帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「光との再会」

「光との再会 ーリドリアス カオスリドリアス登場ー
ウルトラマンコスモス』第1話
2001年7月7日放送(第1話)
脚本 大西信介
監督 北浦嗣巳
特技監督 佐川和夫

 

友好巨鳥リドリアス
身長 48m
体重 5万8千t
SRC怪獣保護区域の鏑矢諸島に保護されている怪獣でムサシの友達(恋人?)。
音に敏感に反応してムサシが輝石を回した時の音を好む。
口から光線を吐く。
カオスヘッダーに寄生されると目付きが変わって鏑矢諸島のシールドを破る程の力を発揮した。カオス化するが最後はコスモスによって救われた。

 

カオスリドリアス
身長 50m
体重 6万t
リドリアスに寄生したカオスヘッダーが完全に融合して細胞変化(カオス化)した姿。
一度はムサシの説得を受けて元に戻るが防衛軍の攻撃を受けた怒りで再びカオス化してしまった。
鋭い爪を持ち、口から光線を吐いて街を破壊する。
ルナモードのルナエキストラクトで体内に潜伏していたカオスヘッダーを切り離されて完全に元に戻る事が出来た。

 

物語
バルタン星人事件から8年後、宇宙飛行士への道を着実に歩むムサシはリドリアスと言う怪獣と友達になっていた。
その時、謎の光が宇宙から地球に舞い降りた!

 

感想
当初は『コスモス』のTVシリーズは2001年10月に放送開始の予定だったが2001年7月7日が円谷英二生誕100周年に当たるので3ヶ月繰り上げて放送開始される事となった。
因みに円谷英二監督の誕生日は戸籍上は1901年7月10日との事。と言う事で実はウルトラマンが初めてTVに姿を現した『ウルトラマン前夜祭 ウルトラマン誕生』は円谷英二監督の誕生日に放送されていたと言う事になった。これこそまさに「事実は小説よりも奇なり」。

 

今回のサブタイトルにある「再会」は「コスモスとの再会」と言う意味があるが、それ以外にもウルトラTVシリーズで考えると「『ガイア』以来となるウルトラシリーズとの再会」「『80』以来となる宇宙人型ウルトラマンとの再会」「『ザ☆ウル』以来となるウルトラマンと地球人が一体化する話との再会」と言う意味も考えられる。

 

TVシリーズに登場するEYESは『THE FIRST CONTACT』に登場したSRCの思想を受け継いで怪獣保護を目的にしているが、バルタン星人事件を踏まえて緊急事態に供えた武装が施され、対立している防衛軍から戦術アドバイザーが招かれる等、現実に即した組織に再編されている。結果、『THE FIRST CONTACT』にあった「ボランティア団体」と言う要素は失われる事となった。

 

EYESは3人組のチームを複数有していた『ガイア』のXIGから6人前後の少人数体制に戻り、『THE FIRST CONTACT』のSRCにあったそれぞれ別の職業を持っていると言う設定も無くなって、従来の特別チームの形へと戻った。

 

フブキ隊員が早くも強烈なキャラクターを発揮している。
アヤノ隊員の「ブツブーツ、ブツブーツ」がカワイイ。

 

『コスモス』を通しての敵となるカオスヘッダーであるが、夜の街に降り注ぐ美しい光の様はとても敵とは思えず、どちらかと言うとウルトラマンに近い雰囲気があった。
EYESの分析によるとカオスヘッダーは遺伝子構造を持つ生きている光で、光の粒子一つ一つが自立している生命体、いわば光のウイルスとの事。この「生きている光」と言うのはウルトラマンに通じるものがある。
ウルトラマンとカオスヘッダーは同じ光でありながら対立し続ける事になる。

 

カオスヘッダーは最初に降り注いだ街を破壊すると地球各地に潜伏して機会を伺う。
カオスヘッダーによる今回の破壊描写は『コスモス』では珍しいほど被害甚大であった。

 

怪獣保護を謳った『コスモス』を象徴する設定であるSRC怪獣保護区域の鏑矢諸島。
保護された怪獣は人間社会から離されてシールドで覆われた鏑矢諸島に移送されると言う設定で「保護」と言うより「隔離」や「管理」に近い印象を受けるが、今はまだ人間と怪獣の共存が難しい状況なので、万が一を考えて人間社会から離してシールドから出られないようにするのは仕方が無いところがある。スタッフもその事は分かっていたらしく、さっそくムサシがシールドで怪獣を閉じ込める鏑矢諸島のあり方に疑問を投げかけている。
理想は怪獣が元いた場所にそのまま戻す事だが、それではまた人間社会に迷い込んでしまって今度は人間を守る為に処分してしまう可能性がある。
人間である以上、まずは人間の命を守るのは当然の事。自分の身の安全を確保してから他人の身を案じる事が出来る。自分の身すら守れない人が他人の身を守ろうとしても却って事態が悪化してしまう恐れがある。
カオスヘッダーに寄生されたリドリアスが街にやって来た時にムサシが言った「帰ろう、ここはお前のいる場所じゃないんだ……」と言う言葉からも人間と怪獣が同じ社会で生きる事の難しさが分かる。だが、人間が今まで問答無用で命を奪っていた怪獣を出来るだけ殺さないようにしようと考えられるようになっただけでも大きな進歩だと言える。

 

ムサシは宇宙開発センターのパイロット候補生となるなど着実に宇宙飛行士への道を歩んでいた。一方で怪獣好きとしてSRCでも有名な存在となっていて、イケヤマ管理官からも宇宙パイロットを辞めて怪獣保護センターに来ないかと誘いを受けている。
ムサシとリドリアスの関係は従来のウルトラシリーズに無いもので面白かったが、輝石を使った場面は『風の谷のナウシカ』そのまんま過ぎた。

 

街にやって来たリドリアスに対してEYESは抑制弾を撃ち込むが効果が無く、ヒウラキャップは捕獲を諦めて攻撃するかどうかの判断を迫られる。失敗が続いていた為か、この頃のEYESは諦めが早い。

 

そこにムサシがやって来て輝石の音でリドリアスを大人しくさせてカオス化から元に戻す。
この「心でカオスヘッダーを抑える事が出来る」と言うのは後の大きな展開に繋がる事になる。

 

ムサシのおかげでリドリアスが大人しくなったのを見計らって防衛軍が攻撃を開始する。
一部始終を見ていたら手を出さないのが賢明な感じがするが、防衛軍は怪獣保護に失敗したEYESに退去命令を下すなど対怪獣に関してEYESと縄張り争いをしているように見えるところがあるので、街を破壊した怪獣を倒して住民の安全を取り戻す事で世論を怪獣保護から怪獣殲滅へと動かしたいと言う思惑があったのかもしれない。

 

ムサシは再びカオス化したリドリアスを止めようとするが撃墜されてしまう。その時、巨大な生命エネルギーが宇宙から地球にやって来てムサシの乗るコアモジュールSSと衝突する!
『初代マン』のハヤタ隊員と初代マンの出会いのオマージュなのだろうが最初に見た時は驚いた。その後、初代マンの赤い球を思わせる光の世界の中でムサシはコスモスと再会する。
ムサシ「会いたかった……。会いたかったんだ……」、
コスモス「諦めるな、ムサシ……」。
THE FIRST CONTACT』ではコスモスは言葉を発していないので、コスモスの声を聞けるのはこの話が初めてとなる。
因みにこの会話が行われている時、EYESは1420MHzの音を聞いているので、『THE FIRST CONTACT』でSRCが使っていた解析装置があればコスモスとムサシの会話を知る事が出来たかもしれない。

 

コスモスはカオスリドリアスと防衛軍の間に割って入って両者の戦いを止めるとカオスリドリアスの攻撃を受け流して口から吐かれる光線もバリアーで防ぐ。
そのキャラクターの為かコスモスはバリアー技が豊富。
ルナモードは攻撃してくる相手の力を利用してかわし、自ら攻撃する時も拳を握らず開いている。佐川監督によると「推手」と言う型らしい。このように他のウルトラマンには見られない流れるアクションはコスモスの魅力の一つとなっている。
今回のコスモスはリドリアスを倒さないで救っている。「ヒーロー=敵と戦って倒す」と言うイメージがある中、「怪獣を倒さない第1話」はかなりの決断だったと思う。

 

リドリアスを救った後、地上に降り立ったムサシは手の中の輝石を見て自分がウルトラマンになった事を理解する。
まさか子供の時に憧れていた存在と一体化してしまうとは夢にも思わなかっただろう。

 

「怪獣保護」と言う他の作品とは一線を画す設定がある『コスモス』のTVシリーズだがEYESの設定やムサシとコスモスの関係等は従来のウルトラシリーズと殆ど同じになった。「ウルトラシリーズ35周年作品」として原点回帰があったのだろうが『THE FIRST CONTACT』にあった「特別チームがボランティア団体」「主人公がウルトラマンと一体化していない」と言う独自要素がTVシリーズに引き継がれなかったのは勿体ないかなと感じる。