帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「鳥 -バード-」

Episode31 鳥 -バード-」
ウルトラマンネクサス』第31話
2005年5月14日放送(第31話)
脚本 太田愛
監督・特技監督 八木毅

 

レプタイルタイプビーストリザリアスグローラー
身長 51m
体重 3万8千t
アンノウンハンドが回収したリザリアスの細胞から復活・強化された。
トサカと2本の角が生え、眼が6つに増え、腹部に第二の口が現れた。
二つの口から強力熱線を吐き、長く太い尾で相手を叩きのめす。
学習能力でネクサスの攻撃パターンを予測して回避する。
ネクサスを追い詰めるが西条副隊長の援護を受けたネクサスのアローレイ・シュトロームで倒された。

 

物語
謎を秘める憐を救おうとする孤門と瑞生。
それぞれの思惑が交錯する中、アンノウンハンドによって復活・強化されたリザリアスグローラーが現れる。

 

感想
ナイトレイダーである孤門は憐がデュナミストである事を隠し、MPである瑞生も知り得た情報の殆どを上に報告しなかった。組織の論理より個人の気持ちで動く若者達を松永管理官は「怖い」と語るが実際は首藤チーフに指摘されたようにそのような若者達を利用していた。
他のMPやホワイトスイーパーを使えば孤門や瑞生が憐や吉良沢から聞き出したデュナミストやプロメテウス・プロジェクト関連の情報は手に入れられるし、孤門や瑞生や吉良沢を人質に取ればネクサスである憐の動きを制御する事が出来るし、その逆もまた可能と松永管理官は若者達をコントロール出来ていると思っていたのだが、若者達の暴走はやがて松永管理官の想定を超えて「反乱 -リボルト-」でナイトレイダーの反乱を引き起こす事になるのだった。

 

憐を巡る孤門と瑞生と吉良沢、その若者達の扱いで対立する松永管理官と首藤チーフ、スパイ疑惑に揺れる和倉隊長と石堀隊員と平木隊員と前回と今回の話で主要な登場人物達のそれぞれの立ち位置が描かれている。
皆の立ち位置や向いているところが微妙にズレているのが面白い。これはウルトラシリーズでは珍しくてどちらかと言うと平成ライダーシリーズに近い。
立ち位置や向いているところがズレていてもビーストが出たら一致団結して立ち向かわなければ生き残る事が出来ない。この「立ち位置や向いているところのズレ」と「一致団結して戦わなければいけない」と言う相反する二つを上手く利用して松永管理官はTLTを手中に収めようと暗躍を始め、かつては自分に釘を刺す人物だった東郷を逆に自分の陣営に引きずり込む事に成功してTLTにおいて最大の権力者となるのだった。

 

イルカのストラップが憐から瑞生への贈り物だと見抜き、ラファエルの話で瑞生に対して気まずくなった憐にフォローを入れる等、前回の情けなさを返上するかのように今回の孤門は頼れる先輩であった。

 

今回の話は憐を通して吉良沢と言う人物を描いている。
これまでは松永管理官との駆け引きや和倉隊長に対する威圧的な態度等、若者が大人達と渡り合っていると言う違和感や不自然さを見せていたが、今回の憐の話でアカデミーでの学生生活、色々なものが見える事から形成されたものの考え方、友人を思う一人の人間としての感情と若者としての年相応の苦悩が見られた。
これまで吉良沢について詳しく説明できる人物がいなくて、吉良沢本人も自分の事を語らなかったので謎の多い得体の知れない人物となっていたが、憐を通してどのような人間なのかが分かってきた。
「鳥は自由で良い。……なんて、つまらない事を考えていたわけじゃないよ」と言う本当は憧れているのにわざと捻くれた言い方が吉良沢らしくてちょっと笑ってしまった。そんな鳥に憧れた吉良沢が今はダムの底に閉じこもっていると言うのは可哀想である。

 

回想シーンの憐と一緒に海に行くかどうかの話で吉良沢は未来を見れるがそれはいくつもある未来の一つにすぎないと言う会話がある。
おそらく今の吉良沢はいくつもある未来の中から最善と思われる未来に道を繋げる為に色々しているのだと推測できる。吉良沢がどこまでの未来を見ていて、どんな未来を想定していたのか気になる。

 

憐によるとアカデミーの人達は良い人だったらしいが今回の回想シーンを見るとプロメテの子達が隔離されているように見えてちょっと疑問を感じてしまう。

 

朝日ソノラマから出版された『ファンタスティックコレクション ウルトラマンネクサス』には姫矢から憐へと光が受け継がれた理由として「放浪中の姫矢はアメリカで、アカデミーを抜け出した憐の瞳に自分と同じ孤独を感じファインダーを向けた」と言う設定を紹介している。

 

今回のバトル開始の流れがテンポが良くて盛り上がるものであった。
作品序盤からこのテンポの良さがあればなと思う……。

 

勢いのあるジュネッスブルーの戦い方だが西条副隊長はそれを「自分の身を守っていない危険な戦い方だ」と断じる。西条副隊長の言葉に憐の「自分には変えようのない一つの未来しかない」と言う言葉を加える事で未来の無い憐が自暴自棄にも似た戦い方をしている事が分かる。
だが、憐一人では変えられなかったであろう未来は大勢の人との絆によって変えられる事となる。

 

憐編では孤門より西条副隊長がネクサスを援護しているところがある。
姫矢との出会いで考え方が変わった西条副隊長が憐を助ける事になり、その事によって憐から西条副隊長へと光が受け継がれる事となる。