帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「悪夢 -ナイトメア-」

Episode15 悪夢 -ナイトメア-」
ウルトラマンネクサス』第15話
2005年1月15日放送(第15話)
脚本 荒木憲一
監督・特技監督 北浦嗣巳

 

ダークメフィスト
身長 50m
体重 5万t
孤門を闇の世界に転落させる為に暗躍を続ける。
ダークフィールドを展開して卓越した戦闘技術でネクサスを追い詰める。

 

フィンディッシュタイプビーストノスフェル
身長 50m
体重 3万9千t
かろうじて生き延びていたが完全に回復はしていないので中途半端な大きさであった。
鋭い爪と咥内から伸ばす触手で人間を襲い、捕食する事で回復を図る。
一時的にビースト振動波を消して相手を不意打ちする事が出来る。
ナイトレイダーに迎撃されて一時的に退却した。

 

物語
自分の憎しみで理子を傷付けてしまった事に落ち込む孤門はもう一度憎しみを糧に立ち上がろうとするが……。

 

感想
危険を冒してまでTLTのエリア内に入って孤門に会いに来た姫矢。
孤門と姫矢がしっかりと話し合ったのは実はここが初めて。と言うか、ビーストが現れていないのに姫矢がナイトレイダーの前に姿を現したのが今回が初めてと言った方が良いかな。

 

孤門は姫矢は自分と似た境遇であるが自分と違って強いと語る。
しかし、姫矢もかつては孤門と同じように苦しみ悩んで時間をかけてようやくとりあえず立ち上がっている。その経験があるからか姫矢は孤門にかつての自分を重ねて見ているところがある。

 

溝呂木に向かって姫矢は自分の戦いの目的は自分が得た光の意味を探す事だと答えていたが実は第1話で孤門を助けていた時に過去は変えられないが未来は変えられるかもしれないと既に感じていた。
セラを救えなかったと言う過去は変えられないが未来を変えて誰かを救う事は出来るかもしれない。しかし、姫矢は誰かが救われる未来に自分を含めてはおらず、「英雄 -ヒーロー-」では自分が得た光は誰かを救えるものだとする一方で自分への罰だとも考えていた事が語られている。

 

ちょっと気になるのが姫矢が光を得てからネクサスになって孤門を救うまでのタイムラグ。
話の内容から姫矢がネクサスに変身して初めて救った人物は孤門であると思われるが、孤門の前にもビーストに襲われた人々は大勢いたはず。どうしてその時は光を使わなかったのだろうか……?
溝呂木もメフィストに遭遇してナイトレイダーの前から姿を消してから再び行動を開始するまで時間があったが、こちらはリコを操り人形に仕立てたりと色々準備を進めていたので理解できる。
ひょっとしたら姫矢が光と自分の運命を受け入れるまで劇中で描かれた以外にも色々な葛藤があったのかもしれない。

 

今回の話では「遺跡 -レリック-」で語られた姫矢とネクサスの出会いがさらに詳しく語られている。
姫矢をストーンフリューゲルまで導いたセラは本物だったのか幻覚だったのか。「英雄 -ヒーロー-」を見るとセラの魂が姫矢を救済する為に導いたように見える。

 

姫矢が撮ったセラの写真によって紛争地域の悲劇が世界中に知られた事についてその後どうなったのか詳しい説明は無いがセラの写真が契機となって世界中の世論が動いて紛争解決に向かった可能性がある。
ただ、その裏では姫矢の苦悩と言うもう一つの悲劇が生まれてしまった。この平和を生み出す裏で他の悲劇が生まれていたと言う構図は『ネクサス』全体に当てはまるところがある。

 

これまでTLTの情報操作の壁に阻まれていた根来だったが佐久田が口にした孤門の名前からいよいよ真相への手掛かりを掴む。
佐久田に姫矢の近況を尋ねられて知らないと答えておきながら佐久田の心境を感じて情報を渡してしまうところに根来の人の良さが出ていて面白い。
その一方でちゃんと佐久田の事を利用してしまう辺りは善人にしろ悪人にしろ分かりやすい人物が多いウルトラシリーズでは珍しい一筋縄ではいかない感じがあって、それがこの人物の魅力となっている。

 

理子の件で落ち込む孤門に向かって西条副隊長は全ての元凶はビーストだと告げる。
この人が言うと問題アリな発言に聞こえてしまうが確かに裏で糸を引いている溝呂木が全ての元凶である。
そして孤門は溝呂木に憎しみを向ける事でもう一度立ち上がろうとする。
姫矢は憎しみでは何も変わらないとして過去と向き合って未来に生きるんだと忠告するが孤門は溝呂木やビーストを倒せる力を望む。
これは戦争と言う大きくて実体を掴み難い敵と対面していた姫矢と溝呂木と言う具体的な敵と対面している孤門の違いが出たと思う。いくら何でも自分の彼女を殺した奴がニヤニヤと目の前で笑っていて憎しみを抱かないのは無理であろう。
そう考えると「予知者 -イラストレーター-」で溝呂木が孤門の前に出てきたのは孤門を闇に捕らえるのに非常に効果的であったと言える。

 

和倉隊長は誘き出したノスフェルを迎え撃つと言う大役に孤門を指名する。
これは前回の話でメガキャノンバニッシャーを撃つ役に指名したのと同じく、孤門にリコの仇を取らせたいと言う気持ちが働いたからであろう。
だが、結果的にこの判断が孤門をより追い込む事になってしまう。

 

未来を変えてもリコが死んだと言う過去は変わらないとして姫矢の言葉は無意味だと断じる孤門。
しかし、過去を気にする孤門は理子を殺しかけたと言う過去に囚われてノスフェルを撃つ事が出来ず、結果的に石堀隊員を危険にさらしてしまう。
憎しみでは自分を変える事は出来ないと悟った孤門は自分がこれから何を為すべきかを見失ってしまうのだった。

 

メフィストが初めてダークフィールドを展開。
ファウストはネクサスのメタフィールドを変換させていたが、メフィストはメタフィールドを素材にしなくても自前でダークフィールドを展開する事が出来る。
武器を装備している等、全体的にメフィストファウストより強敵と言う設定になっている。

 

予知者 -イラストレーター-」を見るとダークフィールドをメタフィールドに変換する事は可能らしいが何故かネクサスは自分に不利な場所で戦い続けている。位相変換にはかなりのエネルギーを消耗してしまうのかな?

 

メフィストが展開したダークフィールドには廃墟が点在しているが、これはザギが見せる終末の未来なのか、溝呂木の意識の底にある破滅への恐れなのか、劇中では特に語られてはいない。
因みに制作の裏話的なものだと対象物の無いメタフィールドやダークフィールドでは巨大感の表現が難しくて戦いも単調になってしまうのでそれらの対処法としてミニチュアが置かれる事になったらしい。
実はこのミニチュアは『ネクサス』の制作が始まってしばらく経ってから撮影所の中に保管されている事が判明して使われる事になったらしく、菊地監督によると最初からこれらのミニチュアを使えていたら従来のウルトラシリーズと同じような市街地戦が撮れていたとの事。この辺りの連携の悪さは勿体なくてとても残念だった。

 

メフィストがネクサスの空中からのボードレイフェザー連発を全て避けて逆に一撃でネクサスにダメージを与えたところは戦闘に関しては素人である姫矢とプロの溝呂木の格の違いが出た感じだった。