帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「迷路 -ラビリンス-」

Episode16 迷路 -ラビリンス-」
ウルトラマンネクサス』第16話
2005年1月22日放送(第16話)
脚本 荒木憲一
監督・特技監督 北浦嗣巳

 

ダークメフィスト
身長 50m
体重 5万t
ダークフィールドでネクサスを追い詰めるが起死回生のコアインパルスを受けて退却する。

 

フィンディッシュタイプビーストノスフェル
身長 50m
体重 3万9千t
本体の活動が停止すると口の中にある特殊な臓器が活発化して急速にクローン再生する事で不死身の再生能力を誇っていた。
孤門によって再生システムを破壊された後、ネクサスのオーバーレイ・シュトロームを受けて完全に倒された。

 

物語
憎しみを糧にしても戦う事が出来なかった孤門は遂にナイトレイダーから逃走してしまう。
MPに追われ、根来に説教され、溝呂木が送り込んだ仮初のリコに安らぎを見出す孤門。
このまま闇の世界に取り込まれてしまうのか? その時、孤門の足を止めたのは……。

 

感想
遂に孤門が苦悩を乗り越えて勝利を掴む!
長かった……。いや、もう本当にここまで来るのが長かった……。
『レオ』も暗くて厳しい展開だったが敵を倒すカタルシスはあったし各話のラストはハッピーエンドになっている事が多かった。
連続物では『ガイア』があったが、こちらも我夢と友達との友情やXIG隊員と打ち解ける話が序盤から入れられていた。
それに対して『ネクサス』は敵はなかなか倒せないわ、倒したと思ったらすぐに復活して倒した実感が沸かないわ、西条副隊長を始めナイトレイダーはギスギスした雰囲気だわ、唯一の癒しであったリコは既に死人でファウストだったわとカタルシスもハッピーエンドも無い展開がずっと続いていた。
だけど、何度も言うが、ここまで引っ張ったからこそ今回の話の感動が生まれたと言える。
しかし、まぁ、ここまで長すぎた為に多くの視聴者が脱落して放送期間短縮に至ってしまったのは事実なので、その辺りはもう少し考えてほしかったかな。
個人的な感想だが第1話から今回の話まで見続ける事が出来た人はそのままスタッフを信じて最終回まで付き合えたと思う。実際、自分はそうだった。

 

追いつめられるネクサスだったが起死回生のコアインパルスで逆転に成功し、ダメージを負ったメフィストは退却する事になる。
この展開はファウストの時から何度か見てきた。流石にここまで似た展開が繰り返されると飽きてしまう。ただでさえ、メタフィールドにダークフィールドと舞台が同じなので展開には色々と変化を付けてほしかった。

 

負傷した石堀隊員の傷を乱暴に治療する平木隊員。本作では珍しくちょっと和むやりとりであった。その後のノスフェルとの戦いでは逆に石堀隊員が平木隊員を心配する場面もある。
ただ、最終回を見た後だと非常に複雑な気持ちになってしまう場面である……。

 

ノスフェルを取り逃がして現場から逃走した孤門に対してMPが差し向けられて記憶処理を施される可能性が出てくる。
松永管理官は孤門のナイトレイダーへの復帰は難しいと考えるが和倉隊長は孤門が苦悩に打ち勝つ事を信じて待つ。
かつて溝呂木が闇に転落した事が和倉隊長の心の傷となっていたのなら、孤門が溝呂木の策略に打ち勝つ事は和倉隊長の心に希望の光を灯す事になる。姫矢が孤門を助けた事で光の意味を見い出したように和倉隊長も孤門に自分の希望を託すようになる。
ウルトラマンに変身しないので他の主人公に比べて活躍が少ないイメージがある孤門だが、こうして見ていくと色々な人の希望を担っている事が分かる。そしてこれは最終回「絆 -ネクサス-」で世界中の人々の希望を担ってのウルトラマンノアへの変身へと繋がる事になる。

 

再び三沢が孤門を追跡するがあっさりと根来に振り切られてしまう。

 

姫矢の名前を出して孤門と接触していながら孤門に姫矢の居場所を尋ねられると「知らない」とあっさり言ってのける根来が面白い。その後も佐久田の名前を出したりして上手く孤門から情報を聞き出している。
しかし、孤門が「記憶を消された方が自分にとっては良かった」と漏らした時には普段の根来からは信じられない程に激昂して「記憶を消される事は今まで生きてきた証を失う事」「誰にも他人の人生を奪う権利は無い」と叫ぶ。ここは「辛い出来事は消し去った方が本人の為」と言う首藤チーフの考えと真っ向から対立している。
ところで、この時の孤門との会話を記録したボイスレコーダーは後の話に活かされなかった。放送期間短縮が無かったら根来が記憶を取り戻して再登場する予定があったのだろうか? 個人的には根来には最後までMPと戦ってTLTの機密を追い続けてほしかった。

 

姫矢を心配する佐久田だったが姫矢はそれに感謝しながらも自分の事は忘れてほしいと告げる。
この時の姫矢と佐久田の構図がかつての姫矢とセラに似ている。佐久田はセラのように姫矢を追って来る事は無かったが、そんな佐久田を戦場に巻き込もうとする悪魔がいた。それは後のお話。

 

溝呂木が落ち込む孤門に向かって言った「可哀想に。相当酷い目に遭ったんだな」は「お前のせいだろう!」と思わずツッコみたくなる。
溝呂木絡みだと「幽声 -コーリング-」で理子に向かって言った「酷い事をする奴がいたもんだ」も思わず画面に向かってツッコんだ。

 

ここまで追い詰めた後に孤門の耳元で「リコに会わせてやる」と囁く溝呂木の姿はまさに悪魔。
溝呂木の目的は抜け殻になった孤門をかつてのリコのように操り人形に仕立てる事。おそらく第二のファウストにする予定だったのだろう。

 

愛する者の思い出に縋って過去に生きる方が孤門にとっては楽で幸せだと溝呂木は嘯くが姫矢はそれでは生きている意味が無いと返す。
姫矢がこう言ったのはおそらくかつての自分がそうだったからであろう。ひょっとしたら光を得てから第1話で孤門を助けるまでの空白の期間の事なのかもしれない。

 

溝呂木が用意した仮初のリコの誘惑を受け入れかけた孤門だったが足下に落ちたガンバルクイナ君を見てリコとの思い出を振り返ると遂にリコが死んだと言う過去と向き合い、ガンバルクイナ君から溢れる光と共に仮初のリコを拒むのであった。
リコが消滅した第12話のタイトルは「ロスト・ソウル」であったがリコの魂は失われていなかった。
復活した孤門は西条副隊長と和倉隊長の危機に駆け付け、和倉隊長は孤門を信じて自分のディバイトランチャーを託す。そして孤門は理子を殺しかけた時のトラウマを乗り越え、憎しみではなく誰かを守る為に引き金を引いてノスフェルの再生システムを破壊する。孤門とネクサスによって遂にノスフェルは倒されたのだった。
「僕はもう逃げない。憎しみも、悲しみも、全て背負っていく。これ以上、誰かを不幸にしない為に!」はウルトラシリーズでも屈指の名台詞!
今の苦しみはリコといた証だと気付いた孤門はもう迷わない事をリコの魂に誓い、不幸な人をこれ以上生み出さないと未来を見据えて戦う事になる。

 

ノスフェルを倒して見つめ合うネクサスと孤門を和倉隊長は少し戸惑いながら見る。
「和倉隊長が孤門を信じる」と「孤門とネクサスが信じ合っている」と言う二つの流れが合わさって、ここからは「和倉隊長が孤門の信じているネクサスを信じる」と言う流れが生まれる。

 

いつも心に太陽を』に続いて三枝夕夏さんがボーカルのエンディング曲『飛び立てない私にあなたが翼をくれた』も劇中とのシンクロ率が高くて記憶に残る歌となった。