「Episode14 悪魔 -メフィスト-」
『ウルトラマンネクサス』第14話
2005年1月8日放送(第14話)
脚本 村井さだゆき
監督 根本実樹
特技監督 菊地雄一
ダークメフィスト
身長 50m
体重 5万t
溝呂木が変身した黒い巨人。
メフィストクローや様々な光線技を駆使してネクサスを翻弄する。
孤門が山邑兄妹に憎まれるように悪辣な作戦を展開する。
デザインモチーフは死神。名前の由来はゲーテの戯曲『ファウスト』に登場する悪魔「メフィストフェレス」から。
フィンディッシュタイプビーストノスフェル
身長 50m
体重 3万9千t
前の戦いで生き残った細胞から再生した。
山邑家を襲って両親の死体と生きたままの子供達を連れ去ると自分のビースト細胞を両親に移植してビーストヒューマンとして操った。
理子を眉間のコブに捕らえて人質にするが孤門の憎しみのメガキャノンバニッシャーで倒される。
物語
溝呂木やビーストへの憎しみを糧に再び立ち上がる孤門。
同じく憎しみを力に戦う西条副隊長と共にビーストを追うが、それこそが溝呂木の恐るべき罠であった。
感想
絶望から立ち上がるのに憎しみが必要だった孤門。憎しみが戦う力になると西条副隊長は語り、憎しみと言う負のエネルギーで主人公とヒロインの気持ちが合致する事になる。
ヒーロー作品では憎しみは否定されるものなのだが負のエネルギーが持つ力と言うは確かにあると思う。人間は聖人君子ではないので全てを奪われた孤門が憎しみが持つ力で立ち上がる展開はヒーロー作品の主人公らしくはないが人間として考えると十分にあり得るものだと思う。
誰にも賞賛されずボロボロになって戦い続けても空しいだけだと言う溝呂木の台詞は姫矢だけでなく歴代ウルトラマンに刺さる言葉と言える。
かつてはナイトレイダーと言う誰にも賞賛されない組織で戦っていた溝呂木はどのような気持ちでこの言葉を発したのだろうか……。
ただ、姫矢はかつて賞賛されたからこそ苦しむ事になったので実は今の戦いに賞賛は望んでいなかったりする。実際、姫矢は自分は得た光の意味を探し続けているだけと答えている。
姫矢と溝呂木の戦いは正邪ダブル変身が燃える!
溝呂木の変身は人間の殻を破って悍ましい悪魔メフィストの姿が飛び出すと言うものでメフィストが溝呂木の心の闇と言う設定とも合致している。
メフィストクローはこの時期では珍しい武器。
初代ウルトラマンのイメージからかウルトラシリーズではウルトラマンやそれに近いものは武器を使わないで光線技をメインにしている事が多いが他のキャラとの差別化も考えてアイテムを使うのはアリだと思う。
ビーストヒューマンにされた理子の両親は鋭い爪が生えたりげっ歯類を思わせる行動をするなどノスフェルの一部を移植されたと考えられる。
と言う事は両親の行動は全てノスフェルの意思で行っていた事になるのだろうか。そう考えるとノスフェルはかなり知能が高いと言う事になる。(溝呂木が指示を出していた可能性もあるが姫矢と戦闘中だったので細かい指示までは難しいと思う)
自分の親が怪物化して異常な行動を取ると言うのは子供から見たらかなりの恐怖。
でも、今回の話はちょっと強引な点があったのが気になった。
両親の行動に関してはビーストであるノスフェルが行っていたので多少の不自然さは仕方が無いだろうし、溝呂木の目的は強引でも何でも孤門と姫矢を追い詰める事だから別に良い。
ただ、子供達がビーストヒューマンと化した両親に連れ去られたのにナイトレイダーがメフィスト撃退を優先して理子達を放っておいたのは不自然だった。全員が乗らないとストライクチェスターになれないのならともかく、一人がいなくても合体は大丈夫なはずだから孤門はそのまま理子達の救出に向かわせるべきだった。
ここは孤門にメガキャノンバニッシャーを撃たせて、ヒーロー作品の主人公が子供を殺しかけて子供に責められると言うシチュエーションを作りたかったと言う制作者の思惑が見えてしまった。今回は特別チームの武器で子供が死にかけると言うこれまでのシリーズには無かったいわゆる掟破りをする回だったのでもう少し細心の注意を払ってほしかった。ノスフェルを見た孤門がノスフェル殲滅を優先するのはこれまでの流れを考えると納得できる作りになっていただけに勿体なかった。
自分の妹を殺しかけた孤門に向かって薫は「一生許さない」と責めるが首藤チーフは「明日には全部忘れているから大丈夫」と孤門を慰める。ズレた慰めではあるが彼女なりの気遣いであろう。
それなら理子を殺しかけたと言う孤門の記憶も処理すれば良いのではないかと思うが、さすがにそれをしてバレたらナイトレイダーの隊員はTLTに不信を抱くであろう。実際、後の話で新宿大災害の真相が明らかになった時にナイトレイダーはTLTへの不信を示した。
今回は目的を達成した溝呂木の勝利。
用意周到に作戦を練ってから行動を開始する溝呂木に対してどうしても後手に回らざるを得ない姫矢は不利である。
理子を守れなかった後、自分の不甲斐無さに拳を握り締めるネクサスの後姿が切ない。