「Final Episode 絆 -ネクサス-」
『ウルトラマンネクサス』第37話
2005年6月25日放送(第37話)
脚本 長谷川圭一
監督 阿部雄一
特技監督 菊地雄一
ダークザギ
身長 50m
体重 5万5千t
全ての元凶たる暗黒破壊神。
元々は来訪者が光の巨人を模して作った対ビースト最終兵器ウルティノイド・ザギだったが邪悪な自我に目覚めて暴走してしまい、倒すべきビーストを逆に増殖・進化させて来訪者の星の文明を滅ぼしてしまった。
18年前にアメリカコロラド州で山岡一研究員を乗っ取って西条副隊長の両親を殺害すると、その後は石堀隊員としてナイトレイダーを隠れ蓑にしてアンノウンハンドとして暗躍し、ネクサスの光を闇に変換して実体を取り戻した。
一度は世界に終焉を齎すが最後は人々の想いを受けて誕生した孤門のノアが放ったライトニングノアによって消滅した。
ブロブタイプビーストペドレオン
来訪者のポテンシャルバリアが失われた事で世界各地に現れるようになった。
TLTが開発したビースト抗体の影響なのか小型で強さもさほどではなくナイトレイダーに撃退されている。
物語
ネクサスの光が西条副隊長の手に渡った事を知ったアンノウンハンドは遂に正体を現して復活へと動き出す。
世界が終末に突き進む中、最後のデュナミストが誕生。人々の想いを受けて究極のウルトラマンがここに復活する!
感想
「よく1話にまとめられたなぁ」と思う『ネクサス』最終回。
放送期間が短縮される事が発表された時は絶対に話がまとまらなくて多くの謎が残されるだろうと思っていただけにスタッフの頑張りには本当に頭が下がる。
本性を現した石堀隊員の「お疲れさん……」から平木隊員が本当に撃たれてタイトル画面になだれ込む流れが衝撃だった。
この最終回を見た後に後期のオープニング映像を見返すと和倉隊長、石堀、平木隊員の場面が伏線だった事が分かる。
フォートレスフリーダムの地下最深部SECTION-0にあったのはレーテの本体だった。
「新宿大災害」やこの辺りはどうしても『新世紀エヴァンゲリオン』を思い出してしまう。
今、レーテを使用したら来訪者のポテンシャルバリアはさらに弱まってしまうが、青葉ニュータウンの戦いで3万人もの人間がビーストを認識してしまったので、もはやMPでは処理しきれない状態になっていた。
結果的に3万人もの人間の恐怖をさらに溜め込んだレーテを石堀隊員は利用し、その後、闇に飲み込まれた西条副隊長のネクサスが脱出する際の衝撃でレーテは崩壊。『ULTRAMAN』から『ネクサス』にかけて重要な位置を占めていた忘却の海レーテは遂にここに終わりを迎えるのであった。
「忘却 -A.D.2004-」では来訪者のポテンシャルバリアに阻まれたアンノウンハンドだったが今回の石堀隊員はそれを跳ね返してSECTION-0へと到達する。来訪者のポテンシャルバリアが弱まったのもだがアンノウンハンドの力が強まったのも関係していると思われる。
因みに石堀隊員の侵入に吉良沢は「ここに侵入するとは!?」と言っているので、吉良沢がいつもいた場所はSECTION-0だった事が分かる。
ザギは「山岡一」と言う人物を乗っ取っていた。
人間を乗っ取る闇であったザギは人間と一心同体になってきた歴代ウルトラマンに通じる部分があり、ザギがウルトラマンのダークサイドである事が分かる。
因みに設定によると「ザギは山岡一に関する記憶と情報を処理した後、石堀光彦と言う人間の戸籍を奪った」となっているので、アンノウンハンドの石堀隊員とは別に本物の石堀光彦と言う人物がかつてはいたようだ。
来訪者からザギやビーストに関する情報を引き出していたのは少年時代の海本。その役目はプロメテの子の一人である吉良沢が継ぐ事となった。
TLTは来訪者のポテンシャルバリアが保たれている間にビーストを発生させない抗体の開発に着手し、その為に吉良沢はビーストとの戦いを管理し調整しようとしていた。「適能者 -デュナミスト-」で吉良沢がネクサスを味方だと認識していながらナイトレイダーに攻撃を指示したのはこの調整の為であった。
尚、ビースト抗体開発はかつてBCSTでザ・ワンへの対抗策を研究していた沙羅も関わっていたようだ。
アンノウンハンドが今までやっていたのもTLTと同じく戦いの管理と調整であった。
ファウストやメフィストを作ってぶつける事で光を強化させ、リコや溝呂木を利用する事でデュナミストの心に闇を植え付ける。
「全ては……俺が元の姿を取り戻す為の……道具だ……!」。
本性を現した石堀隊員は目を赤く光らせ、ディバイトランチャーの攻撃を弾くと言った人外の力を発揮する。
自分の母親を殺した存在が石堀隊員=山岡一だと思い出した西条副隊長は憎しみの力でネクサスに変身する。変身ポーズが姫矢タイプと溝呂木タイプを合わせたものなのが彼女の物語と合致していて面白い。
しかし、レーテに蓄積された恐怖と西条副隊長の憎しみがシンクロしてしまい、レーテから伸びる闇の触手に西条副隊長のネクサスは囚われてしまう。
使用者が憎しみで変身してしまった為に光は闇に変換され、ネクサスの光はレーテに吸収されて闇となり、そのレーテからの闇を受けて石堀隊員はザギとして復活する。
アンファンスの状態で闇に囚われてしまったので西条副隊長のジュネッスが何色なのかは不明。何色だったのか非常に気になる。
『ULTRAMAN』の舞台となった新宿に降臨したザギ。
街が破壊され、ザギの狂気によって世界各地のビースト因子が活性化され、東郷は恐怖と絶望で心が折れる。
因みに世界各地の状況を伝えるオペレーターの台詞に「ラスベガスが昆虫型ビーストに襲われている」と言うのがある。この昆虫型ビーストは「適能者 -デュナミスト-」で姫矢が夢で見たビーセクタの事らしい。姫矢のあの夢は来るべき終末を予知したものだったようだ。
ディバイトランチャーを手にシューターに乗り込む和倉隊長だったが、いつもと同じように横を見てもそこには誰もいない。溝呂木は闇に飲み込まれてメフィストとなり、石堀隊員は全ての元凶だった、平木隊員は撃たれ、西条副隊長はネクサスに変身するも闇に囚われ、孤門はそんな西条副隊長を救う為に自ら闇に飛び込んでいった。
主人公だから孤門がシューターの中央にいるけれど本来は和倉隊長が中央にいるべきだよなぁと思っていたのだが、この場面を見て、出撃する前に一度部下達を見る為に和倉隊長はあえて端にいたのかなと思った。
今まで率いてきた部下が全員いなくなって、たった一人で出撃する和倉隊長の悲壮感は歴代特別チームの中でも群を抜いていた。
レーテの闇の最奥に閉じ込められた西条副隊長を助けようと孤門は闇の奔流を必死にかき分ける。
「あなたの厳しさが僕を今まで支えてくれた! あなたの強さが僕を勇気づけてくれた! 憎しみは乗り越えられる! 副隊長……諦めるな!」。
今まで色々な人に「諦めるな」と言われ続けてきた孤門は遂にそれを他の人に言える程に強くなった。
そして今まで一人で戦ってきた西条副隊長は孤門に救いの手を伸ばし、二人の手が繋がれた時、二人の絆は光となってレーテの闇を吹き飛ばすのだった。
地上に戻ってきた孤門の手にはエボルトラスターが……!
そして西条副隊長に見守られながら、かつて見ていた姫矢と憐の変身を胸に、孤門はエボルトラスターを掲げる。
「絆……ネクサス」。
クロムチェスターδを見たリポーターが「見た事も無い戦闘機」と言っているのを聞いてナイトレイダーが極秘裏のチームであった事が改めて分かる。
一人でザギと戦う和倉隊長だったが遂に撃墜されてしまう。
しかし、それをネクサスが救出する。
自分を助けたネクサスを見た和倉隊長はそこに孤門を感じ取るのであった。
ウルトラマンの不思議なところで孤門が変身するとネクサスの顔が孤門に見えてくる。
恐怖と絶望で心が折れた東郷に見切りを付けた松永管理官はナイトレイダーの司令室に入ると地球は来訪者の星と同じ運命を辿るのかと呟く。
そこに吉良沢もやって来て、この戦いにネクサスが勝利したら運命を変える事が出来るかもしれないと告げる。
そして今まで対立していた二人は共にネクサス=孤門の戦いを見守るのだった。
アンファンスに変身した孤門だったがザギシュートを受け止めきれなくて吹き飛ばされてしまう。
立ち上がるもよろける孤門。そこに姫矢の声が響く。
「立て孤門! お前は絶望の淵から何度も立ち上がった。だから俺も戦えた」。
姫矢の声を聞いた孤門はジュネッスにスタイルチェンジする。
オーバーレイ・シュトロームでザギを分解しようとするがザギはそれを弾く。
格闘戦で苦戦を強いられる孤門だったが今度はそこに憐の声が響いてくる。
「負けるな孤門! 俺も孤門のおかげで最後まで戦えた。ウルトラマンとして!」。
孤門は格闘でザギを押し返すとジュネッスブルーにスタイルチェンジする。
オーバーアローレイ・シュトロームを放つがザギは最強ビーストを倒した技を片手で掻き消してしまう。
ザギの強さに驚く和倉隊長だったが隣にいた西条副隊長は力強く告げる。
「大丈夫。ウルトラマンは負けません!」。
そして近くにいた一人の子供が叫ぶ。
「そうだよ! 前にも新宿で悪い怪獣をやっつけてくれたもん!」。
その言葉をきっかけに人々はかつてウルトラマンが自分達を守ってくれた事を思い出していき、その光景を見た首藤チーフは自分達の役割が終わったと静かにメモレイサーを閉じるのであった。
人々の「ウルトラマン」と言う言葉を背に戦う孤門。
そして子供の「頑張れぇーー!!」と言う応援の言葉と共に遂にコアファイナルが発動! ザギが放ったグラビティザギを弾き、眩い光に包まれたネクサスはウルティメイトファイトスタイルであるノアへと変身するのであった。
ノアはノアインフェルノでザギを宇宙空間まで押し出し、稲妻超絶光線ライトニングノアはザギのライトニングザギをものともせず、そのままザギをこの宇宙から消し去るのだった。
戦いを終えた孤門に届く最後の声。
「私、信じている。孤門君なら、きっと守ってくれるって……」。
そして輝くリコの笑顔。
それはかつての思い出か、リコの魂が語りかけてきたのか……。
「ULTRA N PROJECT」の第一の使者として発表されたノアは当初は雑誌やイベントでの展開がメインで映画やTVと言った映像作品には登場する予定が無かったのでメタリック処理や固定の難しい翼と言った撮影の支障になるのでこれまでは避けられていた要素が取り入れられている。
カラーとシルエットが他のウルトラマンとは大きく違っているからか、『ネクサス』以降もウルトラマンはどんどん登場しているが、その中でもノアはかなり目立つ特別な存在になっている。
『テレビマガジン特別編集 ウルトラマンネクサス&ウルトラマンマックス』によると雑誌とイベントで展開された『バトルオブドリーム ノア』は怪獣墓場から蘇った怪獣や宇宙人達に苦戦するウルトラマン達の前に奇跡の使者ノアが現れ、ブラックホールから現れて怪獣や宇宙人達を支配するダークサイドノア・ザギと戦いを繰り広げて、最終決戦ではノアがザギをブラックホールに吹き飛ばした後、完全に封印する為に自らもブラックホールに姿を消したとなっている。
雑誌やイベントで展開されて、歴代ウルトラマンとの共闘や怪獣や宇宙人を支配する巨悪との決戦と言う物語はかつての『メロス』を思い出す。
ザギとの決着から1年後。
来訪者のポテンシャルバリアが失われた事で世界各地にビーストが出現するようになったがTLTによって被害は最小限に抑えられていた。
街中を飛び交う複数のクロムチェスター。
それを見上げる、生きていた姫矢と元気になった憐。
「僕達は生きている。たとえ昨日までの平和を失い、恐ろしい現実に直面しても……。大切なものを失くし、心を引き裂かれても……。思いもよらぬ悪意に立ちすくんだとしても……。僕達は生きる。何度も傷付き、何度も立ち上がり……。僕達は生きる。僕らは……一人じゃないから……。君は……一人じゃないから……」。
今まで過去形だった孤門のモノローグが遂に現在進行形に、そして未来のものとなった。
ビーストに襲われて諦めそうになった子供を助けて孤門は力強く告げる。
「諦めるな!」。
今回のエンディング曲は特別に初代オープニング曲の『英雄』となっている。
主題歌と共にこれまでの場面が振り返られる演出はやっぱり感動するなぁ。
最初は当時のウルトラシリーズでは異色な設定や作風で始まった『ネクサス』が最後は人々が怪獣や特別チームやウルトラマンの存在を知っていると言う従来のウルトラシリーズの設定へと回帰する流れが見事であった。
ウルトラシリーズは一話完結の作品が多く、その中で『ネクサス』の連続形式は賛否両論あったし上手くいかなかったところも確かにあったのだが、この最終回のラストシーンの感動は『ネクサス』が連続形式を採用したからこそ生まれたものだと言える。
数字が低迷した事でその後のウルトラシリーズや円谷プロはかなり厳しい状況に陥ったので『ネクサス』の全てを手放しで評価する事は出来ないが、後に人気投票等で『ネクサス』関係が上位に入るのは路線変更等をしないで初志貫徹したからだと思う。
この後の話として『ネクサス』のDVD-BOXのブックレットにTVシリーズの3年後を舞台にしたプロット「再臨 -ドリームス-」が掲載されていて、皆の驚きのその後が語られている。
NEXUS
それは受け継がれてゆく魂の絆