帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「宇宙の雪」

「宇宙の雪 ーアルケラ スノースター登場ー
ウルトラマンコスモス』第49話
2002年6月8日放送(第49話)
脚本 大西信介
監督 市野龍一
特技監督 鈴木健二

 

甲殻怪獣アルケラ
身長 47m
体重 5万7千t
突如出現するが細胞が死滅して倒れてしまう。死亡したわけではなく細胞の計画的な自己破壊(アポトーシス)で別の姿に生まれ変わる為に自分の体をサナギ化していた。EYESやコスモスとの戦いの途中で力尽きて倒れるがスノースターに変態する。
口から炎を吐くが人間に対する敵意は無く、変態する為に体内の余分な熱を吐き出していただけであった。

 

神秘群獣スノースター
身長 80cm
体重 3kg
目撃例が極めて少なくてアストロノーツの間では「神秘の生命体」「宇宙に降る雪」と呼ばれている。
宇宙に捨てられた放射性廃棄物を食べる有益な生物としてSRCだけでなく防衛軍にも保護対象として認められている。
その生態は謎に包まれていて何処から現れて何処へ行くのか不明だったがアルケラの変態した姿である事が判明した。

 

物語
宇宙で保護対象のスノースターが発見された直後、地球に怪獣アルケラが出現する。
そんな中、ムサシは善い怪獣と悪い怪獣の違いについて考える。

 

感想
今回のテックブースターによるP87ポイント定期調査は収穫が無かったらしい。
カオスウルトラマン編以降、カオスヘッダーの動きは静まっているが、これは嵐の前の静けさで、やがてカオスヘッダーによる大攻勢が始まる事になる。

 

スノースターに願い事をすれば叶うと言う言い伝えがあってフブキ隊員は「悪い怪獣の出ない平和な世の中を願った」と答える。
「人間に害を与える怪獣が出てくっから攻撃って選択肢を選ばなきゃならない時も出てくるわけだろう? 皆、害の無い怪獣なら俺は本当にいいと思っているぜ」。
その後、アルケラが出現した時、フブキ隊員は「怪獣ってのはどうしてこう暴れんだ? 善い怪獣ばかりなら苦労もしねぇんだけどな」と呟くが、それに対してムサシは「暴れたくて暴れてるわけじゃないと思うんです。怪獣達は怪獣達の本能で動いているだけで……。さっきフブキさん、「善い怪獣」「悪い怪獣」って区別してましたけど、僕はそんな風に考えた事無かった。どんな怪獣だって自分に与えられた命を精一杯生きているだけなんです。たまたま人間と出会ってしまったから、そうやって「善い怪獣」「悪い怪獣」って区別されてしまうんだ」と返す。
『コスモス』における怪獣の捉え方を分かりやすく説明した場面。
確かにウルトラシリーズでの善い怪獣は人間の味方であるものが多かった。そもそも善悪と言う概念自体が人間だけが持っているものなので怪獣を善い悪いで区別する時点で怪獣を人間の価値観に当てはめて判定していると言える。結局のところ、人間が言う「善い怪獣」とは「人間にとって都合の良い怪獣」で「悪い怪獣」とは「人間にとって都合の悪い怪獣」なのである。

 

アルケラは死が近いと判断したヒウラキャップは静かに最期を看取ろうと考えるが、佐原司令官は推測が間違っていたら街に被害が出る恐れがあると返す。それに対してヒウラキャップはその時はEYESがアルケラを攻撃する事を約束して、実際にアルケラが再び動き出すと防衛軍を出撃させようとする佐原司令官を制止してEYESに攻撃指示を出す。
ヒウラキャップの攻撃指示に反発するムサシをフブキ隊員は殴って気絶させ、それを見てシノブリーダーは「ありがとう……。私もムサシを攻撃に加えるの忍びなかった……」と告げる。本来なら副隊長であるシノブリーダーがやらなければならなかった事を代わりにやれたフブキ隊員に後の隊長姿が見えてくる。

 

アルケラの変態が始まって皆がどれほど凶悪になるのかと危惧する中、なんとアルケラはスノースターに変態する。
宇宙に飛び去るスノースターを見て佐原司令官は何故攻撃しないのかと訴えるが、ヒウラキャップはスノースターは防衛軍も保護対象にしていると返す。
佐原「しかし、もしスノースターが成長してまたあの怪獣に変態したら……」、
ヒウラ「かもしれない……。しかし、今はスノースターなんです。我々の役に立つ……善い怪獣なんです」。
これまでの話での「時間をかければ別の選択肢もあるかもしれないが現時点では人間に害を与えるから怪獣を攻撃する」と言うのと今回の「時間が経てば人間に害を与えるかもしれないが現時点では役に立つ保護対象だから攻撃しない」と言うのは実は同じ事。これは言われた佐原司令官だけでなく、言ったヒウラキャップ自身も今までの自分達のスタンスを否定しかねないかなり危ない発言であった。このように『コスモス』ではEYESのスタンスが実はかなり危ういものである事がそこかしこで示されている。

 

戦いが終わり、EYESはスノースターが還った宇宙を見上げる。
シノブ「キャップ……。これで良かったのでしょうか?」、
ヒウラ「さぁな……。しかし、人間の都合を基準とするなら……、今はこうするのが……」。
そしてアルケラが炎を吐いて街を破壊しようとした事も実は変態する為に余分な熱を吐き出していただけであった事が判明する。
ヒウラ「皆……、俺達人間の勝手な都合だ。どんな生物も初めから人間に害を与える目的で生まれてくるわけじゃない」、
シノブ「祈りましょう。これ以上、怪獣達と不幸な出会いが無いように……」。

 

個人的に今回の話の衝撃は凄まじく、自分は今もウルトラシリーズにおける「善い怪獣」「悪い怪獣」はこの話を基準に考えるようになっている。