなく日本国内で撮影したものをカナダっぽく見せている。
ウルトラシリーズは特別チームの設定が国際的だし日本にだけ怪獣が現れるのも不自然なので今回のような外国編があると世界観の補強になる。

 

何故か老人の英語が分からなかった我夢。アルフリーダーの言葉は理解していそうなので老人の訛りが強かったのかな。

 

彩香が我夢とジョジーを「良いコンビ」と評するがアッコは不満そう。オペレーター3人組で1人だけ外れされたからかな?
因みにジョジーが事件現場に出るのはこれが初めて。そう言えばアッコは事件現場に出た事が無かった。「迷宮のリリア」は非番の時に操られていた状態だったし。

 

森林伐採による二酸化炭素増加を抑制する為に開発された自然循環補助システム・エント。成功したら人類のみならず地球の未来にとっても画期的なものであったが、プログラムに欠陥があって強引に実験を続けていたら森を壊す事になっていた。
よく考えたらエントは「人間が地球そのものを改造する」と言うものである。だが、自分達が破壊してきた環境を何とかしなければならないと考えるようになっただけ人間は少しは前に進めたと言える。

 

『ガイア』の重要な設定の一つなのに意外と取り上げられないアルケミー・スターズ。
我夢と藤宮を除いて今までの話でアルケミー・スターズがメインで取り上げられたのは「46億年の亡霊」と「反宇宙からの挑戦」くらいかな。

 

ダニエル議長によるとキャサリンは20歳になったばかりの女性科学者で才色兼備のスーパーレディとの事。
ジョジーは我夢が同じアルケミー・スターズなのにキャサリンの事を知らなかったのを不思議に思うが世界各地に数百人以上もいるのなら知らない相手がいても仕方が無いのかもしれない。と言うか、アルケミー・スターズがそんな大人数だったとは驚きだ。

 

シャザックから皆を守る為に囮になった我夢は崖から落ちてしまうがガイアとアグルの光に助けられていた。
ウルトラマンの光が変身者の意思とは無関係に変身者を守るのは意外と珍しい。ここはウルトラマンの意思がハッキリと描かれる事は無いが変身者とは別の意思を持っている事は描かれている平成三部作ならではと言えるかもしれない。

 

XIGナビを無くして連絡が取れなくなった事に我夢が焦っていると「3ツ数エル前ニ川カラ出ロ! わにニ喰ワレルワヨ」と言われてさらに焦る事に。そこに「アッハッハッ! ばかネ。わにナンテイルワケナイジャナイ」と高笑いを上げてキャサリンが姿を現し、怒る我夢を気にも留めずに「君XIGダヨネ? 私ノ仕事ヲ手伝ッテクレナイカナ?」と話を持ちかけてくる。
その後も怪獣が姿を消す理屈に興味が無かったりグレネードランチャーでシャザックの寝床を攻撃したりとキャサリンウルトラシリーズでは珍しいタイプの女性で、どちらかと言うとハリウッド映画に出てきそうなキャラクターとなっている。こういう女性キャラは好きなのでもっと増えてほしいなと個人的には思っている。

 

『初代マン』の「科特隊出撃せよ」に登場したネロンガは印象に残っているが透明怪獣自体はウルトラシリーズでは意外と少ない。今回登場したシャザックは久し振りの透明怪獣で怪獣の姿は見えないが木々が勝手に踏み潰されていくと言う見せ方が実に良かった。

 

シャザックはネイティブカナディアンの古い言い伝えで「森に入る人間を襲って喰い殺す魔物」との事。
準備稿での名前は「ウインデゴ」だったらしい。おそらくクトゥルー神話に登場する「ウェンディゴ」がモデルだろう。ウェンディゴはカナダの森林地帯で恐れられる伝説の魔物となっている。

 

シャザックを倒したと思ったキャサリンは「モウコレデクダラナイ伝説モぴりおどネ」と上機嫌。
キャサリンの「アルケミー・スターズがなぜ今の地球に生まれてきたのか?」と言う問いに我夢は「自分達を必要とする人々がいるから。その人達を守る為」と答える。キャサリンも同じで自分の才能を使って森林伐採によって失われていた故郷の活気を取り戻そうとしたのだが逆にエントがシャザックを怒らせたと森の人々に非難されたらしい。
「大切ナノハ伝説ヨリ現実」「自分ノ研究ノ正当性ヲ認メサセタカッタ」と言うキャサリンの話を聞くと、彼女の目的が故郷を守る事から森の人々に自分の正しさを認めさせる事へと段々ズレていっているように思える。自分の研究がなぜ怪獣を怒らせたのか考える事が出来れば良かったのだが……。

 

キャサリンの両親は森で魔物に襲われたと噂されていたがキャサリンはあくまで事故死でシャザックは関係無いと語る。しかし、必要以上の攻撃心を見て我夢はやはりキャサリンはシャザックを憎んでいると感じる。
キャサリン「私ヤ私ノ両親ノシテキタ事ハ間違ッテイタノ?」、
我夢「そんな事無い! そんな事……」、
キャサリン「ソウ……ダヨネ……」。
気絶したキャサリンを見つめ、シャザックを見つめる我夢。
我夢「怒りや憎しみで戦うんじゃない! ただ……守りたいだけだ! ガイアァー!!」。
怒りや憎しみで戦ってはいけないと言うのは藤宮との戦いで我夢が得た答えなのだろう。

 

目が覚めたキャサリンは我夢がいない事を不思議がる。直後にガイアがいる事に気付くが、ガイアの正体に気付いたかな。
ガイア・スプリームヴァージョンがフォトン・ストリームを、キャサリンがロケットランチャーを撃とうとするところに子供のシャザックが現れ、シャザック親子を見たキャサリンは自分の両親を思い出す。
母「人間モコノ森ト同ジ自然ノ一部ナノヨ」、
父「私達ハソノ素晴ラシサヲ知ル為ニ科学者ニナッタンダ」。
自然にはまだ知るべき事がたくさんある。シャザックが本当に森の守り神だった事に気付いたキャサリンはガイア・スプリームヴァージョンに戦いを止めてと叫ぶ。そしてシャザックの親子は森の中へと消えていった。
今回は本編のロケ中に本当に雪が降り始めたらしく、それに合わせて特撮部分でも途中から雪を降らせたらしい。偶然がきっかけであるが、本編と特撮の融合とカナダと言う舞台の効果を上げた最高の演出となった。

 

別れ際に我夢の頬にキスをするキャサリン。それをジョジーが目撃するが、もしこの場にアッコがいたら修羅場と化していただろう。まぁ、お喋りなジョジーなのでこの場にいなかったアッコに後で話していそうだが……。

 

事件が終わって戯れる我夢とジョジーとチーム・ファルコン。珍しい組み合わせだ。