帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

『ウルトラマンレグロス』

ウルトラマングロス
2023年5月23日・6月6日配信
脚本 足木淳一郎
監督 坂本浩一

 

物語
記憶を失った状態でりゅう座D60で修行を続けるレグロス
ある日、D60の兄弟星であった獅子座L77星がマグマ星人によって滅ぼされ、D60にもマグマ星人の魔の手が迫る。

 

感想
ギャラファイシリーズのスピンオフ作品でレグロスの過去が明らかになる。

 

前編に当たる「Volume1」と後編に当たる「Volume2」の二部構成になっている。

 

本作は「拳法」と「動物」がモチーフになっているが、ウルトラシリーズ仮面ライダーシリーズやスーパー戦隊シリーズと違って特定のモチーフを前面に押し出す事が少ないのでかなり異色な作風になっている。
個人的にはウルトラシリーズも数が増えてきたので差別化の為に特定のモチーフを前面に押し出した作品やウルトラマンが出てくるのはアリだと思っている。

 

宇宙最強と言われる幻の宇宙拳法「コスモ幻獣拳」。
「コスモ幻獣拳」はD60の守護神であるコスモビーストと契約し、その力を宿して戦う必殺拳法で、厳しい鍛錬で心身共に鍛え抜かれた者だけが継承する資格を与えられる。ビーストは意思のある守護神でそれぞれ性格が違っていて相性もあるので対話が必要になるとの事。
ファンタジー作品のような設定でこれまでのウルトラシリーズには無かった設定に思えるが、スパークドールズやディナスのモンスディメンションカードも怪獣と心を繋ぐ事で力を借りているのでアイテムを介するか介さないかの違いはあるがニュージェネレーションシリーズと方向性はそれほど違っていないと思う。

 

りゅう座D60の出身かと思われたレグロスだが実は記憶喪失の状態でD60に流れ着いていたのでその正体は謎に包まれていた。外見的な特徴を見たら獅子座L77星と何らかの関係がありそうなのだが果たして……。
グロスが氷漬けの状態でD60に落下した理由も不明。『レオ』で相手を氷漬けにするとなるとババルウ星人かブリザードになるのかな。(ブニョは寒い部屋を用意しただけだったっけ)

 

D60とは盟友関係にある兄弟星としてL77星が登場し、レオも宇宙拳法の使い手としてコスモ幻獣拳闘士と手合わせをする場面で登場した。
レオの声がちゃんと若い感じになっているのが良かったが一方で『レオ』の本編前ならこんなに強くはないし落ち着いてもいないと思うのでそこは違和感を覚えた。個人的には『運命の衝突』でレグロスとじゃれてた時のアストラみたいな感じの方が合っていたと思う。

 

ディアスはチャラいけれど面倒見が良さそうな感じで中々良いキャラ。レグロスの勝手な行動の巻き添えを受けて修行を厳しくされてしまうのは笑った。
若いコスモ幻獣拳闘士の3人はレグロスがレッド、スピカがピンク、ディアスがブラックと言う感じでスーパー戦隊を思わせるキャラ付けとなっている。
因みにツブイマで配信されているボイスドラマの「休日の過ごし方」ではレグロス達の楽しかった日常を聞く事が出来る。

 

戦いの時にコスモ幻獣拳闘士が皆でポーズを決めて「我らの拳は平和の為に!」と名乗りを上げた時はそのまま「幻獣戦隊コスモレンジャー!」と宣言しても違和感が無さそうな感じだった。

 

ギャラファイシリーズのように巨大感は出ない作品かと思いきや巨人とそうでない種族を一緒に暮らさせる事で巨大感を出すと言うのは唸らされた。
正直言うと巨大感が無くても支障が無い作品だと思うのだが、それでも主人公達を巨人として描く事で本作はウルトラシリーズの作品であると言う事をきっちりと主張していた。

 

『レオ』でL77星を滅ぼしたマグマ星人だが今回の話で色々な情報が出てきた。
まずマグマ星人は一人または少数で動いていたのではなくてかなり規模が大きい軍団であった。まぁ、レオやアストラを見ると身体能力が高い人物が揃っているであろうと思われるL77星を一人または少数で完全に滅ぼすのはさすがに無理があるからこれは納得。

 

今回は提督や隊長と言った幹部クラスのマグマ星人が登場して『レオ』に登場したマグマ星人と同じ姿をした個体は一般兵のような感じで出てきた。
と言う事は『レオ』に登場したマグマ星人も一般兵だったのかなと思ったが怪獣を使役していたので一般兵より上の階級であった可能性もある。
それにしてもマグマ星人東映のヒーロー作品に登場する戦闘員のようにワラワラ出てきて次々と倒されていく場面はさすがに見ていてちょっと頭を抱えたくなった場面であった。

 

D60を攻めたマグマ星人侵略軍は幻獣闘士が目的で手に入れればL77星人みたいに高く売れると発言している。この事から彼らは滅ぼした星の人間を売りさばいている事が分かる。
まさかウルトラシリーズで人身売買を行っている組織が出てくるとは驚いた。これまでも考察したらそういう事が想像出来る宇宙人はいたが劇中ではっきりと語られるのはあまり無かったと思う。

 

マグマ星人が滅ぼした星の人間を売りさばく種族ならレオとアストラ以外のL77星人も売られた先で生きているのかなと思ったがアストラの登場場面で「ただ一人捕らえた最後のL77星人」と説明されているので残念ながら他の生き残りはいないようだ。
マグマ星人侵略軍提督のヴォルカンは攻撃を受けると逆上して必要以上に相手を痛めつける性格なので、L77星人の抵抗に怒りを爆発させて大虐殺をしてしまったのかもしれない。

 

捕らえられたアストラはマグマ星の本星に移送されるとの事。
本星があると言う事は『レオ』に登場した個体や今回のヴォルカンより上の存在がまだいると言う事なのかなと思ったが、そう言えばこの後にキングがアストラを助けているのでその時にマグマ星の本星は壊滅されたのかもしれない。

 

ヴォルカンが装着している鎧はエンペラ星人のアーマードダークネスを模して作られたと言う驚きの設定。
誰がそんな鎧を作れるんだ!?と思ったが実は『大怪獣ラッシュ』の「VEROKRON hunting」で「マグマ星人はアーマーの鋳造に長けた一族」と言う話が出ているのでひょっとしたら凄腕のマグマ星人がいたのかもしれない。

 

ヴォルカンはマグマ毒手拳の使い手と言う設定。
拳法モチーフなら登場してもおかしくはないのだがそれでも「毒手」と言う単語が出た時は驚きのあまり思わず巻き戻して確認してしまった。

 

金髪ツインテゴスロリメスガキ妹キャラのマグマ星人インパクトがあった。改めて書き並べると物凄い属性だ……。
今回登場したマグマ星人ラバの声を担当しているのは『トリガー』でヒマリ役だった春川芽生さん。クールなヒマリ、ファルコンちゃん!なヒマリ、そして今回のラバとそれぞれキャラが全く違うのに驚き。

 

インストラクター・フォロスに「怒りで正しい判断が出来ていない」「感情に飲み込まれている」と言う理由でコスモ幻獣拳から破門されたトゥバーン。
道を外れたふざけた感じのおじさんが実は凄腕だったと言うのは拳法モノの王道。
昔はフォロスと対立していたようだが今は「感情に飲み込まれるな」とフォロスと同じ事をレグロスに忠告していたりする。
当初はディアスよりフォロスやトゥバーンの方が敵と通じていそうな雰囲気があったが喧嘩しながらも兄弟揃って師匠に反論しちゃう場面で二人とも悪人でない事が分かる。

 

ストーリーにはあまり絡まないアルビオとファルードであるが二人のエピソードはボイスドラマで補完されている。特にファルードは「お前、そういうキャラだったの!?」とちょっと驚く。

 

ボイスドラマでは映像作品に登場したコスモ幻獣拳闘士の他に「コスモスコーピオンと契約したがファルード達が修行を始める前にある事情でD60を出て行った人物」が語られている。
この人物はグラフィアスと言って中国国内向けのライブステージに登場したキャラクターとの事。

 

仲が良い感じだったマグマ星人のユラブとラバが劣勢に陥ると途端に険悪な雰囲気になったのに対してD60が危機に陥った時にフォロスとトゥバーンが力を合わせて戦うと言う対比はベタだけれど分かりやすくて良い。

 

グロスマグマ星人への復讐心を否定したフォロスだが、兄弟星のL77星が滅ぼされてマスターアルーデが二度と戦えなくなると戦力が大幅にダウンした状態でマグマ星人侵略軍が再び襲撃してくる可能性が高かったのに対策を打たなかったのは疑問が残る。結果的にコスモ幻獣拳闘士以外のD60の人々も犠牲になってしまったし。
この辺りは「本当の強さを身に付ける」と言う拳法モノと「一つの星を滅ぼす程の軍団が敵」と言う戦争モノと「侵略者と戦えるのは巨人のみ」と言うウルトラシリーズの要素が上手くハマらなかった感じ。

 

フォロスとトゥバーンに「怒りに飲み込まれるな」と忠告されたレグロスであったがあそこまで犠牲者が出てしまっては怒りを抑えろと言うのも無理な話だと思う。
だが、フォロスとトゥバーンがヴォルカン相手に優勢だったのに怒りにまかせたレグロスが割って入ってしまった為に二人が死んでしまうと怒りに飲み込まれた為に最悪の結果になってしまうのだが……。

 

フォロスとトゥバーンのコスモビーストを継承した事でレグロスの腕にフォロスの白虎とトゥバーンの赤龍の紋章が刻まれ、さらに戦いで命を落とした兄弟子のアルビオとファルードも死してなお力を貸してくれた。
悲しい展開ではあるがバトル作品としてやはり盛り上がる展開である。

 

グロス相手に形勢を逆転されたヴォルカンはヤプールと取り引きをして得た超獣バラバを出してくる。自分が勝てなかった相手に出すと言う事はバラバはヴォルカンより強いのかな。そう言えば『レオ』のマグマ星人も本人より使っていた怪獣のブラックギラスとレッドギラスの方が強いと言われるし、マグマ星人は自身より使役する怪獣の方が強い種族なのかもしれない。

 

グロスの燃えるような熱い目を見たヴォルカンは「まさか、あの星の者か!?」と驚く。レグロスを見てすぐに気付かなかったと言う事は外見的な特徴ではレグロスの出身は分からないと言う事なのかな?

 

戦いが終わって平和が訪れたと思いきや正体を現したディアスがスピカを殺してしまう。
今回の話は『レオ』や『運命の衝突』に続くのでバッドエンドなのは分かっていたが、それでも主人公の仲間が結局は全員殺されてしまったのは辛い。

 

マスターアルーデはディアスが悪の者だと気付いていたようだけれど、どの時点で気付いたのだろうか?
個人的にはこう言う師匠格は邪悪な気はすぐに見抜いてほしいのだが、ディアスによってD60が滅んでしまった事を考えると、ディアスを悪だとずっと前から見抜いていたが泳がせていたと言うのは無理があるのかな。

 

マスターアルーデからコスモバッファローを奪い取ったディアス=ディアボロ
コスモビーストとは対話が大事と何度か説明されていたので強引に契約出来たのに驚いたが、ひょっとしたらディアボロはコスモバッファローに認められていないのでまだ力を完全に引き出せていなかったりするのかな? どう考えても今のディアボロは宇宙最強の強さを誇っているようには見えないし。

 

ディアボロD60を混乱させる為にマグマ星人侵略軍を呼び寄せたと語っていたがどこまで呼び寄せたのか気になる。D60に呼び寄せただけなのか、それともL77星が攻められたのもディアボロが原因だったのか……。

 

短気で潜入作戦が苦手そうなディアボロが弱者の振りをしてかなりの期間に亘って周りにバレていなかったと言うのに驚き。あそこまでキャラクターを変えられるんだなぁ……。
実はレグロスやスピカといた時のあれこれはディアボロの素が出ていただと面白いかもしれないがスピカの命を奪った事に全く罪悪感を覚えていなかったところを見るにあれらは完全に相手を油断させる為の演技だったんだろうなぁ……。

 

主題歌はどちらもレグロスの声優である仲村宗悟さんの歌となっているがオープニング曲の『fist of hope』は本作の為に書き下ろされたもので、エンディング曲の『Rain forecast』は仲村さんが既に発表していた歌を本作に合わせてアレンジした「REGULOS ver.」となっている。