帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「深海の死闘」

「深海の死闘 ージェルガ登場ー
ウルトラマンコスモス』第15話
2001年10月13日放送(第15話)
脚本 大西信介
監督 市野龍一
特技監督 佐川和夫

 

深海貝獣ジェルガ
身長 42m
体重 6万6千t
SRCが保護する唯一の海の怪獣。
大人しくてプランクトンを食料としている。
海底シールドの中に隔離されているがメンテナンスで解除された隙を狙ったカオスヘッダーに寄生される。
体内で暴れるカオスヘッダーに苦しむがコスモスによって救われる。
名前の由来は「シェル(貝殻)」かな。

 

カオスジェルガ
身長 42m
体重 6万6千t
ジェルガがカオスヘッダーに寄生された姿。
目付きが凶暴になる他に目立った変化は表れなかったが体内を変質されていて背中の貝の中から火球を発し触手を伸ばすようになる。
コロナモードのコロナエキストラクトによって体内のカオスヘッダーを切り離された。

 

物語
相変わらず対立を続けるムサシとフブキ隊員の「春風コンビ」。
シーダイバーで海底シールドのメンテナンスに向かうが、そこにカオスヘッダーが……。

 

感想
空手の組み手を行うムサシとフブキ隊員。トレーニングなのに防具を脱ぎ捨て素手でやり合うと闘志満々。怪獣保護チームなのに何故かバトル漫画な雰囲気。
フブキ隊員が強いのは予想通りだったがムサシが結構粘ったのが意外だった。そう言えば平成ウルトラシリーズの主人公が格闘術を披露するのは珍しいかも。

 

フブキ隊員がかつて防衛軍に所属していて空手選手権3連覇を成し遂げた猛者である事が明らかに。特に3連覇を決めた試合では試合中盤で気を失うもそのまま戦って勝利を収めると言うどこぞのバトル漫画だよ!と聞きたくなるような伝説を残している。

 

ムサシとフブキ隊員が対立を繰り返してもヒウラキャップは「あいつらは仲が悪くてぶつかり合っているわけじゃない。二人とも自分の考えをちゃんと持っているからな。ま、意見のぶつかり合いってところだ」と春風コンビに拘り続ける。
最初は対立を繰り広げるがやがてお互いの意見に耳を傾けるようになっていく春風コンビの関係は『コスモス』のテーマの一つである「コミュニケーション」を示していると言える。
因みにお互いの意見に耳を傾けないで対立を続けていった関係がヒウラキャップと西条武官の二人。部下の扱いは長けていたヒウラキャップだが自分の事になるとそうはいかなかった。

 

万能探査メカ・テックダイバーの水中モードであるシーダイバー登場。
CGが浮いているのが気になるが前部にマニュピレーター装備のパーツ、後部にジェット推進装置搭載のパーツを組み合わせる換装シーンは見ていてワクワクする。
シーダイバーは攻撃を受けて酸素タンクが壊れ、さらにジェルガの貝に挟まれて脱出できなくなるが、最後はジェルガを攻撃してコスモスを援護すると、この手のメカのお約束なピンチと活躍を見せてくれた。

 

海底シールドの発生システムにトラブルが起きてシールドを一旦解除してメンテナンスをする事になるが、その隙を狙ってカオスヘッダーが出現する。海底にまで現れた事でカオスヘッダーが地球のあらゆる場所で活動できる事が判明した。
因みに台詞で触れられる事はあったが実際にカオスヘッダーが事件を起こすのは「蛍の復讐」以来となる。(「動け! 怪獣」はカオスヘッダーではなくムードンの意思だった)

 

カオスヘッダーに寄生されたジェルガは目付きが凶暴になって今まで無かった武器を身に付けるが、かつてのリドリアスやゴルメデのような明確な変化は無かった。
体内で暴れるカオスヘッダーに苦しんでいたので拒絶反応はあったようだが他の怪獣に比べてまだ適応できていたようだ。

 

カオスヘッダーが海底にまで現れた事に驚くムサシに対してフブキ隊員はその可能性を考慮しなかった事を「甘い」と断じる。
「SRCがな、海底にシールドを作るって言った時にな、実は俺も反対した。何もそこまで怪獣を隔離する事は無いと思ってな。でもな、カオスヘッダーの存在が分かった時点で俺は考えを変えた……。もしかしたら、このシールドがカオスヘッダーから怪獣達を守る盾になってくれる事があるかもしれないって……」。
実際、「光との再会」でカオスヘッダーは鏑矢諸島のシールドが解除された隙を狙ってリドリアスに寄生していた。
怪獣保護が行われているとは言え人間が保護できるのは比較的大人しい怪獣のみ。暴れる怪獣を人的被害無しで保護できるレベルにはまだ達していない。カオスヘッダーは人間が保護できるレベルの怪獣を保護できないレベルへと引き上げてしまう脅威の存在。劇中でムサシやフブキ隊員が述べているようにシールドの存在は怪獣の隔離に他ならないが、それはまだあらゆる怪獣を保護する力を持たない人間が取らざるを得ない苦肉の策であった。
しかし、この大人しい怪獣をシールドの中に集めてカオスヘッダーから守ると言う状態が「邪悪の巨人」でかつてない危機を引き起こす事になる。

 

人間に被害を与える可能性はゼロに近いジェルガをシールドに閉じ込めるSRCの考え方に納得できないムサシは色々と苦言を呈するが、カオスヘッダー襲来でシールドの意義に気付くと自分が何も分かっていなかった事と逆にフブキ隊員が色々考えていた事を知る。
ムサシは理想を掲げるが目の前の問題にどう対処するかと言う視点が欠けていて、そこをフブキ隊員がフォローする事になり、逆に現実を認識しているが故に仕方が無いと現状を受け入れてしまいがちなフブキ隊員にとって愚直なまでに理想を語るムサシの存在は夢の実現への発奮材料となっている。これを見るとヒウラキャップの春風コンビへの狙いは大成功だったと言える。

 

今回のコスモスはムサシの声で喋っている。他にもコスモスに変身できない時の葛藤や正体がバレたかもしれないと思った時の心情等、今回はコスモスとムサシが同一人格のような描写が目立つ。
前回の「時の娘(後編)」もだったがムサシの人格が前面に出てくる事が多くなった。なんとなく最近のコスモスはムサシにウルトラマンの力を貸して見守っているような感じがする。

 

カオスジェルガとの戦いでシーダイバーの援護を受けたムサシはフブキ隊員が途中で意識を取り戻して自分とコスモスの関係がバレたと覚悟する。
話の前半でフブキ隊員が空手の試合で気絶したまま戦ったエピソードが語られていたので実はフブキ隊員は気絶したままコスモスを援護していたと言うオチは読めたが、後の展開を考えると実は意識を取り戻してムサシとコスモスの関係も知ったがムサシの気持ちを察して気絶したままだったと誤魔化したようにも思える。